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2009年10月 5日 (月)

「天地人」 第40回 パワーゲーム・オン・ザ・ボーダーライン

 このところの 「天地人」 は、大河ドラマとしての風格を、ようやく備えてきたような気がする。

 さまざまな批判を受けてきたこのドラマだったが、今回の 「上杉転落」 は、あえてその批判に立ち向かい、「それがどうした!」 とゴリ押しするくらいの迫力をもっていた、と言っていいだろう。

 「天地人」 の批判の主たるものは、「史実と違う」 という点である。
 直江兼続や上杉景勝を語るうえでけっして外せない数人の人物を、まったく無視しているし、実在の人物にしても、三国志や忠臣蔵並みに歪んだ性格描写を積極的に行なっている。 最近ではなりをひそめたが、スポットライトを当てたりストップモーションになったり、トリッキーな演出も、批判の的にされていた。

 それはそうと、この 「史実を全く無視」 という姿勢は、物語が面白ければ、いま挙げた三国志や忠臣蔵のようにまったく問題にされることはない。
 だが、「天地人」 の場合、このフィクションメイキングが、致命的に弱かった。
 このことは、「天地人」 が終わった時に詳しく述べたいと思う。 (ホントにやるのかな?)(笑)

 ここ数回の 「天地人」 は、描こうとしているテーマがはっきりとしているために、このフィクションメイキングに成功し続けている。
 今回のテーマは、「絶体絶命の時に、どう切り抜けるべきなのか」、という点に絞られている。 だから、のっけから史実では御館の乱で死んだはずの遠山のオッサンがムカツキキャラを全開にしても、家康の詰問の場で史実では謝罪したはずの北村一輝サンが謝罪しなくても、そうすることで物語が緊迫の度を増し、見る側を最後まで引き付ける材料になっているのだ。

 冒頭で本多正信に、直江家との縁組を持ちかけた妻夫木クンだったが、この提案が後々、大きな上杉家救出のファクターになってくる、という構成の仕方が見事だ。

 小早川の上地クンが福島の良純サンにうながされて上杉を守ろうと立ちあがり、深キョンに頭を下げるくだりも、この程度ではどうしようもないのだが、小早川の贖罪の気持ちがにじみ出ていてよい場面だった。
 案の定、深キョンが松方サンに頼んだ程度ではどうしようもなく、秀頼に言われようが、その場にいた福島に何か言われようが、松方家康は、その程度では動くはずがないのだ。 これは、その時点での家康と豊臣家とのパワーバランスから言って、当然の成り行きであると言える。
 だが家康にとっても、上杉家の処遇の仕方を誤れば、面倒なことになるというジレンマが、ここで生まれてくる、というドラマの仕組みになっている。

 ここで冒頭の、妻夫木クンの本多への提案が、大きな意味をもってくる。
 この時点で、小早川の命をかけた思いとか、秀頼から改めて知ることのできた秀吉の思いとか、そんな人々の思いが、物語を盛り上げる 「感動積み重ね状態」 になっている。
 そしてそんな人々の思いにも動じない家康を、妻夫木クンの提案が動かす、という話のもっていきかたが、すごいのだ。

 松方サンは、本多と直江を政略的にくっつけることで、上杉への影響力の増大をもくろむのだが、これこそが、妻夫木クンのねらいだ。

 この策略は、正直なところ、上杉にとって起死回生の策ではない。
 何もかも根こそぎ失ってしまいそうな状況で、死中に活路を見いだす、転んでもただでは起きぬ、という苦肉の策、なのである。

 負けるときに、どういう負けっぷりをすればいいのか。
 そこを語っている点で、今回のドラマは、侮れないのだ。

 事実、石高が1/4になってしまった上杉家は、その後大騒ぎになってしまうのであるが、妻夫木クンはあえて誰もリストラせず、米沢にみんなそろって出発することになる。 いばらの道が待ち受けていることに、変わりはない。

 しかも、本多との政略結婚のために、今度は嫡男のこども店長クンが犠牲となる展開が待ち受けている。
 ここらへんの展開の仕方を見ていると、史実と違っていようが、人物描写が歪んでいようが、まったく関係なくなってくる。 実に面白いフィンクションを見せていただいている気分に、なってくるのだ。

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BOOKS

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ紹介記事より抜粋)。 本書下巻では、1962年のレコードデビューまでが書かれています。

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  • ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白

    ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白
    まず驚かされるのが、表紙のポールの写真です。 よくこんなのが採用されたな、というくらい、刻まれた年輪が顕著に分かる 「年老いたポール」。 飾り気のないその写真に、「素のポール」 をあぶり出そう、という心意気が見える。 そして実際、著者のその目論見は、成功しているように思えます。 何より大きいのは、「NME」「Q」「MOJO」 など音楽メディアで長年記者を務めてきた著者がポールと同じリバプールの出身者である、ということ。 さらにポールと同じファースト・ネームであること。 だからポールはまるで自分の分身に話しかけるかのように、時折同郷人にしか分からない言葉で気さくに著者に話しかける。 この本を読む者は、まずその 「不思議なリラックス感」 に包まれるはずです。  本の構成は大きく二つに分かれます。 前半ではビートルズからウィングス、ソロに至るポールのたどってきた長い長い歴史、後半ではポールの人格に迫る試みがなされていく。 そのインタビューは、一気に行なわれたものではありません。 著者がNMEの記者だった1979年のものから、明示はされていないがおそらく2013年、「NEW」 の発売前後が最新のものではないか、と思われます。 実際読んだ感覚では 「キス・オン・ザ・ボトム」 あたりが最新のような気もする。 その30年以上にわたる膨大なポールへのインタビューを、項目によって構成し直しているようです。 ですから、今年(2016年)亡くなったジョージ・マーティンについてのポールの見解であるとか、最新の情報が提示されているわけではない。 ポールの情報というのはこの歳になってもなお日々更新型ですから、その点については物足りなさが確実にあります。 さらに、30年以上というとポールのものの考え方にも変化変遷があってしかるべきだと思うのですが、30年以上をリミックスにかけているからその変化というものがつかめてこないもどかしさがある。 表紙を飾ったポールの 「老い」 という問題にも、この本はきちんと答えてくれているわけではない。 さらに言えば、ジョン・レノンの死について多くが割かれているのとは対照的に、2001年に亡くなったジョージ・ハリソンの死についての記述はない。 正直なところ、このような本を読み漁ってきた身としては、衝撃に値するような情報が書かれているわけではありません。 しかし前述したような、リラックスしたムードのなかでポールと語らっているような疑似体験を共有できる強みが、この本にはある。 この本全体に貫かれているのが、この心地よさなのだ、と思うのです。 その心地よさが乱れるパートがあります。 自身の失敗作、どうでもいい作品について語るときのポールは多分に感情的になりがちであり、イライラした様子を隠しません。 特に 「シークレット・フレンド」 を語るポールのくだりはポールファンなら一読に値する部分でしょう。 しかしそのイライラも、ポールの人間性が垣間見える瞬間としてこの本にとっては必要なパートなのです。 3000円以上と、この本は決して安くはない部類の本です。 ただその値段に見合うパフォーマンスは兼ね備えています。 この本と付き合った1か月足らずの間、心地よい体験をすることができました(アマゾンの自身のカスタマーレビューより)。

  • : レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]

    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

MUSIC

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(スーパー・デラックス・エディション)(4CD+DVD+BD)
    ロック界、いや、すべてのポップミュージックにおけるアルバムの中で史上最高と称され、すでに世界文化遺産の域にまで達しているこのアルバム。 そのアルバムの発売50周年を記念して、スペシャルエディションがリリースされます。 なかでもブッ飛ぶのがこのスーパースペシャルボックスセット。 CD4枚組であらたなリミックスのステレオ盤1枚、モノ盤1枚、初期テイク集が2枚、さらにブルーレイ1枚とDVD1枚で5.1サラウンド、ハイレゾ音源、ドキュメント映像 「メイキングオブサージェントペパーズ」 のデジタルリマスター等々、卒倒するようなラインナップです。 18、000円プラス税と値は張りますが、史上最高の名盤だからこそこれは買い。 5月26日の発売までに予約をしておけば、アマゾンならば値下がりした時に値段がそのあと高騰しても最安値で購入できます。 ビーファンならずとも、これは注目ですぞ!

  • 山口 百恵 -

    山口 百恵: ゴールデン☆アイドル 山口百恵(完全生産限定盤)
    全シングルA・B面プラスボーナストラック(「あなたへの子守歌」)を、山口百恵名義としては初のブルースペックCDとしてリリース。 音はいわゆるドンシャリ系ではなく、アナログ盤に準拠した原音に忠実な印象です。 パッケージングはアナログシングル盤サイズで中袋、CDを納めるケースが完全にドーナツ盤をイメージしています(よく言えば斬新…笑、悪く言えばチャッチイ…笑)。 しかしその発想は買える(笑)。 ほぼ原寸大のシングルジャケットと裏の歌詞カードの複製ブックレット。 ただスキャニングは欲を言えばもう一歩。 当時シングル盤を中心に聴いていたかたなら、この編集盤はかなりの 「買い」 です。 しかしこのジャケット表紙の写真、スッピン風で個人的にはすごく好き。

  • デイヴ・グルーシン&リー・リトナー -

    デイヴ・グルーシン&リー・リトナー: Two Worlds / Grusin & Ritenour
    NHK朝ドラ 「花子とアン」 で美人のスコット先生が夜な夜な歌い、チビはなチャンがすっかり覚えてしまったイギリス民謡、「ザ・ウォーター・イズ・ワイド(流れは広く)」。 このアルバムでルネ・フレミングが歌っていたのを思い出しました。 ルネのソプラノはけっして大袈裟でなく上品で、私のとてもお気に入りのソプラノ歌手ですね。 このアルバム自体は全体的にクラシックにギターのリー・リトナーが絡むフュージョンぽいものなのですが、故・黒田恭一サン評するところの、「大人が聴く音楽」。 胸を締め付けるような哀しみと、すべてを包み込むようないたわりに満ちていて、私の人生のなかでも最上位に位置する愛聴盤です。

  • 桜田淳子 -

    桜田淳子: ゴールデン☆ベスト 桜田淳子~シングル・コレクション
    彼女の活動期に発売されたシングルをすべて網羅したベスト盤。 確かに後年のものほど馴染みがありませんが、選曲漏れがないので、彼女の存在とは何だったのか自体に思いが至るベスト盤です。 音も楽器の音像がよくてなかなかいいマスタリングをしている気がします。 2600円程度で推移しています。

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: ザ・ビートルズBOX(限定生産品)(USBメモリ)
    パソコンにUSB端子があり(たいていついてると思います)、パソコンで音楽が聴ける環境をお持ちの人ならば、聴くことができます。 現在のテクノロジーで最もいい音質で聴ける、ビートルズの音楽です。 ただし国内版にもかかわらず、訳詞とか一切なし。 ジャケットもブックレットもパソコンデータ。 純粋に音楽だけ楽しみたい人向けです。 また、曲間にコンマ何秒かのブランクが入ります。 「アビイ・ロード」 のメドレーも同様です。 しかし、音はさすがに、すごい。 大きな音量であればある程、目の前にビートルズが迫ってくる勢いです。 ツヤが違います。

  • The Beatles -

    The Beatles: The Beatles [USB]
    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

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