« 「ザ・ノンフィクション」 ショーケンという 「孤独」 | トップページ | 「天地人」 第37回 直江状、難しいですけどね »

2009年9月14日 (月)

「官僚たちの夏」 第9回 日本人が犠牲にしたもの

 燃料の主力が石炭から石油に代わる転換期で、ますます斜陽化していく石炭産業の衰退を決定化させる出来事が、今回の 「官僚たちの夏」 のひとつの大きな柱だった。
 松池炭鉱(たぶん、三井三池炭鉱…でも昭和40年かどうかは不明)事故である。

 今回の主役は、高橋克実サン演じる鮎川だっただろう。
 体調不良を押して、病院から抜け出し、台風で道がふさがれている中、山道を通って爆発事故の現場に向かう。
 これが現在だったら、ケータイ大活躍、というところなのだが。

 そして鮎川がやっとの思いで到着した炭鉱の現場は、大混乱。
 しかも、二次災害を防ぐために、坑内に水を流し込まなければならない、という決断を迫られる。
 次々運ばれてくる遺体、泣き崩れるヤマの人々。
 そして、ついに注水を断行しなければならなくなり、ヤマの人々の前に土下座する、鮎川。
 これって社長がするべきことでしょうとツッコミを入れながら、私も涙が止まらなかった。
 謝るほうも、謝られるほうも、泣き叫びながらの、見ていてホントにつらい場面だった。

 そして台風一過と思われる青天のなかで、坑道入口に献花台を設け、泣きの涙で注水を開始する。
 こんなに悲惨な場面は、ここ数年、ついぞドラマで見なかったと言っていい(まるきりなかったというわけではありません)。

 この犠牲者は、なんの犠牲になったのだろう、ということを、涙を流しながら考えた。

 要するに、日本の繁栄の陰で需要が増大した燃料供給の犠牲になったのではないか、と。

 昭和40年当時のこうした作業現場の安全衛生管理は、炭鉱に限らず、工事現場、工場作業においても、今とは比べ物にならないくらい、稚拙なものだったと言っていい。
 工事現場では、ひとつの現場で人間5人死ぬのは当たり前、と言われていた時代なのだ。
 それが、人員削減のあおりを受けていた炭鉱業界では、さらに事態は深刻だっただろうと察せられて余るものがある。

 これらのお粗末な安全管理の上に成り立っていた時代に、事故で死んでいった人々、というのは、実は戦争と同じように、「お国のために死んでいった」 人々ではなかったろうか。

 そのことを考えると、余計に涙が止まらなかった。

 ヤマの人々との折衝の矢面に立った鮎川は、ついに不治の病に倒れてしまう。
 この事故の通産省の監督責任を問う国会で、国会議員からの厳しい追及を受けた風越(佐藤浩市サン)。 (なんだ現場にいもしないくせにのうのうといいメシ食らって勝手なこと言ってんじゃねー)と、内心ムカムカしながらこの追及を見ていたのだが、風越の怒りの反論には、ちょっと胸のすく思いがした。

 「じゃあ貴様ら何をしたって言うんだ! 形式だけの聴聞(弔問?)をし、野党は労働者の味方だと声を張り上げるが、鮎川は事故以前から、石炭救済に奔走し、それができなかった責任を一身に背負って、みずから一番きびしい役割を引き受けたんだ! この中に鮎川を責められる人間はひとりもいない!」
 さらにひどくなる怒号。
 くそおおーっ、政治家は現場に出て血の汗流せ!と言いたくなるのは、…今も昔も変わらない、というか。

 物語はベトナム戦争と沖縄返還問題も絡んで、ますます複雑多様化する情勢に飲み込まれてゆく。
 来週が最終回になるが、何度も書いているように、10回では足りなすぎる。

« 「ザ・ノンフィクション」 ショーケンという 「孤独」 | トップページ | 「天地人」 第37回 直江状、難しいですけどね »

テレビ」カテゴリの記事

コメント

官僚たちの夏、毎回すごく楽しみです。政治・経済は本当に疎く勉強のつもりで見ます。出演者も本当に豪華だし、各々が単発ドラマで主役張れる人ばかりで見応えありますね。限りなくノンフィクションに近いフィクションみたいで、出演者の力演にまるで現場を見てる様な切迫感を覚えます。視聴率が取れてないみたいですが人の物差しは各々ですので、楽しめる人はそれで良いですよね(笑)ざこばさんと高橋克実さんに話の焦点が当たった回は本当に泣けます。(オカヤ繊維&炭坑事故)懸命に働く現場の人間と高橋克実さんとの絡みは到底フィクションには感じられません。初回あけぼの自動車の話が深かったので、全編通してこの話題で行くのかな?と思ってました。毎回戦後昭和の色々な話題が出るので、浅くなぞらず深く掘り下げて欲しいけど、企画がそうも行かなかったのでしょうね。せめて半年クールでやって欲しい位でした。しかしこの時代の話題を取り上げて貰っただけでも良し!ですね。出演者の名前と役柄を覚え、官僚や政治の仕事内容が少し理解でき区別がつき始めた頃に最終回なのが個人的にはとても残念です!玉木・片山組が最初は凄く嫌だったのに、今は牧が一番腹黒い様に思います(汗)とにもかくに

本当に記事に書いてある通り、もっと深く深く詳しく色々な内容を掘り下げて欲しかったですね。官僚や政治家の話も、日本経済の復興についても、
【個人的にはNHK大河でこのメンバーのままで一年間深くやって欲しい位】に切望しています(笑)
しかしながら、いくら不満を垂れようと来週でいよいよ最終回なんですね。秋の気配も近付いて参り「夏」と言う文字にもちょっと季節の変わり目を感じますが(笑)お互いに今年の熱い官僚たちを最後まで一緒に熱く応援して行きましょうね!では長文コメント失礼致しました!

追伸
他のブログではあらすじ&視聴率のみの所が多くてうんざりしてました。ここは、政治等無知な私でも分かりやすく理解しやすい文章ですし、内容も大変個性的で私はとても気に入りました。

先程、天地人の項目が見えたので、良かったら読まさせて頂きたいなぁと思いました♪

葵 様
大変な読みごたえのコメント、どうもありがとうございます! 感激です!
私はこのドラマ、官僚主義のもたらした弊害をどこまで掘り下げてくれるのかな、という関心でも見ています。 この記事ではテーマからはずれる気がしたので書きませんでしたが、たしか風越が須藤首相に、「我々は、日本人の精神をゆがめさせてしまったのでは」 と心情を吐露する場面がありました。 そのゆがみが最終回、どのような形で風越たちを襲うのか。 楽しみです。
視聴率が取れてないのは、話が難しすぎるからかなーと、勝手に分析しております。 それと、自民党礼賛、官僚礼賛みたいな安易な決め付けで、見る前から勝手に毛嫌いをしている人が多いようにも、感じます。 私に言わせれば、モッタイナイ!

「天地人」 に関しては、ちょっと葵サンのご期待に添えるものではないかなーと思うんですけど(汗)。 なにしろちょっと、まあ、いろいろと、ゴニョゴニョ…。 いいとこ見つけて、書いているつもりでは、いるんですが…。

ともかく本当に、力のこもったコメント、ありがとうございました!

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/521783/46212253

この記事へのトラックバック一覧です: 「官僚たちの夏」 第9回 日本人が犠牲にしたもの:

« 「ザ・ノンフィクション」 ショーケンという 「孤独」 | トップページ | 「天地人」 第37回 直江状、難しいですけどね »

2018年11月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  

BOOKS

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ紹介記事より抜粋)。 本書下巻では、1962年のレコードデビューまでが書かれています。

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 上

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 上
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ記事より抜粋)。 この上巻ではビートルズの祖先から遡ってリバプールで人気に火が付き始めたところまでが書いてあります。

  • ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白

    ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白
    まず驚かされるのが、表紙のポールの写真です。 よくこんなのが採用されたな、というくらい、刻まれた年輪が顕著に分かる 「年老いたポール」。 飾り気のないその写真に、「素のポール」 をあぶり出そう、という心意気が見える。 そして実際、著者のその目論見は、成功しているように思えます。 何より大きいのは、「NME」「Q」「MOJO」 など音楽メディアで長年記者を務めてきた著者がポールと同じリバプールの出身者である、ということ。 さらにポールと同じファースト・ネームであること。 だからポールはまるで自分の分身に話しかけるかのように、時折同郷人にしか分からない言葉で気さくに著者に話しかける。 この本を読む者は、まずその 「不思議なリラックス感」 に包まれるはずです。  本の構成は大きく二つに分かれます。 前半ではビートルズからウィングス、ソロに至るポールのたどってきた長い長い歴史、後半ではポールの人格に迫る試みがなされていく。 そのインタビューは、一気に行なわれたものではありません。 著者がNMEの記者だった1979年のものから、明示はされていないがおそらく2013年、「NEW」 の発売前後が最新のものではないか、と思われます。 実際読んだ感覚では 「キス・オン・ザ・ボトム」 あたりが最新のような気もする。 その30年以上にわたる膨大なポールへのインタビューを、項目によって構成し直しているようです。 ですから、今年(2016年)亡くなったジョージ・マーティンについてのポールの見解であるとか、最新の情報が提示されているわけではない。 ポールの情報というのはこの歳になってもなお日々更新型ですから、その点については物足りなさが確実にあります。 さらに、30年以上というとポールのものの考え方にも変化変遷があってしかるべきだと思うのですが、30年以上をリミックスにかけているからその変化というものがつかめてこないもどかしさがある。 表紙を飾ったポールの 「老い」 という問題にも、この本はきちんと答えてくれているわけではない。 さらに言えば、ジョン・レノンの死について多くが割かれているのとは対照的に、2001年に亡くなったジョージ・ハリソンの死についての記述はない。 正直なところ、このような本を読み漁ってきた身としては、衝撃に値するような情報が書かれているわけではありません。 しかし前述したような、リラックスしたムードのなかでポールと語らっているような疑似体験を共有できる強みが、この本にはある。 この本全体に貫かれているのが、この心地よさなのだ、と思うのです。 その心地よさが乱れるパートがあります。 自身の失敗作、どうでもいい作品について語るときのポールは多分に感情的になりがちであり、イライラした様子を隠しません。 特に 「シークレット・フレンド」 を語るポールのくだりはポールファンなら一読に値する部分でしょう。 しかしそのイライラも、ポールの人間性が垣間見える瞬間としてこの本にとっては必要なパートなのです。 3000円以上と、この本は決して安くはない部類の本です。 ただその値段に見合うパフォーマンスは兼ね備えています。 この本と付き合った1か月足らずの間、心地よい体験をすることができました(アマゾンの自身のカスタマーレビューより)。

  • : レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]

    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

MUSIC

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(スーパー・デラックス・エディション)(4CD+DVD+BD)
    ロック界、いや、すべてのポップミュージックにおけるアルバムの中で史上最高と称され、すでに世界文化遺産の域にまで達しているこのアルバム。 そのアルバムの発売50周年を記念して、スペシャルエディションがリリースされます。 なかでもブッ飛ぶのがこのスーパースペシャルボックスセット。 CD4枚組であらたなリミックスのステレオ盤1枚、モノ盤1枚、初期テイク集が2枚、さらにブルーレイ1枚とDVD1枚で5.1サラウンド、ハイレゾ音源、ドキュメント映像 「メイキングオブサージェントペパーズ」 のデジタルリマスター等々、卒倒するようなラインナップです。 18、000円プラス税と値は張りますが、史上最高の名盤だからこそこれは買い。 5月26日の発売までに予約をしておけば、アマゾンならば値下がりした時に値段がそのあと高騰しても最安値で購入できます。 ビーファンならずとも、これは注目ですぞ!

  • 山口 百恵 -

    山口 百恵: ゴールデン☆アイドル 山口百恵(完全生産限定盤)
    全シングルA・B面プラスボーナストラック(「あなたへの子守歌」)を、山口百恵名義としては初のブルースペックCDとしてリリース。 音はいわゆるドンシャリ系ではなく、アナログ盤に準拠した原音に忠実な印象です。 パッケージングはアナログシングル盤サイズで中袋、CDを納めるケースが完全にドーナツ盤をイメージしています(よく言えば斬新…笑、悪く言えばチャッチイ…笑)。 しかしその発想は買える(笑)。 ほぼ原寸大のシングルジャケットと裏の歌詞カードの複製ブックレット。 ただスキャニングは欲を言えばもう一歩。 当時シングル盤を中心に聴いていたかたなら、この編集盤はかなりの 「買い」 です。 しかしこのジャケット表紙の写真、スッピン風で個人的にはすごく好き。

  • デイヴ・グルーシン&リー・リトナー -

    デイヴ・グルーシン&リー・リトナー: Two Worlds / Grusin & Ritenour
    NHK朝ドラ 「花子とアン」 で美人のスコット先生が夜な夜な歌い、チビはなチャンがすっかり覚えてしまったイギリス民謡、「ザ・ウォーター・イズ・ワイド(流れは広く)」。 このアルバムでルネ・フレミングが歌っていたのを思い出しました。 ルネのソプラノはけっして大袈裟でなく上品で、私のとてもお気に入りのソプラノ歌手ですね。 このアルバム自体は全体的にクラシックにギターのリー・リトナーが絡むフュージョンぽいものなのですが、故・黒田恭一サン評するところの、「大人が聴く音楽」。 胸を締め付けるような哀しみと、すべてを包み込むようないたわりに満ちていて、私の人生のなかでも最上位に位置する愛聴盤です。

  • 桜田淳子 -

    桜田淳子: ゴールデン☆ベスト 桜田淳子~シングル・コレクション
    彼女の活動期に発売されたシングルをすべて網羅したベスト盤。 確かに後年のものほど馴染みがありませんが、選曲漏れがないので、彼女の存在とは何だったのか自体に思いが至るベスト盤です。 音も楽器の音像がよくてなかなかいいマスタリングをしている気がします。 2600円程度で推移しています。

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: ザ・ビートルズBOX(限定生産品)(USBメモリ)
    パソコンにUSB端子があり(たいていついてると思います)、パソコンで音楽が聴ける環境をお持ちの人ならば、聴くことができます。 現在のテクノロジーで最もいい音質で聴ける、ビートルズの音楽です。 ただし国内版にもかかわらず、訳詞とか一切なし。 ジャケットもブックレットもパソコンデータ。 純粋に音楽だけ楽しみたい人向けです。 また、曲間にコンマ何秒かのブランクが入ります。 「アビイ・ロード」 のメドレーも同様です。 しかし、音はさすがに、すごい。 大きな音量であればある程、目の前にビートルズが迫ってくる勢いです。 ツヤが違います。

  • The Beatles -

    The Beatles: The Beatles [USB]
    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

無料ブログはココログ