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2010年4月16日 (金)

「チェイス~国税査察官~」 第1回 江口サン、公僕の悲哀

 「Mother」 を手掛けている坂元祐二サンがNHK土曜ドラマに登場。 同時多発で注目です。

 国税庁の査察部と言えば、なんと言っても伊丹十三監督の 「マルサの女」 ですが、すでにもう、あの映画から、23年。 その年月には感慨を禁じ得ませんが、私の意識の中で、あの映画自体が色褪せていない、というのも驚きです。 つくづく伊丹監督には、生き抜いて映画を撮り続けてもらいたかったものです。

 その伊丹監督が生きていらっしゃれば、必ず作ったであろう、「マルサの女3」。
 今回のこのドラマには、そんな作り手のオマージュが、そこかしこに感じられるのです。

 査察部の総括官として、「マルサの女」 でも出演されていた、益岡徹サンを起用したことにもニヤリとさせられますが、冒頭の会話で 「今は 『マルサ』 とは言わない。 内偵班は 『8階』、実施班は 『9階』 と呼ばれている」 とか、映画のイメージが強く残っている世代に対して、時代の流れを実感させたりします。

 そのガサ入れの様子は、地味ーな下調べから、脱税者たちの財産隠しの手口まで、「マルサ」 時代と変わらぬノスタルジーあふれる(笑)描写なのですが、今回の本当のテーマは、海外の、税金に対してユルイ国を介して納税をくぐりぬける、国際的な税金徴収の攻防。
 おそらくこれは、伊丹監督がご存命であれば、きっとやっていたであろう、テーマだと思うのです。

 この国際的な税金逃れのコンサルタントとして暗躍しているのが、村雲修次(ARATAサン)。 「カリブの手品師」 と呼ばれています。
 左手が義手なのですが、なんだか失礼ながら、お顔もどことなく人形のような作りもの感が漂ってます。
 その感情を押し殺したような男が、国税局の目をかいくぐって脱税指南をしていくのですが、彼のしていることが、一方的に悪いことをしているように思えない作りになっているのが、このドラマの大きな魅力に思えます。
 つまり、6000億円の相続をしようとすると3000億円持っていかれる、という檜山基一(斎藤工サン)の税収逃れをするために、村雲はかつての同僚で、余命わずかな川島(長谷川朝晴サン)にダミー会社を作らせるのですが、実はこれには、川島の妻である歌織(麻生久美子サン)に財産を残してやろうという思惑が絡んでいる。
 要するに村雲は歌織と以前付き合っていたからこういうことをするのですが、だから村雲のしていることが、一方的に悪いように、思えてこない。
 3000億円も相続でもっていかれる、というのも、額が額だけに別にいーじゃん(笑)とも思えるのですが、相続税が払えずに現物で徴収して故人の思い出がなくなってしまうケースもある、などという実情を考えると、その税収システムが必ず正しいというわけでもないことを、感じるのです。

 そしてその税収システムのいちばんの犠牲になっているようなのが、査察官の江口洋介サン。
 敵役である村雲のキャラクターが 「ハゲタカ」 の鷲津(大森南朋サン)とかぶるようなところもあるためか、第1回目の私の興味の中心は、この江口サン演じる、春馬草輔でした。

 のっけから脱税対象者の下調べで、トイレの便器を細かく調べたり、金が隠してあるプールに背広のまま飛び込んだり、お仕事ご苦労様、としか言えない激務ぶりなのですが。

 大金持ちの査察を日ごろから行なって、「もっと取りやすいところがあるだろう!」 などとタワケたことを(笑)言われながら、自身の家庭は、いたって質素。
 安月給で、肉じゃがを食べながら、がんばっとるのです、オトーサンは(笑)。
 この激務に対して、奥サン(木村多江サン)の理解は得られているのですが、娘(水野絵梨奈チャン)の反感は、物語初めの段階からその萌芽が既にあり、5か月後、川島の死亡時期になると、完全に親父の仕事人間ぶりに頭に来ている状態です。
 それが母親の死をきっかけにして、決定的なものになってしまうのですが、どうも自分が江口サンの世代の人間であるせいか、ドラマでよく見られる、父親の仕事に対する、子供の理解のなさには、憤りがこみあげるのが常なのであります(笑)。
 誰のために汗水たらして便器調べて、プールに飛び込んでると思っとんのじゃ!(笑)

 しかも税金が適正に使用されていないニュースを見て、娘は 「あたし大人になっても税金払いたくないわ」 などと言う始末。
 オトーサンのモチベーション、これではどん底であります(笑)。

 けれども娘の言うことも、至極まっとうなのです、この点においては。

 お上が税金をきちんと運用せず、下らんことに使い続けているからこそ、税金を払う側のモチベーションのほうが、どんどん低下していく。 脱税というのは、決してほめられた行為ではありませんが、同時にお上のそのような行為も、万死に値する犯罪なのではないでしょうか。
 「マルサの女」 では、その視点はあったかなあ。
 国税局の査察官は、そのはざまに存在する、公僕という悲哀にさらされている。
 その悲哀を、草輔は一身に受けているわけです。

 その極めつけが、妻の雪恵の死。

 娘の直訴によって、新婚旅行も行ってなかったこの夫婦が海外旅行に行くことになったのですが、直前に草輔の仕事の都合が悪くなり、ただひとりで旅立った雪恵の乗った旅客機が、墜落炎上。
 まさしく、そんなバカな…、という展開なのですが、この旅客機の墜落が、村雲の進めていた檜山の税金対策の手助けをする、という話につながっていくのです。
 この話の組み立て方には、息をのみました。
 すごい。

 このニュースを偶然娘と一緒に見ていた草輔は、「お父さんがお母さんを殺した」 と言われるのですが、ちょ、ちょ待てよ違うだろソレ!(笑) 何か重ー大な勘違いをされて、オトーサンの立つ瀬は、ますますありません。 カンベンしてくれ! どうなってしまうのか!

 次回が、見逃せません。

当ブログ 「チェイス」 に関するほかの記事
第2回 届かぬ父の思いhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/04/2-eecd.html
第3回 裏切りに揺れる心http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/04/3-77a7.html
第4回 ふたつの復讐http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/05/4-3809.html
第5回 黒い薔薇、赤い薔薇http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/05/5-05dc.html
第6回(最終回)別の人生への希望http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/05/6-785a.html

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