« 西河克己監督、死去 | トップページ | 「ゲゲゲの女房」 第2週目まで見て »

2010年4月10日 (土)

「わが家の歴史」 第1夜 すっと入っていける気楽さの中にひそむもの

 「わが家の歴史」、フジテレビ開局50周年特別企画として三谷幸喜サンのドラマが3夜連続で放送されると聞いて、どんな作品なのか、ほとんど前知識なく臨んだのですが。

 中身を開いてみると、普通の家族の(そんなに普通でもないけど…笑)昭和初期からの話を延々と追っていくもので、いわば 「風と共に去りぬ」 とか、年末のNHK大河ドラマの総集編を見ているような感覚でした。 要するに、ダイジェスト版みたいな物語です。

 そのせいか、2時間半近い放送時間が、そんなに苦にもならず、一気に見ることができました。 近ごろ1時間以上の話につきあう体力がなくて(笑)、この話もどうせ途中でリタイアして、何日もかけてあとから見るんだろうな、と思っていたので、これは意外でした。

 それというのも、細かなエピソードがいちいちコンパクトにまとまっている。
 これは現在、「新・三銃士」 で1回20分間の人形劇を書いている三谷サンの応用力のたまものかとも、思いましたです。

 このドラマ、のっけから、端役に至るまでため息の出るほどのオールスターキャストで。
 この物語の中心、八女家の人々からして、全員が主役を張れる人たちばかり。 西田敏行サン、富司純子サン、松本潤クン、佐藤隆太クン、堀北真希チャン、榮倉奈々チャン。 そして主役が、柴咲コウサン。
 そこにほんの少しだけかかわってくるのが、榎本健一つまりエノケン(木梨憲武サン)、長谷川町子(和久井映見サン)、美空ひばり(さくらまやチャン)、高倉健(小栗旬クン)など。

 この有名人チョイ見せゲストというのは、昭和の断面を垣間見せるとか、単なる視聴者サービスみたいに考えてしまいがちなんですが、よくよく振り返ってみると、有名人に全く興味のない人以外なら、誰しも心当たりがあることなんじゃないでしょうか。
 つまり、誰もが有名人のひとりやふたりと、ニアミスした経験がある、っていうことです。
 そしてこのドラマでは、主人公たちに、有名になった人と、有名になる以前の人と、両方ともニアミスさせている。
 考えてみれば、私たちもどこかで、有名になる前の有名人と会っているかもしれないのです。
 そんな想像をさせてくれるこのドラマの構造は、さすが三谷サン、とうなるほかはありません。

 本編の話ですが、表向きホームドラマ形式で、特にとりたてて重大なことが起こるわけでもない。 話の筋を追うことに、あまり意味がない気もするのですが、話全体から浮かび上がってくるのは、家族というものの本質です。

 家族というものは、みんなが全体でひとつの生き物のようなもので、だれかひとりが幸せになればみんなが幸せになり、誰かひとりが傷つけば、家族全員が傷つくことになる。 今はそんなことが感じられにくくなっている時代のように思えますが、家族の本来の姿とは、そこにあるのではないか。
 喜びも悲しみも幾年月…じゃなくって(笑)、幸せも不幸せも、家族は全員が平等に受ける、ということを、このドラマを見ていて強く感じるのです。

 この物語の主人公、柴咲コウサンは、甲斐性なしの父親(西田敏行サン)の代わりに、クラブ勤めをして生計を支えている。 その過程でオーナー鬼塚(佐藤浩市サン)と懇意になり、愛人、という立場ながら、さらに八女家の経済的支柱となっていくのですが、そのことに対して柴咲サン自身がちっとも負担に思っていない。
 ここらへん、損得勘定ですべてが動いていくような現代の風潮では、決してまねのできない所業です。
 昔だって見返りを求めながら生きていた人はいただろう、とは思うのですが、彼女をそうした人間に設定してしまうと、この単発ドラマ自体の魅力がなくなってしまう気がする。 もっとドロドロした、複雑な内容になって、重たくなってしまう。

 彼女がどうしてそんなに家族に対して見返りを求めず働き続けることができるのか、いみじくも語った部分がありました。

 「だって、お父さんとお母さんがおらんなら、あたしは今ここにおらんとよ。 鬼塚サンとも、知り合えんかったし。 いくら感謝しても、足りんくらいよ」

 つらいことがあまりに続くと、なんで自分なんか産んだんだ、みたいに考えてしまいがちなんですが、よかったことだけを心の真ん中において、このように考えることのできる人というのは、私は人として尊敬します。

 私にとって身につまされたのは、このシーンの前に、ゾウの輸入に失敗したことで、西田敏行サンを責める人たちに向かって、鬼塚の本妻である天海祐希サンが言い放ったセリフでした。

 「ものの道理の分からない人たちだねえ。 このうちの人はねえ。 博多の子供たちの喜ぶ顔が見たかっただけじゃないか。 責められることなんてこれっぽっちもしていません。 …確かに、ゾウは来なかった。 でもあんたらに、このうちの人を責める資格はあるのかい? だったらあんたらは何をした? 博多の街のために何をした! 何もしないで、ただ文句ばかり言ってるだけじゃないか。 恥ずかしくないのかい! 分かったら、とっとと家に帰りなさい。 解散…!」

 それまで、ロクな話を持ってこない高田純次サン(ゾウの輸入の前にも、髪の毛から醤油を作る機械とか…笑)と、それにやすやすと乗っかってしまう西田敏行サンに対して、なんとも腹立たしい気持ちで見ていた自分が、ちょっと恥ずかしくなりました。

 それに、こんなブログでひとさまの一生懸命作ったドラマに、無責任に論評を加えていることにも、です。

 表面的な出来事の羅列かと思いきや、そこに潜んでいるナイフは、とてつもなく鋭い、そんなことを感じたドラマの、第1夜であります。 明日明後日と、ますます楽しみです。

当ブログ 「わが家の歴史」 のほかの記事
第2夜http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/04/2-88d2.html
第3夜(最終夜)http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/04/3-e3d7.html

« 西河克己監督、死去 | トップページ | 「ゲゲゲの女房」 第2週目まで見て »

テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/521783/48042619

この記事へのトラックバック一覧です: 「わが家の歴史」 第1夜 すっと入っていける気楽さの中にひそむもの:

« 西河克己監督、死去 | トップページ | 「ゲゲゲの女房」 第2週目まで見て »

2018年11月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  

BOOKS

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ紹介記事より抜粋)。 本書下巻では、1962年のレコードデビューまでが書かれています。

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 上

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 上
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ記事より抜粋)。 この上巻ではビートルズの祖先から遡ってリバプールで人気に火が付き始めたところまでが書いてあります。

  • ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白

    ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白
    まず驚かされるのが、表紙のポールの写真です。 よくこんなのが採用されたな、というくらい、刻まれた年輪が顕著に分かる 「年老いたポール」。 飾り気のないその写真に、「素のポール」 をあぶり出そう、という心意気が見える。 そして実際、著者のその目論見は、成功しているように思えます。 何より大きいのは、「NME」「Q」「MOJO」 など音楽メディアで長年記者を務めてきた著者がポールと同じリバプールの出身者である、ということ。 さらにポールと同じファースト・ネームであること。 だからポールはまるで自分の分身に話しかけるかのように、時折同郷人にしか分からない言葉で気さくに著者に話しかける。 この本を読む者は、まずその 「不思議なリラックス感」 に包まれるはずです。  本の構成は大きく二つに分かれます。 前半ではビートルズからウィングス、ソロに至るポールのたどってきた長い長い歴史、後半ではポールの人格に迫る試みがなされていく。 そのインタビューは、一気に行なわれたものではありません。 著者がNMEの記者だった1979年のものから、明示はされていないがおそらく2013年、「NEW」 の発売前後が最新のものではないか、と思われます。 実際読んだ感覚では 「キス・オン・ザ・ボトム」 あたりが最新のような気もする。 その30年以上にわたる膨大なポールへのインタビューを、項目によって構成し直しているようです。 ですから、今年(2016年)亡くなったジョージ・マーティンについてのポールの見解であるとか、最新の情報が提示されているわけではない。 ポールの情報というのはこの歳になってもなお日々更新型ですから、その点については物足りなさが確実にあります。 さらに、30年以上というとポールのものの考え方にも変化変遷があってしかるべきだと思うのですが、30年以上をリミックスにかけているからその変化というものがつかめてこないもどかしさがある。 表紙を飾ったポールの 「老い」 という問題にも、この本はきちんと答えてくれているわけではない。 さらに言えば、ジョン・レノンの死について多くが割かれているのとは対照的に、2001年に亡くなったジョージ・ハリソンの死についての記述はない。 正直なところ、このような本を読み漁ってきた身としては、衝撃に値するような情報が書かれているわけではありません。 しかし前述したような、リラックスしたムードのなかでポールと語らっているような疑似体験を共有できる強みが、この本にはある。 この本全体に貫かれているのが、この心地よさなのだ、と思うのです。 その心地よさが乱れるパートがあります。 自身の失敗作、どうでもいい作品について語るときのポールは多分に感情的になりがちであり、イライラした様子を隠しません。 特に 「シークレット・フレンド」 を語るポールのくだりはポールファンなら一読に値する部分でしょう。 しかしそのイライラも、ポールの人間性が垣間見える瞬間としてこの本にとっては必要なパートなのです。 3000円以上と、この本は決して安くはない部類の本です。 ただその値段に見合うパフォーマンスは兼ね備えています。 この本と付き合った1か月足らずの間、心地よい体験をすることができました(アマゾンの自身のカスタマーレビューより)。

  • : レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]

    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

MUSIC

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(スーパー・デラックス・エディション)(4CD+DVD+BD)
    ロック界、いや、すべてのポップミュージックにおけるアルバムの中で史上最高と称され、すでに世界文化遺産の域にまで達しているこのアルバム。 そのアルバムの発売50周年を記念して、スペシャルエディションがリリースされます。 なかでもブッ飛ぶのがこのスーパースペシャルボックスセット。 CD4枚組であらたなリミックスのステレオ盤1枚、モノ盤1枚、初期テイク集が2枚、さらにブルーレイ1枚とDVD1枚で5.1サラウンド、ハイレゾ音源、ドキュメント映像 「メイキングオブサージェントペパーズ」 のデジタルリマスター等々、卒倒するようなラインナップです。 18、000円プラス税と値は張りますが、史上最高の名盤だからこそこれは買い。 5月26日の発売までに予約をしておけば、アマゾンならば値下がりした時に値段がそのあと高騰しても最安値で購入できます。 ビーファンならずとも、これは注目ですぞ!

  • 山口 百恵 -

    山口 百恵: ゴールデン☆アイドル 山口百恵(完全生産限定盤)
    全シングルA・B面プラスボーナストラック(「あなたへの子守歌」)を、山口百恵名義としては初のブルースペックCDとしてリリース。 音はいわゆるドンシャリ系ではなく、アナログ盤に準拠した原音に忠実な印象です。 パッケージングはアナログシングル盤サイズで中袋、CDを納めるケースが完全にドーナツ盤をイメージしています(よく言えば斬新…笑、悪く言えばチャッチイ…笑)。 しかしその発想は買える(笑)。 ほぼ原寸大のシングルジャケットと裏の歌詞カードの複製ブックレット。 ただスキャニングは欲を言えばもう一歩。 当時シングル盤を中心に聴いていたかたなら、この編集盤はかなりの 「買い」 です。 しかしこのジャケット表紙の写真、スッピン風で個人的にはすごく好き。

  • デイヴ・グルーシン&リー・リトナー -

    デイヴ・グルーシン&リー・リトナー: Two Worlds / Grusin & Ritenour
    NHK朝ドラ 「花子とアン」 で美人のスコット先生が夜な夜な歌い、チビはなチャンがすっかり覚えてしまったイギリス民謡、「ザ・ウォーター・イズ・ワイド(流れは広く)」。 このアルバムでルネ・フレミングが歌っていたのを思い出しました。 ルネのソプラノはけっして大袈裟でなく上品で、私のとてもお気に入りのソプラノ歌手ですね。 このアルバム自体は全体的にクラシックにギターのリー・リトナーが絡むフュージョンぽいものなのですが、故・黒田恭一サン評するところの、「大人が聴く音楽」。 胸を締め付けるような哀しみと、すべてを包み込むようないたわりに満ちていて、私の人生のなかでも最上位に位置する愛聴盤です。

  • 桜田淳子 -

    桜田淳子: ゴールデン☆ベスト 桜田淳子~シングル・コレクション
    彼女の活動期に発売されたシングルをすべて網羅したベスト盤。 確かに後年のものほど馴染みがありませんが、選曲漏れがないので、彼女の存在とは何だったのか自体に思いが至るベスト盤です。 音も楽器の音像がよくてなかなかいいマスタリングをしている気がします。 2600円程度で推移しています。

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: ザ・ビートルズBOX(限定生産品)(USBメモリ)
    パソコンにUSB端子があり(たいていついてると思います)、パソコンで音楽が聴ける環境をお持ちの人ならば、聴くことができます。 現在のテクノロジーで最もいい音質で聴ける、ビートルズの音楽です。 ただし国内版にもかかわらず、訳詞とか一切なし。 ジャケットもブックレットもパソコンデータ。 純粋に音楽だけ楽しみたい人向けです。 また、曲間にコンマ何秒かのブランクが入ります。 「アビイ・ロード」 のメドレーも同様です。 しかし、音はさすがに、すごい。 大きな音量であればある程、目の前にビートルズが迫ってくる勢いです。 ツヤが違います。

  • The Beatles -

    The Beatles: The Beatles [USB]
    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

無料ブログはココログ