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2009年6月24日 (水)

「白い春」 最終回 まさか、まさか…

 作り手の、登場人物に対する深い愛情を、いつも感じとっていた。
 だから、こんな結末は、ちょっと、想像していなかった。
 佐倉春男が死んでから、エンディングロールが終わるまで、いくら慰めのような幻が出てこようが、真理子の墓の隣に埋められようが、ちっとも救われたような気分にならなかったことを、白状します。

 それは、ないんじゃないか。

 村上さちに、最後に 「お父さん」 と言わせることで、こちらの涙を絞ろうとしたのであれば、ちょっとそれは、あまりにも狙い過ぎて、かえって残酷にさえ見える。 正直言って、泣けませんでした。 じわじわと泣かせるのが、このドラマの本当の魅力だったのに。

 こんなことなら、途中でコメディっぽく笑わせてもらいたくなかった。

 パン屋に暴漢が入って来た時は、悪夢を見ているとしか思えなかった。 その悪夢のなかで、佐倉春男が村上康史を命がけでかばっても、どうして?という気持ちが強すぎて、佐倉春男の思いが、こちらにストレートに伝わってこない。

 どうも、ちょっと私、いま冷静さを欠いています。

 つまり、佐倉春男が殺されてしまうのは、ドラマの初回から決まっていた、因果応報という摂理。 今風に言えば、フラグが立っていた、ということになる。
 人を殺しておいて、何年かすれば刑務所から出てきてしまう、そんなんでいいのかと。
 人を殺した者は、殺されねばならないと。
 ちょっと、そこまで言うと、さすがに言い過ぎのような気もするが、悪意をもってこのドラマを総括した場合、作り手がそう考えているのではないか、という意地悪な見方も、成立してしまう気がするのだ。

 だいたい、このドラマのなかで、佐倉春男が殺人を犯したことについて、どういう罪の意識があるのか、全く描かれてこなかった。
 つまり、佐倉春男は、刑務所に9年間入っていたことで、罪は帳消しになった、そう考えていたとも、考えられる。 いや、そもそも、そのこと自体を考えていなかったフシがある。

 だから、いきなり現れた、佐倉春男に身内を殺された男の行動は、間違っているとはいえ、心情的に、理解できたり、してくる。

 だが、ここで復讐が完遂してしまうことは、このドラマにとって、必要不可欠だったのかというと、私にはどうしてもそう思えない。 佐倉春男は、いくら急所を刺されても、助かるべきだったのだ。 個人的には、そう思う。
 刺されることで、気付かされるものがある。
 助かることで、またひとつ、気付かされることがある。
 このドラマは、その道を、自ら閉ざしてしまったような気がする。

 私の釈然としない思いは、ここからきている。

 すいません。 ここから追記です。

 ちょっと冷静になって考えてみたのだが、あまりの出来事にぼーっとしながら見ていた、このドラマの最後の数分間、物語全体を俯瞰したうえで非常に重要なシーンがいくつかあった。

 まず、村上さちが、佐倉春男に触れるシーンである。

 この物語で何度も繰り返し、佐倉春男は村上康史の 「さちに手を触れないでくれ」 との、なかば心ない要請を、かたくなに守っていた。
 最終回、自分をはるばる訪ねてきたさちにも、春男は手を触れることを拒んでいた。
 それが、春男が死ぬ間際、ようやく手をつなぐのだ。
 思い返してみると、実にこのドラマを象徴するようなシーンだった。

 また、村上康史は、ラストで暴漢に刺された片脚を、引きずりながら墓参りをしていた。

 これは、よく考えてみると、佐倉春男の障害を、引き継いだことを、象徴しているように思うのだ。 それがそのまま、さちの父親としての役割を、佐倉春男と一緒になって担っていくことを、このドラマでは表現したかったのではないか。

 冷静にこのドラマのラストを振り返ってみると、そんな解釈が成り立つのだが、いかんせん、少しショッキングすぎた。 もう少し、前触れみたいなものが欲しかった気は、やはりぬぐえない。 もしかすると、津田寛治サンが、襲われた組長の関係者だったのか。 たぶんそうなんだろうな。 ものすごい顔して、走り去る車のなかから、阿部サンをにらみつけてたから。
 それに、実に野暮ったい話ではあるが、「障害を受け継いだこと」 に対する、白石美帆サンなんかのセリフとかも、欲しかった気がする。 「手を触れること」 に対する、大橋のぞみチャンのセリフなんかも。

 でも、やっぱりそれをしちゃうと野暮ったいか。

 いずれにせよ、最終回の衝撃が冷めていくにしたがって、やはりいいドラマだったな、という気は、しているのであります。

当ブログ 「白い春」 に関するほかの記事
第1回 なんだ、コメディじゃないのか?http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/04/post-f49f.html
第2回 やっぱり笑えるぞhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/04/post-148c.html
第3回 シリアスの中に含まれる喜劇性http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/04/post-5f88.html
第4回 なかなか真実にたどり着けない阿部寛サンhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/05/post-fd3d.html
第5回 予告編にだまされたhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/05/5-44cd.html
第6回 世田谷にハローワークなんてあったっけ?http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/05/post-8001.html
第7回 みんな幸せになれたらいいのにhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/05/post-2253.html
第8回 覚悟がいかに大事なのかhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/06/post-8347.html
第9回 じわじわ泣かせるhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/06/post-eb06.html
第10回 やはり一緒にはいられないhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/06/10-f524.html
第11回(最終回) まさか、まさか… http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/06/11-36a9.html

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コメント

衝撃の最終回から1年以上過ぎました。
改めて最終回についてネットを検索してみると、好意的あるいは仕方ないのでは、という意見が散見されるようになっていました。

私は今でも、あのようなラストについては疑問に思っています。不器用に生きてきた春夫が、さちと春夫、春夫とパン屋との、絆を徐々に深めていく所や社会復帰していく様を丁寧に描くからこそ、じわじわと押し寄せてくる感動になっていたのに、殺す必然性が感じられないからです。

離れてしまうけれど、幸せに暮らしました、ではどうして駄目だったのか、途中まで王道的なストーリーだったのに、どうして危険球と思えるような変化球にしなければならないのか、私には全く理解できません。

投稿: BLACK | 2010年10月 8日 (金) 13時07分

BLACK様
コメント、ありがとうございます。

「白い春」 のラストに納得できるかできないかは、やはり見る人の度量によるものが大きい、と感じます。
このラストに納得できないBLACK様のようなかたの気持ちは、やはり納得できるかたに比べればはるかに優しいのだ、と僭越ながら思います。

「どうしてこんな最悪なことが起こるのか?」「なんにもしてないのに、なんでこんなひどい目に遭わなくちゃならないんだ?」 ということって、人生にはたまに、または時々、起こる気がします。

それを納得させるために、人というのはいろんな回避行動または回避思考に走ります。

このラストにドラマ上のいろんな伏線を思い起こし(この記事の後半部分で私がそうしたように)、納得するしかないなどと考えてしまうのも、その回避行動のひとつであります。

でも 「納得するしかない」、と考えながら、気持ちの奥底では納得がいっていない気がするのです。

で、「ドラマだから」 という話に落ち着いちゃったりする(笑)。

個人的な感想で申し訳ないのですが、BLACK様がこのドラマのラストに感じた 「納得できない」 という気持ちは、大事にしてほしいなあ、と思われるのです。

投稿: リウ | 2010年10月 8日 (金) 14時36分

こんばんは。やっぱり、泣けるドラマは、ちゃんと、見てるんですね。阿部ちゃんの、医者に、お金渡すところなんて、口、横に開きながら泣いてたもの。でも、僕は、最後あべちゃんが、さされたとき、お父さんと、言われたことで、辛かった今までのことを、うらむことなく死んで、告げることができなかった娘のこころのなかで永遠に生きつずけることができる。それが、罪を犯した男が、受け得る最良の贈り物だったと思う。

追伸マザーの感想も見たけど、本当にあなたは天才です。泣き笑い。他の傑作も探すのが楽しみです。

投稿: ドラマ大好きおやじ50才 | 2016年3月17日 (木) 23時29分

ドラマ大好きおやじ50才 様
コメント下さり、ありがとうございます。

そんなに褒めても何も出ませんよ(爆)。 却ってコッパズカシイです。 ありがとうございます。

ゲーこれ、もう7年も前のドラマなのかぁ~(しみじみ)。 ということで、おやじ50才様が申される細かいディティールについては、すでに忘れております(笑)。 ご了承くださいまし。

当ブログのオススメは、おやじ50才様が見ているかどうかは度外視して(笑)、まずはNHK朝ドラ 「カーネーション」 です(「カテゴリー」 欄でこれだけ特別扱いです)。 あの頃は今に比べると執筆に相当気合が入っておりました…(遠い目)。

投稿: リウ | 2016年3月18日 (金) 07時10分

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