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2010年2月19日 (金)

「不毛地帯」 第16回 壹岐ブチ切れの背景にあるもの

 石油開発で日本石油公社と巨大商事たちを相手取って戦うことになった、近畿商事。
 その圧力は佐藤栄作や田中角栄も巻き込んで、マスコミによる意図的な情報操作、豚肉輸入など近畿商事の別部門への霞が関の介入など、日本中がこぞって近畿商事叩きに狂奔する様相に。

 ただしこんな時に冷静に真実を見極めようとする男、田原(阿部サダヲサン)。 これまで何かと壹岐(唐沢寿明サン)にとっては煙たい男でしたが、なんとなく頼もしく見えてきました。 ただスクープを取りに行こうとする新聞記者だったのに、田原の成長ぶりにも今後注目せざるを得ません。

 こんな四面楚歌の中、壹岐の前に、またまた姿を現した、このドラマでの第2の怪人、小出(松重豊サン)…イーッ!(あっ、スイマセン、ショッカーの声でした)。 あ、ちなみに第1の怪人は、鮫島(遠藤憲一サン)です(笑)。
 この小出サン、今回ちょっと抑え気味ではありましたが、相変わらず、不気味だなあ…。 娘の多部未華子チャンと孫の太クンのことまで監視しているような雰囲気、壹岐にとってはどこまでも油断のならない男です。
 なんか、いるんですよね、こういう、エライ人に薄気味悪くまとわりついて、精神的な揺さぶりをかけたり、金をむしり取ろうとしたりしてくる、人間のクズみたいなヤツって。 松重サン、そういう人の雰囲気を、十二分に出しているような気がします。 迫真です。

 この小出、なんだか総会屋とつながっているみたいなんですが、何やってんですかね、一体。 ホント、ワケの分からない不気味さですよね。
 で、その小出の紹介で壹岐が対面した、総会屋のコワイ顔した人(梅野泰靖サン)。
 なかなか顔を見せない演出で、どんな人かと思ったら、私不勉強なことに、この人知りませんでした。
 その人を怒らせてしまって、事態はますます近畿商事に不利になってくる。

 そんな中、近畿商事を去ることになった第3の怪人(笑)、里井副社長(岸部一徳サン)は、ここぞとばかり大門社長(原田芳雄サン)に最後っ屁(笑)。 「今に壹岐に社長の座を追い落とされますよ」 って。 ひきつる大門社長(笑)。
 でも、里井サン、会社がこんなになってザマアミロでもなく、オシリペンペンでもなく、ただひたすら会社の行く末を案じる商社マンを全うしていましたよね。 さすがです。
 確かに、里井サンにも社長の椅子への確執はあったんでしょうが、男たるもの社長を目指さんでどうする!という価値観が大手を振るっていた時代ですからね。 これでこのドラマからも退場、というのは、とても惜しい気がいたします。

 そして石油開発の落札価格を探るために、またぞろ紅子(天海祐希サン)に取り入ってキーパーソンとのコンタクトに必要な条件を整える、壹岐。
 今回は紅子も割り切っていて、自分が新しく立ち上げる商売の後ろ盾をしてもらうことを交換条件に、壹岐の申し出を受け入れたんですが、やっぱりここらへんのギヴアンドテイクを盛り込まないと、話に真実味が生まれてこない気がします。

 だからこそ、兵頭(竹野内豊サン)がそのキーパーソンに会いに行く場面に、とても緊迫感を生み出す伏線となってくる。 前回のように、何もかもおぜん立てされたようなオリオン・オイルのリーガン会長との会見のようなイージーさがないからです。 見ごたえあったなあ、ドクター・フォルシに兵頭が結局門前払いを食らったシーン。 そして映画館での、「ヒマワリの種」 のコンタクト。 いやー、面白かったです、ここらへん。 竹野内サンの必死さが、ようやく私にもビンビン伝わってくる気がしました。 こういう、困難な問題にガッツで立ち向かう役って、竹野内サンに、ホントに合ってるよなー。

 そして兵頭がようやく落札価格判明の糸口を見つけて帰国し、壹岐に持ってきた成果が、モスクワで話をする、というドクター・フォルシの伝言。

 これに対してやおら、表情を曇らせる壹岐。

 モスクワ行きを、頑強に拒むんですよ。 反発する兵頭に、このドラマ始まって以来(笑)とも思える大声を張り上げて。

 「生意気な口を叩くなっっ! 君には、極北の流刑地で囚人番号を押され、地下数十メートルの暗黒の坑内でつるはしを持ち、11年間も重労働を強いられた人間の苦しみが分かるかぁぁーっ!」

 ちょっと今までの展開から言うと、ソ連に行きたくないのは分かるけど、なんでそこまでブチ切れまくらにゃいかんのだ?(笑)という気にもなってきます。
 平和的に石油を獲得する、という、自分の人生の総決算とも思える事業なんじゃないですか。
 結局、壹岐はモスクワに行くことに、なるわけですけどね。

 でもこの時の壹岐の心情は、現在の社会的、世界的な情勢から考えるから、分かりにくくなるんじゃないかな、という気もしたんです。
 1970年あたりの、日本人のソ連に対する感情は、現在のロシアに対する国民感情と比較して、相当違っていた気がするんですよ。

 当時は、シベリア抑留から帰国した人々が左翼思想に染まっていた、という一面的事実が独り歩きをして、ドラマの中でも壹岐なんかはちっともその気がないのにソ連のスパイ呼ばわりされているほどだし、ソ連という国は、言論も統制され、真実が全く伝わってこない、とても怖い国だという認識で、日本人のソ連に対する意識は一致していた気がするのです。
 私も、ソ連という国は、人間が住んでいるのではなく、人間の顔をした思想が住んでいるのではないか、などと考えていた時期があります(チュウボウの頃ですけどね)。 マルクス=レーニンのシチめんどくさい思想にがんじがらめに縛られている国。

 兵頭が壹岐の頑強な姿勢に反発するのは、中東を中心に世界を飛び回っていた兵頭がいつの間にか身につけていた、国際感覚のなせる技だった。 兵頭も元軍人ですが、彼が身につけた国際感覚の前には、昔からの悪感情なんかちっとも問題じゃない、そう思えてしまうんでしょうね。

 そして壹岐がこれほどまでにブチ切れまくってソ連行きを頑強に拒むのは、当時の日本人全体の、ソ連に対する悪感情の代表として、壹岐が自分のことを捉えていたためだった、そう推測することができるのです。 そりゃ、自分(たち)がいちばんソ連にひどい目に遭ったんですからね。

 いずれにせよ、壹岐は自分の人生の原点でもあるソ連の地に、ふたたび足を入れることになった。 これは物語の体裁として、とても見事な構築のされかただと感じます。 エンディングで背広姿のまま極寒の収容所にたたずむ壹岐の姿が、ここで急に意味を持ってきたような気が、するのです。

当ブログ 「不毛地帯」 に関する記事
(番外) http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/10/post-6a81.html
第1回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/10/1-05a5.html
第2回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/10/2-w-070f.html
第3回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/10/3-4bae.html
第4回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/4-9755.html
第5回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/5-abb7.html
第6回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/6-d4bd.html
第7回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/7-8677.html
第8回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/8-4f4a.html
第9回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/9-cdc5.html
第10回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/10-183b.html
第11回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/01/11-0587.html
第12回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/01/12-68a7.html
第13回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/01/13-2599.html
第14回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/02/14-4fa8.html
第15回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/02/15-d4df.html
第16回 (当記事)
第17回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/02/17-2-6e30.html
(番外) http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/03/19-b645.html
第18回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/03/18-5177.html
第19回(最終回) http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/03/19-7b99.html

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BOOKS

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ紹介記事より抜粋)。 本書下巻では、1962年のレコードデビューまでが書かれています。

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 上

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 上
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ記事より抜粋)。 この上巻ではビートルズの祖先から遡ってリバプールで人気に火が付き始めたところまでが書いてあります。

  • ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白

    ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白
    まず驚かされるのが、表紙のポールの写真です。 よくこんなのが採用されたな、というくらい、刻まれた年輪が顕著に分かる 「年老いたポール」。 飾り気のないその写真に、「素のポール」 をあぶり出そう、という心意気が見える。 そして実際、著者のその目論見は、成功しているように思えます。 何より大きいのは、「NME」「Q」「MOJO」 など音楽メディアで長年記者を務めてきた著者がポールと同じリバプールの出身者である、ということ。 さらにポールと同じファースト・ネームであること。 だからポールはまるで自分の分身に話しかけるかのように、時折同郷人にしか分からない言葉で気さくに著者に話しかける。 この本を読む者は、まずその 「不思議なリラックス感」 に包まれるはずです。  本の構成は大きく二つに分かれます。 前半ではビートルズからウィングス、ソロに至るポールのたどってきた長い長い歴史、後半ではポールの人格に迫る試みがなされていく。 そのインタビューは、一気に行なわれたものではありません。 著者がNMEの記者だった1979年のものから、明示はされていないがおそらく2013年、「NEW」 の発売前後が最新のものではないか、と思われます。 実際読んだ感覚では 「キス・オン・ザ・ボトム」 あたりが最新のような気もする。 その30年以上にわたる膨大なポールへのインタビューを、項目によって構成し直しているようです。 ですから、今年(2016年)亡くなったジョージ・マーティンについてのポールの見解であるとか、最新の情報が提示されているわけではない。 ポールの情報というのはこの歳になってもなお日々更新型ですから、その点については物足りなさが確実にあります。 さらに、30年以上というとポールのものの考え方にも変化変遷があってしかるべきだと思うのですが、30年以上をリミックスにかけているからその変化というものがつかめてこないもどかしさがある。 表紙を飾ったポールの 「老い」 という問題にも、この本はきちんと答えてくれているわけではない。 さらに言えば、ジョン・レノンの死について多くが割かれているのとは対照的に、2001年に亡くなったジョージ・ハリソンの死についての記述はない。 正直なところ、このような本を読み漁ってきた身としては、衝撃に値するような情報が書かれているわけではありません。 しかし前述したような、リラックスしたムードのなかでポールと語らっているような疑似体験を共有できる強みが、この本にはある。 この本全体に貫かれているのが、この心地よさなのだ、と思うのです。 その心地よさが乱れるパートがあります。 自身の失敗作、どうでもいい作品について語るときのポールは多分に感情的になりがちであり、イライラした様子を隠しません。 特に 「シークレット・フレンド」 を語るポールのくだりはポールファンなら一読に値する部分でしょう。 しかしそのイライラも、ポールの人間性が垣間見える瞬間としてこの本にとっては必要なパートなのです。 3000円以上と、この本は決して安くはない部類の本です。 ただその値段に見合うパフォーマンスは兼ね備えています。 この本と付き合った1か月足らずの間、心地よい体験をすることができました(アマゾンの自身のカスタマーレビューより)。

  • : レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]

    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

MUSIC

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(スーパー・デラックス・エディション)(4CD+DVD+BD)
    ロック界、いや、すべてのポップミュージックにおけるアルバムの中で史上最高と称され、すでに世界文化遺産の域にまで達しているこのアルバム。 そのアルバムの発売50周年を記念して、スペシャルエディションがリリースされます。 なかでもブッ飛ぶのがこのスーパースペシャルボックスセット。 CD4枚組であらたなリミックスのステレオ盤1枚、モノ盤1枚、初期テイク集が2枚、さらにブルーレイ1枚とDVD1枚で5.1サラウンド、ハイレゾ音源、ドキュメント映像 「メイキングオブサージェントペパーズ」 のデジタルリマスター等々、卒倒するようなラインナップです。 18、000円プラス税と値は張りますが、史上最高の名盤だからこそこれは買い。 5月26日の発売までに予約をしておけば、アマゾンならば値下がりした時に値段がそのあと高騰しても最安値で購入できます。 ビーファンならずとも、これは注目ですぞ!

  • 山口 百恵 -

    山口 百恵: ゴールデン☆アイドル 山口百恵(完全生産限定盤)
    全シングルA・B面プラスボーナストラック(「あなたへの子守歌」)を、山口百恵名義としては初のブルースペックCDとしてリリース。 音はいわゆるドンシャリ系ではなく、アナログ盤に準拠した原音に忠実な印象です。 パッケージングはアナログシングル盤サイズで中袋、CDを納めるケースが完全にドーナツ盤をイメージしています(よく言えば斬新…笑、悪く言えばチャッチイ…笑)。 しかしその発想は買える(笑)。 ほぼ原寸大のシングルジャケットと裏の歌詞カードの複製ブックレット。 ただスキャニングは欲を言えばもう一歩。 当時シングル盤を中心に聴いていたかたなら、この編集盤はかなりの 「買い」 です。 しかしこのジャケット表紙の写真、スッピン風で個人的にはすごく好き。

  • デイヴ・グルーシン&リー・リトナー -

    デイヴ・グルーシン&リー・リトナー: Two Worlds / Grusin & Ritenour
    NHK朝ドラ 「花子とアン」 で美人のスコット先生が夜な夜な歌い、チビはなチャンがすっかり覚えてしまったイギリス民謡、「ザ・ウォーター・イズ・ワイド(流れは広く)」。 このアルバムでルネ・フレミングが歌っていたのを思い出しました。 ルネのソプラノはけっして大袈裟でなく上品で、私のとてもお気に入りのソプラノ歌手ですね。 このアルバム自体は全体的にクラシックにギターのリー・リトナーが絡むフュージョンぽいものなのですが、故・黒田恭一サン評するところの、「大人が聴く音楽」。 胸を締め付けるような哀しみと、すべてを包み込むようないたわりに満ちていて、私の人生のなかでも最上位に位置する愛聴盤です。

  • 桜田淳子 -

    桜田淳子: ゴールデン☆ベスト 桜田淳子~シングル・コレクション
    彼女の活動期に発売されたシングルをすべて網羅したベスト盤。 確かに後年のものほど馴染みがありませんが、選曲漏れがないので、彼女の存在とは何だったのか自体に思いが至るベスト盤です。 音も楽器の音像がよくてなかなかいいマスタリングをしている気がします。 2600円程度で推移しています。

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: ザ・ビートルズBOX(限定生産品)(USBメモリ)
    パソコンにUSB端子があり(たいていついてると思います)、パソコンで音楽が聴ける環境をお持ちの人ならば、聴くことができます。 現在のテクノロジーで最もいい音質で聴ける、ビートルズの音楽です。 ただし国内版にもかかわらず、訳詞とか一切なし。 ジャケットもブックレットもパソコンデータ。 純粋に音楽だけ楽しみたい人向けです。 また、曲間にコンマ何秒かのブランクが入ります。 「アビイ・ロード」 のメドレーも同様です。 しかし、音はさすがに、すごい。 大きな音量であればある程、目の前にビートルズが迫ってくる勢いです。 ツヤが違います。

  • The Beatles -

    The Beatles: The Beatles [USB]
    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

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