« 「JIN-仁-」 第8回 自分の器との闘い! | トップページ | 「新語・流行語大賞」 の違和感 »

2009年12月 1日 (火)

亀田兄弟と矢吹丈

 「JIN-仁-」 が始まる前に、亀田興毅と内藤のボクシングを見たのだが、まずどうして人気ドラマ 「JIN」 の放送時間をずらしてまで、この試合を放送したのかが、よく分からない。
 おそらく 「JIN」 の視聴者も取り込もうという魂胆だったのだろうが、なんとなくセコい。

 試合内容は、正直言ってアナウンサーが感動しまくるほどのものでもなかった。 内藤ばかりがひたすら前に出て闘い、亀田が後ろに下がりながらカウンターを繰り返す、という、見ていてどうにも燃えない試合だった。
 特に亀田の闘い方は、とてもチャレンジャーのそれとは思えず、いつから彼は点数稼ぎボクサーになってしまったのか?と思うくらい。 アナウンサーはこれを、クレバーだと形容していたが、私に言わせれば、ずいぶんお行儀のいいボクシングだな、という感じ。
 よほど35歳の内藤のほうが、自分をすべて出し切るボクシングをしていた気がする。 感動するとすれば、内藤の、年齢の壁を越えようとする気迫だけだった。
 35などというと、ボクサーとしてはかなり高齢である。 それが、まるで挑戦者のように、彼はただひたすら前に出て闘った。

 それはそれとして、私は昔から、ボクシングの亀田親子に対して、あまりいい印象を抱いていない。
 がんばって世界チャンピオンになるくらいだから、並の努力をしているとは思われないし、親子間の情愛の深さは、そんじょそこらの仮面家族なんかよりも、よほどまっとうな気がする。
 だのに、リングで歌を歌ったり、相手選手を口汚くののしったりするその態度に、私はなんとなく眉をひそめてしまっていた。

 だが、私の心酔しているボクシングマンガの不朽の名作、「あしたのジョー」 の矢吹丈と、この亀田兄弟というのは、結構同じベクトルなのではないか?と以前考えたことがある。

 ジョーもデビュー戦ではさんざんはしゃぎまわって、歌まで歌いかねない勢いだった。 観客にはウケていたが、解説者などには大ひんしゅくを買っていたくらいだし、試合においても、ノーガード戦法などという、冷静に考えれば相手をナメきっている試合運びをした。 ウルフ金串を 「やせ犬野郎」 とバカにしていたし、果ては白木葉子に対して、相当人格否定レベルの暴言を吐き、突き飛ばしたりなんかもしていた。

 私はジョーを、喧嘩っ早くて手に負えない野生児として見ていたために、そんな問題行動を当然のようにして見ていた。 むしろ、そんなジョーをカッコイイと思い、その燃え尽きる生き方に感動し、何度となくこのマンガを読み返したのである。
 だが亀田兄弟がやっていることは、まさしくジョーのひんしゅくものの行動ではないか?
 もしかして私は、デビュー戦でジョーをこき下ろしたあの解説者のように、お行儀のいい常識人としての、「つまらない大人」 になってしまったのだろうか?

 と、ちょっと焦ったのだが(笑)、それに対する回答は、案外あっさり出てきた。

 当時の亀田親子に共通していたのは、相手をあくまでバカにしている、という態度であった。
 それがパフォーマンスの類で演出されているとはいえ、相手のことをゴキブリとか言ったり、メンチカツを食ったり、挑発するセリフがポンポン出てくることに、私は嫌悪感を抱いたのだ。 歌を歌うことも、ある意味対戦相手のことなどまるで眼中にない、極めて自己本位なファンサービスであったように思う。

 ジョーは違う。
 いくらはじめはバカにしきっていた相手でも、相手とぶん殴り合うことによって、「百万語のべたついた友情ごっこ」 よりも確かな絆を持つことができたのだ(蛇足だが、このジョーの発言が、学生運動の分裂期になされたことは、重要である)。 そこには相手に対する尊敬の念も生まれ、同じ情熱の共有という信頼感も生まれたに違いない。 ジョーは対戦相手と、ぶん殴り合うことによって、かけがえのない戦友となったのだ。

 今回亀田興毅は、試合後内藤にねぎらいの態度を示したが、それは彼が以前に比べてまた大人としての自覚を身につけた証拠のように思えた。 彼には、弟の一件の時にも一身になって批判を受け止めようとした、潔さがある。 叩かれ続けた人間の持つ強さを、彼は備え始めた気がする。

 だが、この試合後も、以前のように 「どんなもんじゃい!」 とタンカを切っていたが、内藤との試合は、それにしては少々しょぼい消極的ボクシングだったのではなかろうか。
 彼が点数稼ぎでチャンピオンになったことを、私は批判するものではない。 ただ、この試合を見ていて、彼が海外の実力のある選手と互角に戦えるようには、私には思えないのだ。
 もっと型破りな、突き抜けた闘いを見せてくれっ!

« 「JIN-仁-」 第8回 自分の器との闘い! | トップページ | 「新語・流行語大賞」 の違和感 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/521783/46901566

この記事へのトラックバック一覧です: 亀田兄弟と矢吹丈:

« 「JIN-仁-」 第8回 自分の器との闘い! | トップページ | 「新語・流行語大賞」 の違和感 »

2019年1月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

BOOKS

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ紹介記事より抜粋)。 本書下巻では、1962年のレコードデビューまでが書かれています。

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 上

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 上
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ記事より抜粋)。 この上巻ではビートルズの祖先から遡ってリバプールで人気に火が付き始めたところまでが書いてあります。

  • ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白

    ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白
    まず驚かされるのが、表紙のポールの写真です。 よくこんなのが採用されたな、というくらい、刻まれた年輪が顕著に分かる 「年老いたポール」。 飾り気のないその写真に、「素のポール」 をあぶり出そう、という心意気が見える。 そして実際、著者のその目論見は、成功しているように思えます。 何より大きいのは、「NME」「Q」「MOJO」 など音楽メディアで長年記者を務めてきた著者がポールと同じリバプールの出身者である、ということ。 さらにポールと同じファースト・ネームであること。 だからポールはまるで自分の分身に話しかけるかのように、時折同郷人にしか分からない言葉で気さくに著者に話しかける。 この本を読む者は、まずその 「不思議なリラックス感」 に包まれるはずです。  本の構成は大きく二つに分かれます。 前半ではビートルズからウィングス、ソロに至るポールのたどってきた長い長い歴史、後半ではポールの人格に迫る試みがなされていく。 そのインタビューは、一気に行なわれたものではありません。 著者がNMEの記者だった1979年のものから、明示はされていないがおそらく2013年、「NEW」 の発売前後が最新のものではないか、と思われます。 実際読んだ感覚では 「キス・オン・ザ・ボトム」 あたりが最新のような気もする。 その30年以上にわたる膨大なポールへのインタビューを、項目によって構成し直しているようです。 ですから、今年(2016年)亡くなったジョージ・マーティンについてのポールの見解であるとか、最新の情報が提示されているわけではない。 ポールの情報というのはこの歳になってもなお日々更新型ですから、その点については物足りなさが確実にあります。 さらに、30年以上というとポールのものの考え方にも変化変遷があってしかるべきだと思うのですが、30年以上をリミックスにかけているからその変化というものがつかめてこないもどかしさがある。 表紙を飾ったポールの 「老い」 という問題にも、この本はきちんと答えてくれているわけではない。 さらに言えば、ジョン・レノンの死について多くが割かれているのとは対照的に、2001年に亡くなったジョージ・ハリソンの死についての記述はない。 正直なところ、このような本を読み漁ってきた身としては、衝撃に値するような情報が書かれているわけではありません。 しかし前述したような、リラックスしたムードのなかでポールと語らっているような疑似体験を共有できる強みが、この本にはある。 この本全体に貫かれているのが、この心地よさなのだ、と思うのです。 その心地よさが乱れるパートがあります。 自身の失敗作、どうでもいい作品について語るときのポールは多分に感情的になりがちであり、イライラした様子を隠しません。 特に 「シークレット・フレンド」 を語るポールのくだりはポールファンなら一読に値する部分でしょう。 しかしそのイライラも、ポールの人間性が垣間見える瞬間としてこの本にとっては必要なパートなのです。 3000円以上と、この本は決して安くはない部類の本です。 ただその値段に見合うパフォーマンスは兼ね備えています。 この本と付き合った1か月足らずの間、心地よい体験をすることができました(アマゾンの自身のカスタマーレビューより)。

  • : レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]

    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

MUSIC

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(スーパー・デラックス・エディション)(4CD+DVD+BD)
    ロック界、いや、すべてのポップミュージックにおけるアルバムの中で史上最高と称され、すでに世界文化遺産の域にまで達しているこのアルバム。 そのアルバムの発売50周年を記念して、スペシャルエディションがリリースされます。 なかでもブッ飛ぶのがこのスーパースペシャルボックスセット。 CD4枚組であらたなリミックスのステレオ盤1枚、モノ盤1枚、初期テイク集が2枚、さらにブルーレイ1枚とDVD1枚で5.1サラウンド、ハイレゾ音源、ドキュメント映像 「メイキングオブサージェントペパーズ」 のデジタルリマスター等々、卒倒するようなラインナップです。 18、000円プラス税と値は張りますが、史上最高の名盤だからこそこれは買い。 5月26日の発売までに予約をしておけば、アマゾンならば値下がりした時に値段がそのあと高騰しても最安値で購入できます。 ビーファンならずとも、これは注目ですぞ!

  • 山口 百恵 -

    山口 百恵: ゴールデン☆アイドル 山口百恵(完全生産限定盤)
    全シングルA・B面プラスボーナストラック(「あなたへの子守歌」)を、山口百恵名義としては初のブルースペックCDとしてリリース。 音はいわゆるドンシャリ系ではなく、アナログ盤に準拠した原音に忠実な印象です。 パッケージングはアナログシングル盤サイズで中袋、CDを納めるケースが完全にドーナツ盤をイメージしています(よく言えば斬新…笑、悪く言えばチャッチイ…笑)。 しかしその発想は買える(笑)。 ほぼ原寸大のシングルジャケットと裏の歌詞カードの複製ブックレット。 ただスキャニングは欲を言えばもう一歩。 当時シングル盤を中心に聴いていたかたなら、この編集盤はかなりの 「買い」 です。 しかしこのジャケット表紙の写真、スッピン風で個人的にはすごく好き。

  • デイヴ・グルーシン&リー・リトナー -

    デイヴ・グルーシン&リー・リトナー: Two Worlds / Grusin & Ritenour
    NHK朝ドラ 「花子とアン」 で美人のスコット先生が夜な夜な歌い、チビはなチャンがすっかり覚えてしまったイギリス民謡、「ザ・ウォーター・イズ・ワイド(流れは広く)」。 このアルバムでルネ・フレミングが歌っていたのを思い出しました。 ルネのソプラノはけっして大袈裟でなく上品で、私のとてもお気に入りのソプラノ歌手ですね。 このアルバム自体は全体的にクラシックにギターのリー・リトナーが絡むフュージョンぽいものなのですが、故・黒田恭一サン評するところの、「大人が聴く音楽」。 胸を締め付けるような哀しみと、すべてを包み込むようないたわりに満ちていて、私の人生のなかでも最上位に位置する愛聴盤です。

  • 桜田淳子 -

    桜田淳子: ゴールデン☆ベスト 桜田淳子~シングル・コレクション
    彼女の活動期に発売されたシングルをすべて網羅したベスト盤。 確かに後年のものほど馴染みがありませんが、選曲漏れがないので、彼女の存在とは何だったのか自体に思いが至るベスト盤です。 音も楽器の音像がよくてなかなかいいマスタリングをしている気がします。 2600円程度で推移しています。

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: ザ・ビートルズBOX(限定生産品)(USBメモリ)
    パソコンにUSB端子があり(たいていついてると思います)、パソコンで音楽が聴ける環境をお持ちの人ならば、聴くことができます。 現在のテクノロジーで最もいい音質で聴ける、ビートルズの音楽です。 ただし国内版にもかかわらず、訳詞とか一切なし。 ジャケットもブックレットもパソコンデータ。 純粋に音楽だけ楽しみたい人向けです。 また、曲間にコンマ何秒かのブランクが入ります。 「アビイ・ロード」 のメドレーも同様です。 しかし、音はさすがに、すごい。 大きな音量であればある程、目の前にビートルズが迫ってくる勢いです。 ツヤが違います。

  • The Beatles -

    The Beatles: The Beatles [USB]
    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

無料ブログはココログ