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2010年2月18日 (木)

「曲げられない女」 第6回 失敗する、ということ

 主要人物が、自分の人生の根本問題といやがおうでも向き合わざるを得ない展開になっていくにしたがって、結構性格描写の甘さが露呈しているように見えてきた、「曲げられない女」。
 いや、のっけから厳しい書きかたで、ドラマを見て感動しているかたには申し訳ないんですが。 まずほめる前に、気になる点を書こうかな、と思います。

 主演の、菅野美穂チャンについては、作る側はかなり深いところまで突っ込んで、彼女の葛藤を考え抜いているように思えるんですよ。 だから、突っ張りながら生きている彼女の悲しみとか、苦しさなんかが、とても共感できる。

 だけど、彼女を取り巻く永作チャンや、谷原サンが持っている、彼ら自身の人生の根本的な葛藤が、ちょっと見る側を納得させるほどに作り切れていない、そんな気がするんです。

 前回、永作チャンが、結局自分の子供たちをむこうのダンナとバアバに取られて、見送る時も、なんとなくそんなことを考えました。
 確かその時、「悲しい顔をするのがシャクだから、笑って見送るの」 みたいなことを言いながら、半泣きの笑顔で永作チャンは子供たちを見送ったのですが。
 本当はここでグッとくるシーンだったんだろうけど、いまひとつ、永作チャンの悲しみに、のめり込めなくて。

 今回の、谷原サンが美穂チャンからブチ切れ激励されて(笑)泣いてしまうところも、いやー、なんか、泣かないでもらいたかった、と言うか。

 つまり、それまでの谷原サンの、このドラマでの性格としては、確かにお飾りの警察署長だったかもしれないけれど、美穂チャンに対してはとてもまっすぐにぶつかっていく男だったし、塚本高史クンのちょっとズルイところにも敏感に反応して、ちょっと言い過ぎなんじゃ?と思うようなこともずけずけ言うような男だったし。
 谷原サンが心の傷にしている、高校時代につき合った女の子に言われたという 「見かけ倒し」 という言葉。 でも谷原サンが、そんな見かけ倒しには、とても思えないんですよ。
 こんなニヒルで面白い仮面をかぶっている男に、簡単に泣いてもらいたくない、しかも美穂チャンとふたりきりならまだしも、永作チャンもいる前で、…そんな気がするんです。

 谷原サンの警察署長としてのやる気を、根こそぎ削ぐような事件が、今回はドラマのウラで進行します。
 それは、桶川ストーカー事件を想起させるような展開で、最終的には最悪の結末に至ることなく解決を見たのですが、この一連の流れで警察に何の落ち度もなかったということにしてくれ、と仲本工事サン(あっ違うか、あの側近の人)から言われ、組織を守ることが最優先の警察署長としての立場に、谷原サンは心から失望する。

 この、谷原サンが忸怩たる思いに陥るまでに、もうちょっと彼自身の 「お飾り人形」 的な扱われ方に対するアクションが、あってもいいような気がしたんですけどね。
 それまでいつも側近からいいようにあしらわれて、ごまかし笑いでやり過ごしていただけ、だったんですからね。
 笑いながらその裏でゴミ箱でも蹴っぽるとか、もっと谷原サンがそれに対して相当頭に来てるというところを、さりげなく見せてくれたら、もっと見る側は谷原サンに感情移入できたかも、しれません。

 側近のメガネの人が、谷原サンが辞める時に 「黙って言われたとおりにしてりゃ後生楽だろーが」 みたいに怒るのも、いかにもトートツ。 これも彼が谷原サンに対してどう思っているか、みたいな部分をどこかで挿入していれば、トートツには思えなかった気がします。

 まあ、ちょっとキツイことを書きましたが、話の流れ的には、面白かったと思います。

 最初マンションのメーワク大学生をたしなめる時、谷原サンは自分が警察であることをひけらかし、次にストーカーの件で自分の仕事に根本的な迷いが出ている時、今度は道端で酔っ払いに絡まれて、自分が警察であることをひけらかすのを拒絶する。
 この、谷原サンの行動の逆転現象。
 うまいコントラストだったと思います。

 そして何より、今回の 「曲げられない女」 美穂チャンのブチ切れセリフは、毎度のことではありますが、また見る側にもグサグサ突き刺さってくるような鋭さで(笑)。

 「私たちが本当に戦わなきゃいけないのは、そういう弱い自分となんじゃないのっ?(略)私だって、なんで9年も司法試験に落ちたのかまだ分かんないし!…でも、将来のことを不安に思ってくよくよ悩んでも何にも生まれないじゃない! 私たちに今できることをやるしかないよ……いいじゃない、少々失敗したって! 『失敗』 って、失って敗れるって書くけど、別に何も失わないし、負けたわけじゃないんだから!」

 しかもこのセリフ、夏木マリサンの本からの引用だと、美穂チャン 「正確に」 断っておりました(笑)。

 私はでも、こういうセリフを、30超えた美穂チャンが熱く語っていることに、とても共感するのです。

 普通、こういうセリフは、まだ年齢的にも若い人が語るほうが似合うような気がします。
 よく言われますよね、「失敗は若いうちにたくさんしておけ」 って。
 つまりこれって、年を取ったらもう失敗したら取り返しがつかないんだ、という意味でも、あるんですよね。
 だけど、そうなんでしょうか。
 確かに年をとればとるほど、いろんなしがらみが増えていって、失敗することなど許されなくなる気がします。
 でも、人間、裸一貫でやり直すことなど、どんなに年を取ろうが、出来るんじゃないのか。
 要は、今できることをやるしかない、そう自分が思えるかどうか、なんじゃないのか。

 人生、どこまで行ったって、失敗はつきものだと思うんですよ。 肝心なのは、そこからどうやって這いずり出るか、じゃないのかな。 絶望に負けることが、人生にとっての最大の悲劇なような気が、するんですよ。

 やー、また説教臭くなってしまいました。

 ところでいきなりぶっ倒れたり、「気分が悪い…」 とか話してたり、どこが悪いのかと思っていた美穂チャン。
 今回のマイケルの曲も、なんで 「ビリー・ジーン」 なんだ?と思っていたら、いきなり健診で 「妊娠してます」。 これのヒントだったんですねー。 「ビリー・ジーン」 って、子供を孕ませる話ですからね。 どうも塚本クンが孕ませたみたいなんですが(笑)、「ビリー・ジーン」 の歌みたいに、「あの子はぼくの子じゃない」 なんてことは、予告編では言ってなかったみたいです。

当ブログ 「曲げられない女」 に関する記事
第1回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/01/post-83d0.html
第2回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/01/2-5eb9.html
第3回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/01/3-a3aa.html
第4回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/02/4-1d07.html
第5回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/02/5-d241.html
第6回 (当記事)
第7回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/02/7-3fa8.html
第8回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/03/8-05a5.html
第9回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/03/9-5d02.html
第10回(最終回) http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/03/10-2386.html

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BOOKS

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ紹介記事より抜粋)。 本書下巻では、1962年のレコードデビューまでが書かれています。

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 上

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     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ記事より抜粋)。 この上巻ではビートルズの祖先から遡ってリバプールで人気に火が付き始めたところまでが書いてあります。

  • ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白

    ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白
    まず驚かされるのが、表紙のポールの写真です。 よくこんなのが採用されたな、というくらい、刻まれた年輪が顕著に分かる 「年老いたポール」。 飾り気のないその写真に、「素のポール」 をあぶり出そう、という心意気が見える。 そして実際、著者のその目論見は、成功しているように思えます。 何より大きいのは、「NME」「Q」「MOJO」 など音楽メディアで長年記者を務めてきた著者がポールと同じリバプールの出身者である、ということ。 さらにポールと同じファースト・ネームであること。 だからポールはまるで自分の分身に話しかけるかのように、時折同郷人にしか分からない言葉で気さくに著者に話しかける。 この本を読む者は、まずその 「不思議なリラックス感」 に包まれるはずです。  本の構成は大きく二つに分かれます。 前半ではビートルズからウィングス、ソロに至るポールのたどってきた長い長い歴史、後半ではポールの人格に迫る試みがなされていく。 そのインタビューは、一気に行なわれたものではありません。 著者がNMEの記者だった1979年のものから、明示はされていないがおそらく2013年、「NEW」 の発売前後が最新のものではないか、と思われます。 実際読んだ感覚では 「キス・オン・ザ・ボトム」 あたりが最新のような気もする。 その30年以上にわたる膨大なポールへのインタビューを、項目によって構成し直しているようです。 ですから、今年(2016年)亡くなったジョージ・マーティンについてのポールの見解であるとか、最新の情報が提示されているわけではない。 ポールの情報というのはこの歳になってもなお日々更新型ですから、その点については物足りなさが確実にあります。 さらに、30年以上というとポールのものの考え方にも変化変遷があってしかるべきだと思うのですが、30年以上をリミックスにかけているからその変化というものがつかめてこないもどかしさがある。 表紙を飾ったポールの 「老い」 という問題にも、この本はきちんと答えてくれているわけではない。 さらに言えば、ジョン・レノンの死について多くが割かれているのとは対照的に、2001年に亡くなったジョージ・ハリソンの死についての記述はない。 正直なところ、このような本を読み漁ってきた身としては、衝撃に値するような情報が書かれているわけではありません。 しかし前述したような、リラックスしたムードのなかでポールと語らっているような疑似体験を共有できる強みが、この本にはある。 この本全体に貫かれているのが、この心地よさなのだ、と思うのです。 その心地よさが乱れるパートがあります。 自身の失敗作、どうでもいい作品について語るときのポールは多分に感情的になりがちであり、イライラした様子を隠しません。 特に 「シークレット・フレンド」 を語るポールのくだりはポールファンなら一読に値する部分でしょう。 しかしそのイライラも、ポールの人間性が垣間見える瞬間としてこの本にとっては必要なパートなのです。 3000円以上と、この本は決して安くはない部類の本です。 ただその値段に見合うパフォーマンスは兼ね備えています。 この本と付き合った1か月足らずの間、心地よい体験をすることができました(アマゾンの自身のカスタマーレビューより)。

  • : レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]

    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

MUSIC

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(スーパー・デラックス・エディション)(4CD+DVD+BD)
    ロック界、いや、すべてのポップミュージックにおけるアルバムの中で史上最高と称され、すでに世界文化遺産の域にまで達しているこのアルバム。 そのアルバムの発売50周年を記念して、スペシャルエディションがリリースされます。 なかでもブッ飛ぶのがこのスーパースペシャルボックスセット。 CD4枚組であらたなリミックスのステレオ盤1枚、モノ盤1枚、初期テイク集が2枚、さらにブルーレイ1枚とDVD1枚で5.1サラウンド、ハイレゾ音源、ドキュメント映像 「メイキングオブサージェントペパーズ」 のデジタルリマスター等々、卒倒するようなラインナップです。 18、000円プラス税と値は張りますが、史上最高の名盤だからこそこれは買い。 5月26日の発売までに予約をしておけば、アマゾンならば値下がりした時に値段がそのあと高騰しても最安値で購入できます。 ビーファンならずとも、これは注目ですぞ!

  • 山口 百恵 -

    山口 百恵: ゴールデン☆アイドル 山口百恵(完全生産限定盤)
    全シングルA・B面プラスボーナストラック(「あなたへの子守歌」)を、山口百恵名義としては初のブルースペックCDとしてリリース。 音はいわゆるドンシャリ系ではなく、アナログ盤に準拠した原音に忠実な印象です。 パッケージングはアナログシングル盤サイズで中袋、CDを納めるケースが完全にドーナツ盤をイメージしています(よく言えば斬新…笑、悪く言えばチャッチイ…笑)。 しかしその発想は買える(笑)。 ほぼ原寸大のシングルジャケットと裏の歌詞カードの複製ブックレット。 ただスキャニングは欲を言えばもう一歩。 当時シングル盤を中心に聴いていたかたなら、この編集盤はかなりの 「買い」 です。 しかしこのジャケット表紙の写真、スッピン風で個人的にはすごく好き。

  • デイヴ・グルーシン&リー・リトナー -

    デイヴ・グルーシン&リー・リトナー: Two Worlds / Grusin & Ritenour
    NHK朝ドラ 「花子とアン」 で美人のスコット先生が夜な夜な歌い、チビはなチャンがすっかり覚えてしまったイギリス民謡、「ザ・ウォーター・イズ・ワイド(流れは広く)」。 このアルバムでルネ・フレミングが歌っていたのを思い出しました。 ルネのソプラノはけっして大袈裟でなく上品で、私のとてもお気に入りのソプラノ歌手ですね。 このアルバム自体は全体的にクラシックにギターのリー・リトナーが絡むフュージョンぽいものなのですが、故・黒田恭一サン評するところの、「大人が聴く音楽」。 胸を締め付けるような哀しみと、すべてを包み込むようないたわりに満ちていて、私の人生のなかでも最上位に位置する愛聴盤です。

  • 桜田淳子 -

    桜田淳子: ゴールデン☆ベスト 桜田淳子~シングル・コレクション
    彼女の活動期に発売されたシングルをすべて網羅したベスト盤。 確かに後年のものほど馴染みがありませんが、選曲漏れがないので、彼女の存在とは何だったのか自体に思いが至るベスト盤です。 音も楽器の音像がよくてなかなかいいマスタリングをしている気がします。 2600円程度で推移しています。

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: ザ・ビートルズBOX(限定生産品)(USBメモリ)
    パソコンにUSB端子があり(たいていついてると思います)、パソコンで音楽が聴ける環境をお持ちの人ならば、聴くことができます。 現在のテクノロジーで最もいい音質で聴ける、ビートルズの音楽です。 ただし国内版にもかかわらず、訳詞とか一切なし。 ジャケットもブックレットもパソコンデータ。 純粋に音楽だけ楽しみたい人向けです。 また、曲間にコンマ何秒かのブランクが入ります。 「アビイ・ロード」 のメドレーも同様です。 しかし、音はさすがに、すごい。 大きな音量であればある程、目の前にビートルズが迫ってくる勢いです。 ツヤが違います。

  • The Beatles -

    The Beatles: The Beatles [USB]
    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

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