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2010年4月30日 (金)

「チェイス~国税査察官~」 第3回 裏切りに揺れる心

 大雨の降る中、鈴子(水野絵梨奈チャン)をよけようとして事故を起こした、村雲修次(ARATAサン) の車。
 結局両者とも大したことはなかったのですが、ここで春馬草輔(江口洋介サン)と村雲が知り合うきっかけが作られ、村雲は廣川という偽名を使って草輔の仕事の内情を探りだすようになる。

 と同時に、鈴子は村雲の手を借りて、死んだ母親(木村多江サン)の保険金で海外の株取引?を始めるのです。
 ちょっと鈴子、はっきり言って人間の風上にもおけない仕様になってきてるんですけど(笑)。 親への反抗の範疇を超えてます。 鈴子のバカさ加減には、怒りを通り越して呆れ果てます。 更生希望!

 いずれにせよ、村雲と鈴子の出会い頭の事故は、草輔の仕事に対するモチベーションを根底から揺るがす端緒となっていくのです。

 今回草輔たちが追う案件は、現役大臣紺野の脱税容疑。

 それに絡んで、紺野の税務指南役を務めている、元査察OB井坂敏(石橋蓮司サン)との腹の探り合いは、見ごたえがありました。

 最初にそれとなく井坂を訪問した草輔は、「査察の人間は、口よりも目がよく動く」 といきなり先制パンチを井坂から食らわされ、部屋にかかっていた絵画の額縁が小さくなっていることを指摘し、「井坂サンが私を試されたんでしょう」 と返すのですが、井坂は 「紺野を調べても無駄だ」 とばかり、「裏山から3億円」 の新聞記事をバサッと置く。
 「みんなお見通しだ」 ということですよね。

 それにしても、井坂は査察時代、「査察の捜査に聖域はない」 が信条のよくできた男だったのですが、国税局を辞めてから、国会議員の脱税アドバイザーと、なり下がっているわけです。

 議員なんかの公僕の脱税って、一般人以上に、罪が重い気がします。

 自分たちは国民に対して税金をかける法律を作り、それを執行し、従わないものには延滞金だの罰則だのつけるくせに、税金をいただいてお給料にしている側が、脱税なんて。 極刑でもいいくらいだ(言いすぎました…笑)。

 その国会議員の脱税の指南役なんですから、井坂のやっていることは、昔と今では月とスッポン、天地ほどの差がある。
 で、普通の脱税より何倍何百倍もひどい、と思いながら見ていたせいか、井坂に査察の手が回った時に、井坂が草輔に打ち明けた 「転落の理由」 は、ちょっと私には、弱い気がしました。

 脱税の前に、受託収賄の容疑で、紺野が東京地検に逮捕されたことが、井坂の言うその理由。

 「お前ら、検察に抜かれたんだよ…この案件は、私が職務を、いや、命を懸けて追っていた案件だ…それを、お前らは結局逃した…それが答えだ…オレがこうなった答えだ…こんなもんだ…脱税するくらいがちょうど人間なんだよぉ…ハハハ」

 このシーンのあいだに、益岡徹サンが奥田瑛二サンに向かって、「査察は検察の下請けなんですか!」 と詰問していましたが、うーん、これくらいで昨日の友は今日の敵、みたいなことになっちゃうかなー。 なんか、納得しきれませんでした。 て言うか、よく分かんなかった(笑)。

 まあともかく、その井坂の姿を見た草輔は、自らの仕事に対する信念が揺らぎ始めるのですが、そこで、同じ遺族として、一緒に酒を酌み交わすほどの友人となっていた村雲(廣川)に、草輔は電話をするのです。

 「廣川サン、どう思う? 最近の世の中、なんか、おかしくないかな? どんどん悪いほうに行ってるって言うか、人の心みたいなものが、壊れていってる気がするんだ…オレのほうが間違ってんだろうか?」

 それに対する村雲の答えは、草輔のアイデンティティをぶち壊すほどの、恐ろしい答えでした。

 「間違ってないと思いますよ。 …この世界はもう、あなたの知ってる世界じゃないんだ。 『盗まれた街』 という話を知っていますか。 男がある時気付くと、妻が妻でなくなっている。 わが子がわが子でなくなっている。 外見も声も同じなのに、誰もがみな明らかに別人なんです」

 「それはあれだろ、宇宙人とかSFとかの」

 「ええ。 でもあなたに起こっていることと同じだと思いませんか。 あなたはマジメに働いてきた。 正義感を持って、社会のためにと自分を律して生きてきた。 しかしそれを認める人は社会からいなくなった。 世間は官を叩き、役人を諸悪の根源のようにののしる。 …春馬さん。 ぼくは人の悪意というものが、重力のようなものだと思っています。 報われなかった善意や正義感の裏側に、おんなじだけの悪意が根を張るんです」

 「…どういうことだ?」

 「春馬さん。 奥さんを亡くして、娘さんを見失って、本当はあなた、こんな世界滅びてしまえばいいと思っているのではありませんか? もう我慢するのはやめましょう。 あなたには、…この世界を憎む権利がある」

 友人だとばかり思っていた相手から、急にこんな言葉を言われたら、ちょっと普通じゃいられなくなりますよね。 村雲には、草輔を撹乱する目的もあるのでしょうが、もっとほかに、何か意図があるような気がします。 村雲の言った、「報われなかった善意や正義感」 って、一体何だったんでしょう。

 自分自身の仕事に対する疑問がわきあがっているときに、草輔は激励の言葉を期待していたと思うんですよ。 それが、完全に裏切られた形。
 草輔も、この会話のあと、しばらく呼吸困難状態になるのです。 「そんなことはない!」 みたいに反駁するからこそ、草輔のその信念が、ポキッと折れてしまうのが、怖い。
 いや、息をのみました。

 なんか、「ふぞろいの林檎たち」 を思わせる、不条理ドラマみたいになってきた。
 「ハゲタカ」「外事警察」 ほどではないですが、私が見ているなかでは、今クール(全6回ですけど、これくらいの長さのほうが、トラップ仕掛けたりするにはちょうどいいかも)でいちばん面白いドラマじゃないかなー。 でもこの不条理を楽しめないと、ちょっと現実離れしすぎているように思えるかもしれません。

 で、それから草輔は、たぶんそれまで軽蔑して会おうともしなかった元新聞記者の情報屋と接触し、妻を乗せて墜落した旅客機の所有者に、大金が渡っていたことを突き止める。
 そして村雲は、草輔の娘鈴子と、接触するのです。 それで冒頭に書いたようなことを鈴子に吹き込む。
 あーますます、ブラックな話になってきたー(笑)。 鈴子! オジサンは信じてるぞ!(笑)

当ブログ 「チェイス」 に関するほかの記事
第1回 江口サン、公僕の悲哀http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/04/1-a698.html
第2回 届かぬ父の思いhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/04/2-eecd.html
第4回 ふたつの復讐http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/05/4-3809.html
第5回 黒い薔薇、赤い薔薇http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/05/5-05dc.html
第6回(最終回)別の人生への希望http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/05/6-785a.html

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テレビ」カテゴリの記事

コメント

リウさん、復帰ありがとうございます。
安心しましたが、年には勝てない。おんなじです。
6年前はパソコンの調子もいいせいか
文章もアップも軽やかでしたね。
このころのNHKおもしろかった。
ストーリー展開も意外の連続で。
SRATAの発掘もそうだけど
謎の女、歌織役「麻生久美子」を初めて見て
「キレ~なヒトやな~。」と。
今タックスヘイブンが騒がれていて
思い出してココにお邪魔しました。
まあ、年相応にガンバロウではアーリマセンカ!!!

ドラマ大すきおやじ50才 様
コメント下さり、ありがとうございます。

へへ、この頃は社会的地位もあったし(爆)やる気マンマンでしたから(笑)。

NHKの土曜ドラマが面白かったのは、なにしろ 「ハゲタカ」 の成功によるものが大きかったでしょうね。 その演出をしていた大友啓史サン、堀切園健太郎サンなんかの力がすごかった。 「外事警察」 はすごすぎて、まだ最終回まで記事が書けてない。 とんでもない感想文になりそうだから(笑)。

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BOOKS

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ紹介記事より抜粋)。 本書下巻では、1962年のレコードデビューまでが書かれています。

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 上

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     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ記事より抜粋)。 この上巻ではビートルズの祖先から遡ってリバプールで人気に火が付き始めたところまでが書いてあります。

  • ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白

    ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白
    まず驚かされるのが、表紙のポールの写真です。 よくこんなのが採用されたな、というくらい、刻まれた年輪が顕著に分かる 「年老いたポール」。 飾り気のないその写真に、「素のポール」 をあぶり出そう、という心意気が見える。 そして実際、著者のその目論見は、成功しているように思えます。 何より大きいのは、「NME」「Q」「MOJO」 など音楽メディアで長年記者を務めてきた著者がポールと同じリバプールの出身者である、ということ。 さらにポールと同じファースト・ネームであること。 だからポールはまるで自分の分身に話しかけるかのように、時折同郷人にしか分からない言葉で気さくに著者に話しかける。 この本を読む者は、まずその 「不思議なリラックス感」 に包まれるはずです。  本の構成は大きく二つに分かれます。 前半ではビートルズからウィングス、ソロに至るポールのたどってきた長い長い歴史、後半ではポールの人格に迫る試みがなされていく。 そのインタビューは、一気に行なわれたものではありません。 著者がNMEの記者だった1979年のものから、明示はされていないがおそらく2013年、「NEW」 の発売前後が最新のものではないか、と思われます。 実際読んだ感覚では 「キス・オン・ザ・ボトム」 あたりが最新のような気もする。 その30年以上にわたる膨大なポールへのインタビューを、項目によって構成し直しているようです。 ですから、今年(2016年)亡くなったジョージ・マーティンについてのポールの見解であるとか、最新の情報が提示されているわけではない。 ポールの情報というのはこの歳になってもなお日々更新型ですから、その点については物足りなさが確実にあります。 さらに、30年以上というとポールのものの考え方にも変化変遷があってしかるべきだと思うのですが、30年以上をリミックスにかけているからその変化というものがつかめてこないもどかしさがある。 表紙を飾ったポールの 「老い」 という問題にも、この本はきちんと答えてくれているわけではない。 さらに言えば、ジョン・レノンの死について多くが割かれているのとは対照的に、2001年に亡くなったジョージ・ハリソンの死についての記述はない。 正直なところ、このような本を読み漁ってきた身としては、衝撃に値するような情報が書かれているわけではありません。 しかし前述したような、リラックスしたムードのなかでポールと語らっているような疑似体験を共有できる強みが、この本にはある。 この本全体に貫かれているのが、この心地よさなのだ、と思うのです。 その心地よさが乱れるパートがあります。 自身の失敗作、どうでもいい作品について語るときのポールは多分に感情的になりがちであり、イライラした様子を隠しません。 特に 「シークレット・フレンド」 を語るポールのくだりはポールファンなら一読に値する部分でしょう。 しかしそのイライラも、ポールの人間性が垣間見える瞬間としてこの本にとっては必要なパートなのです。 3000円以上と、この本は決して安くはない部類の本です。 ただその値段に見合うパフォーマンスは兼ね備えています。 この本と付き合った1か月足らずの間、心地よい体験をすることができました(アマゾンの自身のカスタマーレビューより)。

  • : レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]

    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

MUSIC

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(スーパー・デラックス・エディション)(4CD+DVD+BD)
    ロック界、いや、すべてのポップミュージックにおけるアルバムの中で史上最高と称され、すでに世界文化遺産の域にまで達しているこのアルバム。 そのアルバムの発売50周年を記念して、スペシャルエディションがリリースされます。 なかでもブッ飛ぶのがこのスーパースペシャルボックスセット。 CD4枚組であらたなリミックスのステレオ盤1枚、モノ盤1枚、初期テイク集が2枚、さらにブルーレイ1枚とDVD1枚で5.1サラウンド、ハイレゾ音源、ドキュメント映像 「メイキングオブサージェントペパーズ」 のデジタルリマスター等々、卒倒するようなラインナップです。 18、000円プラス税と値は張りますが、史上最高の名盤だからこそこれは買い。 5月26日の発売までに予約をしておけば、アマゾンならば値下がりした時に値段がそのあと高騰しても最安値で購入できます。 ビーファンならずとも、これは注目ですぞ!

  • 山口 百恵 -

    山口 百恵: ゴールデン☆アイドル 山口百恵(完全生産限定盤)
    全シングルA・B面プラスボーナストラック(「あなたへの子守歌」)を、山口百恵名義としては初のブルースペックCDとしてリリース。 音はいわゆるドンシャリ系ではなく、アナログ盤に準拠した原音に忠実な印象です。 パッケージングはアナログシングル盤サイズで中袋、CDを納めるケースが完全にドーナツ盤をイメージしています(よく言えば斬新…笑、悪く言えばチャッチイ…笑)。 しかしその発想は買える(笑)。 ほぼ原寸大のシングルジャケットと裏の歌詞カードの複製ブックレット。 ただスキャニングは欲を言えばもう一歩。 当時シングル盤を中心に聴いていたかたなら、この編集盤はかなりの 「買い」 です。 しかしこのジャケット表紙の写真、スッピン風で個人的にはすごく好き。

  • デイヴ・グルーシン&リー・リトナー -

    デイヴ・グルーシン&リー・リトナー: Two Worlds / Grusin & Ritenour
    NHK朝ドラ 「花子とアン」 で美人のスコット先生が夜な夜な歌い、チビはなチャンがすっかり覚えてしまったイギリス民謡、「ザ・ウォーター・イズ・ワイド(流れは広く)」。 このアルバムでルネ・フレミングが歌っていたのを思い出しました。 ルネのソプラノはけっして大袈裟でなく上品で、私のとてもお気に入りのソプラノ歌手ですね。 このアルバム自体は全体的にクラシックにギターのリー・リトナーが絡むフュージョンぽいものなのですが、故・黒田恭一サン評するところの、「大人が聴く音楽」。 胸を締め付けるような哀しみと、すべてを包み込むようないたわりに満ちていて、私の人生のなかでも最上位に位置する愛聴盤です。

  • 桜田淳子 -

    桜田淳子: ゴールデン☆ベスト 桜田淳子~シングル・コレクション
    彼女の活動期に発売されたシングルをすべて網羅したベスト盤。 確かに後年のものほど馴染みがありませんが、選曲漏れがないので、彼女の存在とは何だったのか自体に思いが至るベスト盤です。 音も楽器の音像がよくてなかなかいいマスタリングをしている気がします。 2600円程度で推移しています。

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: ザ・ビートルズBOX(限定生産品)(USBメモリ)
    パソコンにUSB端子があり(たいていついてると思います)、パソコンで音楽が聴ける環境をお持ちの人ならば、聴くことができます。 現在のテクノロジーで最もいい音質で聴ける、ビートルズの音楽です。 ただし国内版にもかかわらず、訳詞とか一切なし。 ジャケットもブックレットもパソコンデータ。 純粋に音楽だけ楽しみたい人向けです。 また、曲間にコンマ何秒かのブランクが入ります。 「アビイ・ロード」 のメドレーも同様です。 しかし、音はさすがに、すごい。 大きな音量であればある程、目の前にビートルズが迫ってくる勢いです。 ツヤが違います。

  • The Beatles -

    The Beatles: The Beatles [USB]
    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

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