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2008年12月 7日 (日)

ポールの 「イエスタデイ」 に関する恨みごと

 コアなビートルズファンになるほど人気のない、ポールの作った 「イエスタデイ」。

 この曲が嫌いな人たちは、あまりに有名すぎて聴き飽きた、という理由のほかに、バンド演奏じゃないのに、ビートルズをあまり知らない人たちが安易にこの曲をビートルズの代表曲としてしまうことに、抵抗があるようだ。
 確かに、ビートルズは、それまでの世の中の権威に対抗する象徴のように登場したもんだから、それが権威の側からほめられるような曲を作った、ということに、コアなファンは嫌悪感をもよおすのだろう。

 しかし、私はこの曲が嫌いではない。
 実のところ、私がビートルズに興味を持ったのは、この曲がきっかけだった。
 私が小学6年だった1976年当時、「イエスタデイ」 はすでに音楽の教科書か副読本だったかに(メロディラインの楽譜だけだったが)載っていた。 発表から10年程度で載っていたのだから、今から考えると驚くべき早さだ。 そのころにはもう、何百ものカヴァー曲が存在していたひとつのスタンダードだったのだ。 学校の給食時にかかる校内放送でも、なんだかグレゴリオ聖歌みたいな男声コーラスの 「イエスタデイ」 が流れていたのを記憶している。
 そんなこんなで、当時同居していた叔父の持っていたレコードのなかに、確か 「イエスタデイ」 って入ってたよなあ、とごそごそ赤盤を探し当てて聞き出したのが、私のビートルズ遍歴の始まりだった。

 そのため未だに思い入れのある曲なのだが、どうもこの曲に対するファンや評論家の評価が低くて、なんだかもどかしくなることが時々ある。
 その人たちの言い分は確かに当たっている。 ポール個人の曲だとか、ポール以外にこの曲のレコーディングに参加していないとか。。
 私個人の見解を述べれば、この曲はやはり、世紀の傑作だ。

 この曲には、繰り返しの部分がほとんどない。 リフの部分に一か所あるくらいか。 そんな構成の曲はほかにもあるが、それに加えて、一貫してすべてが印象的かつ美しいメロディで、無理をしてくっつけたというぎこちなさがまるでない。 始めから終りまで、というのは、それだけで驚異的なんじゃないだろうか。

 また、ジョンが関与していないといわれる歌詞だが、ポールはすでに、ビートルズ中期の時点で、ジョンも及びのつかない作詞の才能を見せつけた。 あの曲の発表時点で 「イエスタデイ」 の歌詞に匹敵することのできるジョンの作品は、「ゼアス・ア・プレイス」「ヘルプ!」「悲しみはぶっとばせ」 くらいしかない。 と個人的には考えている。

 それにしても思うのは、「イエスタデイ」 とジョンの 「ヘルプ!」 は歌詞がよく似ている、ということだ。
 この2曲とも、対象こそ違うとはいえ、ともに昔を懐かしむ曲である。 ポールは優しかった恋人(歌詞の意味上ではそうだが、じっさいにポールは、亡くなった母親のことを想定しながらこの歌詞を書いている)に、ジョンはなにも気兼ねのなかった若いころに、苦い思いをいたしている。
 出だしの部分から、「若かったころは誰かの助けなんかちっともいらなかった」(「ヘルプ!」)「昨日まで僕の悩みなんかずっと遠くにあると思っていた」(「イエスタデイ」)、となんだか張り合っているようにさえ見える感じだが、象徴的なのは、その昔が 「バニッシュ・イン・ザ・ヘイズ」 (「ヘルプ!」)「ゼアズ・ア・シャドウ・ハンギン・オーヴァ・ミー」(「イエスタデイ」)、という具合に、霧のなかに隠れてしまっているように、ふたりには見えている点だ。
 この2つの名曲はおそらくほぼ同時期に作られたはずだから、何らかの影響をどちらかが与えている可能性がある、と私には思える。

 そして、この 「イエスタデイ」 を名曲たらしめているもうひとつの理由は、ジョージ・マーティンのストリングスアレンジだ。

 アレンジャーの手腕というだけで、それはビートルズの功績ではない、とする意見もあるだろう。 しかし、この人がいなければ、ビートルズはデビューすることさえままならなかったかもしれないのだ。 「プリーズ・プリーズ・ミー」 もスローナンバーのままヒットせず、スーパースターになるきっかけを失ったかもしれないのだ。 この人の働きをビートルズのカテゴリーに入れないことは正しくない。
 私はこの人の仕事を長年見てきたが、この人のストリングスアレンジの最高峰はこの 「イエスタデイ」 だと断言する。
 四つの弦楽器のひとつひとつを注意しながらこの曲を聴いてみよう。 その絶妙な絡み合いに舌を巻くはずだ。

 と、ここまで 「イエスタデイ」 を絶賛した私だが、ちょっとここからは苦言を呈したい。 誰にって、ポールにである。
 この曲、ギターで弾き語りをしようとすると、少々面倒なのである。
 この曲のギターのチューニングが、6弦すべて2フレット、つまり1音下がっているのだ。
 つまりこの曲をオリジナルで演奏しようとすると、糸巻きをキリキリやって2フレット下げなければならない、という面倒な作業を強いられる。
 ギターをもう一本、そのチューニングで揃えればいいのかもしれないが、それも面倒な話だし。
 仕方がないから、この曲を弾く時はいつもF基調のバージョンで演奏している。 ほんとは2フレット下げGコードのオリジナルで弾いたほうが雰囲気が出るのだが。
 実はポールにはこの手の 「反則技」 でちゃんと弾けないもどかしい曲がまだある。
 「カリコ・スカイズ」「ジェニー・レン」 だ。 このふたつともアコギの名曲なので、是非ともちゃんと弾きたいのに。

 こういうのは今後やめてくれませんかね、ポール(笑)。

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コメント

ヘルプは、ジョンが昔のようには曲が作れなくなったのでヘルプなのかなあって解釈してました。
イエスタディは、ポールの本質の結晶のような作品で、ジョンにはそれがわかって、ジョンは称賛と嫉妬を抱いただろうなあって思います。
中期くらいからどんどんポールがすごくなってくるけれど、ジョンがだめにはなったわけではなく、アデイライフ、トゥモロウネバーノウズ、アイアムウォロラス・・、ジョンはいつもバシッと決めてくれる。やはりポールもいいがジョンもいい。イエスタデイはクラッシックタッチだからか、あんまり好みではありませんでした。でもイエスタディの深い部分を最近感じ取るようになり、好きになりました。

keiko様
コメント下さり、ありがとうございます。

ワタシ、この項にジョンが 「イエスタデイ」 を買っていたことを書いたかななんて言いましたが、書いてないですね(笑)。 どこに書いたのかなァ? 先にお話に出た、ポールファンのサイトへかなァ?

これもどこかで書いたような気はするのですが(笑)、ジョンのポップミュージックに対する興味というものは、ビートルズ中期以降急速にしぼんでいるように見えますね。 それはポールの 「イエスタデイ」 がきっかけとなってジョンの闘志に火が付き、次作 「ラバー・ソウル」 での 「ジョンひとり勝ち状態」 につながっていくんですよ(やっぱりこれ、どこかで書いたな…)。 それが 「リボルバー」 で再逆転されて、それ以降ポールの作曲能力が桁違いに成長していく。

ジョンをそのとき襲ったのが、例の 「キリスト教発言」 です。 私はここでのバッシングがジョンの人生に与えた影響は、計り知れない、と考えています。

ジョンはそれ以降、いわゆる 「ヒット曲」、大衆受けする曲にほとんど興味を持たなくなってしまっているように、私には見えます。 ベクトルがもう、「アート」 に向かっているんですよ、「ミュージック」 ではなく。

この、後期におけるジョンとポールのベクトルのせめぎ合いに、ジョージの成長が加わって、ビートルズは史上最高のオバケバンドへと最終形態を成していくわけです。

ラスボスだ!(笑)

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    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

MUSIC

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(スーパー・デラックス・エディション)(4CD+DVD+BD)
    ロック界、いや、すべてのポップミュージックにおけるアルバムの中で史上最高と称され、すでに世界文化遺産の域にまで達しているこのアルバム。 そのアルバムの発売50周年を記念して、スペシャルエディションがリリースされます。 なかでもブッ飛ぶのがこのスーパースペシャルボックスセット。 CD4枚組であらたなリミックスのステレオ盤1枚、モノ盤1枚、初期テイク集が2枚、さらにブルーレイ1枚とDVD1枚で5.1サラウンド、ハイレゾ音源、ドキュメント映像 「メイキングオブサージェントペパーズ」 のデジタルリマスター等々、卒倒するようなラインナップです。 18、000円プラス税と値は張りますが、史上最高の名盤だからこそこれは買い。 5月26日の発売までに予約をしておけば、アマゾンならば値下がりした時に値段がそのあと高騰しても最安値で購入できます。 ビーファンならずとも、これは注目ですぞ!

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    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

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