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2010年3月14日 (日)

「龍馬伝」 第11回 龍馬が担ぎ出される、その理由

 前回加尾(広末涼子チャン)との仲を引き裂かれた龍馬(福山雅治サン)が、失恋の痛みをどうやって乗り越えていったのか、どう変わっていったのか、その点に興味があった、「龍馬伝」 第11回。

 武市(大森南朋サン)に 「自分が甘かったことが分かった」 と告白する龍馬でしたが、 武市の目には、龍馬が変わったと見えたらしい。
 それは龍馬が精神的に成長した、とも取れるのですが、加尾という精神的な支柱を失って、どことなく投げやり気味になっている危うさも、私はいっぽうで感じました。
 この危うさが、生来の 「争いごとを好まぬ人格」 と、江戸での体験とが結びついて、思わぬ方向へ事態が動き出す。 一皮むけた龍馬の、事態の収拾ぶり、今回の物語の面白さは、そこにあったような気がいたします。

 井伊直弼暗殺の勢いに乗じて門弟たちの意気を高揚させる武市に、「誰か上士にケンカを売るものが出たら、どうするがですか?」 と忠告する龍馬。
 果たして、その通りになって。
 武市門下の下士が上士を斬ったことで、上士と下士は一触即発状態。 ところが当の焚きつけ犯人(笑)武市は、怒りの収まらない門弟たちを押さえきれない。 自分で焚きつけといて情けない、というか(笑)。

 そこに、救世主のごとく、龍馬が現れる。

 このとき、猛り狂った門弟たちに龍馬がいったん歓迎されていましたよね。 「わしらの加勢に来てくれたがか! 龍馬が来てくれれば鬼に金棒ぜよ!」 って。
 これって、龍馬が千葉道場の免許皆伝をもらって、武市道場の連中にも一目置かれていることの表れ、とも考えられるのですが、千葉道場に行く前の段階でも、結構人望があったような気が(笑)。
 どうしてこんなに、人望が厚いんでしょうか?
 ここらへんは、龍馬の人間性の持つ魅力、としか言いようがないんですが。 もうちょっと、私のような頭の悪い視聴者に、その吸引力って何なのか、具体的に見せてもらいたい気がいたします。

 で、ここでの龍馬のロジックは、「いきり立ってみたところで、下士がまた見下げられるのがオチ」「師匠の言うことも聞けんヤツは、師匠に絶縁状を出してから上士を斬りに行けばよかろう」「まずはワシが話し合いに行く」「いきなり武市サンが行ったら、その場で斬り捨てられるから」 という流れでした。

 ここで沸点状態にあった武市道場の雰囲気が、完全に変わってしまう。

 武市にしてみれば、ことの発端からして龍馬の忠告した通りだったし、しかも門弟たちの暴走を自分ひとりでは止められなかったという屈辱もあったし、しかも龍馬が丸腰で上士の巣窟に話し合いに赴く、と言うのですから、この時点で龍馬への信頼感がいや増したことは、想像に難くありません。

 そして上士たちのもとへ単身乗り込む、龍馬。
 結局吉田東洋(田中泯サン)まで動かして、上士たちの怒りをも鎮めてしまう。

 ここでの龍馬のロジックは、「上士と下士が戦をしたら、土佐は真っ二つ、藩はお取り潰し」 という、感情論の上を行く、大勢を考えたもの。
 江戸幕府っていうのは、なにかって言うと不祥事をいいことに藩を取り潰す政治をしてきましたから、この論理には誰しも、ぐうの音も出ない。
 結局問題を起こした池田虎之進は切腹と相成り、ことはそれで収まったのですが。

 龍馬はこの、「責任を取ってハラキリする」 という、当時の常識に、どうにも納得がならない。
 「死んだら終わりぜよ…どういてこういう始末のつけかたしか、出来んがじゃ」
 「武市さんは、異国から日本を守る言いながら、やりゆうことは吉田様とのケンカじゃ」

 そして今回の成り行きを冷静に見ていた東洋が、龍馬を上士に取り立てる、と言い出して。

 龍馬は 「いきなりそんな夢みたいなことを言われたんでぼーっとしてしまったハハハ…ちっくと考えさせてつかわさい」 と、その場をうまーく逃げる(笑)。
 普通だったら、弥太郎みたいに有頂天になるところですが、龍馬はどうも、そんな世の中の成り行き自体に、しっくりこないものを感じていく。

 世間とのずれを感じる、ということは、自分の存在する意味に対しても、懐疑的になっていく、ということではないでしょうか。
 その龍馬の精神状態を、乙女姉やんとの語らいで描いていく。 ここらへん、乙女姉やんの温かな懐ぐあいも表現されていた、秀逸な場面だったような気がします。

 「姉やんは、岡本の家に、居場所はあるがか?…わしは、息苦しゅうてのう…ここは土佐じゃ、わしが生まれ育ったところぜよ…けんど、どんどん、自分の居場所がのうなっていくような気がするき…」
 「おまんは江戸でいろんなものを見てきた。 お加尾ちゃんがおらんで、つらい思いもした。 けんど、そういうことが、おまんを強い男にしてくれるき」
 「うれしいことを言うてくれるのう、姉やんは」
 「あたりまえちや。 私はおまんの味方じゃき。 旦那より、おまんのほうが大事じゃき」
 乙女姉やん、ホントにいい味出してます。 こういう人がいてくれると、自分がこの世に不要な人間だなんて、思わなくなりますよね。

 加尾を失った心の痛手からなんとか抜け出そうとする、言うなれば 「失恋男の開き直り」(笑)が、龍馬をネゴシエイター(仲介役)として開花させる。
 そしてその能力が、龍馬の想像以上に、周囲から必要とされていく。

 今回、このあたりの解釈の仕方は、見ていて面白かったです。
 龍馬は武市によって結成された土佐勤王党に担ぎ出されていくわけですが、いよいよ土佐脱藩に物語が動いていくんですかね。 楽しみです。

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