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2009年10月11日 (日)

「JIN-仁-」 第1回 荒唐無稽との闘い!

 TBS日曜劇場 「JIN-仁-」。

 現代の外科医が江戸時代にタイムスリップするという、村上もとか氏のコミックをドラマ化、という最初の謳い文句から、すでに荒唐無稽の匂いがぷんぷんしているわけで。
 そのため、あまり期待して見始めたわけではなかったんですが、なかなか面白かったです、初回を見る限りでは。 2時間の拡大枠が、ちっとも気になりませんでした。

 村上もとか氏と言えば、私の世代にとってはなんと言っても 「六三四の剣」 でしょうー。 少年サンデーでは、「うる星やつら」「タッチ」 と互角くらいの人気だった気がします。 確かアニメ化もされたし。 青年誌に活動の舞台を移してからは御無沙汰していますが、村上サン、しっかり傑作を描いていらっしゃるようです。

 原作をどうアレンジしているか分かりませんが、このドラマで興味深かったのは、設定的にあり得ないものを、どうやってリアリティあるドラマにするのか、ということでした。

 ドラマではそれを克服するために、タイムスリップする以前、現代での話を30分くらいさせて、主人公の大沢たかおサン演じる南方仁の人となりをていねいに描写しています。

 そこでの大沢サンの演技が、とても複雑で引き込まれる。

 南方は、中谷美紀サン演じる恋人を手術で植物状態にしてしまったために、難しい手術を人任せにしてしまう、という医者になり果てています。 それを研修医の山本耕史クンに質されたりするんですが、無理に明るく笑って 「オレみたいな医者になるな」 とかわす。 それでじゅうぶん、南方が傷ついていることが伝わってくるのです。 いやー、大沢サン、やはりこの人の演技は、侮れないっス。

 南方が植物状態の中谷サンに話しかける演技も、なんとか再び目を開けてもらいたい、という気持ちと、目を覚まさない中谷サンに募るイライラと、そうしてしまったのが自分だという自責の気持ち、怒りの気持ちがないまぜになっているシーンで、これまた秀逸、としか言いようのないシーンでした。
 なんでこんな深い演技ができるのか、この人?

 つまり、大沢サンの演技で、このドラマのリアリティが完璧に補完されているのです。

 そして、タイムスリップしてしまうきっかけとなる、胎児の形をした奇形腫の持ち主とのもみあい。 ここらへんの描写は、やはり荒唐無稽なのですが、大沢サンの芝居に引きずり込まれる形で、あまり気になってこない。

 なにしろ、タイムスリップした途端、武士どうしの斬り合いに巻き込まれ、その武士のひとり、橘恭太郎(小出恵介クン)を治療するという、テンポの速い展開をすることで、同時にタイムスリップというSFチックなことを、すっかり忘れさせてくれる。
 現代人の外科医が江戸時代に行ったらどんな手術をするのか?という興味深いことが、ここで展開されるために、すっかり物語に入りこめてしまうのです。

 まず、この手術をするにあたって、恭太郎の母親である、橘栄(麻生祐未サン)とのインフォームドコンセント(詳しい説明の上での合意)が必要になる。
 ところが江戸時代だからインフォームドコンセントなど成立するはずもないくらいの認識力の違いがある(笑)。 橘栄にとって、南方のやろうとしていることは、理解不能も甚だしいのです。
 なにしろ、自分の息子の頭をかち割って、血の塊を取り除くという手術。
 理解のしようがありません(笑)。
 ここを南方は、自分の命さえも賭けるくらいの 「あなたの息子を治したいのだ」 という誠意でもって、インフォームドコンセントをごり押ししていく。
 その迫力に、いったんは同意をする橘栄ですが、あまりの術式に手術中ついに逆上、南方に短刀で斬りかかる。
 南方は 「あなたの敵は私ではない!この目の前の血の海です!」 と、恭太郎の頭にぽっかり空いた患部を見せつける。
 ここらへんのリアリティは、息をのむばかりでした。

 第1回後半にもう一度ある、戸田菜穂サンの手術の描写も、相当壮絶なもので。

 馬に蹴られた戸田サンが、額をばっくり切ってしまうのですが、南方が手術をしようとしたとき、橘咲(綾瀬はるかチャン)が持ってきた手術道具の中に、麻酔薬キシロカインがないのに気付く。
 結果的に南方は、麻酔薬なしでの縫合手術をするのですが、痛みのためにショック死してしまうという可能性を提示することで、その緊張感を極限にまで高めていくのです。
 いざ手術が始まると、その話通りの、阿鼻叫喚地獄のような凄惨な手術になっていくのですが、南方はこのとき、現代編において自らの弱点となっていた、「難しい手術が怖くてできない」 という自分の気持ちと、真正面から向き合うことになるのです。
 このリアリティは、ホントにすごいの一言。

 ところが、やはりマンガチックなことは、どうしても起こらざるを得ない気もするのです。

 その最たるものが、いきなり土佐弁で現れる、内野聖陽サン。
 幕末に土佐弁って言ったら、坂本龍馬しかいないでしょう(笑)みたいな、ベタな展開のように思えました。 ひょっとすると、大河で福山雅治クンに龍馬をやられる前に、山本勘助ふう龍馬で先を制してしまおうという、TBSの魂胆なのでしょうか?(笑)
 山本耕史クンなんかも、いきなり現代編のご先祖?(笑)役で、アレはチョイ役なんですか?(笑)
 そのほかにも、綾瀬はるかチャンに道を教えてあげるのが、小日向文世サン演じる、勝海舟だし。 ああー、「篤姫」 での、北大路欣也サンの勝海舟像が、崩れるー(笑)。
 さらにさらに、手術に立ち会った桐谷健太クンの学舎の師匠が、武田鉄矢サン演じる緒方洪庵だし。
 そんな有名人と、次々ニアミスするか?みたいな気もしてきます。 物語に深くかかわってくる内野サン以外は、ちょっと初回の顔見せに、サービスしている印象は、無きにしも非ず。

 ただやはり、坂本龍馬は、このドラマでは南方のタイムスリップと深い関係があるみたいで、その点でフィクション臭さを軽減しているような感じはします。

 綾瀬はるかチャンは、どおーも 「MR.BRAIN」 とつながっているよーな役どころで(笑)。 南方の助手に、このままなってしまうんですかね(笑)。 いきなり南方に、惚れちゃってるみたいなのも、 「MR.BRAIN」 っぽいし。 麻生祐未サンとの母娘コンビは、見ていて楽しくなりそうな予感がします。

 いずれにせよ、後半の母子の 「ちちんぷいぷい」 であるとか、マンガ原作のタイムスリップ物と侮っていたら、相当練り込まれた深いドラマだったのは、うれしい誤算であります。
 また楽しみなドラマが増えました。

当ブログ 「JIN」 についてのほかの記事
第1回 荒唐無稽との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/10/jin---1-e9ae.html
第2回 建前との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/10/jin---2-f3b1.html
第3回 自分の病との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/10/jin---3-3290.html
第4回 女としての闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/---4-542b.html
第5回 梅毒との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/jin---5-9dba.html
第6回 リアルとの闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/jin---6-25d6.html
第7回 明日のための闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/jin---7-87b0.html
第8回 自分の器との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/jin---8-e9a7.html
第9回 心意気どうしの闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/jin---9-8cf0.html
第10回 ああもう、どうなっちゃうの?との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/jin---10-670a.html
第11回(最終回)続編あるかどうかとの闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/jin---7290.html
番外 続編の可能性を、もう一度考えるhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/jin---a138.html

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BOOKS

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ紹介記事より抜粋)。 本書下巻では、1962年のレコードデビューまでが書かれています。

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     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ記事より抜粋)。 この上巻ではビートルズの祖先から遡ってリバプールで人気に火が付き始めたところまでが書いてあります。

  • ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白

    ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白
    まず驚かされるのが、表紙のポールの写真です。 よくこんなのが採用されたな、というくらい、刻まれた年輪が顕著に分かる 「年老いたポール」。 飾り気のないその写真に、「素のポール」 をあぶり出そう、という心意気が見える。 そして実際、著者のその目論見は、成功しているように思えます。 何より大きいのは、「NME」「Q」「MOJO」 など音楽メディアで長年記者を務めてきた著者がポールと同じリバプールの出身者である、ということ。 さらにポールと同じファースト・ネームであること。 だからポールはまるで自分の分身に話しかけるかのように、時折同郷人にしか分からない言葉で気さくに著者に話しかける。 この本を読む者は、まずその 「不思議なリラックス感」 に包まれるはずです。  本の構成は大きく二つに分かれます。 前半ではビートルズからウィングス、ソロに至るポールのたどってきた長い長い歴史、後半ではポールの人格に迫る試みがなされていく。 そのインタビューは、一気に行なわれたものではありません。 著者がNMEの記者だった1979年のものから、明示はされていないがおそらく2013年、「NEW」 の発売前後が最新のものではないか、と思われます。 実際読んだ感覚では 「キス・オン・ザ・ボトム」 あたりが最新のような気もする。 その30年以上にわたる膨大なポールへのインタビューを、項目によって構成し直しているようです。 ですから、今年(2016年)亡くなったジョージ・マーティンについてのポールの見解であるとか、最新の情報が提示されているわけではない。 ポールの情報というのはこの歳になってもなお日々更新型ですから、その点については物足りなさが確実にあります。 さらに、30年以上というとポールのものの考え方にも変化変遷があってしかるべきだと思うのですが、30年以上をリミックスにかけているからその変化というものがつかめてこないもどかしさがある。 表紙を飾ったポールの 「老い」 という問題にも、この本はきちんと答えてくれているわけではない。 さらに言えば、ジョン・レノンの死について多くが割かれているのとは対照的に、2001年に亡くなったジョージ・ハリソンの死についての記述はない。 正直なところ、このような本を読み漁ってきた身としては、衝撃に値するような情報が書かれているわけではありません。 しかし前述したような、リラックスしたムードのなかでポールと語らっているような疑似体験を共有できる強みが、この本にはある。 この本全体に貫かれているのが、この心地よさなのだ、と思うのです。 その心地よさが乱れるパートがあります。 自身の失敗作、どうでもいい作品について語るときのポールは多分に感情的になりがちであり、イライラした様子を隠しません。 特に 「シークレット・フレンド」 を語るポールのくだりはポールファンなら一読に値する部分でしょう。 しかしそのイライラも、ポールの人間性が垣間見える瞬間としてこの本にとっては必要なパートなのです。 3000円以上と、この本は決して安くはない部類の本です。 ただその値段に見合うパフォーマンスは兼ね備えています。 この本と付き合った1か月足らずの間、心地よい体験をすることができました(アマゾンの自身のカスタマーレビューより)。

  • : レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]

    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

MUSIC

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(スーパー・デラックス・エディション)(4CD+DVD+BD)
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  • デイヴ・グルーシン&リー・リトナー -

    デイヴ・グルーシン&リー・リトナー: Two Worlds / Grusin & Ritenour
    NHK朝ドラ 「花子とアン」 で美人のスコット先生が夜な夜な歌い、チビはなチャンがすっかり覚えてしまったイギリス民謡、「ザ・ウォーター・イズ・ワイド(流れは広く)」。 このアルバムでルネ・フレミングが歌っていたのを思い出しました。 ルネのソプラノはけっして大袈裟でなく上品で、私のとてもお気に入りのソプラノ歌手ですね。 このアルバム自体は全体的にクラシックにギターのリー・リトナーが絡むフュージョンぽいものなのですが、故・黒田恭一サン評するところの、「大人が聴く音楽」。 胸を締め付けるような哀しみと、すべてを包み込むようないたわりに満ちていて、私の人生のなかでも最上位に位置する愛聴盤です。

  • 桜田淳子 -

    桜田淳子: ゴールデン☆ベスト 桜田淳子~シングル・コレクション
    彼女の活動期に発売されたシングルをすべて網羅したベスト盤。 確かに後年のものほど馴染みがありませんが、選曲漏れがないので、彼女の存在とは何だったのか自体に思いが至るベスト盤です。 音も楽器の音像がよくてなかなかいいマスタリングをしている気がします。 2600円程度で推移しています。

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: ザ・ビートルズBOX(限定生産品)(USBメモリ)
    パソコンにUSB端子があり(たいていついてると思います)、パソコンで音楽が聴ける環境をお持ちの人ならば、聴くことができます。 現在のテクノロジーで最もいい音質で聴ける、ビートルズの音楽です。 ただし国内版にもかかわらず、訳詞とか一切なし。 ジャケットもブックレットもパソコンデータ。 純粋に音楽だけ楽しみたい人向けです。 また、曲間にコンマ何秒かのブランクが入ります。 「アビイ・ロード」 のメドレーも同様です。 しかし、音はさすがに、すごい。 大きな音量であればある程、目の前にビートルズが迫ってくる勢いです。 ツヤが違います。

  • The Beatles -

    The Beatles: The Beatles [USB]
    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

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