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2010年2月 4日 (木)

「曲げられない女」 第4回 フンコロガシのジレンマ

 母親の死で、「何のために生きているのか、分からなくなった」 菅野美穂チャン演じる、オギワラサン。
 人生の目標を失ってさまよい続ける彼女が立ち直るまでが、今回のメインテーマ。
 見終わって気がつけば、笑いながら泣いてました、私。
 まっすぐであるがゆえに、必要以上に傷つき、必要以上に落ち込む。 その悲しさと可笑しさを同時に表現しているうえに、まっすぐであるがゆえに、普通では得ることのできないものも最終的に手にしている。
 このドラマの吸引力というのは、それを説教臭く見せずに、ギャグとシリアス交互の波状攻撃で見ている側を攻めてくるところにある、と感じます。 あり得ない展開をここまで見せることのできる、脚本家の遊川サンの真骨頂を見る気がします。

 谷原章介サンが今回冒頭、ケータイで美穂チャンと話をしようとしてやっぱりやめる、というところは、前回お母さんから娘のことを頼まれたことの重さが少々ウザかったから、という話の運び方は、やはり感心します。
 今回のドラマでは、全体的に 「必要とされること」「友情」 みたいなものがキーワードとして横たわっていた気がしますが、みんなちょっとそのことを重たく感じたりする側面と、実は裏腹なのだ、という場面が、同時に展開されていた気がします。

 だからこそ、シリアスな場面をシリアスで決して終わらせず、笑わせることで見ている側を納得させようとしている。
 谷原サンが美穂チャンのケータイ登録に使っていたコードネーム(笑)は、「日本一表情の分かりにくい女」(笑)。
 そこにかかってきた電話は、「日本一にぎやかな主婦」(笑)、永作博美チャン。

 単身で美穂チャンのところへ向かった永作チャンが見たのは、部屋でかかっていたマイケルの 「スリラー」 さながらのユーレイみたいな美穂チャン(笑)。 パソコンのツイッター、じゃなくって 「ツブヤイッター」(笑)にも、「人は何のために生きているのか、考え中なう」(笑)とか、ネガティブなつぶやきを何件も公開中、しかも反応さっぱりなし(笑)。 ゴミ箱にはちっともゴミが命中せず、マンションの契約更新通知まで(笑)。 そのたびお寺の鐘みたいな効果音が 「ゴォォォーン」(笑)。

 このドラマで感心するのは、大まかなギャグ設定がしっかりしているうえに、こうした細部にわたる点まで考え抜かれている点にあると思います。

 身も心もフヌケのような美穂チャンですが、谷原サンと永作チャンのなぐさめパーティで、司法試験に受かるまで我慢すると決めていたワインもチーズも口にしない、というところを見ると、まだ立ち直るきっかけとなる炎は、心の奥にくすぶっている、というところもさりげなく挿入。 ここで禁を破っちゃったら、それこそ自分の人生どうだっていいや、ということですからね。
 美穂チャンの本調子を取り戻そうと、谷原サンと永作チャンが 「間違った言い回し」 を繰り出すのも、笑えました~。 ところが美穂チャン、それを訂正する気力さえない。
 そんな美穂チャンの 「曲げられない女」 風な酔っぱらいかたも、面白かったです。
 理詰めで的確な状況判断をしながら自分を追い込み(笑)、むりやり辞世の句を書こうとして、いきなりバタンキュー(表現古い?)。

 永作チャンのたくらみで、鉢合わせした谷原サンと塚本高史クンのカッコ悪いケンカも、最高に面白かったです(笑)。
 ところでこの塚本クン、再度プロポーズを申し込もうとして、結果的にあきらめる。 150万の婚約指輪をあのあと拾っていた、という設定も可笑しかったですが、普通に考えて、彼が美穂チャンと付き合う資格のない男だとは、私には思えないんですけどね。 普通に優しいし、ずいぶん我慢して美穂チャンのことを待っているし、結果的に長いものに巻かれているけれど、それくらいは普通でしょ。
 それが、谷原サンと永作チャンの美穂チャンを思うまっすぐな気持ちに、結果的に勝てないと思ってしまう。 なんか、いかにもドラマチックな(ドラマでしかあり得ないような)3人のありかたに、ついていけてない普通人の感覚で、とてもかわいそうな位置にあるんじゃないかと、思うんですよ。

 谷原サンは美穂チャンのことを、「フンコロガシみたいに無駄なことをやっている」 と表現する。
 けれどもそれは、フンの中に卵を植え付けるための、実は重要な作業だったりする。 地道に、実直にそういう、他人から見ればフンをころがすみたいなカッコ悪いことをやり続けていることには、とても自分を抑制させる意志というものが必要だと、私は思います。

 その押さえ続けていた自分の気持ちがまたまた爆発してしまったのが、「ナカシマです」 の平泉成サンに、弁護士をやめることを思いとどまらせた後の、永作チャンからの美穂チャンへの思いやりの叱咤。
 「あんた、お母さんが死んでから泣いてないでしょ。 それがいけないのよ! 心の中にたまった、悲しさとか悔しさとか不安とか寂しさとか、全部そういうの吐き出さないから、いつまでもそうやって、ウジウジみじめったらしい顔してんのよ! …自分が泣けないんだったら、あたしが、手伝ってあげるわよ…」
 そして美穂チャンの頬に、一発平手打ち。
 「………痛い………痛いぃー……」
 たまっていたものが全部出てしまったような、美穂チャンの号泣シーンには、ただひたすら、泣けました。

 ところがこのドラマ、こんな感動的なシーンで見る側を泣かせておきながら、あとはギャグシーンの乱れ打ちで(笑)。

 あまりにも泣き続ける美穂チャンに、永作チャンもちょっとウザったくなってきたのか(笑)、「早紀、…そろそろ、いいかな、ね?」(笑)。

 美穂チャン 「ない!母さんにもらったネックレスがないぃぃ~っ!」
 永作チャン 「はぁぁ?…あんたホントによくモノなくすわねえ!」
 谷原サン 「んなもん勘弁してくれよどこ落としたんだよー?」
 美穂チャン 「なくした場所が分かっているなら探す必要はないのでその質問はおかしいと思います!」

 これで美穂チャンが、本調子を取り戻したことが一瞬で分かる。
 つくづくよくできてます。

 自分が弁護士になると決めたお父さんの姿を思い出させることで、平泉サンの存在がここで大きな意味を持ってきたし、結局平泉サンの弁護士事務所で働くことになって、美穂チャン的には問題がとりあえず沈静化したんですが。

 今度クローズアップされるのは、問題を抱えたままそれまでごまかしながら生きてきた、永作チャンの家庭問題みたいです。 果たして永作チャンも、まっすぐ生きることができるのでしょうか?

当ブログ 「曲げられない女」 に関する記事
第1回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/01/post-83d0.html
第2回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/01/2-5eb9.html
第3回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/01/3-a3aa.html
第4回 (当記事)
第5回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/02/5-d241.html
第6回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/02/6-88ef.html
第7回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/02/7-3fa8.html
第8回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/03/8-05a5.html
第9回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/03/9-5d02.html
第10回(最終回) http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/03/10-2386.html

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コメント

こんばんは。

今回見れませんでした。リウさんのレビューを読むと、かなり面白かったみたいですね。残念です。

>「日本一表情の分かりにくい女」(笑)。
>「日本一にぎやかな主婦」(笑)
確かに、面白い。(笑)荻原さん、元気になってよかったです。

弥太郎様
コメント、ありがとうございます。

それは残念でしたねー。 今回の記事ではあまりストーリーの流れに沿って追ってませんでしたけど、内容、お分かりになりましたか? いつもは次の週とかに再放送していた気がするんですが、来週の再放送の予定は、ないみたいですね…。 なんか、個人的には、いちばん泣けました、今までの中で(あっ、ご覧になっていないのに、スミマセン…)。

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BOOKS

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ紹介記事より抜粋)。 本書下巻では、1962年のレコードデビューまでが書かれています。

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  • ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白

    ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白
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  • : レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]

    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

MUSIC

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(スーパー・デラックス・エディション)(4CD+DVD+BD)
    ロック界、いや、すべてのポップミュージックにおけるアルバムの中で史上最高と称され、すでに世界文化遺産の域にまで達しているこのアルバム。 そのアルバムの発売50周年を記念して、スペシャルエディションがリリースされます。 なかでもブッ飛ぶのがこのスーパースペシャルボックスセット。 CD4枚組であらたなリミックスのステレオ盤1枚、モノ盤1枚、初期テイク集が2枚、さらにブルーレイ1枚とDVD1枚で5.1サラウンド、ハイレゾ音源、ドキュメント映像 「メイキングオブサージェントペパーズ」 のデジタルリマスター等々、卒倒するようなラインナップです。 18、000円プラス税と値は張りますが、史上最高の名盤だからこそこれは買い。 5月26日の発売までに予約をしておけば、アマゾンならば値下がりした時に値段がそのあと高騰しても最安値で購入できます。 ビーファンならずとも、これは注目ですぞ!

  • 山口 百恵 -

    山口 百恵: ゴールデン☆アイドル 山口百恵(完全生産限定盤)
    全シングルA・B面プラスボーナストラック(「あなたへの子守歌」)を、山口百恵名義としては初のブルースペックCDとしてリリース。 音はいわゆるドンシャリ系ではなく、アナログ盤に準拠した原音に忠実な印象です。 パッケージングはアナログシングル盤サイズで中袋、CDを納めるケースが完全にドーナツ盤をイメージしています(よく言えば斬新…笑、悪く言えばチャッチイ…笑)。 しかしその発想は買える(笑)。 ほぼ原寸大のシングルジャケットと裏の歌詞カードの複製ブックレット。 ただスキャニングは欲を言えばもう一歩。 当時シングル盤を中心に聴いていたかたなら、この編集盤はかなりの 「買い」 です。 しかしこのジャケット表紙の写真、スッピン風で個人的にはすごく好き。

  • デイヴ・グルーシン&リー・リトナー -

    デイヴ・グルーシン&リー・リトナー: Two Worlds / Grusin & Ritenour
    NHK朝ドラ 「花子とアン」 で美人のスコット先生が夜な夜な歌い、チビはなチャンがすっかり覚えてしまったイギリス民謡、「ザ・ウォーター・イズ・ワイド(流れは広く)」。 このアルバムでルネ・フレミングが歌っていたのを思い出しました。 ルネのソプラノはけっして大袈裟でなく上品で、私のとてもお気に入りのソプラノ歌手ですね。 このアルバム自体は全体的にクラシックにギターのリー・リトナーが絡むフュージョンぽいものなのですが、故・黒田恭一サン評するところの、「大人が聴く音楽」。 胸を締め付けるような哀しみと、すべてを包み込むようないたわりに満ちていて、私の人生のなかでも最上位に位置する愛聴盤です。

  • 桜田淳子 -

    桜田淳子: ゴールデン☆ベスト 桜田淳子~シングル・コレクション
    彼女の活動期に発売されたシングルをすべて網羅したベスト盤。 確かに後年のものほど馴染みがありませんが、選曲漏れがないので、彼女の存在とは何だったのか自体に思いが至るベスト盤です。 音も楽器の音像がよくてなかなかいいマスタリングをしている気がします。 2600円程度で推移しています。

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: ザ・ビートルズBOX(限定生産品)(USBメモリ)
    パソコンにUSB端子があり(たいていついてると思います)、パソコンで音楽が聴ける環境をお持ちの人ならば、聴くことができます。 現在のテクノロジーで最もいい音質で聴ける、ビートルズの音楽です。 ただし国内版にもかかわらず、訳詞とか一切なし。 ジャケットもブックレットもパソコンデータ。 純粋に音楽だけ楽しみたい人向けです。 また、曲間にコンマ何秒かのブランクが入ります。 「アビイ・ロード」 のメドレーも同様です。 しかし、音はさすがに、すごい。 大きな音量であればある程、目の前にビートルズが迫ってくる勢いです。 ツヤが違います。

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    The Beatles: The Beatles [USB]
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