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2009年9月21日 (月)

「官僚たちの夏」 最終回 アメリカに負け続ける日本

 高橋克実サン演じる鮎川の死で、一字違いの高橋克典サン演じる片山が、それまでの悪役ぶりから一転、まるでその志をバトンタッチしたかのように見えた、「官僚たちの夏」 最終回。

 高橋克実サンの、死の間際にもかかわらず、繊維業界の行く末を案じるその執念、そして 「同志」 を失ったことで男泣きに泣く佐藤浩市サン(風越)、堺雅人サン(庭野)の姿には、冒頭から涙腺が緩んだ。
 鮎川の葬儀の席での庭野と片山のいさかいは、どちらの言い分にも一理あって、それはけっして、死者を冒涜する喧嘩ではなかった、と思う。

 繊維業界が片山や庭野の働きによって持ち直したと思ったら、物語はいきなり風越の退官、という展開を見せる。

 風越の活躍がまだ見られると思った側としては、ちょっと肩透かしを食ったような格好だ。

 風越は退官あいさつのあと、「自分は天下りはしない」 という決意を表明し、自宅で執筆活動とか講演依頼があるとか、「毎日が日曜日」 状態になる。 娘サンの結婚話にも、なんとも間の抜けた反応(笑)をするばかり。

 テレビ欄のサブタイトルを 「天下りせず」 とまでして、TBSは大仰に見どころのひとつとしてそれを最終回の客寄せ文句にしたようだが、現代に至るまで連綿と続く 「天下り」 へのアンチテーゼとするには、本編でのその描き方は淡泊すぎた。
 もっと船越英一郎サンとか、西村雅彦サンとか、ほかの天下りをした連中に、風越が 「天下りをしない」 ことへの評価を語らせるとか、いろんな角度から 「天下り」 そのものの問題点を浮き彫りにしてくれたらよかったのに、と思う。

 だが、このドラマの最終回の主眼は、そこにはなかったのだ。

 小笠原や沖縄返還の見返りとして、アメリカの要求を次々のまざるを得なくなってくる、長塚京三サン演じる須藤恵作首相(佐藤栄作氏)と、それに追随してしまう、風越の後任事務次官、杉本哲太サン演じる牧。
 最終回の主眼は、まさにここだ。
 北大路欣也サン演じた池内首相もいい加減アメリカに屈服し続けていたが、何かと言うと相手に主導権を握られる日本の外交姿勢の 「ひ弱さ」 というものは、実は日本の国益に大きな影を落としているのではないか、という、作り手の主張だ。
 外交は常に、強気で進めなければならないのではないか、という、作り手の声がそこから聞こえる気がする。
 どこかの国を見てみなさいな(笑)。
 沖縄だけでなく、北方領土も同じではないでしょうか。

 そして結局、アメリカへのお追従がアダとなって、繊維業界は大打撃、ざこば師匠も 「タイに行ってやりなおしますわ」 という始末。
 ここでざこば社長のセリフは、官僚たちに対する痛烈な皮肉となって、庭野たちを貫く。

 「行政を頼っていた、自分がアホやった。 やっぱり自分の道は自分で開かなね。 結局、おんなしことの繰り返しや。 通産省は何にも出来なんだ。 …通産省なんか、要らんわい!」

 そして繊維業者たちのデモの波にのまれて、ボコボコにされる、風越と庭野。 2分くらい、スローモーションで、ボコられてました。
 よく考えてみれば、ボコボコにされるべきなのは、アメリカに屈した須藤首相であり、それに追随した牧であるべきなのだが。
 とんだとばっちり、というやつである。 特に風越は、繊維業界を守ろうとした側であるうえに、退職した身なのに。 ここでボコられる、という展開になるとは、思わなかった。

 顔中血だらけ(ちょっと大げさですが)になりながら、つぶやく庭野。
 「少し、休んでもいいですかね…ちょっと…疲れました…」
 それを聞いて、とても情けないように顔をゆがめながら、空を見上げる風越。
 「庭野…日本は…どこに行くんだろうなぁ…」

 これは、「敗北」、という終わりかたである。 決してハッピーエンドではない。 エンドロールのあいだじゅう、その後の日本がたどってきた道を振り返る作りになっていたが、苦いドラマの結末を、まるでタイムマシンから俯瞰するような余韻であった。

 「日本のため」 という大義名分のために奮闘してきた官僚が、民衆に叩きのめされて終わる、というこのドラマのありようは、一方的な官僚礼賛という結論を導き出さなかった点において、大いに評価できる。
 ただそれが、政治の犠牲となったという描かれ方でしか表現できなかったのは、少し残念だ。
 何度も指摘していることだが、もう少し回数に余裕があったなら、こんな駆け足でやらなくても済んだのに、と思われてならない。

 いずれにせよ、このドラマは難しい題材を実に見ごたえのある物語として、エンターテイメントとして成立させていた。

 その特徴のひとつが、「利害関係の単純化」 である。

 このドラマは、物語を分かりやすくするために、自動車業界ならこの人、電機業界ならこの人、繊維業界ならこの人、というように、各業界の代表をまず1、2名に定めた。
 通産省内の対立構図も、国内産業保護サイドと国際自由競争重視サイドの二極に単純化した。 同様に政治家のタイプも、単純化したと言っていい。
 これは専門的知識をもつ人から見れば、とんだ茶番に見えるだろう。
 だが、このドラマで取り扱う話の核である、保護貿易と自由貿易という対立構造自体が、一般人にはなじみの薄いものであり、そもそもこの振り分け方自体が、古い経済学の概念であるような側面がある。
 それをいかにして、我々の生活に密着していた 「自家用車」「テレビ」「オリンピック」「公害」「万博」…という話題と結びつけるか。
 それをコンパクトに説明する試みは、ある程度成功しているように見える。

 「官僚たちの夏」 のような、骨太のドラマは、たとえ視聴率が悪くても、テレビ局の良心を視聴者に伝えるうえで、とても貴重なもののような気がする。
 この10月からのドラマ 「不毛地帯」 で主演をする唐沢寿明サンは、「いくらいいドラマだったと言っても、視聴率が悪ければそれはただの言い訳」 と、確か数日前の毎日新聞夕刊で述べていた。 その意気やよし、であるが、TBSには、どうしたらもっとこういう良心的なドラマを多くの人に見てもらうようにできるのか、けっして大衆に媚を売らない方向で、考えてもらいたいものだ。

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