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2009年8月28日 (金)

「風の絵師」 最終回まで見て

 BS日テレ 「風の絵師」、最終回までをやっと見た。 注意、ネタバレします。

 カットカットでわけが分からなくなっている部分もあったのだが、それにしても最後の、キム・ホンド(パク・シニャン)と、シン・ユンボク(ムン・グニョン)の師弟対決、またはワルモノを追い詰めるくだりは、もうちょっとゆっくりやってもよかったかな、という感じはした。

 これはドラマの、全体的なディティール、という問題なのだが、物語序盤でのユンボクの絵師試験、中盤での御真画師の制作顛末、中盤以降のサドセジャの遺影探し、以上挙げた出来事の描き方が、結構克明だったために、ラスト3回くらいの話の流れの速さに、どうしても違和感を抱いてしまうことになるのだ。 特に中盤の御真画師の話に時間を割きすぎて、肝心の犯人を追い詰める話のほうが、疎かになってしまったような印象すらする。

 しかも、終わり方が結構ハテナ?という感じ。
 これは、見ているこっちが想像を働かせなければならない部分なのかな、とも思う。
 それはそれで、余韻の残る終わりかたとして、評価できるのだが。

 この物語の第1回目は、キム・ホンドがシン・ユンボクを思って涙するシーンから始まっていた。
 そのために、最後の最後まで、ユンボクが死んでしまうのではないか、とドキドキしながら見ていたのだが、そういうことは結局なかった。
 これは、視聴者の声で話が変わる、韓国ドラマによくあるパターンで、実は最初は、ユンボクは死ぬ予定だったのではないか、とも思える。

 個人的な感想で言えば、20回で終わってしまうような、(韓ドラ時代劇にしては)短い話なのであれば、ユンボクをキム・ホンドの腕の中で死なせてしまったほうが、コンパクトなドラマとしてのクライマックスを、より強調できたことだろう、と思う。
 結局ユンボクは、キム・ホンドのもとを去ってしまう、という、しぼんだようなラストだったのだが、このラストで納得してください、というのは、いかにも物語を佳作に終わらせてしまう、惜しまれる所業のような気がする。

 見ている側はここで、ユンボクがキム・ホンドに思いを寄せてしまったがゆえに、キム・ホンドのもとを去らねばならなくなった、と自分を納得させるしかない。 なぜそうせざるを得なかったのか、と言えば、王様から 「お前は一生、女であることを明かしてはならぬ」 と命令されてしまったからであり、王命が絶対であった時代には、それもやむなし、と見ている側は考えるしかない。

 ただドラマの作り手は、このラストで、シン・ユンボクに 「美人図」 を描き残させることで、ドラマに静かな余韻を残すことに成功している。

 この 「美人図」 というのは、実際のシン・ユンボクが遺した絵の代表作、ということらしい。
 その絵に記された言葉。 「秘めた春情を筆先で伝神できようか」。
 ? 一瞬しか映らないので、録画でもしておかないと、これを解読するのはちょっとキツイかも。 つまり、表面的にこの意味を読んでしまえば、ユンボクがキム・ホンドに思いを寄せてしまったことを、ここでは表しているのだろう。

 ちょっとここで深読みしてみる。

 この 「美人図」 を描いているユンボクは、「美人図」 の女性そのままの服装だ。
 ユンボクは、自分が今まで封じ込めてきた、そして王命によって死ぬまで封じ込めなければならなくなった、「女である自分の姿」 を描き残し、思い人(キム・ホンド)に永久に、託したのだ。
 実際のシン・ユンボクは女ではなく、ドラマ上の解釈だったようだが、「秘めた春情を筆先で伝神できようか」 という一文は、そのドラマ上の解釈もある意味では…?、と思わせる効果も、生んでいる。

 これはこれで、素晴らしい終わりかただと、私は思う。 佳作には佳作の、評価すべき部分があるのだ。

 「風の絵師」 で忘れてはならないのが、主演のキム・ホンドを演じた、パク・シニャンサンである。 おちゃらけているところと、まじめなところと、その振幅がメチャメチャ激しい。 特に別堤のところへ絵を盗みに入った時の旅芸人?に変装した時の回は、ムチャクチャ笑った。 だからこそ、まじめな演技がとても生きてくる。 今後も注目したい。

 「風の絵師」 はすぐれたドラマだったが、私にこのドラマを見る気にさせた直接の原因は、「秋の童話」 で強烈な印象を残した、ムン・グニョンチャンへの思いである。
 彼女は 「秋の童話」 で、まるで初恋の女の子のような甘酸っぱい香りを、発散させていた。
 そして、その彼女が女優として立派に成長しているのが分かって、よかったなあ、という安堵感を、いま私は感じている。
 同じ 「秋の童話」 で意地悪な女の子の役をやっていた方のイ・エジョンサンが2007年に亡くなってしまったことを考えると、複雑な思いがあるのだが。 9月6日は、彼女の命日である。 役柄とは別に、クニョンチャンとエジョンサンは、親友同士だったそうである。

 ムン・グニョンチャンには、今後もがんばってもらいたいものだ。

当ブログ 「風の絵師」 に関するほかの記事
第1回 久々に期待できそうな韓国ドラマhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/07/post-0a76.html
第2回 絵を描くこととはhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/07/2-253f.html
第3回 自分に掌破刑!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/07/post-e51d.html
第4回 ドリフの大爆笑みたいだった?http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/07/post-0635.html
第5-7回 なぜ女が女に惹かれるのかhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/08/--573e.html
第8回-13回 御真画師の顛末http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/08/8-13-e110.html
最終回まで見てhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/08/post-a6bc.html

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BOOKS

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ紹介記事より抜粋)。 本書下巻では、1962年のレコードデビューまでが書かれています。

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     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ記事より抜粋)。 この上巻ではビートルズの祖先から遡ってリバプールで人気に火が付き始めたところまでが書いてあります。

  • ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白

    ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白
    まず驚かされるのが、表紙のポールの写真です。 よくこんなのが採用されたな、というくらい、刻まれた年輪が顕著に分かる 「年老いたポール」。 飾り気のないその写真に、「素のポール」 をあぶり出そう、という心意気が見える。 そして実際、著者のその目論見は、成功しているように思えます。 何より大きいのは、「NME」「Q」「MOJO」 など音楽メディアで長年記者を務めてきた著者がポールと同じリバプールの出身者である、ということ。 さらにポールと同じファースト・ネームであること。 だからポールはまるで自分の分身に話しかけるかのように、時折同郷人にしか分からない言葉で気さくに著者に話しかける。 この本を読む者は、まずその 「不思議なリラックス感」 に包まれるはずです。  本の構成は大きく二つに分かれます。 前半ではビートルズからウィングス、ソロに至るポールのたどってきた長い長い歴史、後半ではポールの人格に迫る試みがなされていく。 そのインタビューは、一気に行なわれたものではありません。 著者がNMEの記者だった1979年のものから、明示はされていないがおそらく2013年、「NEW」 の発売前後が最新のものではないか、と思われます。 実際読んだ感覚では 「キス・オン・ザ・ボトム」 あたりが最新のような気もする。 その30年以上にわたる膨大なポールへのインタビューを、項目によって構成し直しているようです。 ですから、今年(2016年)亡くなったジョージ・マーティンについてのポールの見解であるとか、最新の情報が提示されているわけではない。 ポールの情報というのはこの歳になってもなお日々更新型ですから、その点については物足りなさが確実にあります。 さらに、30年以上というとポールのものの考え方にも変化変遷があってしかるべきだと思うのですが、30年以上をリミックスにかけているからその変化というものがつかめてこないもどかしさがある。 表紙を飾ったポールの 「老い」 という問題にも、この本はきちんと答えてくれているわけではない。 さらに言えば、ジョン・レノンの死について多くが割かれているのとは対照的に、2001年に亡くなったジョージ・ハリソンの死についての記述はない。 正直なところ、このような本を読み漁ってきた身としては、衝撃に値するような情報が書かれているわけではありません。 しかし前述したような、リラックスしたムードのなかでポールと語らっているような疑似体験を共有できる強みが、この本にはある。 この本全体に貫かれているのが、この心地よさなのだ、と思うのです。 その心地よさが乱れるパートがあります。 自身の失敗作、どうでもいい作品について語るときのポールは多分に感情的になりがちであり、イライラした様子を隠しません。 特に 「シークレット・フレンド」 を語るポールのくだりはポールファンなら一読に値する部分でしょう。 しかしそのイライラも、ポールの人間性が垣間見える瞬間としてこの本にとっては必要なパートなのです。 3000円以上と、この本は決して安くはない部類の本です。 ただその値段に見合うパフォーマンスは兼ね備えています。 この本と付き合った1か月足らずの間、心地よい体験をすることができました(アマゾンの自身のカスタマーレビューより)。

  • : レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]

    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

MUSIC

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(スーパー・デラックス・エディション)(4CD+DVD+BD)
    ロック界、いや、すべてのポップミュージックにおけるアルバムの中で史上最高と称され、すでに世界文化遺産の域にまで達しているこのアルバム。 そのアルバムの発売50周年を記念して、スペシャルエディションがリリースされます。 なかでもブッ飛ぶのがこのスーパースペシャルボックスセット。 CD4枚組であらたなリミックスのステレオ盤1枚、モノ盤1枚、初期テイク集が2枚、さらにブルーレイ1枚とDVD1枚で5.1サラウンド、ハイレゾ音源、ドキュメント映像 「メイキングオブサージェントペパーズ」 のデジタルリマスター等々、卒倒するようなラインナップです。 18、000円プラス税と値は張りますが、史上最高の名盤だからこそこれは買い。 5月26日の発売までに予約をしておけば、アマゾンならば値下がりした時に値段がそのあと高騰しても最安値で購入できます。 ビーファンならずとも、これは注目ですぞ!

  • 山口 百恵 -

    山口 百恵: ゴールデン☆アイドル 山口百恵(完全生産限定盤)
    全シングルA・B面プラスボーナストラック(「あなたへの子守歌」)を、山口百恵名義としては初のブルースペックCDとしてリリース。 音はいわゆるドンシャリ系ではなく、アナログ盤に準拠した原音に忠実な印象です。 パッケージングはアナログシングル盤サイズで中袋、CDを納めるケースが完全にドーナツ盤をイメージしています(よく言えば斬新…笑、悪く言えばチャッチイ…笑)。 しかしその発想は買える(笑)。 ほぼ原寸大のシングルジャケットと裏の歌詞カードの複製ブックレット。 ただスキャニングは欲を言えばもう一歩。 当時シングル盤を中心に聴いていたかたなら、この編集盤はかなりの 「買い」 です。 しかしこのジャケット表紙の写真、スッピン風で個人的にはすごく好き。

  • デイヴ・グルーシン&リー・リトナー -

    デイヴ・グルーシン&リー・リトナー: Two Worlds / Grusin & Ritenour
    NHK朝ドラ 「花子とアン」 で美人のスコット先生が夜な夜な歌い、チビはなチャンがすっかり覚えてしまったイギリス民謡、「ザ・ウォーター・イズ・ワイド(流れは広く)」。 このアルバムでルネ・フレミングが歌っていたのを思い出しました。 ルネのソプラノはけっして大袈裟でなく上品で、私のとてもお気に入りのソプラノ歌手ですね。 このアルバム自体は全体的にクラシックにギターのリー・リトナーが絡むフュージョンぽいものなのですが、故・黒田恭一サン評するところの、「大人が聴く音楽」。 胸を締め付けるような哀しみと、すべてを包み込むようないたわりに満ちていて、私の人生のなかでも最上位に位置する愛聴盤です。

  • 桜田淳子 -

    桜田淳子: ゴールデン☆ベスト 桜田淳子~シングル・コレクション
    彼女の活動期に発売されたシングルをすべて網羅したベスト盤。 確かに後年のものほど馴染みがありませんが、選曲漏れがないので、彼女の存在とは何だったのか自体に思いが至るベスト盤です。 音も楽器の音像がよくてなかなかいいマスタリングをしている気がします。 2600円程度で推移しています。

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: ザ・ビートルズBOX(限定生産品)(USBメモリ)
    パソコンにUSB端子があり(たいていついてると思います)、パソコンで音楽が聴ける環境をお持ちの人ならば、聴くことができます。 現在のテクノロジーで最もいい音質で聴ける、ビートルズの音楽です。 ただし国内版にもかかわらず、訳詞とか一切なし。 ジャケットもブックレットもパソコンデータ。 純粋に音楽だけ楽しみたい人向けです。 また、曲間にコンマ何秒かのブランクが入ります。 「アビイ・ロード」 のメドレーも同様です。 しかし、音はさすがに、すごい。 大きな音量であればある程、目の前にビートルズが迫ってくる勢いです。 ツヤが違います。

  • The Beatles -

    The Beatles: The Beatles [USB]
    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

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