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2009年8月 4日 (火)

「官僚たちの夏」 第5回 このドラマの意図するものは

 「官僚たちの夏」 第5回の主役は、やはり何と言っても堺雅人サンだろう。
 コンピュータの輸入を求めるアメリカIBM(ドラマではIDNと改変されていたか)との交渉で、日本産業界の最後の防波堤として孤軍奮闘するのである。 何かと言うと 「日本の産業を守るため」 という大義名分が飛び交い、官僚主導の姿勢を礼賛するものだ、と後ろ指をさされるこのドラマであるが、堺サンの体を張ったその演技には、そうした下らない憶測など吹っ飛ばす、迫力に満ちていた。

 そう、総選挙を控えたこの時期にこのドラマを作る意味だとか、官僚腐敗が言われているこの時代にあえてアンチテーゼのようなドラマをつくることへの批判が、このドラマの周辺にはいつも流れているが、私はあえて、それを 「下らない」 と断じようと思う。

 このドラマのとっている態度とは、欲得抜きの情熱とは何なのか、それを見ている側に問いかける、というものだ。 このドラマの観客は、自分が命を賭けてでも守らねばならないものとは何なのかを、絶えず作り手から突きつけられる。
 風越だけではない。 このドラマに出てくる登場人物たちは、みな何かを守るために、必死になって生きている。 私たちは、その情熱を学ぶべきなのである。

 今回私などの世代には、実に懐かしい言葉がドラマで使われた。
 所得倍増のために高橋克典サンが打ち出した、「太平洋ベルトライン構想」 である。
 習いましたよ、社会科の時間。
 京浜工業地帯とか、阪神工業地帯とか、北九州工業地帯とか。
 それらを一直線につないで、「太平洋ベルトライン」 と言う、なんて。
 それらの持つ意味が何なのかもわからずに、ただ暗記していただけだったけど。
 そーかー、高橋克典サンが提唱したのかー、って違うけど。

 話は戻るが、IBM社と風越らとの交渉は、先週の局長クラス会議にも負けず劣らずの、緊迫したやりとりだった。
 通訳の麻生祐未サン、英語がうまかったけど、ナマイキな女を演じていて、実ににくったらしかった。 通訳をほっぽり出して持論を展開する麻生サンに風越役の佐藤浩市サンもとうとうブチ切れて、その交渉の場から叩き出されてしまうくだりも、実に面白かった。

 そしてそこにただひとり残された、堺雅人サン。
 しゃべるのは苦手だが書くのはなんとかなる、という日本人の特質を、シナリオ作家は的確にとらえた形で、筆談による交渉、はたまた辞表をちらつかせて、果てはこの会見場のホテルの窓から飛び降りる、という覚悟まで見せる。
 このドラマにおける、堺サン渾身の演技だった。

 次回はその風越たちも、公害問題を棚上げして、大きな過ちを犯してしまいそうな予告編だった。
 こういう、一生懸命生きていても、必ずネガティブな部分も生み出してしまう、というドラマの描き方、私は全面的に賛同する。
 人間、頭のてっぺんからつま先まで、清廉潔白で人生を送ってきました、などという人は、よほどまれだからだ。
 いくら正しいと思うことをやってきても、思わないところで、誰かの不利益になってしまうことだって、絶対あるのだ。

 蛇足になるが、今回から、裏番組を録画する関係上、初めてこの番組、アナログ放送で録画した。
 なんか、ヤケに聴きとりづらくって。
 BGMとやたらかぶったりしてセリフが聴こえないし。
 みんな早口で専門用語ばっかり話すんで、内容の半分くらいしか分からなかった。
 地デジで録画して見ていた時は、こんなことがなかった。
 これじゃ、地上アナログで見ようっていうお年寄りは、いないだろう。
 オッサンの私でさえ、分かりづらいんだから。

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