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2009年11月23日 (月)

「JIN-仁-」 第7回 明日のための闘い!

 西洋医学所の内紛のあおりを受けて、ペニシリン製造所が焼失してしまい、皮膚移植の感染症予防のために大量のペニシリンを必要としていた南方仁(大沢たかおサン)、大ピンチなのであります。
 しかも、緒方洪庵(武田鉄矢サン)に連れられて、南方先生の皮膚移植を見学していたのが、石丸謙二郎サン。 「仮面ライダー電王」 の時もそうでしたが、この人、結構目つきが鋭くて、何を考えているか分からない、怪人タイプの役者サンです(笑)。
 そのうえ、火事のなかに飛び込んで守ったペニシリンの成功株を、大事に抱えていた山田純庵(田口浩正サン)の前に立ちふさがった、謎の男たち。
 なんか、ヤーな予感がします。

 それもこれも、緒方洪庵が西洋医学所の対立分子からペニシリンを守ろうとした画策でした。 ヤレヤレ。
 石丸謙二郎サンの正体はナーント、ヤマサ醤油の七代目当主、濱口儀兵衛。 あのマークを見て、「あっ、ヤマサだっ!」、と大笑いしてしまいました。 同時にこの番組のスポンサーにライバル会社がなかったっけなー、などと考えてしまった(笑)。 でも、発酵に関する知識が豊富な醤油屋サンなら、ペニシリンも簡単にできそうですよねっ。
 ただ、これでひと安心する間もなく、南方先生が濱口から聞いたのは、緒方先生が重い労咳(結核)にかかっている、との話。 駆け出す南方先生の脳裏には、緒方洪庵の、あまりにも医の道に一筋な姿ばかり。 この回想のインサートが、後々の感動を生む布石になっているんですけどね。

 今回の白眉は、その緒方先生の病床に駆けつけた、南方先生と緒方先生のやりとりでした。

 ペニシリンのお礼のあと、南方は緒方洪庵の診察を願い出ます。
 ドラマを見ている側とすれば、待ってました!南方先生ならば、結核なんかチョチョイのチョイだ!と、軽ーく考えてしまいがちです。
 なにしろ、現代において結核とは、ほぼ何も怖くない病気。 この病気を治して、またまた南方先生は歴史を変えてしまうのか?などということまで、先回りして考えてしまう。

 けれども、緒方洪庵の脈をとり、聴診器を耳にあてる南方先生の顔は、見る間に曇ってきます。 それで見ている側は、この得難い人物の死が、もはや避けられないレベルにまで進行してしまっていることを知るのです。

 緒方は、南方の表情を見て一瞬 「やはりだめか」 という表情になり、次の瞬間すぐ悟ったかのように静かに笑いながら、南方にこう語りかける。
 「先生、先生は、医の道はどこへ通じるとお思いですか。 私は、医の道は、平らな世に通じると思うてます」。
 身分が違っても、体のなかには同じものが入っている。 人間はみな同じだ。 未来は、人間がみな平等な世の中なのですか、と。

 緒方は、南方が未来から来たのだと、勘づいていたのです。 そしてそれを確認した瞬間、緒方はこみあげてくるものを押さえられなくなる。
 大坂から江戸に召し出されて、口先では国のため、道のためだと偉そうなことを言っていたが、心のなかではさびしさと苦悩が渦巻いていた。 それに比べれば、南方先生のほうが何倍もつらいではないか。 私は、自分が恥ずかしい、と。
 またしても、緒方洪庵の肉声を聞く気がします。 先週は、坂本龍馬の本音を聞いた気がしましたし、なんだかこのドラマの秀逸極まる点が、この部分だと思うのです。 絵空事でなく、人物が悩み苦しみながら、その時代を確かに生きている。

 「私は、このご恩にどう報いればよろしいのでしょうか」 と尋ねる南方に、洪庵はこう答える。
 「よりよき未来を、お造り下さい」

 あまりにも、基本的なことではありませんか。 みんな、よりよい明日のために、今日を闘っているのです。 苦悩しながら、闘っているのです。 なんか、泣けました。

 そして洪庵は最後に、未来ではこの労咳という自分の病気が、治せる病気になっているということを南方に確認し、まるで自分がこの病気に勝利したかのような笑顔を浮かべる。
 なんか、医学の進歩によって病気を克服できるようになるということは、それに罹って死んでいった過去の幾多の人々の無念も晴らす行為なのだということを、その笑顔ひとつで感じることができるんですよ。
 深いんだよなあ。

 それにしても今回は、手紙が随所に出てきた気がします。 南方先生のいかにも現代人らしい字、緒方先生のいかにも江戸の知識人らしい手紙、内野龍馬の個性あふれる手紙。 野風の手紙も、じっさいには出てきませんでしたが、話だけは出てきて。 こういう同じイメージのたたみかけも、相変わらず芸が細かい。

 緒方の遺志をくんで、南方先生は自らの病院を開業することになりました。 「それが自分の天命なんじゃないか」 と。 冒頭で、咲(綾瀬はるかチャン)に 「人には、いかに生きるべきか、天命を授かる時が来ると言いますから」 と言われたとおりになっていて、ドラマとしての体裁も、実によく計算されています。

 またまた目の離せない展開ですね。 来週はボクシングで時間変更らしいですけど、間違えないようにしなければ。

当ブログ 「JIN」 についてのほかの記事
第1回 荒唐無稽との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/10/jin---1-e9ae.html
第2回 建前との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/10/jin---2-f3b1.html
第3回 自分の病との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/10/jin---3-3290.html
第4回 女としての闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/---4-542b.html
第5回 梅毒との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/jin---5-9dba.html
第6回 リアルとの闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/jin---6-25d6.html
第7回 明日のための闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/jin---7-87b0.html
第8回 自分の器との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/jin---8-e9a7.html
第9回 心意気どうしの闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/jin---9-8cf0.html
第10回 ああもう、どうなっちゃうの?との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/jin---10-670a.html
第11回(最終回)続編あるかどうかとの闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/jin---7290.html
番外 続編の可能性を、もう一度考えるhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/jin---a138.html

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BOOKS

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ紹介記事より抜粋)。 本書下巻では、1962年のレコードデビューまでが書かれています。

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 上

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 上
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ記事より抜粋)。 この上巻ではビートルズの祖先から遡ってリバプールで人気に火が付き始めたところまでが書いてあります。

  • ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白

    ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白
    まず驚かされるのが、表紙のポールの写真です。 よくこんなのが採用されたな、というくらい、刻まれた年輪が顕著に分かる 「年老いたポール」。 飾り気のないその写真に、「素のポール」 をあぶり出そう、という心意気が見える。 そして実際、著者のその目論見は、成功しているように思えます。 何より大きいのは、「NME」「Q」「MOJO」 など音楽メディアで長年記者を務めてきた著者がポールと同じリバプールの出身者である、ということ。 さらにポールと同じファースト・ネームであること。 だからポールはまるで自分の分身に話しかけるかのように、時折同郷人にしか分からない言葉で気さくに著者に話しかける。 この本を読む者は、まずその 「不思議なリラックス感」 に包まれるはずです。  本の構成は大きく二つに分かれます。 前半ではビートルズからウィングス、ソロに至るポールのたどってきた長い長い歴史、後半ではポールの人格に迫る試みがなされていく。 そのインタビューは、一気に行なわれたものではありません。 著者がNMEの記者だった1979年のものから、明示はされていないがおそらく2013年、「NEW」 の発売前後が最新のものではないか、と思われます。 実際読んだ感覚では 「キス・オン・ザ・ボトム」 あたりが最新のような気もする。 その30年以上にわたる膨大なポールへのインタビューを、項目によって構成し直しているようです。 ですから、今年(2016年)亡くなったジョージ・マーティンについてのポールの見解であるとか、最新の情報が提示されているわけではない。 ポールの情報というのはこの歳になってもなお日々更新型ですから、その点については物足りなさが確実にあります。 さらに、30年以上というとポールのものの考え方にも変化変遷があってしかるべきだと思うのですが、30年以上をリミックスにかけているからその変化というものがつかめてこないもどかしさがある。 表紙を飾ったポールの 「老い」 という問題にも、この本はきちんと答えてくれているわけではない。 さらに言えば、ジョン・レノンの死について多くが割かれているのとは対照的に、2001年に亡くなったジョージ・ハリソンの死についての記述はない。 正直なところ、このような本を読み漁ってきた身としては、衝撃に値するような情報が書かれているわけではありません。 しかし前述したような、リラックスしたムードのなかでポールと語らっているような疑似体験を共有できる強みが、この本にはある。 この本全体に貫かれているのが、この心地よさなのだ、と思うのです。 その心地よさが乱れるパートがあります。 自身の失敗作、どうでもいい作品について語るときのポールは多分に感情的になりがちであり、イライラした様子を隠しません。 特に 「シークレット・フレンド」 を語るポールのくだりはポールファンなら一読に値する部分でしょう。 しかしそのイライラも、ポールの人間性が垣間見える瞬間としてこの本にとっては必要なパートなのです。 3000円以上と、この本は決して安くはない部類の本です。 ただその値段に見合うパフォーマンスは兼ね備えています。 この本と付き合った1か月足らずの間、心地よい体験をすることができました(アマゾンの自身のカスタマーレビューより)。

  • : レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]

    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

MUSIC

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(スーパー・デラックス・エディション)(4CD+DVD+BD)
    ロック界、いや、すべてのポップミュージックにおけるアルバムの中で史上最高と称され、すでに世界文化遺産の域にまで達しているこのアルバム。 そのアルバムの発売50周年を記念して、スペシャルエディションがリリースされます。 なかでもブッ飛ぶのがこのスーパースペシャルボックスセット。 CD4枚組であらたなリミックスのステレオ盤1枚、モノ盤1枚、初期テイク集が2枚、さらにブルーレイ1枚とDVD1枚で5.1サラウンド、ハイレゾ音源、ドキュメント映像 「メイキングオブサージェントペパーズ」 のデジタルリマスター等々、卒倒するようなラインナップです。 18、000円プラス税と値は張りますが、史上最高の名盤だからこそこれは買い。 5月26日の発売までに予約をしておけば、アマゾンならば値下がりした時に値段がそのあと高騰しても最安値で購入できます。 ビーファンならずとも、これは注目ですぞ!

  • 山口 百恵 -

    山口 百恵: ゴールデン☆アイドル 山口百恵(完全生産限定盤)
    全シングルA・B面プラスボーナストラック(「あなたへの子守歌」)を、山口百恵名義としては初のブルースペックCDとしてリリース。 音はいわゆるドンシャリ系ではなく、アナログ盤に準拠した原音に忠実な印象です。 パッケージングはアナログシングル盤サイズで中袋、CDを納めるケースが完全にドーナツ盤をイメージしています(よく言えば斬新…笑、悪く言えばチャッチイ…笑)。 しかしその発想は買える(笑)。 ほぼ原寸大のシングルジャケットと裏の歌詞カードの複製ブックレット。 ただスキャニングは欲を言えばもう一歩。 当時シングル盤を中心に聴いていたかたなら、この編集盤はかなりの 「買い」 です。 しかしこのジャケット表紙の写真、スッピン風で個人的にはすごく好き。

  • デイヴ・グルーシン&リー・リトナー -

    デイヴ・グルーシン&リー・リトナー: Two Worlds / Grusin & Ritenour
    NHK朝ドラ 「花子とアン」 で美人のスコット先生が夜な夜な歌い、チビはなチャンがすっかり覚えてしまったイギリス民謡、「ザ・ウォーター・イズ・ワイド(流れは広く)」。 このアルバムでルネ・フレミングが歌っていたのを思い出しました。 ルネのソプラノはけっして大袈裟でなく上品で、私のとてもお気に入りのソプラノ歌手ですね。 このアルバム自体は全体的にクラシックにギターのリー・リトナーが絡むフュージョンぽいものなのですが、故・黒田恭一サン評するところの、「大人が聴く音楽」。 胸を締め付けるような哀しみと、すべてを包み込むようないたわりに満ちていて、私の人生のなかでも最上位に位置する愛聴盤です。

  • 桜田淳子 -

    桜田淳子: ゴールデン☆ベスト 桜田淳子~シングル・コレクション
    彼女の活動期に発売されたシングルをすべて網羅したベスト盤。 確かに後年のものほど馴染みがありませんが、選曲漏れがないので、彼女の存在とは何だったのか自体に思いが至るベスト盤です。 音も楽器の音像がよくてなかなかいいマスタリングをしている気がします。 2600円程度で推移しています。

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: ザ・ビートルズBOX(限定生産品)(USBメモリ)
    パソコンにUSB端子があり(たいていついてると思います)、パソコンで音楽が聴ける環境をお持ちの人ならば、聴くことができます。 現在のテクノロジーで最もいい音質で聴ける、ビートルズの音楽です。 ただし国内版にもかかわらず、訳詞とか一切なし。 ジャケットもブックレットもパソコンデータ。 純粋に音楽だけ楽しみたい人向けです。 また、曲間にコンマ何秒かのブランクが入ります。 「アビイ・ロード」 のメドレーも同様です。 しかし、音はさすがに、すごい。 大きな音量であればある程、目の前にビートルズが迫ってくる勢いです。 ツヤが違います。

  • The Beatles -

    The Beatles: The Beatles [USB]
    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

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