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2010年3月25日 (木)

「外事警察」 第1-2回 ウラオモテの攻防

 去年(2009年)11-12月期にNHKの土曜ドラマで放送された、「外事警察」。
 その評判を聞いたのは、放送の後でした。

 先日90分のリミックス版が放送されていましたが、とりあえず今年の冒頭に衛星ハイビジョンで全話再放送されたものをちょっとずつ見ている感想を、誠に遅ればせながら何回かに分けて書いてみたいと思います。 まあまだ全部見てないので途中までの感想となりますが、ご了承ください。 このところ見たいと思わせるテレビが全くなくて、書くことないので、ほんのお茶濁しという感覚ですが(笑)。

 刑事だった松沢陽菜(尾野真千子サン)が研修のために配属された、警視庁公安部外事4課。
 外事警察というのは、とてもアバウトに言ってしまうと、外国人スパイを捕まえる仕事(ホントにアバウトだな~)。 通称 「外事」「ソトゴト」。
 普通の刑事ドラマとは、方向性がかなり違います。
 この 「外事」 は警視庁の中でも特異な存在で、あまり知られていないし、捜査も独自に行なっている。 そのために別の管轄の仕事で自分たちの捜査が妨害されそうになると、有無を言わさず排除にかかる。
 陽菜はそれでドラマ冒頭、まだ刑事だったころに、外事に聴き込みを妨害されるのですが、まずこの一件で、外事という部署の特殊性を完全に説明しちゃっているドラマ手法がすごい。 のっけから引き込まれます。

 そしてその外事4課を統率している主任が、住本健司(渡部篤郎サン)。
 彼のキャラクターが、なんと言ってもこのドラマのいちばんの吸引力になっています。
 彼の存在そのものが外事警察のなんたるかを物語っていますし、しかもドラマを見ていると、彼自身が謎に包まれていることが分かってくる。
 そのくせ、配属されてきたばかりの陽菜にむかって、「いい名前だね、ピヨピヨって」(笑)みたいな軽口もパッと出てくるような面も持ち合わせている。
 冷静な判断をする男なんですが、いっぽうで熱いこだわりを持っていたりする。 なかなか人間的な本音が見えてこないこの男を、渡部サンは見事なまでに演じ切っております。
 個人的にこの人の演技を見るのは、「北条時宗」 以来の御無沙汰なんですが。 演技力に、磨きがかかってますね。

 このドラマ、話が進んでいくにしたがって、謎を抱えているのが住本だけではないことが、徐々に明らかになってくる。
 と言うより、このドラマ全体が 「オモテの顔とウラの顔」 のコントラストの妙で動いていく感覚なんですよ。
 だからある意味、作り手と見ている側の、高度な推理戦みたいになってくる。 「この人はこう言っているけど、実はウラに何かあるのではないか?」 みたいな。

 その意味で象徴的なのが、ドラマ第1回限りでのっけから外事をやめてしまう五十嵐彩音(片岡礼子サン…「曲げられない女」 でオギワラを診る産婦人科医でしたね)。 「あいつ(住本)を信じちゃダメよ」 と陽菜に忠告しておきながら、陽菜を住本の思惑通りに行動させようとする。

 外事の捜査の手駒として行動する、一般人の 「協力者」 としてターゲットにされた下村愛子(石田ゆり子サン)にも、ウラオモテがある。
 「交通事故で植物人間になった夫の介護をしながら理容店をひとりで切り盛りしている感心な奥さん」 というのは実は表向きの顔で、その交通事故の原因が自らの不倫にあった、ということが住本から暴露された時は、実にドラマに引き込まれました。

 しかもこのあからさまな暴露、彼女に協力者になってもらいたいと頼みに来た場で、なんですからね。
 なんとか彼女の信頼を得て協力者の要請までこぎつけていた陽菜は、当然激怒。
 「すべて台無しじゃないですか!」

 ところが住本は鼻で笑って、静かに陽菜の考えを一蹴する。
 「この3年間、彼女が何を苦しんできたか分かるか、あ? 介護でも、借金でもない。 自分の抱えている闇だよ」
 要するに、住本は下村愛子の心の奥底まで見抜いたうえで、暴挙とも思える暴露行動に出ている。

 第1回目でも同じような場面がありました。
 ラモンという容疑者を捕えるために、ラモンのターゲットになっている爆発物検知装置メーカー、谷村テックの社長(田口トモロヲサン)の様子を監視する外事4課。
 谷村の会社は以前自社の製品が原因で死亡事故を起こしており、資金繰りに苦慮している状況です。
 その谷村が自殺をしようとするのを監視カメラで見てしまった陽菜は、自殺を止めに行こうとするのですが。
 それを住本が強引に止めさせる。

 「死にはしない!」
 「なんで言い切れるんですか!」
 バトルの末(笑)モニターの前に首を突き出された陽菜が見たものは、谷口社長が自殺を思いとどまる様子。
 「会社を立て直して、製品に欠陥がなかったことを証明する。 その技術者の誇りだけが彼を支えている。 ――死んだら敗北だ」

 つまり、住本の冷徹な行動規範には、対象者の心理を極限まで調べつくした末に、どこまでやっていいか、どうすれば相手を意のままに操縦できるかという結論が、すでに出ているんですよ。 生まれたときの体重まで調べろ、とか陽菜に命令してましたよね。

 この同じ場面で、外事警察のなんたるかが、鮮明なまでに説明されていました。

 「人を助けるのが、警察の仕事でしょ!」
 「おれたちは国益を守るのが仕事だ」
 「国益のためなら、ひとりくらい死んでも構わないってことですか!」
 「そういう安っぽい同情はな、もっと多くの人を死なせることになるんだ。 いいか、これが外事警察だ…! イヤなら所轄に帰れ」

 モニターから聞こえる、谷口社長の喚き声、泣き声、うめき声。

 圧巻でした。

 ただこの住本にしても、家庭では自らの仕事を完全に秘密にしているのですが、女房(奥貫薫サン…今は 「龍馬伝」 で武市の女房ですね)は気付いている様子(笑)。 なんかこんな細かいところまで、ウラとオモテが錯綜しているのがすごい。

 セリフのひとつひとつが重大な意味を持っており、展開が幾重ものトラップに包まれていて、見る側を一瞬たりとも飽きさせない。 ものすごいドラマがあったものです。

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コメント

リウさん

外事警察、私は全部見ました。
年々興味をもてるドラマが減っているなか
このドラマは一気に見てしまいました。
私の意見では、日本人が作るテロドラマというのは
「それはないよね」というつっこみ所が満載すぎて
しらけてしまうのですが、これは派手に作ろう、という種の
ドラマではなく登場人物の心理描写を大切にしたドラマ
だったのでとても楽しめました。
ただ鮫島サンの出番が少なかったのが不満でしたが…(笑)

リウさんは最終話まで見る予定ですか?
もしそうなら、レビュー楽しみにしています♪

ゆき様
コメント、ありがとうございます。

まだ、全部見ていないんですよ。

リアルタイムで見ていたのなら、一気に全部見てしまえたのでしょうが(ブログ記事を書こうというモチベーションも、リアルタイムなればこそ上がるものなんです…笑)、後追いでしかも録画してあるからいつでも見られるからいいや、みたいに考えてしまうんですよね(笑)。

まだ3回目の途中までしか見ていないのですが、ホントに話が練り込まれていることを実感します。 片手間に見ることが、できないんですよ。 でも必ず最後まで、見るつもりです。 すごいドラマだと思いますから。 それに、期待されたら、記事も書かないわけには、参りませんので…(笑)。

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