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2009年11月16日 (月)

「JIN-仁-」 第6回 リアルとの闘い!

 「JIN-仁-」 第6回のテーマは、自分の存在。

 冒頭から、人間関係で目まぐるしい説明。
 医学館とか本道とか、伊東玄朴を失脚させたのが松本良順とか。
 もともと西洋医学館が、伊東玄朴と緒方洪庵(武田鉄矢サン)の派閥に分かれているみたいなんですが、そのうち伊東一派が、佐分利クン(桐谷健太クン)を陥れようとしている様子。 首筋にあざのある男が、カギを握っているみたいです。 どうも本当の狙いは、緒方洪庵や南方(大沢たかおサン)もそうなのですが、行きつく先はこの松本良順らしい。
 ただ、松本良順という人物がいままで表だって出てこなかったために、急に言われてもよく分かんない(笑)。

 いっぽう、世間の評判が 「南方大明神」 みたいなとんでもないレベルになっていくのを見て、坂本龍馬(内野聖陽サン)は、「センセイはいま光り輝いちょる。 光が強ければ、また影も強い」 と、南方に忠告する。 当の南方は、自分が危険にさらされるなど、全く感じていない様子。

 ここらへんの、現代人と江戸時代人との意識の違いは、相変わらずうまい描写であります。

 だいたい、瓦版とかお札とかで南方を崇めたてまつるなんて、よく考えると、江戸時代の人々の思い込みの激しさが、現代人の比ではないことを思い知らされます。
 現代人は、流れてくる情報に対して、とてもフィルター処理能力が強い。
 だからその情報がウソか本当かという判断にたけている。
 それに対して 「大明神」 などというレベルで簡単に神通力を信じてしまう江戸時代の思い込みの強さ、今回はこれが、ドラマを引っ張っていくカギになっている。
 思い込みが強いからこそ、いったん 「コイツは世の中に害毒をもたらす人間だ」 とひとたび判断されてしまえば、それは命の危険にさらされるレベルの話に、簡単になっていく、ということです。

 南方にはその危機意識が、まったくない。 「刺されたら死ぬのかなオレ?」 などとつぶやく始末。

 つまり南方は、一方的に祭り上げられていく自分の存在感が、だんだん希薄になっていくのを感じているのです。
 あまりに現実離れした世界に身を置きすぎて、まるでバーチャルなゲームをやっている感覚になっている、南方の浮遊感が、これまたよく描かれています。 そんなテレビゲームのような世界では、自分が死ぬということもリセットできてしまうのではないか、という、自身の存在、実存を否定されていくような、「ぼんやりとした喪失感」 にさいなまれていく。

 さて西洋医学館と敵対する医学館、なんかおんなじような名前でまたまた混乱しますが(笑)、そこの多紀(相島一之サン)という奥医師に南方らが詰問されている途中、医学館の人間が腹痛を訴えて倒れ込む。
 ここからは、またまた南方先生の大活躍ですよ。 いや、何度見ても、江戸時代に行われる現代医術というものは、引き込まれますね。

 そこで咲(綾瀬はるかチャン)が内臓を初めて見たためにリタイア。
 咲の兄である橘恭太郎(小出恵介クン)は、坂本の機転の利いた対応に、自分の器の小ささを実感してしまう。
 自分の本当の実力とそうありたい自分とのギャップに悩んでいるのは、なにも現代人だけではない、ということが描写されていて、つくづく感心します。

 佐分利クンが腑分け(解剖)をしていたのも、なんとか南方先生に追いつこうと思ったあまりの所業。 このことも、等身大の自分との闘いです。
 しかし、そんな佐分利クンを緒方洪庵は、こう一喝します。

 「お前の言う 『道』 とは、自分のためだけの 『道』 や!『道を開く』 ということはな、自分だけの逃げ道を作ることやない!」

 いや、久しぶりに、金八先生の説教を聞いた気分であります(笑)。 冗談はともかく、ちょっとわが身に突き刺さるような気がいたしました。

 自分のために西洋医学館を追われることとなった緒方と佐分利クンを救おうと、南方は自分が西洋医学館を辞めると決意する。
 「緒方先生がここにいらっしゃることが、国のため、道のためです」
 と説く南方、しかしそれを、内野龍馬からまた、一刀両断にされる。
 「センセイの言うことは、まるで仏じゃ。 もし人であるならば、死人じゃ!」

 ひとは、どんな立派なことを言っていても、結局は自分の欲のために一生懸命になれるんじゃ!という龍馬の言葉は、このドラマがフィクションで、あり得ない話を描いているのに、やたらとリアルでした。 まるで龍馬の肉声を聞いている気がしたくらいです。
 欲があるならば、なぜそれにしがみつかないのだ!
 なぜ見苦しく、自分の夢にこだわろうとしないのか!

 ラストで、刺客に襲われたところを咲に助けられて、命からがら逃げのびた南方。 震えながらも、やっと自分が生きている実感を得るのです。
 ここでまた、咲からキツーイ一発。
 「あたりまえです!先生は、生きておられるのですから!『死んでも平気』 なんて、二度と…」
 いま以上に生き抜くのが大変だった時代の人たちからの、現代人に対する叱咤を聞く気がします。 なにか、大切なものを思い出させてくれるような気がするのです。

 今回このドラマは、結構説教臭い展開に終始した感がありますが、それをなんのてらいもなく堂々と、登場人物たちが主張しているために、そのいちいちが胸に突き刺さってきました。 こういう熱い心を持って生きることを冷笑する現代の風潮に、真っ向から挑んでくる。
 ヌルイ生き方をしている私なんかには、ちょっとキツイものがあります。

当ブログ 「JIN」 についてのほかの記事
第1回 荒唐無稽との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/10/jin---1-e9ae.html
第2回 建前との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/10/jin---2-f3b1.html
第3回 自分の病との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/10/jin---3-3290.html
第4回 女としての闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/---4-542b.html
第5回 梅毒との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/jin---5-9dba.html
第6回 リアルとの闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/jin---6-25d6.html
第7回 明日のための闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/jin---7-87b0.html
第8回 自分の器との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/jin---8-e9a7.html
第9回 心意気どうしの闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/jin---9-8cf0.html
第10回 ああもう、どうなっちゃうの?との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/jin---10-670a.html
第11回(最終回)続編あるかどうかとの闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/jin---7290.html
番外 続編の可能性を、もう一度考えるhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/jin---a138.html

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