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2009年8月26日 (水)

「LIFE 井上陽水 40年を語る」 の話の前に、クスリの話

 まず、この記事は井上陽水サンを非難するものではまったくないことを、はじめにお断りします。 また麻薬の使用に関して、賛成するものでもありません。

 NHK教育テレビで、井上陽水サンの4夜連続特集をやっているのだが。
 その内容とは別に、まず書きたいことがある。
 陽水サンが大麻をやって逮捕された事実が、すっぽり抜け落ちていることについてである。

 確かにこの特集では、いろんな分野の人々の証言で陽水サンの人となりを理解させ、内容に深みを持たせることに成功している。 だからわざわざ、陽水サンが大麻で逮捕されたことなど触れる必要のないほど、番組として完成されている。
 だが、あえて活動の暗部に光をあてることによって、さらに深い番組には、ならないだろうか。 そのことで、陽水サンが過去の過ちとどう向きあっているのかが、分かる機会を得ることにはならないだろうか。
 いま、麻薬のことを取り扱うのは、デリケートすぎるきらいもあろうが、陽水サンの40年を考えるうえで、麻薬が陽水サンの作品に及ぼした側面や、その逮捕によって活動が委縮してしまった時期を言及する部分も、あっていいのではないかと、思うのだ。
 別に番組に、ケチをつけているわけではないので、誤解のないように願います。

 番組では、「氷の世界」 のあきれるほどのヒットを受けた、陽水サンの戸惑い、苦悩というものに言及して、麻薬に手を染めたことを匂わせてはいる。
 でも、こうして過去の過ちに背を向けた番組作りをするのは、「いまさら過去の傷をほじくり出してどうする」「そんな必要はない」、といった考え方が支配的である、現代日本の風潮を反映しているようにも、私には思えるのだ。

 私はここで、過去に犯した犯罪を糾弾しろ、と言っているのでは、けっしてない。

 私が言いたいのは、「過去に麻薬をやっていた、と明かすことは、はたしてタブーなのだろうか?」、ということだ。

 ここで私が念頭に置いているのは、ビートルズやエリック・クラプトンをはじめとした、外国のミュージシャンたちのことである。
 彼らも一様に、ドラッグをやっていた時期があったりするものだが、そのことについて、いまの日本のようにまるで腫れ物に触るような扱われ方をしているケースを、私は見たことがない。
 ポール・マッカートニーなどは、自分がドラッグをやっていることを公言したり、わざわざ日本に大麻を持ち込んで逮捕されたりしているくらいだ。 だが彼の活動を振り返るのに、けっしてそのことはタブー視されていないし、その事実がネガティブにとらえられることは、まずない。
 また、ビートルズも、LSDのような、チョー危険なドラッグをやっていたというのに、それが彼らの評価を下げる要因にならないし、その影響下に作られた曲の分析は、相変わらず熱心に行なわれている。

 いまの日本には、個人の過去の犯罪を取り上げることをよしとしない傾向と同時に、犯罪を徹底的に憎む傾向がある。
 その常識ある人々から見れば、そんなラリビー(トルズ)の作った曲など、出荷停止にしてしまえ、発禁にしてしまえ、と排斥運動が起こっても不思議ではない。 もし世界中がそんな潔癖な人々だらけであったとすれば、いま現在、ビートルズというのは、ちっとも評価されない、見向きもされない存在になったに違いない。

 ビートルズの犯罪歴を問題視しない人々は、「いまさら過去の傷を持ち出してどうする」「そんな必要などない」 と考える人々との態度と、一見共通しているようにも思える。 だが、過去の犯罪歴を話題にする必要なんかない、という態度は、その犯罪を徹底的に忌み嫌っているのと、結果としては同じ態度なのではないか、そう私には思えるのだ。 …ちょっとややこしいかな。

 今回の陽水サンに関しては、事実は知る由もないが、ご本人が過去の犯罪に触れられたくなかった可能性はあるし、教育テレビという局の性質上から、麻薬に関しての言及は避けたとも考えられる。

 そのことにかんして、あえて私がどうのこうの言う立場にはない。

 だが、このように、天下のNHKで特集を組んでもらうということは、陽水サン自身が、過去の過ちを見事に乗り越えられたことの証左なのでは、ないだろうか。 そしてそのことをいたずらに避けることなく、ふつうに論じられるような世の中のほうが、健全な世の中のように、私には感じられるのだ。

 陽水サンと交友があった阿佐田哲也サンや、忌野清志郎サンの生き方や言動は、現代に生きている人々から見れば、破天荒で過激な部分が、多分にしてある。 陽水サンが麻雀で金を賭けているような部分も、それとなく番組では匂わせてもいる。
 現代の日本人は、そのような非合法的な部分を、いたずらに消し去って、ただ綺麗事みたいなことばかりを、もてはやしすぎてはいないだろうか。

 陽水サンが麻薬で逮捕されたということを避けるのは、いまの日本が、そんな建前上の綺麗事ばかりを尊重する国になってしまったことが原因であるように、私には思える。 そして、法律に違反した者に対して、必要以上に排斥する傾向のなせる業のような気がする。 うがった見方だが、大宅壮一サン風に言えば 「一億総ワイドショーコメンテーター化」(もちろん一億総、などということはない)とでも呼べるのではないだろうか。

 私が危惧するのは、過去の過ちにフタをしてしまわねばおさまりのつかない、現代の 「変に潔癖過ぎる」、その風潮、なのだ。

同番組に関するほかの記事
第1夜http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/08/life-40-beatles.html
第2夜http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/09/life-40-2-14fc.html
以降なし

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BOOKS

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ紹介記事より抜粋)。 本書下巻では、1962年のレコードデビューまでが書かれています。

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 上

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     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ記事より抜粋)。 この上巻ではビートルズの祖先から遡ってリバプールで人気に火が付き始めたところまでが書いてあります。

  • ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白

    ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白
    まず驚かされるのが、表紙のポールの写真です。 よくこんなのが採用されたな、というくらい、刻まれた年輪が顕著に分かる 「年老いたポール」。 飾り気のないその写真に、「素のポール」 をあぶり出そう、という心意気が見える。 そして実際、著者のその目論見は、成功しているように思えます。 何より大きいのは、「NME」「Q」「MOJO」 など音楽メディアで長年記者を務めてきた著者がポールと同じリバプールの出身者である、ということ。 さらにポールと同じファースト・ネームであること。 だからポールはまるで自分の分身に話しかけるかのように、時折同郷人にしか分からない言葉で気さくに著者に話しかける。 この本を読む者は、まずその 「不思議なリラックス感」 に包まれるはずです。  本の構成は大きく二つに分かれます。 前半ではビートルズからウィングス、ソロに至るポールのたどってきた長い長い歴史、後半ではポールの人格に迫る試みがなされていく。 そのインタビューは、一気に行なわれたものではありません。 著者がNMEの記者だった1979年のものから、明示はされていないがおそらく2013年、「NEW」 の発売前後が最新のものではないか、と思われます。 実際読んだ感覚では 「キス・オン・ザ・ボトム」 あたりが最新のような気もする。 その30年以上にわたる膨大なポールへのインタビューを、項目によって構成し直しているようです。 ですから、今年(2016年)亡くなったジョージ・マーティンについてのポールの見解であるとか、最新の情報が提示されているわけではない。 ポールの情報というのはこの歳になってもなお日々更新型ですから、その点については物足りなさが確実にあります。 さらに、30年以上というとポールのものの考え方にも変化変遷があってしかるべきだと思うのですが、30年以上をリミックスにかけているからその変化というものがつかめてこないもどかしさがある。 表紙を飾ったポールの 「老い」 という問題にも、この本はきちんと答えてくれているわけではない。 さらに言えば、ジョン・レノンの死について多くが割かれているのとは対照的に、2001年に亡くなったジョージ・ハリソンの死についての記述はない。 正直なところ、このような本を読み漁ってきた身としては、衝撃に値するような情報が書かれているわけではありません。 しかし前述したような、リラックスしたムードのなかでポールと語らっているような疑似体験を共有できる強みが、この本にはある。 この本全体に貫かれているのが、この心地よさなのだ、と思うのです。 その心地よさが乱れるパートがあります。 自身の失敗作、どうでもいい作品について語るときのポールは多分に感情的になりがちであり、イライラした様子を隠しません。 特に 「シークレット・フレンド」 を語るポールのくだりはポールファンなら一読に値する部分でしょう。 しかしそのイライラも、ポールの人間性が垣間見える瞬間としてこの本にとっては必要なパートなのです。 3000円以上と、この本は決して安くはない部類の本です。 ただその値段に見合うパフォーマンスは兼ね備えています。 この本と付き合った1か月足らずの間、心地よい体験をすることができました(アマゾンの自身のカスタマーレビューより)。

  • : レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]

    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

MUSIC

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(スーパー・デラックス・エディション)(4CD+DVD+BD)
    ロック界、いや、すべてのポップミュージックにおけるアルバムの中で史上最高と称され、すでに世界文化遺産の域にまで達しているこのアルバム。 そのアルバムの発売50周年を記念して、スペシャルエディションがリリースされます。 なかでもブッ飛ぶのがこのスーパースペシャルボックスセット。 CD4枚組であらたなリミックスのステレオ盤1枚、モノ盤1枚、初期テイク集が2枚、さらにブルーレイ1枚とDVD1枚で5.1サラウンド、ハイレゾ音源、ドキュメント映像 「メイキングオブサージェントペパーズ」 のデジタルリマスター等々、卒倒するようなラインナップです。 18、000円プラス税と値は張りますが、史上最高の名盤だからこそこれは買い。 5月26日の発売までに予約をしておけば、アマゾンならば値下がりした時に値段がそのあと高騰しても最安値で購入できます。 ビーファンならずとも、これは注目ですぞ!

  • 山口 百恵 -

    山口 百恵: ゴールデン☆アイドル 山口百恵(完全生産限定盤)
    全シングルA・B面プラスボーナストラック(「あなたへの子守歌」)を、山口百恵名義としては初のブルースペックCDとしてリリース。 音はいわゆるドンシャリ系ではなく、アナログ盤に準拠した原音に忠実な印象です。 パッケージングはアナログシングル盤サイズで中袋、CDを納めるケースが完全にドーナツ盤をイメージしています(よく言えば斬新…笑、悪く言えばチャッチイ…笑)。 しかしその発想は買える(笑)。 ほぼ原寸大のシングルジャケットと裏の歌詞カードの複製ブックレット。 ただスキャニングは欲を言えばもう一歩。 当時シングル盤を中心に聴いていたかたなら、この編集盤はかなりの 「買い」 です。 しかしこのジャケット表紙の写真、スッピン風で個人的にはすごく好き。

  • デイヴ・グルーシン&リー・リトナー -

    デイヴ・グルーシン&リー・リトナー: Two Worlds / Grusin & Ritenour
    NHK朝ドラ 「花子とアン」 で美人のスコット先生が夜な夜な歌い、チビはなチャンがすっかり覚えてしまったイギリス民謡、「ザ・ウォーター・イズ・ワイド(流れは広く)」。 このアルバムでルネ・フレミングが歌っていたのを思い出しました。 ルネのソプラノはけっして大袈裟でなく上品で、私のとてもお気に入りのソプラノ歌手ですね。 このアルバム自体は全体的にクラシックにギターのリー・リトナーが絡むフュージョンぽいものなのですが、故・黒田恭一サン評するところの、「大人が聴く音楽」。 胸を締め付けるような哀しみと、すべてを包み込むようないたわりに満ちていて、私の人生のなかでも最上位に位置する愛聴盤です。

  • 桜田淳子 -

    桜田淳子: ゴールデン☆ベスト 桜田淳子~シングル・コレクション
    彼女の活動期に発売されたシングルをすべて網羅したベスト盤。 確かに後年のものほど馴染みがありませんが、選曲漏れがないので、彼女の存在とは何だったのか自体に思いが至るベスト盤です。 音も楽器の音像がよくてなかなかいいマスタリングをしている気がします。 2600円程度で推移しています。

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: ザ・ビートルズBOX(限定生産品)(USBメモリ)
    パソコンにUSB端子があり(たいていついてると思います)、パソコンで音楽が聴ける環境をお持ちの人ならば、聴くことができます。 現在のテクノロジーで最もいい音質で聴ける、ビートルズの音楽です。 ただし国内版にもかかわらず、訳詞とか一切なし。 ジャケットもブックレットもパソコンデータ。 純粋に音楽だけ楽しみたい人向けです。 また、曲間にコンマ何秒かのブランクが入ります。 「アビイ・ロード」 のメドレーも同様です。 しかし、音はさすがに、すごい。 大きな音量であればある程、目の前にビートルズが迫ってくる勢いです。 ツヤが違います。

  • The Beatles -

    The Beatles: The Beatles [USB]
    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

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