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2009年8月10日 (月)

「佐野元春のザ・ソングライターズ」 さだまさし 後編

「さだまさし」 前編は、こちらです↓
http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/07/1-2918.html

 「佐野元春のザ・ソングライターズ」 さだサンの後編は、会場の学生とともに曲作りしたり、ものを書いたりする者にとっては、とても刺激になる話の連続だった。 曲作りは、さだサンも断っていたように、いわゆるひな形、習作程度のものであったが、さだサンが曲を作るとき、どういう態度でいるのか、どういうアンテナを張り巡らせながら言葉を紡いでいくのかが垣間見ることができ、今までの 「ソングライターズ」 のなかでは、もっとも中身が濃かった、と言っていいだろう。 いつも内容濃いけど。

 まず学生たちに、「どういうときに歌を歌いたくなるだろう?」 と尋ね、ある男子学生から、「かなしいとき」 という回答を得る。
 模範的な解答としては、「喜怒哀楽を表現したいとき」 とでもいうのだろうが、まずこの学生の 「かなしいとき」 という答えは、それよりも核心をついている。 人間、うれしいとき、腹が立っているときには、そんなに歌を必要とはしないからだ。 歌が大きな力を生むのは、悲しみを託したいものにすがろうとする瞬間だ。

 「どんなときにかなしい?」 とさだサン。 「おじいちゃんが亡くなったので…」「おじいちゃんと言って、どんな色を思い出す?」「茶色です」「どうして?」「畑仕事をしていたので…」「どんな作物を作っていたの?」「大根です」「大根の花って何色?」「黄色です」「白もあるよなあ」
 …という具合に、さだサンはその学生のおじいちゃんから連想するものを、どんどん答えさせる。

 ここで重要なのは、さだサンが、ただ 「おじいちゃんが死んだ、悲しい」 という方向で、いきなり曲を作ろうとしていないところだ。 いきなり主題から入ろうとする方法もあるが、まず状況を、歌の聴き手に把握させる方向で歌を作ろうとしていることは、実に興味深い。

 そのためにさだサンは、おじいちゃんの生きていたころの空気を、その学生と共有しようとしている。
 さだサンが畑仕事から連想したのは、真夏の入道雲だったようだ。
 そしてここでまた、興味深い言葉を、さだサンから聞ける。
 「青い空だけはやめてくれ」
 さだサンは、真夏、入道雲、青い空、という単純な構図を嫌っているとも受け取れるし、「おじいちゃんが亡くなった」 ということと、青い空は心情的に結びつきにくい、と考えているようにも見える。

 結果学生たちと導き出したのは、「グレープフルーツの色をした雲」。
 このときのさだサンの一連の思考状態は、まさに、さだサンの歌が生まれる瞬間、を切り取った貴重なものだった。
 「グレープフルーツ」 という字余り的なゴロの悪そうな言葉を、何度も何度も繰り返ししゃべる。
 この、しゃべるという作業が、さだサンの曲作りには重要なのだ。

 話はそれるが、私が中学校時代に、教育実習生の女の先生が、音楽を担当した。 美人で、おまけに作曲の課題でほめられたもんだから、私はその先生にすっかり夢中になってしまったのだが、…それはこっちに置いといて、…その先生が、「さだまさしの歌は、しゃべり言葉のイントネーションをそのままメロディにしています」 と話していたのだ。
 私は当時、さだサンにいれあげていた時期だったので、その女の先生もさだサンのファンであったことがうれしくて、ずっとその話を記憶していたのだが、今回さだサンが、何度も何度もその文句をしゃべりながら歌にしていく過程を見て、まさにそのことを思い出していた。
 結果、見事に 「グレープフルーツの色をした雲」 は、ひとつのメロディラインとなった。

 そして、グレープフルーツの空とおじいちゃんの背中、足元には大根の花、ここでおじいちゃんに会えなくなってさびしい、と続ければ、もうキミの気持ちは、全部伝わる、ほかにいろんなことを説明しなくてもいいのだ、とさだサンは語る。
 詩を書く上で大切なのは、言葉の取捨選択である。 なにを言わなければ伝わらないか、なにを伝えなくていいのか、どうすればいちばん効果的な形で相手に気持ちが伝わるのか、詩人たちはいつも、そのことを念頭に置きながら、作品をつくる。

 学生たちとの質疑応答も、興味深い話が聞けた。
 「売れるためにこうすればいいという計算は、一切しない。 それをするとね、時代を追っかけることになるでしょ。 例えば今みんなが興味を持っていることを歌えば売れるわね、だけどそうすると、…ぼくの歌の目的ってね、十年後に照れずに歌えるかなってことが目的だから」
 「味噌汁屋ってないだろ?(笑) 味噌汁ほど豊富な食べ物ないんだよ。 何十通り何百通りあるのに、…味噌汁屋ってないんだよ。 味噌汁に同情しちゃったんだよ、それで俺は味噌汁になりたいと思ったんだよ」
 「オレ面白いんだよ。(笑) だからね、面白いって強みだと思う。 面白い理由は何だっていうとね、散漫なんだよ。 気が散漫だからいろんなことに興味があるから、引き出しがいっぱいある。 作曲でも、理論ってあるけど、理論はなにも生み出してくれないからね。 最後は自分のインスピレーションでしょ? インスピレーションをどうやって磨くかっていうのは、常に気を許さないっていうことだね。 すべての現象に耳を澄ますっていうこと。 そして、ありとあらゆる音楽を聴くっていうこと。 クラシックはお勧めするね」
 「体温。 結局は人が歌を作り、人が歌を聴くんです。 その間にね、いちばん重要なのは体温だと思います。 自分のぬくもり。 あのー、…人の心を壊すのは人でしょ? 人の心を救うのも、人なんだね。 じゃ何が作り何が壊すのかって、言葉が作り言葉が壊すんだね。 言葉ってぼくらにとって重要な武器だってこと」

 最後に元春サンとのやりとり。
 曲を書くということとは何なのか。
 「佐野クンにとってはなんなんだ?」
 「ぼくにとっては…自分を知る作業ですね。 自分が過去にどこに立っていて、今どこに立ち、これからどこへ向かおうか、というのを知る作業ですね。 自分が作った曲を聴いて、あ、自分はこんなことを考えていたのかと、自分の曲から教えてもらう」
 「なるほど。 もうひとつ付け加えるならば、…自分を耕す、っていうのかな…耕しても耕しても同じ曲しかできてこないときってあったんだよぼくは。 自分の心に釣り糸を垂れるような作業です歌づくりというのは。 なにをエサにするのかはその人の人生観によって違うだろうし、かかってくる魚も、引き出しによって全然違う魚が引っかかってくる。 そうすると、発見だよね、まさに、佐野クンの言うように、自分を発見すること」

 ヘタクソな解説など不要だから、後半はほとんど聞き書きしてしまったが、まさに詩を書く者のはしくれとしては、そうそう、そうなんだよなー、という話のつるべ撃ち状態だった。 こういう人たちの話に触れるのは、私にとってもいい刺激になる。 ま、今のところ、誰も真剣に読んではくれませんがね、私の詩なんか。 腐らずに、またたまーに、アップさせますか。

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コメント

動画を探していましたが、見つかりませんでした。
大変ありがとうございます。

投稿: センター柴田 | 2012年11月15日 (木) 19時26分

センター柴田様
どうも、ライト高田です(レフトだったかな?…笑)。 高田の背番号も知らないクセに、と歌っていたさだサンは今はスワローズファンとか。 全容を書いた記事ではありませんが、お役に立ててうれしいです。

投稿: リウ | 2012年11月16日 (金) 07時46分

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