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2010年2月25日 (木)

「曲げられない女」 第7回 妥協点の見つけどころ…

 曲げられない曲げられない、と言って、まっすぐに生きていことが、生きていくうえで、どこまで光を失わない価値なのか――「曲げられない女」 第7回は、そのことを見つめた、実に内容的に深い話だったような気がします。 自分を曲げずに生きることが、どれほど覚悟のいる、孤独な作業なのか、それを描いて秀逸でした。
 ここ数回、ちょっともたつき気味に見えたこのドラマでしたが、主役のオギワラ(菅野美穂チャン)のキャラクター設定は、永作チャンや谷原サンよりもかなり深く行なっているためか、彼女を中心とした話は、やはり見ごたえがあります。

 とは言うものの、やはり気になったのは、先週ラストで判明した、オギワラの妊娠。

 ふつうこれほどのカタブツで物事をきちっとしている人間が、避妊もきちんとしていない、というのは、あまりにも不用心。 確かに一度、塚本高史クンがオギワラの家に泊まった夜がありましたが、まあ、避妊していても、避妊具が常に完全とは限りませんし、デキちゃうときはデキちゃいますかね。 それより、その原因となる行為(ああ、まどろっこしいな、この表現…笑)をオギワラがしてしまう、ということ自体が、すでにあり得ない、というか。 ネットでも、議論を呼んでいたようです、この問題。
 この問題の原因は、結構軽いノリで、美穂チャンによって産婦人科の先生に 「正確に」 伝えられておりました(笑)。

 けれども作り手の主眼は今回、美穂チャンと永作チャン、谷原サンの友情を引き裂くことにあったわけであり。

 塚本クンに一切の相談もせず、美穂チャンはボーダイな妊娠問題に関するレポートを作成(笑)、「中絶」 という結論に至ります。 そして谷原サンに、中絶の同意書にサインをしてもらうよう頼むのですが、それに納得のいかない永作チャンは、塚本クンを直接呼んでくる。

 ボーダイなレポートを書いてそれだけの量を悩んでいる割に、当事者の塚本クンに一切知らせない、という美穂チャンの姿勢は、確かに木を見て森を見ない行為のように思えます。 人間、あまりにも悩み過ぎると、まず何を差し置いてもしなければならない根本的な問題を見失ってしまう、というよい例のような感じがしました。 永作チャンが思った通り、これは美穂チャンひとりの問題ではなく、塚本クンも込みの問題なのです。

 そして塚本クンから美穂チャンに、3回目のプロポーズ。 そこで中絶同意書を見てしまった塚本クンは逆上。
 「なんでこんな男にこんな大事なもん頼んでんだよ! いい加減にしろよ! オマエのエゴでこんなことしていいと思ってんのかよ! オレの子供なんだぞ! 産めよ! 勉強なんかやめろよ、司法試験がなんだよ! オマエの夢なんか大したことじゃないだろ!」

 このドラマにおいて、塚本クンは非常にミもフタもない描かれ方をしています。 つまり、逆上すると自分がどんなひどいことを言っているのかの判断もつかなくなってしまう男です。
 でも、私はとても共感するんですよ、塚本クンの演じているこの男に。
 人間って、あまりにも腹が立つと、相手の気持ちなんかまったくどこかに飛んでしまって、ギタギタのメタメタにしようとすることって、ないですかね? 少なくとも私には、その経験があります。

 塚本クンの怒りの発端は、中絶同意書のサインを、美穂チャンが谷原サンに頼んだ、ということであります。
 そして自分の側には、子供を殺すことには反対だ、という、絶対的な正義が存在している。 命を第一に考えている自分が、絶対正しいのだ、という論理が、美穂チャンにひどいことを言ってしまう怒りの原動力になっているのです。

 塚本クンはその場ですぐ、ひどいことを言ったことを後悔するのですが。
 でも、その場に残った空気は、「結局この人の心の奥底には、オギワラが弁護士になることなんかどうだっていいという本音があるんだ」 という、なんとも寒々しいものでしかない。

 でもこれは、塚本クンの本音ではない。 「心にもないことを言ってしまった」 レベルの話なんだ、と私には思えます。
 確かに事務所の女の子と両天秤にかけてたり、ずるい面もありますけど、この人とでなければ絶対に嫌だ、なんていう、まさにテレビドラマにでも出てきそうな相手なんか、存在すると思いますか? どっちが自分にとってふさわしい相手なのか考えることなんて、それこそ普通の話ではないですか。

 私、塚本クンを擁護いたしますよ、どこまでも(笑)。

 そこで谷原サンから、塚本クンは諄々と説教されるのですが、自分の恋敵から、そんな的確なお説教(笑)など、受けたいと思う男なんか、いると思います?
 またまた怒りに火がついて、塚本クンは美穂チャンのボーダイなレポートを 「なんだよこんなもの!」 と言って投げつけ、その場を立ち去ってしまう。 「自分に酔ってる」 とか谷原サンに言われましたけど、エーエーそうですよ!(笑) 酔ってますよ!(笑)

 この一件は、永作チャンのモチベーションを、すっかり失わせてしまうきっかけとなる。 ここらへんのドラマとしての見せかたが、今回はとてもうまかったですね。

 さて、ナカシマ弁護士事務所に相談に来ていた不倫の末のシングルマザーの、不倫相手のところへ乗り込んで、またまたブチ切れまくる美穂チャン。

 「法律よりも大事なことがあるんじゃないですか? それは、人間として最低のルールです! 自分でやったことに対する責任です! 他人が不幸になっても、自分が幸せになればいいという考えは、もうやめませんか? 自分が傷ついたり、つらい目にあったりするのは仕方ないけど、子供たちに同じような目に遭わせないようにするのが、私たち大人の最低の責任なんじゃないですか? 子供は親を選べないんです!」

 この言葉が、逆に自分に向かってくる刃となる。 この構成も、見事です。
 美穂チャンは、中絶をやめて、子供も産み、司法試験も受ける、ということを決意するのです。

 しかしそのことが、どんなに大変なことなのか。

 私にはとても想像がつきませんが、確かに並大抵の覚悟ではこの両立は困難極まりない気がします。 谷原サンも永作チャンも、この美穂チャンの決断には、大反対。

 ここでこの3人の友情が壊れる、導火線となる要因、美穂チャンの10年日記をふたりが見てしまったことがバレてしまう。
 「そんな友達は、…私には必要ありません」
 それを言っちゃあ、おしまいなんですが(笑)。 オギワラ、言いそうだ、言いそうだ、ああー、言っちゃった。 もう3人の友情も、おしまいだ(笑)。 そんな気持ちで、私は見ておりました(笑)。

 ふたりが出ていってしまったあとで、美穂チャンがかけるマイケルの曲。 ジャクソン5時代の 「アイル・ビー・ゼア」。 「そばにいるよ」 というその曲の内容と、じっと美穂チャンを見つめる犬のアトムの表情が、ぴったりフィットしてましたね。

 オギワラの行く手には、とても険しい山がそびえ立っています。 冒頭に述べたように、自分を曲げずに生きることは、こんなにつらいことなのか、と思えてなりません。 こんな時こそ、そばで支えてくれる人が、必要なのに。 妥協点を見いだせない性格、というのは、結局極限まで自分を追い込むしかなくなってしまうのでしょうか。
 とてもいろんなことを考えた、今回の 「曲げられない女」 でした。 傑作。

当ブログ 「曲げられない女」 に関する記事
第1回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/01/post-83d0.html
第2回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/01/2-5eb9.html
第3回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/01/3-a3aa.html
第4回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/02/4-1d07.html
第5回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/02/5-d241.html
第6回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/02/6-88ef.html
第7回 (当記事)
第8回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/03/8-05a5.html
第9回 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/03/9-5d02.html
第10回(最終回) http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/03/10-2386.html

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