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2010年1月28日 (木)

「曲げられない女」 第3回 死にゆく人のリアリティ

 このところドラマの 「リアリティ」 のありかたに、ヤケにこだわっているような私なんですが。

 菅野美穂チャンのもとに、新潟の母親(朝加真由美サン)がまた倒れた、という報せが来てから、永作博美チャンは新潟の同窓会のはがきを受け取り、谷原章介サンは新潟に用事が出来る。 レギュラーメンバー、新潟に都合よく集合。
 ここらへん、あまりに出来過ぎた展開で、かえってそのワザトラシさを逆手に取って正当化しているような、のっけから開き直りの権化みたいなお話で(笑)。
 「曲げられない女」 の強引な語り口は、さすがに第3回ともなるとこちらも慣れてきたのか、そうしなきゃ面白くならないだろうとこちらが勝手に納得してしまうのか、ともかく気にならなくなっている自分がいます(笑)。

 それでも、今回のお母さんが亡くなってしまう話は、それ以上にあり得ない展開の連続だったんですが(笑)。 あ、ネタバレです、っていつもの通りなんですけど(笑)。

 なにしろ、そのあり得なさときたら。
 病院から外に出たら今度こそ死にます、と言われているのに、朝加サンは何度もゴーインに退院しようとするし、医者からさんざん怒られているくせに、美穂チャンと永作チャンと谷原サンは協力して朝加サンを病院から脱出させるし、その際谷原サンは看護婦にキスしちゃうし(笑)、そしていざ教室の前まで来ておきながら、美穂チャンが結局母親の代わりに教壇に立っちゃうし(教室の前で大声で母親を怒鳴っているのに誰も生徒たちが出てこないし)(笑)、しかも教壇に立った美穂チャンの話はシッチャカメッチャカだし(笑)、そのあげくもう助かりません、ということになって、お母さんが最後に話をしようとしたのが、実の娘じゃなくて永作チャンと谷原サンだし。

 なんか、すべてがすべて、あり得なさ過ぎの連続だった気がするのですが。

 私が見ていて感じたのは、そのあり得ない展開に白けてしまうことよりも、朝加サンの演じた母親の、死を目前にした人の持つリアリティでした。
 そしてもうひとつは、たったひとりの肉親を亡くしてしまったあとの、美穂チャンのえも知れぬ喪失感、というリアリティでした。

 これは、身近な人を失った人でないと、感じることのできないリアリティかもしれないです。 もしくは、私が身近な人をそのような形で失ってきた経験のためから、そう感じるだけなのかもしれないです。

 朝加サンは、病院にいなければ死ぬ、と言われているのに、教師として生徒たちに最期の言葉を贈りたい、という一心で、病院を抜け出そうと抵抗しまくる。
 ここで、病状が悪すぎるだろとか、死にたいのかとか、完全にムチャをしているようにしか、見ている側には映らないんですが、実はこれが、死にゆく人のある種の特徴のような気が、私にはするのです。

 死に近づいている人は、まるで体が前に倒れていくように、どうしようもない不可抗力のような、ある種の力に押されるような、そんな感覚で死んでいくような気が、私にはします。
 なんとなく、まわり中に、自分が死ぬんだ、というオーラを発散させながら死んでいく、というか。
 とても簡単には抗えない、不思議な力がはたらいているような感覚、とでも申しますか。
 その力を、人は死神、なんて呼ぶのかもしれないです。

 今回 「曲げられない女」 で朝加サンが演じた死にゆく母親には、まさにその、死神に魅入られたようなリアリティを、私はとても感じました。
 朝加サンの演技、凄かったなー。

 もうひとつ、私が感じたリアリティは、菅野美穂チャンが、亡くなってしまった母親のケータイに、ふと電話をしてしまう、というところ。
 あーちょっと、私今書きながら、ちょっとまたウルウルきてしまいました。
 これって、ケータイの普及した現代においては、とてつもないリアリティじゃないですかね。
 「この電話は現在使われていません」 というアナウンスのあと、母親のケータイ番号を削除しようとして、思いとどまる美穂チャン。 その電話が、天国につながっていたら、どんなにかいいのに…。 イカン、また涙が出てきた(笑)。

 お葬式で、母親の飼い犬だったアトムが、飼い主のお棺にすがっている、というシーンも、なんか、泣けました~。
 母親も書いていた10年日記にはさまっていた、幼いころの美穂チャンが撮った、両親の写真。 ピンボケなのが、また泣けます。
 そして自分の10年日記に、「どうして死んだのよ、母さん……何のために生きてるか、分からなくなったよ、私……」 と書く美穂チャン。 ものすごい空虚、孤独感。
 ついでに、景気づけのはずの、いつものマイケルの曲ですが、これもジャクソン5時代の 「帰ってほしいの」。 軽快な曲なのに、「帰ってきてほしい」 という内容が、芸の細かいことをやってます。

 あり得ない展開ばかりだと思っていたのに、このお葬式からのたたみかけるような、美穂チャンを襲う巨大な喪失感は、確かに泣かせる展開ではありましたが、私にとってはそれ以上に、ちょっと怖すぎるほどのリアリティだったです。

 親子って、いくらウザったい時があっても、かけがえのないものなんですよね。 私は両親とも健在なのですが、将来のことを考えて、今回このドラマを見ながら、軽く恐怖してしまいました。

当ブログ 「曲げられない女」 に関する記事
第1回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/01/post-83d0.html
第2回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/01/2-5eb9.html
第3回 (当記事)
第4回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/02/4-1d07.html
第5回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/02/5-d241.html
第6回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/02/6-88ef.html
第7回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/02/7-3fa8.html
第8回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/03/8-05a5.html
第9回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/03/9-5d02.html
第10回(最終回) http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/03/10-2386.html

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コメント

リウさん、こんばんは。

>レギュラーメンバー、新潟に都合よく集合。
本当に都合がよい。でも「その都合のよさが、このドラマの面白みさ!」と受け入れてしまっている自分がいる。(笑)やはり脚本家の術中に嵌ってるみたい。

実は中盤のお母さんの病院外出騒動は、リアリティを感じず、若干白けていました。あんな容態で学校に行っても、みんなに迷惑かけるだけだろうに、と。で私は、お母さんが亡くならないだろうと高をくくってました。ゆえに実際亡くなる展開をみて、リウさんの言われるように、「死にゆく人」のリアリティを後から実感したのでした。

>お母さんが最後に話をしようとしたのが、実の娘じゃなくて永作チャンと谷原サンだし。
このシーンを思い出すと、今でも泣けてくるなぁ。本人(美穂ちゃん)にじゃないところが、ホントうまいっす。

>たったひとりの肉親を亡くしてしまったあとの、美穂チャンのえも知れぬ喪失感、というリアリティでした。
洒落にならないほど、リアリティ、よく出てました。

>「この電話は現在使われていません」 というアナウンスのあと、母親のケータイ番号を削除しようとして、思いとどまる美穂チャン。
これ、ケータイ時代の最高の「悲しい表現」だと思う。遊川さんって侮れないな。1話2話で、美穂ちゃんが行き詰った時、お母さんに何気ない電話をかけていたシーンがあったから、それが、この回でホントに活きてたと思います。じーんと来ました。

>これもジャクソン5時代の 「帰ってほしいの」。
うわー、そうなんだ!実にきめの細かい演出ですね。

第三話は、なめてたら、不覚にも一本とられたって感じですか。
このドラマは、「リアリティのなさ」と「リアリティ」を確信犯的にうまくブレンドしているところがありますね。
なんやかんや言いながら、各登場人物に感情移入できて、面白いドラマになってきました。

恋人との縁を解消し、長年勤めた職場を辞め、たった一人の肉親である母を亡くす。
以前リウさんが「遊川さんは主人公を焼け野原状態にする傾向がある」と言われてましたが、今のところその法則通りに展開してますね。
この焼け野原から、永作谷原コンビが救い出してくれるのを、来週まで祈ってます。(笑)

弥太郎様
コメント、ありがとうございます。

私も、母親の病院脱出騒動のくだりは、どうしてこの3人組(美穂チャン永作チャン谷原サン)が死にそうな母親を無理やり死なせるようなマネをするのか、正直戸惑いました。
そしてどうして、これほどまでに母親も、自殺行為に近いことをしたがるのか、ワケが分かりませんでした。

そこで思ったのは、これは、母親は、もうじき自分が死ぬことを自覚しているし、3人組(笑)も母親の好きにさせたがっているということは、それほどまでに絶望的な状況に、既に入っているんだ、ということでした。

ここらへんの説明が、ちょっと稀薄だったかな。 医者は 「もう絶望的です」 とは死の直前になるまで言ってませんでしたけど、だから 「母親が死ぬかどうか、お葬式になるまで、見ている側が分からない」。 それが遊川サンの思惑だったのかもしれませんけど、だから登場人物たちのあり得なさぶりが増幅されてしまった、そんな気がします。

朝加サンが最後に永作チャンと谷原サンに話をしたのは、結構美穂チャンの 「プチ追っかけ」(笑)をやってるこのふたりにとっては荷が重い気も、しましたけどね(笑)。

でも、永作チャンも谷原サンも、「プチ追っかけ」 とか言うわりに、美穂チャンに対して、全身でぶつかっている気がする。 その真剣さを、お母さんは見抜いたんでしょうね。

私、このシーンも、結構身につまされました。
ずいぶん不肖の息子なもんで(笑)、自分の親も、こいつになんか言うよりも、かけがえのない友達にこのバカ息子のことをお願いしよう、って思うんじゃないか、なんて(笑)。
ここらへんも、また決まり文句ですが、「リアリティ」 っていう感じだったかなー。

マイケルの曲は、さりげなくその回のテーマに沿っている気がすると同時に、遊川サンの、亡くなったマイケルに対する個人的なリスペクトなんかも、ちょっと感じたり、してます。

リウさん、辛い思いをしたんですね。自分、もし息子がいなくなったら参るだろうな・・・。

前にそういうリウさんの詩を見かけたのをおもいだしました。  

ドラマ大すきおやじ50才 様
コメント下さり、ありがとうございます。

まあ、人間、長く生きていれば大切な人の死には何度も直面することになります。
大切なのは、悲しむことのできる心ですよね。 それがあるから、今いる人にやさしくしていこう、という気が起きるものなのです。

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