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2009年9月11日 (金)

「任侠ヘルパー」 第10回 暗い話のまま盛り上がる

 「任侠ヘルパー」、最終回を来週に控えて、話は暗ーいまんま、暗ーく暗ーく、盛り上がっていく。
 だがこのドラマ、最近のドラマによく見られるように、ドラマの作り手が、心温まる話、泣ける話で物語を盛り上げていこうとしていないのが、とても新鮮に見えるのだ。

 この暗ーい物語を見る側に引き込ませるものは、「モヤモヤしているものに対する、怒り」 のパワー、なのだと思う。

 私などはついドラマに対して、見終わったあとの爽快感とか、現実のつらいことをいっとき忘れさせてくれるようなことを期待してしまうものだ。
 だがこの 「任侠ヘルパー」 は、思い通りにならない現実の世界と同じような、つらい話の連続だ。 しかもそれがドラマだから、余計に話が大げさででかい。
 そのうえこのドラマの題材が、理想とは程遠い現実を象徴するかのような、「介護現場」 がテーマの半分なのだから、なおさらである。

 実際の介護の現実というのはここまで悲惨なのか、私はよく知らないけれども、悲惨であろうとなかろうと、これから私たち全員が向き合わなければならない問題であることは確かだ。
 夏川結衣サンの若年性認知症にしても、これは病気ではあるけれども、我々にも遅かれ早かれ訪れる問題なのだ、という切迫感を、見る側に提供してくれる事例だと思える。 老いというのは、必ず通らなければならない問題なのだ、と。 今回の夏川サンは、だんだんと真綿で首を絞められるように記憶をなくしていく女性の苛立ちを、実にうまく演じていた。

 そういう、自分の将来に対して誰もが漠然と感じているモヤモヤを、草彅クンをはじめとする極道たちは、自分たちが極道であるがゆえに、我々みたいに先送りしたりごまかしたりなど出来ないのではないか。
 極道であるがゆえに、我々などよりもこのモヤモヤにガチで向き合わざるを得ないのて゜はないか。

 どうして極道が介護ヘルパーなんだ?松平健サンの思惑とは?という疑問を持ちながらこのドラマを見てきたが、今回の物語を見ていて、松平健サンの思惑が、いま挙げた 「モヤモヤとのガチ勝負」 にあるような気がしてきた。 極道の親分が、そんな深い思慮をしているとは考えにくいところもあるけれど。
 ただ、山本裕典クンがヘルパーの仕事を今回の件があるまでやめられなかった、というのも、自分が感じていた 「モヤモヤしているもの」 に対して、自分なりの決着をつけたかった…、という側面があったように思えるのだ。

 草彅クンたちが極道であることがバレて、ヘルパーは大量に辞めていくし、老人たちはビビりまくるし、仲里依紗チャンはテンパって来るし、マスコミはうるさいし周辺住民は騒ぎだすし。
 そんな中で、黒木メイサチャンは、里依紗チャンから 「やっぱりヤクザなんか、怖いですよ」 という現実を思い知らされ、ウルトラマンメビウス、じゃなかった、五十嵐準士クンは 「やっとマトモな人間になれたと思っていたのに」 とうなだれる。
 草彅クンも、こども店長クンに 「どうしてみんな、ヤクザが嫌いなの?」 と訊かれ、「悪いこといっぱいしてっからだろう」 と答えるしかない。 「兄貴も?」 という問いに、「ああ…」 と答えながら、草彅クンは自分がヤクザであることの、なんともやりきれない悲哀を感じたに違いない。

 ガチで介護問題のモヤモヤに向き合っていなければ、問題が起きた時点で、草彅クンたちはさっさとヘルパーを辞めてしまっただろう。 だが彼らは、誰ひとりとしてリタイアしない。 離脱した六車クンにしても、松平サンのところにいきなり押し掛けて、組長の思惑の事務的な部分を質すあたり、リタイアしたとは言い切れないところがあるし。

 今回のラスト、ボヤ騒ぎが起きた 「タイヨウ」 ホームから老人たちを必死に救い出した極道ヘルパーたちに、心ない罵声を浴びせかける周辺住民たち。
 里依紗チャンはたまらず、 「この人たちはこの施設の利用者サンたちを支える、ヘルパーなんです!」 と叫び訴える。
 それでもなお罵声を浴びせかける住民たちに、草彅クンが、ついに怒りを爆発させる。

 「テメエラうるせえぞコラァ!極道をなめんじゃねえぞ!オレァこっから出てっくからよ!もう迷惑かけはしねえからよ!ガタガタぬかすんじゃねえや!」

 今まで鬱積していたいろんなモヤモヤを、一気に吐き出すかのような、火のついたような演技である。
 ひょっとすると、草彅クン自身の胸の奥底にあった鬱積も、それに含まれていたかもしれないが、画面の草彅クンは、もうその過去の事件を完全に乗り越えた、ひとりの役者だった気がした。

 このドラマを見ていて感じるカタルシスは、実はここにあるのではないかと、私が思ってしまったシーン、である。 モヤモヤに対する草彅クンの怒りが爆発するのは、見ている側にとっては大きな快感なのだ。

 視聴率のご褒美か、来週の最終回は15分拡大らしいデス。

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