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2009年12月27日 (日)

「坂の上の雲」 第5回 今度は、一年後ですか…

 「坂の上の雲」 第一部の最終回、第5回は、日清戦争を描いた前回がクライマックスと見えて、物語的には淡々とした流れ。
 ただロケ地的には、ロシア、アメリカなどの100年前の風景を再現、大型客船がニューヨークに入港するところなどは、映画 「タイタニック」 を思い出しました。 CG使いまくり、いやー、ぜいたくな映像だ。
 セリフもそれに伴って、英語、ロシア語が多く、覚えるの大変そうだなー、という感じ。

 ところで、のっけから難しい話をしてしまいますが。

 前回の原作にない日本軍部の横暴みたいな描写が、いかにも製作者側のとってつけたような理屈に感じたんですよ、今回。
 前回、軍の欺瞞を見たはずの正岡子規(香川照之サン)が、今回松山で秋山真之(本木雅弘クン)に再会した時に、なんのてらいもなく日本軍バンザーイ、みたいな態度で接していた部分。

 子規に自分の見た欺瞞を語らせないで、どうして前回、原作にない部分を挿入したんですかね。 その意味が分からない。

 しかもこの挿入部分は、結構日本人の民族的な誇りの部分に干渉してくる、政治的にもデリケートな問題のはずです。
 先週も触れましたが、私の個人的な意見を言わせていただければ、軍の欺瞞を表現した部分は、原作どおりに日清戦争を描写してしまえば、戦争賛美に思われてしまう点がある、ということからも、NHKのとったバランスなのだろう、という点で、それはよかったのではないか、と思います。

 司馬遼太郎サンの本を、私は不勉強な人間だから、読んだことはありません。 ただいろんな短いエッセイとか、司馬サンがお出になっていたテレビを拝見していた、それくらいの知識から言わせていただければ、司馬サンというのは、歴史を長いスパン、マクロ的な視点で見ることに長けている人物のように、お見受けされます。

 もし、司馬サンがご存命だったら、いったい今回の挿入部分を、どう思ったんでしょうか。

 昭和時代の軍隊と明治の軍隊の、どの部分が規律的に統率されていたのか、もっと詳細に映像でもナレーションでも、説明すべきだ、と考えたのではないでしょうか。
 もし正岡子規が前回の日本軍の横暴を、本当に目にしているのであれば、それについて子規は、何かを書き残しているかもしれない。 子規にとって正義と思われていた日本軍がそのような横暴をすることは、驚天動地のショックだったに、違いないからです。 しかしドラマ内では、その種の説明は、一切なし。 これはドラマとしての手法としては、片手落ちだというべきです。 ドラマだからフィクションを入れていい、ということでは済まない重大性が、この挿入部分には内在している。

 だから、子規と真之の今回冒頭の会話には、エラク肩透かしを食らったような気が、したのです。

 もうひとつ違和感があるのは、夏目漱石(小澤征悦サン)の描写(笑)。
 なぜ(笑)と入れたか、というと、ヤケにさわやかなんっスよ、このドラマでの漱石。
 私の勝手な先入観にすぎんのですが、漱石っていう人は、いかにも神経質で気難しがりやで、ロンドンに行って神経衰弱に陥り、松山で英語教師をしてもその土地になじむことができず、作家をしていてもいつも胃を悪くしてタカジアスターゼを飲んでいる、そんな暗ーい印象なのですよ(笑)。
 今回も、そのサワヤカ漱石サン(笑)は、日清戦争で万歳ばかりやりたがる、浮かれた日本人をけなしておるんですが、その弁舌はあくまでサワヤカー(笑)。
 なんか、漱石のイメージが、私の中で崩れていくのを感じます(笑)。

 今回、秋山真之がアメリカに留学したことで、ドラマが強調しようとしていたのは、「遅れてきた帝国主義国」、アメリカの目覚ましい発展の様子だった気がします。 それをドラマでは、アメリカの持つ精神性に重点を置いて説明していた。 そして同時に、その強引性についても、語ることを忘れなかった。
 当時建国120年にしか満たなかったアメリカ。
 ペリーが日本に来た時も、建国100年にもなっていない。
 つまりエラクペーペーの国なんですよ、感覚的に言って。
 それが当時あれほどの大国になりつつあったのは、日本と同じように、坂の上の雲を見上げて一直線に突き進む、上昇志向があったからだと思うんです。
 けれどもその発展には、日本とは違い、先住民族を巧みに絶滅に誘導し、世論を巧みに洗脳していった結果である、そんな描きかたを、ドラマではしていた。

 その象徴的なシーンが、真之と、予備役大佐であるアルフレッド・セイヤー・マハンとの会見。
 スペインとの戦争に大義が必要なのでしょうと話す真之に、マハンは平然と、こう言い放つ。
 「そんな大げさなものではなく、アメリカ国民を怒らせる、単なるきっかけがあればいいんだ」、と。

 そしてイエローペーパーを使った世論の煽動。
 まあ、日本にしたって、陸奥宗光サン(大杉漣サン)が 「軍備力の後ろ盾がない外交は、所詮なんの力もない」 と、ロシアとの戦争を煽ってましたけどね。

 話は変わりますが、真之より一歩先に出世している、広瀬大尉(藤本隆宏サン)。
 ロシアに留学し、なかなかキモの座った演技を見せていますが、元は水泳選手だったそうで。 ちょっと今後、注目株かもしれません。

 そして今回、もうひとつ重点が置かれていたのは、どんどん出世していくように見える秋山真之を、まるで見上げるようにして地上でのたうちまわる、正岡子規と、その妹律(菅野美穂チャン)の姿でした。
 特に律は、ドラマを見ていると、なんか2回も離婚しているようでして。
 当時バツ2なんて言ったら、ほぼ女としては失格者(笑)みたいな感じじゃなかったのかなー。
 そんな彼女が、真之から再婚するよう、うながされて。
 ドラマを見ている限り、律が真之に好意を抱いていることは、分かりすぎるくらい分かる話なんですが、真之は、そーゆーことにとんと疎い人物で(笑)。
 「送り出すたびに、淳サン(真之のミドルネーム?)はどんどん偉うなっていく。 うち、いっつも淳サンを送ってばっかり。 変わらんのはうちだけじゃ」
 停滞しているような人生を送っている者には、ちょっと身につまされる、セリフであります。
 そしてそれが、重病を患っている子規と、その兄を看病する妹を、そのまま表現している、セリフでもあるのです。 菅野美穂チャンの演技は、けなげで、とても切なくなります。

 しかし重病、とか言うわりに、子規はその後、またまた東京に引っ越したりして。
 ここらへんの事情というものを、ドラマでは説明しておりませんでした。
 どうしてこう、あっち行ったりこっち行ったりしとるんでしょうか?

 ともあれ、根岸の借家で、子規はひがな庭を見ながら、「ここが自分にとっての、小楽園なんじゃ」 と母親に吐露する。
 大晦日というわりには、クモが巣を張っていたりアリが歩いていたり、どんな暖冬じゃ!(笑)と思いましたけど。
 まあそれはいいとして(笑)、子規が地上であがきながら、最後にたどりついたのが、その小宇宙だった。
 これが現代のコンクリートだらけの住居だったら、ここまで俳人としての感性は満たされなかったでしょうが、その自然いっぱいの庭で展開する出来事が、子規にとってはパラダイスに思えた。 この境地を理解するのは、現代人には結構至難の業なのかなーとも、感じました。

 今回の 「坂の上の雲」、いちばん心に響いたのは、その子規が、アメリカに立つ真之に語った願いでした。

 「サルまねのどこが悪い! 日本人がいかに素晴らしい吸収力、消化力を持っとるか、あしらはじゅうぶんに誇ってええんじゃ。 日本には、大きくて、深い皿がある。 そこに乗っかるのがいろいろあるんが、日本の面白さよ」
 「そういう国を、滅ぼしてはならん」
 「そうじゃ。 国が滅びるいうことは、文化が滅びるいうことじゃ。 淳サン。 あしはあとどんぐらい生きられるか分からん。 じゃが、あしが死ぬまでにやり遂げようとすることを、無駄にならんようにしておくれ」
 「よし。 引き受けた」

 国を守るということは、このような深い決意の上にしか成り立たない覚悟なのだ、とつくづく感じました。

 そして次回、ああ~、長い。 来年の、12月ですか。 一気にやれっ!つーの。 待ってらんない(笑)。 忘れっちまうよ、ストーリー(笑)。 せめて半年に一回とか。

 それにしても。

 阿部寛サン、今回出番、なかったなあ~(笑)。 モチ食っただけじゃないですか?(笑) これで来年12月まで、出番はお預けですか?

「坂の上の雲」 に関する当ブログほかの記事

第1回 いや、ガイじゃのう!
http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/1-46c5.html
第2回 列強に植民地化されなかった日本とはhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/2-3ded.html
第3回 親というものは、ありがたいものですhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/3-9188.html
第4回 戦争の真実を見つめようとしない人々http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/4-4583.html
第5回 今度は、一年後ですか… http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/5-16b5.html

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