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2009年12月20日 (日)

「坂の上の雲」 第4回 戦争の真実を見つめようとしない人々

 日清戦争を描いた、第4回目の 「坂の上の雲」。

 圧巻でした。

 特に戦闘シーンは、5.1サラウンドで見るべし!と言いたくなるほどの音響効果。 「プライベート・ライアン」 あたりの映画もブッ飛ぶほどでした。 その臨場感たるや。
 いちばん緊張を強いられたシーンは、なんと言っても本木クンが花田をマストに戦闘旗立てに登らせた直後の被弾シーン。
 画面が血だらけになり、血しぶきをあげながら倒れていく海兵たちの描写は、近年これほどの残酷戦闘シーンをテレビで見たことがないくらいの悲惨この上ない描写だったと言っていいでしょう。

 このシーンが残酷だと、クレームをつけてはいけません。
 このようなシーンこそ、我々は目をそらさずに見る必要があるのです。

 戦争とは、常に残酷なものなのである。

 「天地人」 では、このようなことを徹底して避けていた。 私が 「天地人」 でいちばん腹の立ったのは、そのことでした。

 砲撃を受けて、本木クンは、しばらくのあいだ耳がおかしくなり、なにも聴き取れなくなる。
 その間、彼は大混乱の甲板をよろよろと歩きながら、血のりで足元を滑らせ、ちぎれた指を発見し、花田がマストの下敷きになってこと切れているのを見つける。 下士官がなにか怒鳴っているのですが、それも全く聴こえない。 そこに砲弾が近づいてくる音が聞こえ、花田のお守り袋を引きちぎって、その場から逃れ出ることができる。

 この間、悪夢のただなかにいるような感覚でした。

 いっぽう、従軍記者になって意気揚々と現地に到着した正岡子規(香川照之サン)でしたが、戦争終結の後というタイミングの悪さだったにもかかわらず、いや、それが幸いして、彼は戦争勝利の真実を、目の当たりにするのです。

 森本レオサン演じる軍曹たちに率いられて通った清国人たちの村で、子規は日本兵が村の物資を略奪しているところと、老人が怒って日本兵たちに抗議しているところを見る。
 「彼らはなんと言っとるんじゃ?」 という子規の問いに、軍曹は 「兵隊さんよありがとうと言っとるんじゃ!」。

 太平洋戦争末期に至るまで日本人の心に巣食った病理の萌芽を、ここに見ることができます。 (追記 このシーンは、原作にはないものだということですが、原作で描かれていたという、昭和時代の軍隊との比較をドラマ上では表現できなかったため、このようなバランスをとったのではないでしょうか。 明治時代の軍隊において、軍規の統制がどこまで徹底して行われていたのかは知る由もないことですが、それだけを描くと、戦争というものがカッコよく見えてしまう。 ドラマの作り手は、原作をないがしろにするためにこのシーンを創作したわけではないのだと、私は考えます。)

 たしかに、戦争で死んでいった同胞の兵隊さんたちに敬意を払うことは必要です。 ましてや、我が国を救う目的のために死んでいった方々には、我々は日本人として最大限の敬意をもたなければならない。 そのことを知らないで大人になることなどあってはならない、とさえ考えます。
 けれども、その敬意のもとに、戦争の真実がどのようなものであるのかに目をつぶってしまう、ということは、やはりあってはならない、そう私は考えるのです。

 この日清日露の戦争は、勝利の戦争だったにもかかわらず、太平洋戦争の総玉砕への道の端緒だったことは、忘れてはならないと感じます。

 花田たちを失ったことで、オイは軍人には向いとらん、と落ち込んでしまう本木クンに、東郷平八郎(渡哲也サン)は 「自分の決断を神のごとくに信じなければ、兵は動かせん。 よか指揮官とはなにか、犠牲になった兵のためにも、よう考えてほしか」 と諭すのですが、それはあくまで指揮官としての気構えにしか過ぎない。
 軍人は国の方針が正しかろうが悪かろうが、いったん敵を設定され、殲滅を命令されれば、それに従うしかない。 だから指揮官が自分の命令を神のごとくに考えていようが、もともとの目的が間違っていた場合、それは悪魔の命令、ということになってしまうのです。
 その立てた作戦がいかに正しくて、味方の被害を最小限に食い止めることができたとしても、我々はそこから学ぶべきものがありこそすれ、そのことは決してほめられるべき性格のものではない。

 敵を殺し、味方も殺される、殺し合い、という戦争の目的そのものが、そもそも間違っているからです。

 戦争を必要悪と考える心の中には、自分の国以外を見下そうと考える心が巣食っている。 そして、やられたからやりかえす的な、どっちが卵かニワトリか分からないような理屈が巣食っている。

 実際いろんな国の人たちと話してみると、だいたいの人はいい人ですよ。 それでもやはり、親しく話しているうちに、この国の人にはこの国の成り立ち的にどうしても譲れない一線というものがあるんだな、ということが、分かってくる。
 それを無視して土足でずかずか他人様の領域に入り込んでいくのが戦争なのだ、と私などは考えています。

 どうして互いに、尊重し合えないんですかね。

 や、ずいぶん話がとんでもない方向に行ってしまいました。

 ただ、優れたドラマというものは、このようにさまざまなことを考えさせてくれる作りに、なっているものです。
 凄いです。 このドラマ。 たんに近代日本の上昇志向を描いているだけに、とどまっていません。

「坂の上の雲」 に関する当ブログほかの記事

第1回 いや、ガイじゃのう!
http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/1-46c5.html
第2回 列強に植民地化されなかった日本とはhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/2-3ded.html
第3回 親というものは、ありがたいものですhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/3-9188.html
第4回 戦争の真実を見つめようとしない人々http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/4-4583.html
第5回 今度は、一年後ですか… http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/5-16b5.html

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コメント

はじめまして。坂の上の雲ですが、子規が略奪に出会うシーンはドラマの脚本家の創作です。原作では、このころの日本は幕末に欧米と結んだ不平等条約を是正するため、文明国であることを証明するため必死だった、ということでこの後の義和団事件のときに日本が軍規を厳しく守らせたという話が出てきます。原作も小説で歴史書ではありませんが、面白いから一度読んでみてはいかがでしょう。

??様
コメント、ありがとうございます。

私もネットで、この部分は原作にはないということを読んだ後、この文章を書きました。

もし事実、まったくこのようなことが行なわれなかった、と言われてしまえば、まったく申し訳ない話で弁解の余地もございませんが、戦争を遂行する上でこのような行為は、必然的に起こってしまうものなのではないか、と個人的には思っています。

戦争を実際に遂行する人間つまり兵士たちは、好むと好まざるとにかかわらず、どうしても人間を殺す、という行為の後の気分の変化に遭遇しているはずです。

元来、人間というもは、人間を殺すような精神状態にはない。

そこで、相手のほうが悪いのだ、という精神状態に自分をもっていく、という回避行動がとられる場合もあると、私は考えるのです。

軍隊において、そのような行為に走る人は、ごく一部かもしれない。
ただ、ゼロではないと、私は思います。

いずれにせよ、戦争というものには、殺すという行為が不可欠であることだけは、どうしようもない事実なのです。

それを、相手が悪いとか、史実によればこうなのだとかとして、必要悪であると考える心に対して、私はこの文章で異議を唱えたつもりであります。

なにとぞ、ご理解くださいませ。

昨日コメントを書かせて頂いた者です。返信頂き感謝致します。私も戦争の悲惨さを否定したい訳では無く、史実としばりょーの区別が付かない訳でも無いです。原作には旅順虐殺事件が出てこないなど問題もあります。ただ、原作のファンとしては、昭和の軍部との比較のため明治期をある程度理想化して描写した原作者の思いにも共感するところが大きく、ドラマで興味を持たれた方には原作もご一読頂ければと思った次第です。

??様
再コメント、ありがとうございます。

??様の御真意を汲み取ることができず、恐縮至極であります。

個人的で勝手な感想なのですが、私はインターネットで展開される論調に、ちょっと右寄りなものを感じています。

そのため??様の真摯なコメントに、ちょっと身構えてしまったところもございました。
傑作との話をよく聞く 「坂の上の雲」 の原作なので、折があれば一読いたしたいなあーと、思います。

確かに、昭和の軍部の変容というのは、ありますよね。

そのため明治期の軍隊をある程度理想化した、というのであれば、戦争の暗部も描写すべきだ、とドラマスタッフは考えたのかもしれません。

それがNHKの持つバランス感覚だと思うのですが、それがいろいろ言われることも、確かに多いですよね。

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  • : レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]

    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
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MUSIC

  • ザ・ビートルズ -

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    ロック界、いや、すべてのポップミュージックにおけるアルバムの中で史上最高と称され、すでに世界文化遺産の域にまで達しているこのアルバム。 そのアルバムの発売50周年を記念して、スペシャルエディションがリリースされます。 なかでもブッ飛ぶのがこのスーパースペシャルボックスセット。 CD4枚組であらたなリミックスのステレオ盤1枚、モノ盤1枚、初期テイク集が2枚、さらにブルーレイ1枚とDVD1枚で5.1サラウンド、ハイレゾ音源、ドキュメント映像 「メイキングオブサージェントペパーズ」 のデジタルリマスター等々、卒倒するようなラインナップです。 18、000円プラス税と値は張りますが、史上最高の名盤だからこそこれは買い。 5月26日の発売までに予約をしておけば、アマゾンならば値下がりした時に値段がそのあと高騰しても最安値で購入できます。 ビーファンならずとも、これは注目ですぞ!

  • 山口 百恵 -

    山口 百恵: ゴールデン☆アイドル 山口百恵(完全生産限定盤)
    全シングルA・B面プラスボーナストラック(「あなたへの子守歌」)を、山口百恵名義としては初のブルースペックCDとしてリリース。 音はいわゆるドンシャリ系ではなく、アナログ盤に準拠した原音に忠実な印象です。 パッケージングはアナログシングル盤サイズで中袋、CDを納めるケースが完全にドーナツ盤をイメージしています(よく言えば斬新…笑、悪く言えばチャッチイ…笑)。 しかしその発想は買える(笑)。 ほぼ原寸大のシングルジャケットと裏の歌詞カードの複製ブックレット。 ただスキャニングは欲を言えばもう一歩。 当時シングル盤を中心に聴いていたかたなら、この編集盤はかなりの 「買い」 です。 しかしこのジャケット表紙の写真、スッピン風で個人的にはすごく好き。

  • デイヴ・グルーシン&リー・リトナー -

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    NHK朝ドラ 「花子とアン」 で美人のスコット先生が夜な夜な歌い、チビはなチャンがすっかり覚えてしまったイギリス民謡、「ザ・ウォーター・イズ・ワイド(流れは広く)」。 このアルバムでルネ・フレミングが歌っていたのを思い出しました。 ルネのソプラノはけっして大袈裟でなく上品で、私のとてもお気に入りのソプラノ歌手ですね。 このアルバム自体は全体的にクラシックにギターのリー・リトナーが絡むフュージョンぽいものなのですが、故・黒田恭一サン評するところの、「大人が聴く音楽」。 胸を締め付けるような哀しみと、すべてを包み込むようないたわりに満ちていて、私の人生のなかでも最上位に位置する愛聴盤です。

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    ザ・ビートルズ: ザ・ビートルズBOX(限定生産品)(USBメモリ)
    パソコンにUSB端子があり(たいていついてると思います)、パソコンで音楽が聴ける環境をお持ちの人ならば、聴くことができます。 現在のテクノロジーで最もいい音質で聴ける、ビートルズの音楽です。 ただし国内版にもかかわらず、訳詞とか一切なし。 ジャケットもブックレットもパソコンデータ。 純粋に音楽だけ楽しみたい人向けです。 また、曲間にコンマ何秒かのブランクが入ります。 「アビイ・ロード」 のメドレーも同様です。 しかし、音はさすがに、すごい。 大きな音量であればある程、目の前にビートルズが迫ってくる勢いです。 ツヤが違います。

  • The Beatles -

    The Beatles: The Beatles [USB]
    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

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