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2009年10月17日 (土)

「不毛地帯」 第1回 日本人ならば忘れてはならないもの

 ちょっとドラマの内容とは、別の方向に行ってしまうことを、ここでお断りします。 ドラマの内容についての感想は、記事の後半に、いたします。

 フジテレビ 「不毛地帯」 の第1回。
 なんと言っても圧巻だったのは、主人公である唐沢寿明サン演じる壹岐正の、シベリア抑留の描写だった。
 本音を言えば、この一連の描写には、フジサンケイグループという、右傾的な思想をもつ組織の、恣意的部分も感じたのであるが、この描写力の凄さは、そんなつまらない憶測も吹っ飛ばすくらいの力があった。

 極度にモノクロに近い極寒の地で、いつ果てるともしれない強制労働に駆り出されている日本人たちの姿は、大東亜戦争が産み落とした悲劇のひとつである。
 だのに、私たちは南方の戦線や本土の様子に関しては映画やドラマなどで結構触れる機会があるものの、シベリア抑留の悲惨さを追体験することは、これまであまりなかったと言っていいだろう。
 その凄惨さを、第1回前半では、余すところなく描き切っていた。 出色の出来である。

 北方領土返還問題にもかかわる旧ソ連の太平洋戦争へのかかわりかたは、今回のこのドラマで、若い世代に対しても改めて開示された気がしてならない。

 要するに、やりかたがセコイのだ。 旧ソ連の。

 終戦の何日か前に、不可侵条約を一方的に破棄し、満州とか北方領土とかをあっという間に蹂躙し、戦争犯罪人として多くの日本人を強制労働に駆り出し、北方領土を横取りした、という歴史的事実である。

 今回のドラマでも、昭和天皇を戦犯に仕立てようと、あらゆる手を使って壹岐たちに証言させようとする旧ソ連のやり方には、正直ムカついて仕方がなかった。

 それに対する壹岐たちの態度というのは、現代の日本人が学ぶべきものに思えて仕方がない。

 これはちょっと間違うと犯罪容認のように取られる危険な考えなのだが、と前置きせねばならないが、我々が学ばねばならない、というのは、「戦争責任に対して、自分たちが泥をかぶる、という毅然とした態度」、のことである。

 実際のところ、昭和天皇がどれだけ日本軍の全体的戦略にタッチしていたのかは不明だが、それが現実問題として、現代に至るまで不明になっているところが、私にはすごい、と思われてならないのである。

 これはなぜかと考えた時、要するに、壹岐たちのような、「責任は自分たちが取る」、という人々の存在が、昭和天皇を戦争犯罪者になる道から救ったのだ、と思われるのだ。

 翻って、現代日本に住む人たちは、どれだけ他人の責任を自分がとる、という覚悟で仕事をしているだろう。

 のりピーの例を出したらあまりに次元が違いすぎる話なのだが(笑)、のりピーの夫がべらべらしゃべらなければ、のりピーに害が及ぶことは、まずなかったか、とても逮捕には困難がつきまとったはずだ。
 のりピーの夫に限らず、何か会社の悪事が露見して逮捕されてしまう人々のうち、警察なんかの厳しい追及にも負けず、会社に義理立てして自分が泥をかぶる、などという殊勝な精神を示す持ち主など、現代において、まずいないと言っていい。

 あらかじめ断ったように、私は犯罪を容認しているわけではない。

 ただ、自分の信念に従って職務を遂行し、その結果上の者の責任は私が取る、という精神は、いまの日本からは死滅しているのではないか、ということが言いたいのだ。

 さて、ドラマの内容について。

 冒頭で書いたように、前半のシベリア抑留あたりの話は、圧倒的な描写力で、ここ数年見たドラマのなかでは出色、とも呼べる出来だった。
 だが、問題は後半部分である。

 前半の重苦しい抑留の様子から、唐沢サンが一貫しているのは、極度のカタブツぶり(笑)。

 いや、唐沢サンに限らず、このドラマの登場人物全体に漂っているのは、どこの日本語だ?と思うほどの、文学的なカタいセリフの横行だ。

 シベリア抑留の場面では、そのセリフのカタブツぶりもしっくりいっていたのだが、後半の商事会社に壹岐が入ったあたりから、そのセリフに、少しばかり違和感を感じ始めた。
 どうして、登場人物全員が、このようなカタイ、しゃべりにくそうなセリフをしゃべっているのだろう。
 後半に入って、そのセリフによる不自然な説明的語り口が、少々耳についてきた。

 しかも、原田芳雄サン演じる大門一三近畿商事社長が、壹岐を防衛庁のコネ目当てで採用しようとしているところが、なかなか見えない演出ぶりをしているのは、ちょっと違うのではないか、という感じ。 あからさまにその目的で原田サンが動いているところを見せてもいいのではないか、という気がするのだ。

 でなければ、お昼過ぎまで新聞読みして、配属された繊維部の仕事もろくにできなくて、みたいな人間を、誰が好き好んで雇い続ける、というのか。 大門社長の真意を物語のうえで隠すことに、大した意味はない、と私は思う。

 大門社長の思惑通りにことは進んで、壹岐は戦闘機を防衛庁に売り込む役を買って出るのだが、この先もこんな違和感だらけのセリフが横行するのだろうか。
 このセリフによって、このドラマの文学的な匂いは一層高まる効果もあげてはいるのだが、現実味から乖離していくのが心配な出だしではある。

 ともあれ、フジテレビの力の入れようは十二分に伝わってきたこのドラマ、半年にわたってじっくりやっていただけるのはうれしい。 「官僚たちの夏」 も、このくらいの総力でやってもらいたかったものだ。

当ブログ 「不毛地帯」 に関する記事
(番外) http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/10/post-6a81.html
第1回 (当記事)
第2回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/10/2-w-070f.html
第3回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/10/3-4bae.html
第4回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/4-9755.html
第5回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/5-abb7.html
第6回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/6-d4bd.html
第7回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/7-8677.html
第8回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/8-4f4a.html
第9回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/9-cdc5.html
第10回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/10-183b.html
第11回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/01/11-0587.html
第12回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/01/12-68a7.html
第13回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/01/13-2599.html
第14回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/02/14-4fa8.html
第15回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/02/15-d4df.html
第16回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/02/16-3ac8.html
第17回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/02/17-2-6e30.html
(番外) http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/03/19-b645.html
第18回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/03/18-5177.html
第19回(最終回) http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/03/19-7b99.html

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