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2009年5月25日 (月)

ムムキ

   ムムキ


ときどき定期的に
夢に出てくる
現実にはない
場所がある
そこは現実に私が住んでいる街並みや
にぎやかな駅の周辺が
きまって少しずつ違っている
わたしは
見も知らぬ店の主人と笑いあったり
起こるはずもない重大なニュースを
流す テレビを見たりする
夢のなかの街の変容は
どういうわけかいつも同じであり
夢のなかのわたしは
いつも同じ酒場で酒を飲み
じぶんの人生の行く末など
すこしも気にしないきまりだ
ときどきわたしは考える
この重苦しい現実のほうがほんとは夢で
笑いつづけている夢のほうが
現実なのではないかと








   夜話


透き通った群青のたましいの葬列が
河のほとりをなだらかに通り過ぎていくとき
水鳥たちは天上に横たわる
河の匂いをなつかしがり
ねむりにつく
その夢のなかで鳥たちは
理不尽なふしあわせにかなしみながら
泣いていたのだが
かつて自分は高度な言葉を持ち
誰かのための自分であることが できていたのだ
鳥は自分が人間という称号で呼ばれていたこの かなしいたましいのある時代を
いたずらに血を流しながら 無駄な長い年月を過ごしていたこの時代を
いまはただ
なつかしんでいる

私は前世に
短い角を生やした四つ足の動物で
おそらく500頭単位の
たいへん巨大な
群れのなかの一員だった
この群れは
なにかを求めて
毎日毎日
ただひたすら移動していたのだが
私にはその意味が分からなかった
エサとか過ごしやすい気候を求めていたわけでは けっしてなかったのだ
なにかから追い立てられていたのだろうか
それすらも
分からない

あるとき群れは流れの速い
河を渡ろうとして
仲間は
何頭も何頭も
力尽きては 流れに呑み込まれていった
それでも四つ足の動物たちは
その河の先になにかがあると信じ続けて
何頭も何頭も
危険を顧みず
流れに飛び込んでいき
いたずらに
ばたばたと
死んでゆき
ついには
まったく
なにも分からないまま
ひどく恐ろしい
凶暴な牙を持つけものに
のどを食いちぎられ
私は死んだ






  無との対話


誰もいない真夜中でも
一生を共にできる音楽と酒があるだけで
孤独さえ楽しい
おれの過去へと沁み渡って降りてゆく酒よ
ギターの甘くほろ苦い旋律よ

今はもう亡き人たちよ 乾杯しよう
互いに
支え合いながら生きていた昔に乾杯しよう
失うものなどいまさら何もない
誰もが自分のしてきたことだけを携えて 死んでゆくのだから

音楽が途切れたあとにやってくる静寂よ
おれはなによりもおまえを愛する
目の前にそのままとどまりつつある静寂よ
その空っぽの空間から
なにかが生まれくる瞬間を おれは愛する

無よ
いっさいのものはすべて
おまえという有形のものから生まれた
そんな矛盾を
おれたちはすべて受け継いでいる

有ることも
無いことも
まるきりおなじなのだとすれば

もうさびしくなんかない

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