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2008年10月

2008年10月 9日 (木)

Long Lost JOHN LENNON Interview

――ミスター・ジョン・レノン、あなたと再びこうしてお話ができるというのは、大きな驚きであると同時に、たいへんな喜びです。 あなたが暴漢に射殺されてから長い年月が経ちましたが、時を重ねていくごとに、あなたの存在はファンにとっても、世界にとっても、どんどん巨大になっていくように思われます。
 さて、あなたが亡くなったのは、1980年の暮れのことでした。

ジョン・レノン  ああ。 忘れもしない、あの呪うべき12月の8日だ。

――あなたはあの晩、ヨーコ夫人の目の前で合計4発の銃弾を浴びました。 あの恐怖の瞬間を思い出させるのは大変心苦しいのですが、撃たれた瞬間、どのようなお気持ちだったのか、よろしければお答え下さい。

レノン  …さて、何から話せばいいのかな。
 とても言葉では言い尽くせないね。
 …「なんてこった、やられちまった!」「冗談だろ?」「どうして? なぜオレが?」 ってその瞬間は思ったよ。
 だけど、同時に思ったんだ。 「やっぱり、こうなっちゃうのか」、ってね。

――それはどういうことですか。

レノン  ついに来たるべきものが来たという感覚だよ。 運命みたいなものかな? そんなもの信じたくはないけどね。
 それまでも、「殺してやる」 と言われたことは何度もあったし、自分がビートルズだったころには、乗り合わせた飛行機が墜落すると予言されたりしたこともあった。 だから、いつか自分はあっけなく死んでしまうんじゃないかという予感があったことは確かだよ。 撃たれた瞬間はちょうど、そんな漠然とした不安が、風船みたいに弾けてしまったようだった。

――報道では、あなたはほぼ即死状態だったと伝えられています。

レノン  それは嘘だ。 意識はしばらくあったよ。 とても混乱していたけれども。 …血が止まらないんだよ! 撃たれた箇所が多すぎて、傷口を手で押さえようにも、わけが分からないんだ。
 けれども、しばらくすると、不思議なことに気持ちが落ち着いてきた。
 まわりは大騒ぎだし、撃たれたところは相変わらずひどい痛みなんだけど、なんだかぼく一人だけが静かなところにいるみたいなんだ。 まるで台風の目みたいにね。
 その昔、ビートルズの人気がピークだったころ、ファンの女の子たちがまわりで大騒ぎしているのに、ぼくたちはガードマンやら警官に守られて、比較的安全で静かな状態でいることができた。 メンバーはその状態を冗談めかして 「台風の目の中にいるみたいだ」 と話していたんだが、そのことを思い出したよ。 だけどその時は、そんなふうに物理的に守られているんじゃなくて、もっと精神的に、何かに優しく包まれるような感覚、とでも言うべきかな、とても不思議な感覚に包まれた。

――それは神の存在を感じた、ということだったのでしょうか?

レノン  うーん…。 その 「何か」 を、ぼくたちが 「神」 と呼んでいるのかもしれないが、ぼくには自然現象のように思えたよ。 雨が降る力や、風が吹く力、地球が回っている力と同じ力を感じた、とでも言うのかな。
 その時、これが死ぬっていうことなのかと思った。 ぼんやりとだが、ぼくは死ぬんだ、と悟ったよ。
 ヨーコが取り乱していて、気の毒な気持ちでいっぱいなんだけど、何か自分が当事者ではないような、高い所から見下ろしたような気持ちになっているんだ。

――そのときすでに、魂が肉体を離れていたのでしょうか。

レノン  いやいや、ぼくはその時、まだ自分の肉体のなかにいたよ。
 悲鳴や怒号が聞こえるなか、警官がやってきたのを覚えている。
 かれらは 「こりゃもう助からないな」 とでも思ったんだろう、救急車を待たずにパトカーか何かでぼくを病院に運ぼうということになったらしい。
 走る車の中で何か質問されたよ。 「あなたはジョン・レノンさんですか?」 とか。 うめくことしかできなかったけどね。 警官らしき男の顔と車の天井が見えた。 それがこの世の見納めさ。 気がついたらここにいる。

――最後の瞬間から、いきなりあの世に?

レノン  車の天井が見えたのが、ぼくの生前における最後の映像だろうな。
 なんてこった! それがヨーコの顔じゃなかったなんて!
 ぼくの人生の最後の瞬間を返してもらいたいくらいだよ! まったく。
 その時初めて、ぼくは自分が空中に浮かんで、上から自分を見下ろしていることに気づいたんだ。 未体験のことでわくわくするってよりも、「どうしよう、これじゃ本当に死んじまう」 と思って本気で慌てたよ。
 ぼくは自分の肉体に戻ろうとした。 けれどすぐに、戻ろうとした自分の肉体に、ぼく自身が拒絶されていることに気づいたんだ。 その時ぼくは明確に悟ったよ、ぼくはこの肉体を、生きている間、借りていたにすぎなかったってことをね。
 それに気づいた時はなんだかとても、生きているあいだ自分であった目の前の肉体に、感謝したい気持ちになった。 と同時に、とても済まない気持ちにもなったよ。 血まみれで最期を迎える状態にしてしまったのは、他でもない、自分のこれまでの生き方のせいなんだとね。

――しかし、殺されたのはあなたのせいではないでしょう。

レノン  済まないと感じたことは事実だ。 たぶん…殺されたのは、自分があまりにも有名になり過ぎて、殺されるような価値のある人間になってしまったせいもあるんだろう。
 とにかく、もう戻れないんだと悟った瞬間、何か大きな力がぼくにはたらいて、どんどん生前の世界から引き離されていったよ。
 悲しむ暇もなく、ぼくは暗いトンネルのようなところを長いあいだ歩かされた。 それがトンネルなのかも分からなかったけどね。 やがて幅の狭い小川が目の前に現れた。 浅くて、簡単に渡れそうな川さ。 「これを渡ったらもう生き返れない」 と本能的に感じたよ。 けれど、結局、――ぼくは渡ったんだ。

――そしてたどり着いたのが、あなたが今いらっしゃる場所なんですね。 そちらの世界の住み心地はいかがですか、ミスター・レノン? あなたがいるのは、どのような場所なんですか?

レノン  居心地はいいよ。 ここは天国なのかな? 花がたくさん咲いているから、少なくとも地獄ではないだろう。 どこかで見た景色のような気もするし、そうでない気もする。 それでも、人間の作った場所ではないのは確かだね。
 小さいころ、悪いことをしたら地獄へ落ちるとか、よい行ないをすれば天国へいけるとか、ミミ伯母さんやジョージ伯父さんによく言われたけど、今どうしてぼくがここにいるのかまでは分からない。 生きているあいだは、死んだら何でも分かるような気がしてたけどな。
 ここはいいところだけど、誰もいないのが玉にキズだね。 死んで唯一、ワーイって思ったのは、ぼくの母親や、大切な友人だったスチュに会えるだろうという勝手な思い込みがあったからだけど、あいにくここには誰もいない。

――誰もいないんですか? あなたは死んでから7年ものあいだ、ずっとひとりぼっちでいるんですか?

レノン  ひとりぼっちというわけじゃないよ。 ぼくはいつもこっちの世界からきみたちのいる世界のことを見ているし、ヨーコやショーン、ジュリアンのことを見守っている。
 ただ、生きている人たちと会話ができるわけじゃないし、こっちの世界にぼくの生前の知り合いがいるわけでもない。 ときどき、誰か、知らない人が通り過ぎることはある。 だけど、声をかけても知らんぷりして行ってしまうんだ。 まるでここは自分の場所ではないという感じでね。
 だから、きみの言うとおり、実際にはひとりぼっちと同じことかもしれないな。
 ただし、こっちに来てから、知り合いはできたんだよ。
 ケネディの治療を今でもよくしているとかいうプエルトリコ人の医者だ。 ぼくも治療をしてもらったよ。 撃たれた傷がとても痛むのでね。

――ケネディ、というと、あの、暗殺されたケネディ大統領ですか?

レノン  ロバート (弟) なのかジョン (兄) なのかは知らないよ。 ぼくはその医者のところでそのケネディとやらに会ったことはないんだ。 その医者の軽いジョークかもしれないね。 その医者は陽気なやつだから。 生前も医者をしていたそうなんだが、死んだ後もこうして人を治療しなければならないんだと愚痴ってたよ。

――ちょっと質問させてください。 あなたはどこで、その医者の存在を知ったのですか?

レノン  そこらじゅうを歩きまわったら、たまたま出くわしたのさ。 ぼくだって、こんなところにひとりぼっちにされたままでいるのはとても我慢できないから、行けるところはすべて歩いてみたんだよ。
 でも、そいつに出会ったのは、ぼく自身が望んだからという感じがするな。 だれかこの痛みを治療してくれるやつはいないか、と思ったらいきなり出会ったんだからね。 だけど、母親やスチュにはいくら望んでも会えない。 そこでぼくはこう仮定したよ。 かれらは、たぶん生まれ変わったんだとね。 だからこっちの世界には、もういないんだとね。

――あなたの発言には、非常に興味深いものがあります。 ひとつは、死んだあとも傷が痛む、という点です。 そしてもうひとつは、それを治療する医者がいる、という点です。

レノン  それってどうしてなのかな? 死んだら撃たれた傷なんかなくなりそうなものだろ? それに、その医者はどうして、死んだあとも愚痴をこぼしながら仕事をしなければならないんだろうね?
 この傷を見るたびに、ぼくはどうしてこういう死に方をしなければならなかったのか、よく考える。 自分が死んだあとどうしてこんな退屈な場所に置き去りにされているのかも、よく考える。 医者に会ったといっても、いつまでも一緒にいてはいけない決まりみたいなものが、暗黙のうちにあるんだ。

――なぜだと思いますか?

レノン  ぼくの業 (カルマ) に原因があるんだと思う。
 ケネディもぼくもその医者も、死後にこのような目に遭うのは、たぶん自分の宿業かなんかなんだ。
 だけど、――分からないな。 生きていた時に、ぼくはそんなに悪いことをした覚えはないんだが。
 だったら、ぼくはぼくが生まれる前にしたことで、生前はああいう生き方をし、死んだあとはここにいるのかな。 死んだあとの世界が、今こうしてあるんだから、生まれる前の世界だって、ある道理だろ。 ぼくはきっと、前世に何か悪い事でもしたんだな。 だから今ひとりぼっちにされているんだ。
 キリストやブッダなら答えが分かるかもね。 宗教はそれを教訓するために、必要なものなのかもしれないな。

――しかしレノンさん、あなたは 「キリストやブッダを信じない」 と生前歌っていましたよね。

レノン  …ぼくが問題にしていたのは、教えのことじゃないよ。 かれらを教祖とあがめたてまつっている弟子たちが歴史の上で犯してきた、暴力、分断、差別、迫害、独善、それらの罪についてのことさ。
 宗教って、いったい何のためにあるのかな? ひとりひとりが幸福になるためのものじゃないのかな? なのに、宗教は世界中で絶えず不幸の元凶になっている。
 それっておかしいと思わないかい?
 その原因のひとつは、教祖の教えを伝えていくべき弟子たちが、愚鈍だったことにあるとぼくは思っている。 弟子たちは勝手な都合で、教祖の心をねじ曲げたんだ。 そんな宗教なんか、縮んで滅んじまったほうがマシだ。 この考えは、昔から変わってないね。 生前同じようなことを言ったのを、きみは覚えているかな?

――「ビートルズはキリストより人気がある」 とあなたが発言して物議をかもした、あの事件ですね。 覚えています。 確か、1966年のことでした。

レノン  そう。 あの事件では相当叩かれたな。
 それでぼくはあの時、あの発言は誤解だって言い訳しなければならない破目になった。 じっさいのところ、あの時は自分の考えが全くちゃんと伝わっていないと感じたよ。 もう一度説明させてもらっていいかな。
 キリスト教では、「汝の敵を愛せ」 と教えている。 「右の頬をぶたれたら、左の頬を差し出せ」 ともね。 この教えについて、キリストを信じる人たちは、どう考えるのだろう。 ぼくは、過去の過ちを許して愛し合おう、という態度は、戦争を防ぐのにいちばんいい考えだと思うよ。
 なのに、世界で起こっている戦争のうち何割かは、キリスト教を信じている人たちが引き起こしている。 当時ぼくは、ベトナム戦争を念頭において、あの発言をしていたんだ。
 キリストは、「汝の敵を殺せ」 と言ったのかい?
 「ビートルズはキリストより人気がある」 なんて、ちょっとした軽口のつもりだったけど、キリスト教を信仰しているくせに、ベトナム戦争で人を殺し続けている連中に対する強烈な皮肉も、同時に込めたんだよ。 他愛のないラブソングを歌っているビートルズのほうが、ずっと平和に貢献しているってね。
 純粋にキリストを信仰している人たちは傷ついただろう。 その点では謝らなくちゃならない。
 でも、自分が何かを信仰しているのなら、果たして自分の行動が、自分の信じている教えに恥じないものかどうかは、常にふりかえってみるべきじゃないのかな。
 「汝の敵を愛せ」 という教えを実践しようとするなら、どうしたって戦争なんか起こせるはずはないじゃないか。

――宗教が原因の戦争は、あなたが亡くなったあとも絶えることがありませんね。

レノン  人を殺していいなんて神様がいるのなら、そいつはきっと悪魔の使いだ。
 ぼくはそう思う。
 神や宗教の名のもとに他人を不幸にしていいというのは、倒錯というほかはないね。
 敵を殺すことで問題が解決するなんてことは、下らない幻想だ。
 宗教の名のもとに戦争を正当化させようとする連中は、人々が本来持っている 「誇り」 ってものを最大限に利用して、殺す以外に方法はないと民衆に信じ込ませている。
 自分の受けた痛みで、自分の流した血で、自分の信じている神を飾り立てようとしているんだ。 「あいつらはとんでもないぞ、あいつらはおれたちの土地を略奪した、あいつらはおれたちの家族を皆殺しにした、だからやり返すんだ」、という具合にね。
 そして誰もが持っている、自分以外のよそ者を排除し、軽蔑したがる気持ちに火を注ぐんだ。 そうなると、相手がどんなにいい人間でも、絶対に認めなくなってしまう。
 人は、自分の仲間以外は、好んで軽蔑したがるものだよ。
 肌の色や髪の毛の色、自分とは違うとわかると途端に排除したくなる。 同じ人種だってそうさ。 太っていたり醜かったり、何かにつけて人は人を差別したがる。
 ほかならぬぼく自身がそういう人間だったから、よく分かるんだ。
 若いころは特に、体の不自由な人たちを、よくからかったものさ。

――確かにそんな人の真似をしたり、そういう人を題材にした絵も描きましたね。

レノン  …あまり感心したことじゃない。

――それがよかったことかどうか、今のあなたには判断できますか?

レノン  いけなかったことは分かっているよ。
 だけど、ぼくが本当にからかいたかったのは、体の不自由な人たちを、見て見ぬふりして自分から遠ざけたがる、普通の人たちだったのかもしれないな。
 良識ぶっているそんな人たちは、道の向こうから体の不自由な人がやってくると、まるでそこに誰もいないようにふるまったり、露骨に顔をしかめたりしていた。 そんな連中はきまって、知ったかぶりで 「政府は福祉に力を入れるべきだ」 などとほざいていた。 自分がやらないくせに欺瞞もいいところだよ。
 …何か言い訳にしか聞こえないね。 実を言うと、ぼくは体の不自由な人たちが怖かったんだ。 ぼくは自分が怖じ気づいているところを他人に悟らせたくなくて、そうした人たちをからかった。 否定したいけれど、それは事実だ。
 ただ、ビートルズが有名になってからはちょっと事情が違う。
 健康な人たちが、体の不自由な人をダシに使ってぼくらに近づこうとしてきたんだ。 楽屋裏は、まるで精神病院みたいだったよ。
 いったい障害者っていうのは何なんだろうって、ぼくは考えた。 本当の障害者っていうのは、心の不自由な人たちなんだ。 憐れみや嘲りを受けるのは、心の不自由な、ぼくらのほうだ。
 …そうか。 ぼくが今受けているひとりぼっちの罰は、そうした人たちをからかったからなのかもしれないな。…

――話を戻しましょう。

レノン  どこまで話したっけな。
 なにしろ、いったん戦争になっちまえば、連中の思うツボさ。
 相手を殺さなければ、こっちが殺されるんだからね。 へ理屈なんか考える手間が省けて、実に効率よく人殺しができるよ。 そうなったら、どっちが先に仕掛けたなんて、まるでどうでもよくなっちまう。
 互いに 「自分たちは酷い目にあった」 とわめきながら敵を殺し続けたら、どうなるかは分かるだろ? どこかでそれを止めなければ、誰もいなくなるまで殺し合うだけだ。
 だけど、戦争を続けるやつらはそこまで徹底的に殺し合わない。 なぜか分かるかい?
 やつらは自分の金儲けのために戦争をしているんだよ。 人殺しが商売になるのさ。 相手を全員殺して戦争が終わったら、商売あがったりなんだ。
 それに、ある種の指導者たちは、自分に都合の悪いことを隠したり、自分の都合で戦争をしている。 家族が殺されたり、住む家がなくなって、悲しみや憎しみを募らせるのは、いつだって下のほうの人間だ。 戦争の指導者は、豪邸の奥にふんぞり返って、豪勢な食事でぶくぶく太りながら、かわいそうな人たちの純粋な民族の誇りや信仰心をうまく利用しているだけに過ぎない。
 …要するに、宗教なんか関係ないんだよ。
 ていのいい道具に過ぎないんだ。 神サマなんてものは、さ。
 ぼくらは、戦争の原因になんかなる時点で、その宗教はすでに嘘っぱちだって気づくべきなんだ。 それはもはや、人殺しのためのへ理屈、不幸の元凶、悪魔の理論だって。
 ぼくとヨーコは、「あなたが望めば、戦争は終わる」 というキャンペーンをしたけれど、今になって考えると、あれはとても宗教的な行動だったと思うよ。
 要するに、えらい連中が正義だ国益だ主義だなどと理屈をいくらこねくり回したって、「戦争は嫌だ」「殺し合いなんかもうたくさんだ」 という民衆の気持ちには敵いっこないってことさ。
 戦争のことを考えるのはよそう、平和について考えよう、っていうのは、ひとりひとりが自分の中にある優しい気持ちを大事にしようということと一緒なんだ。 これは国家とか主義とか民族とかとまるで関係ない問題だ。 立派に宗教的だとは思わないかい?

――それでも我々は、まだ戦争の悪夢から抜け出ることができません。 ここであらためて、我々に向けたメッセージを頂きたいのですが。

レノン  今までさんざん話したつもりだけどな。 それでもまだ足りないのかい?
 だいたい、そうしたことは自分自身で考えるべき問題だよ。
 世界を救うのはジョン・レノンじゃない。
 世界を救うのは、きみたちひとりひとりなんだ。
 …言っとくけどぼくは、神様になったわけじゃない。 たまたま生きているか死んでいるかの違いだけで、全知全能になったわけじゃないんだ。 神様とか政治家とか評論家とか、自分以外の頭のいい連中や、お偉い連中に頼って安易にものごとの答えを聞き出そうとするのは、きみたちの悪い癖だよ。
 まず自分がその立場だったらどうするか、真剣に考えるんだ。
 自分が目の前の敵を殺さなければならなくなったらどうするのか。
 自分がある日、わけも分からず爆弾で吹っ飛んじまったら。
 戦争とは、そういうものだ。
 すくなくとも、ぼくはまっぴらだね。
 真剣に考えれば、おのずと答えが出るはずさ。 しかもその答えは、きみ自身が導き出したものだ。 安全な場所から、知ったかぶりで無責任なたわごとなど言えなくなるだろう。
 そして考えがまとまったら、自分で動くんだよ。
 ぼくはそうしてきた。
 ベッド・ピースやバギズム (ベッドの上や袋のなかで記者会見し平和を訴えた)、あれをしたことで散々馬鹿にもされたし、批判も受けたよ。 だけど、ジョンとヨーコは、信念に基づいて、ともかく行動を起こしたんだ。
 死んだぼくに教えを請うなんて、やめてくれよ! 死んだ人間は、もうそこで終わりなんだ。 あとは、きみたちの番だ。 これが、ぼくの答えだ。

――では、質問の方向を変えましょう。 生前あなたが行なってきた反戦活動は、一定の効果があったとお考えですか? ジョンとヨーコのアジテーションは、消極的に過ぎるという批判もあるようですが。

レノン  ぼくとヨーコがやった反戦活動というのは、ひとりの人の気持に訴えかけるものなんだ。 朝起きて、歯ブラシをくわえながら、今日は何をしようか、何を食べようか、ぼんやり考える。 それだけで、もうじゅうぶん平和じゃないか、という問題提起さ。 戦争のことを考えもしない人たちで世の中がいっぱいになったら、戦争はなくなる。 それこそが、本質的に価値のある革命だと、ぼくは思う。
 問題の根本を変えるのは、結局はひとりひとりの心なんだよ。 気に食わないやつを、いけ好かない国を、殺すことで、滅ぼすことで解決しようなんて心を、変えていくことだ。 そのことが本当に意味をもつ、そんな世界が来ればいい。 「イマジン」 はまさに、そのことを歌っている。
 過激な連中に、過激な反戦活動で対抗するのは馬鹿げているよ。

――戦争が起こるのは、何も宗教の対立だけでなく、貧困が原因となる場合もありますね。

レノン  貧困というのは厄介な問題でね。
 お前らはじゅうぶん金持ちなんだから、恵まれない人たちに寄付をすべきだとか、ずいぶん言われたよ。 ビートルズを再結成してどこかでコンサートを開けば、恵まれない人たちにその収益を寄付するとかいう話もよくあった。
 それで問題が解決するのなら、ぼくは自分の財産をなげうったっていい。
 だけど、お金で解決するのは、ほんの一瞬で上っ面だけに過ぎない。
 貧しい人たちにいくらお金をあげても、まるで砂漠が水を吸い込むように、あっという間に消えてしまうんだ。
 貧困の問題を、そりゃお前らひとりひとりの責任だ、と切って捨てるのは酷な話かもしれない。 けれども、食料の絶対数が決まっているのに、それを食べる人間ばかりが増え続けたら、どうなるかくらいは考えたほうがいいと思うけどな。
 これは、ある特定の国のことを言ってるんじゃないよ。 地球全体のことさ。
 もし、地球上に暮らす人間が、ひとり残らずみんな幸せになったとしよう。
 そのとき当の地球自身が、果たしてそれに耐えられるか、ってことなんだよ。 ぼくたちは、自分たちの欲望の火が、この星を飲み込んでしまうかどうかにもっと目を向けなければならない。 貧困というのは、人類が乗り越えなければならない問題だ。 だけど、それを解決するのは、ひとりひとりの意識にかかっていると、ぼくは思うね。
 まずは自分が、変わることなんだよ。
 すべてはそこから始まるんだ。
 自分が変われば、世界は変わる。 世界が変わるのが先で、自分を変えるのはそれからだと考えるから、おかしくなるんだ。

――それでは次の質問に移ることにしましょう。 ご自分の一生を振り返ってみて、どのような人生だったとお考えですか? あなたは史上最高のロックバンドといわれたビートルズの一員だったわけですが、あなたの人生にとって、それはどのような意味を持つものだったのでしょう?

レノン  ぼくはビートルズが、史上最高だなんて思ったことはないよ。 ただ、自分たちがそうあろうとしたことは事実だ。
 なんだ、同じことじゃないか、なんて言わないでくれよ。
 史上最高だなんて思うことは、一種のうぬぼれさ。 そしてその座に安住することでもある。 ぼくらは、最高を目指し続けたんだ。 それは、ビートルズのキャリアを見てもらえば分かるはずさ。 ぼくらは立ち止まらなかった。
 ハンブルグで巡業していた無名時代に、ぼくらは気分が落ち込むと、「おれたちは世界一を目指しているんだ!」 と自分たちをよく鼓舞したものだった。 有名になってからも、ビートルズが最高になるためには、普通のことをしていてはいけないという気持ちが常にあった。
 つまり、そうなれる人は、そうなろうとした人だけだってことだよ。 人生の教訓だね。
 ガキの頃、ロックンロールという神がたまたまぼくに降りてきて、その矢先にポール・マッカートニーという偉大なやつと出会った。 すべてはそこから始まったんだよ。 このことはぼくの人生で最も不思議な出来事だったと言っていい。
 聞いているかい、ポール? きみは偉大な男だよ。
 きみとはけんかもしたが、きみを認めている気持ちは、誰よりも強いんだ。 ビートルズは、きみなしでは、あそこまで凄いグループにはならなかっただろう。 きみのいないビートルズは、きっと 「風変わりなバンドがあったっけ」 程度のものにしかならなかったはずだ。 ビートルズを普遍的なバンドにしたのは、紛れもなくきみだ。
 ビートルズが解散したあと、小さなパブなんかに、無名のメンバーをかき集めて出演して、全くのゼロから活動を再開したきみを、ぼくは尊敬している。 ぼくなんか、エリック・クラプトンだの、リンゴ (・スター)  だの、腕の立つ、気心の知れたメンバーと、ソロ活動を始めたんだから。

――それにしては、あなたは生前、それこそ亡くなる数ヶ月前のインタビューに至るまで、彼に対して確執があったようですね。

レノン  ぼくは自尊心が強いから、あまり人をほめるのは得意じゃない。 ましてや、ポールを散々けなした歌 (「ハウ・ドゥ・ユー・スリープ?」) まで作っといて、そいつのことを今更ほめるっていうのは、恥ずかしいもんだよ。 だから、ぼくは生前、その恥ずかしさを隠すために、「あの歌は、結局自分を歌っていた」 なんて言い訳したんだ。
 だけど、ポールと出会ったってことが、ぼくにとって、ビートルズという、普通ではとても得られない人生を歩むきっかけとなったのは事実だ。 それについては、ポールに感謝すべきだって、今は素直にそう思う。 自分がいったん死んでしまうと、生きている時には気づかなかったことが、客観的にわかってくるものだよ。
 ぼくが苦々しく思っていたのは、彼がくだらないことを、さもみんなのためだと押し付けてくることだった。 だけど、こうして振り返ってみると、人間完璧なやつなんていないもんだよ。 付き合いが長ければ、いろいろと文句を言いたくなることもあるじゃないか。

――それでは、ポールに対してもうわだかまりはないんですね?

レノン  すべては生きているあいだのことさ。
 過ぎ去ってしまえば、すべては懐かしい。 死んでしまった今となっては、ね。

――あなたはそのポール・マッカートニーとともに、ビートルズとして世界に君臨した。

レノン  それはどうかな。 きみの主観だろ。
 とにかく、がむしゃらにやっていくうちに、ぼくたちはとてもとてもビッグになってしまった。 それだけの話さ。 ただしちょっと度を超えていたね。 今考えても、ウンザリするような状態だったな。
 ビートルズが成功したのは、ひとりの人間としては確かに幸運だったよ。 だけど一方では、たいへんな苦痛ももたらした。
 それを救ってくれたのが、ヨーコだったんだよ。
 あらためて言っておく。 ポールとヨーコは、ぼくの人生を決定づけた重要な二人だ。
 特にヨーコ。 きみがいなければ、ぼくは人生の意味も成功の意味も分からない、ただの太った金持ちのままで終わったろうね。 感謝しているよ。

――ヨーコさんがあなたの人生に与えた影響はいまさら説明するまでもありません。 これは否定することができない事実です。
 しかし、ヨーコさんはあなたが亡くなった後、あなたのデモ・テープや未発表音源をアルバムとして出すことで、「ジョンの生前の業績を汚して金儲けしている」 という批判を受けています。 これについてはどう思われますか?

レノン  ああそうやって、またどうしようもない中傷を受けているんだろうね、ぼくが死んだあとも、ぼくらのことを理解しようとしない連中によってね。 ヨーコ、きみはいつまで、そんな十字架を背負わなきゃならないんだい?

――ヨーコさんがそのような事をなさっていることについて、不快には思われませんか? 結局彼女は、自分の名声や財産目当てだったのでは、というような。

レノン  ぼくは全く構わない。 大賛成だね。
 …きみがぼくから本当は何を聞き出したいのかは、だいたい分かっているよ。 きみたちにとってヨーコっていう存在は、ビートルズを解散させた張本人なんだろ。 だからどうにかして、彼女を悪者に仕立てようって魂胆なんだろ。

――別にそういう…

レノン  ぼくらがどんな強い結びつきでいるかも分からないくせに、それを引き離そうとしたり、高い所から引きずり降ろそうとしたり、どうしてそういう貧しい発想しかできないのかな。 ぼくら二人は、そのような根も葉もないゴシップに、絶えず傷つけられてきた。 ひどい話さ。 生きている時もぼくは、このことについて話し出すと、怒りで止まらなくなったもんだが、きみはぼくが死んだあとも、そうやってぼくを怒らそうっていうのかい?

――話を変えましょう。

レノン  ちょっと待ってくれよ。 きみにはヨーコを侮辱するつもりがなくても、今のきみの話しぶりを聞いていると、ヨーコに対する風当たりが、なんだかぼくが生きていた時よりも強くなっているように感じるんだ。 このことは、今ここではっきりとさせておきたいな。
 そりゃきみたちの前に、1962年だかにビートルズの一員としてジョン・レノンという男が現れたのは事実だよ。
 だけど、ここが大事なところだけど、ぼくはジョン・レノンであって、ビートルズじゃないんだ。 ぼくはぼくさ。
 ビートルズは、確かに偉大なロック・バンドだったかもしれない。 だけど、ただ単にそれだけのことなんだよ。 すくなくともぼくにとって、それは最も重要なことではなかった。 ぼくはその当時、ビートルズでいることに、いい加減ウンザリしていたんだ。 だけど、ビートルズを辞めてやる度胸もなかった。 ぼくは、臆病者なんだよ。
 そこにヨーコ・オノというひとりの東洋人が現れた。 彼女は、ぼくの持っていた価値観を、根こそぎ変えてしまったんだ。 ぼくは彼女と恋に落ち、いつも一緒にいようと決めた。 それがぼくにとって一番重要だと思えたからだ。 ぼくはほかの3人のビートルに向かって、「ぼくとヨーコは一心同体だ。仕事場でも一緒だ」 と宣言した。 3人は、そりゃ面喰らった顔をしていたが、当然だろ。 スタジオは当時、結構封建的だったからね。 自分の女房を仕事場に入れるなんて、考えもつかないことだった。
 ヨーコがスタジオに入ってきたことで、ぼくらの間がぎくしゃくしだしたという人もいるよ。 けれどぎくしゃくしだしたのは、その時が最初じゃない。 ビートルズは、呆れるくらい、一緒にいる時間が長かったんだ。 お互いの気持ちが離れていくのは、ある意味では仕方のないことなんだ。 それを、外部の人間から、「ヨーコがビートルズを解散させた」 だの、「ヨーコは悪魔だ」 だの、そんなことを言われる筋合いなど全くない!
 きみたちが何を書こうが勝手さ。 だけど、きみたちの中にも報道の自由を取り違えて、何を書こうが勝手だと思い込んでいる連中がいる。 そんな連中のやり方には本当に頭に来るね。 ヨーコが悪者だっていう勝手な結論がまず先にあって、それをどこかの信用できない連中のうわさ話と結び付けて、さも本当そうに書き立てるってやり方だ。 本当だったためしなんか一度だってないね。 お前らがどう思っているのかじゃない、ぼくがヨーコをどう思っているかが重要なんだ!
 そのくせ、そんな連中に限って、「われわれには知る権利がある、報道の自由がある」「自分がいちばんあなたを分かっている、ヨーコも客観的に見て判断している」 って、立派なジャーナリスト面してさも自分らがいちばんだと思いこみたがっている。
 何が権利だ! 何が自由だ! なにを知ってるんだ? ぼくのどこが分かっているって言うんだ?
 下らないヨタ話で人を傷つけるのも、あんたらの権利なのか? 自由なのか?
 いいか、お前らがやっていることは、「愛とか平和とかぬかしていやがるが、ジョン・レノンなんてやつはろくでもないやつさ」「人間なんかしょせんカネと女と権力に飢えたブタなんだ」 と宣伝しまわっていることだけだ。 お前らは、「人を軽蔑しよう」 と触れまわっている、さっきの、宗教にかこつけて戦争をやりたがる連中と、性根は一緒だよ。 ひきょうな手を使わなければ飯が食えないっていう構造もそっくりだ。
 自分が大々的に悪口を言われたことがないから、それがどんなにつらいことなのか想像ができないのさ。
 一度自分のことを、自分が好きになった人のことを、好き勝手に大声で馬鹿にされてみろっていうんだ。 クソ食らえだ!

――…。

レノン  …分かったかい? キミがそんな下らないジャーナリストでないことを祈るよ。
 まあいいや、話をもどそう。…
 自分の一生を振り返ってということだよね。
 ぼくは40歳で人生を終えてしまったけれど、振り返ってみれば、ジョン・レノンというひとりの偶像 (アイドル) の生き方としては、まあ満足しているつもりだよ。 老いさらばえて、「あいつもいい曲が書けなくなった」「なんだ、まだいたのか?」 なんて言われるより、惜しまれながら死ねたのは、ある意味ではよかったのかもしれない。 そう思えば、仕方なかったで済むじゃないか。 ぼくを殺したやつに対しても、憎しみもわかなくなる。

――犯人に対して憎しみは持っていないと? …そういえばレノンさん、あなたはあなたを撃った犯人について今まで全く言及していませんね。 どういう人物だったのかとか、興味はないのですか?

レノン  …どういう人物だったんだい?

――一般的に言われているのは、狂信的なファン、といったところです。

レノン  政治的なものが絡んでいたんだろうか。

――その可能性は低いでしょう。

レノン  だったらいいさ。 というのも、ぼくはジェリー・ルービン (急進的活動家) みたいな連中と付き合っていたからね。 政治的な圧力を、よく感じていたんだ。
 だいたい、ぼくを殺したやつのことなんか、知りたくもないね。
 そりゃ、最初のうちは憎んださ。
 けれど、憎しみからは何も生まれないと悟ったんだ。
 そいつを呪い殺したところで、ぼくが生き返るとでも言うのかい? そういう無意味なことをしても仕方ないんだ。 人を殺すっていうのは、それくらい取り返しのつかないことなんだよ。

――犯人に対して言いたいことはありませんか。

レノン  あるさ。
 これで気が済んだかい? だけどアンタがしたことで、ぼくはやりたいこともやれずにこの世を去ることになった。 みんなを悲しませることにもなった。 一体そこから何が生まれた? 何も生まれやしないさ。 人を殺したって、いいことなんか何ひとつない。
 ぼくを撃った犯人だけじゃない。 世界中のみんなに言いたいね。
 人を殺したって、何もいいことなんかないって。 何もね。
 自分が殺されたからこそ、ぼくは強く願っているよ。
 人を殺すのはやめにしようじゃないか。 今すぐにだよ!
 人を殺すということは、その人の未来を奪うということだ。 その人の人生を奪うということだ。
 それだけじゃない。
 その人と関わる人全ての人生を狂わせることでもあるんだ。
 自分に関わるすべての人たちの人生だって狂わせるのさ。
 人を殺す人間っていうのは、そのことに頭が回らない。 そいつが一国の大統領だろうが、どこにでもいる普通の人間だろうが同じことさ。 他人が不幸になったって、どうでもいいと思っていやがるんだ。 自分の不利益のほうが、他人の命よりもよっぽど重要だと思っていやがるんだ。
 人を殺す人間のなかには、人を殺すことで、自分が特別な人間になると勘違いしている馬鹿もいる。 ただの幻覚さ。 目を覚まさせてやりたいよ。

――あなたを撃った犯人もそのタイプだという分析があります。
 ところでその男は、今は刑務所暮しですが、何年かすれば出所するだろうといわれています。 どう思われますか?

レノン  自分が悪い癖に逆恨みして、ヨーコにまで銃を向けなければいいが。
 ぼくが一番心配なのはそこさ。
 ぼくはその犯人が死刑になればいいとは思っていない。 そいつを殺せばすべて解決するという考えは間違っていると、ぼくはさっき言ったよね。 それと同じことだよ。 けれど、そいつが出所することで、ヨーコたちの生命に危険が及ぶとなれば話は別さ。 ぼくはやつの死刑は望まないが、その危険の可能性がある限り、やつには刑務所暮らしを続けてもらいたいね。
 さっきの質問に戻るけれど、ぼくは、ジョン・レノンという偶像 (アイドル) としての人生には満足しているとは言ったが、それはスーパースターという枠の中での自虐的な感想でしかないんだ。 ひとりの男、ひとりの夫、ひとりの父親の人生としては、40年というのはあまりにも短かった。 ちっとも満足していない。

――ということは、やはり生前やり残したと思うことはあるんですね?

レノン  そりゃあるさ。 仕事にしたって、曲が湯水のようにあふれてくるのに、それを形にできなかったんだからね。 きみはさっき、ヨーコがそういった未発表の音源をまとめてリリースしているって話したよね。 そうしてもらうのは、とても嬉しいな。
 ものを作る人間としては、自分の作品が世の中に出て、ようやく目的が達成されたと思うものなんだ。 去る者日々にうとし、というのはぼくの持論だけど、じっさいみんなから忘れ去られてしまうのは寂しいことだ。 ぼくのことをたまにでも思い出してくれれば嬉しい。 いくらそれがデモ・テープのような不完全な状態にせよ、それを世の中に出すことで、ヨーコはぼくを世間の人に思い出させる手助けをしてくれているんだよ。
 そのことをぼくが感謝しこそすれ、悪く思うはずなんかないじゃないか。 「生前の業績を汚している」 だって? よくもそんなことが言えたもんだ。 お笑いだね。
 ショーンと一緒にいられなくなったのも心残りだ。 ただ、ショーンが生まれてから5年間、いつも一緒にいることができたのは、とても意義のあることだったと、ぼくはいまでも誇りに思っているよ。
 その点、ジュリアンには済まないことをしたと、今も申し訳なく思っている。 ぼくはかれにとって、けっしていい父親ではなかった。 ぼくが自分の父親からされたのと同じようなことを、ぼくはジュリアンにもしてしまっていた。

――かれはミュージシャンになったんですよ。

レノン  知ってる、知ってる。 ただ、父親があまりにも有名だと、余計なプレッシャーがかかってしまうものだ。 それにも負けずに、自分がミュージシャンとして生きようとするのは、大変なことだよ。
 ジュリアン、だけど、きみはきみだ。 自分が本当に表現したいものを見つけてほしい。

――ミスター・レノン、名残惜しいですが、これ以上の会話は、霊媒師にとって、限界のようです。 最後に、何か言いたいことがありましたら、どうぞ。

レノン  もう終りなの? もっとしゃべらせてほしいんだが、…そんな理由じゃ仕方ないね。
 だけどほんとうは、もっともっとしゃべっていたい。 死んでからひとりぼっちにされていることは、ぼくにとって耐え難い苦痛だ。
 いくら立派なことを考えていても、伝わらなきゃ意味がないんだから。
 だから、生きている諸君、どんな憎たらしいやつであろうが、誰かがそばにいるっていうのは、ありがたいと思わなきゃいけないよ。
 ひとりっていうのは、ほんとうに無意味だ。…
 ヨーコ、早いとここっちに来て一緒に暮らそう。 きみとしゃべりたいよ。 だけどどうなんだろう。 果たして一緒に暮らせるんだろうか。 またぼくたち、会うことはできるんだろうか。 だいたいぼくにしたって、いつまでここにいられるんだろう。 …ほんとうに、死んだあとでも分からないことって多いね。
 けれどこれだけは言っておきたい。
 ヨーコ。
 ぼくの愛は、いつもきみと共にある。
 きみはぼくの一部なんだ。
 これだけは、永遠に変わらない事実だよ。
 もしきみが、ジョンがいたらこう言っただろうと考えたなら、それはまぎれもなくぼくの声だよ。 だって、ぼくはきみなんだもの。
 自分が死んでしまって、つくづく感じるのは、ぼくはきみの存在なしでは全くやっていけない人間だったってことだ。
 生きている時ぼくは、きみに先立たれたらとても生きていられないから、死ぬならきみより先に死にたいといつも考えていたけれど、自分が先に死んじまったあとのことまでは思いつかなかったよ。 間抜けだね、ぼくは。

――今日はどうもありがとうございました。

レノン  こちらはブリティッシュ降霊術協会です。 …霊媒師さん、ありがとう。 …しゃべる場所を与えてくれたことに感謝します。 …ピッピッポーン。…

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