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2010年4月14日 (水)

「八日目の蝉」 第3回 がらんどうの悲しみ

 子供をさらって逃亡中の檀れいサンが新興宗教風の施設に入って、ずいぶん変な世界になってきたように感じた、「八日目の蝉」。
 ところが第3回目の今回は、その閉鎖された空間での出来事が、とてもリアリティを持って迫ってくるような感覚に、とらわれました。
 それは子供を夫に取られたままこの施設に逃げ込んだ坂井真紀サンのエピソードと、実は育児ノイローゼで自分の赤ん坊を殺してしまっていた、高畑淳子サンのエピソードが原因。
 そのふたつのエピソードが、この施設に逃げ込んできた17歳の妊婦、水沢奈子チャンの出産で、大きく事態ごと動いていくことになる。
 や、期待したような、いいドラマになってきました。

 舞台は、エンジェルの家に檀れいサンが入所してから3年がたち、さらってきた子供、薫チャンもそこですくすくと育った1992年のこと。

 坂井真紀サンと行商に出かけた檀れいサン、坂井サンから 「ちょっと行った先に亮太(坂井サンの子供)がいる。 ひと目だけでも会いたい」 と言われ、しぶしぶ了承。
 というのもこの坂井サン、子供を連れ出すために施設のお金に手をつけるという大胆なことをして見つかってしまった、という経緯があって、檀サンは高畑サンから坂井サンの監視役を頼まれていたのです。

 果たして坂井サンは亮太クンに会えたのですが、連れ出そうと伸ばした手が止まってしまう。
 「やっぱり連れ出すなんて大それたことはできなかった」、と戻ってきたところに、若いママハハが亮太クンを連れて 「パンを買いたい」 とやってくるんですよ。
 そのママハハ、いかにも優しそうなんですけど、やっぱり実際に自分の腹を痛めた子、という感覚じゃないのが、すごくよく分かるような優しさで。
 ここらへん、とてもよくできてたなあ。

 で、どんなパンがいいのか迷っているそのママハハを見かね、坂井サンはチョココロネをパッと差し出して、タダであげる、と亮太クンに無理やり渡すのです。
 ママハハと亮太クンが去ってしまってから、坂井サンは絞り出すように吐き捨てる。

 「なんやあの女…! 母親でもないのに、母親面しくさって…! 自分の子供の好きなもんも分からんで、…どないすんねん! 亮太の好きなのは、チョココロネや…! 亮太は、あたしの子ォや…! あたしは分かってる…あたしのおなかを痛めて産んだんや…! おなかを痛めてない、血ィもつながってないもんに、亮太のこと、分かってたまるかぁっ…! ホントの、ホントの母親は、あたしやのに…!」

 坂井サン、やっぱり、うまいです。 泣けました、このシーン。

 それにしてもこのセリフ、いちいち檀サンの胸にグサグサ突き刺さりまくっている構図が、すごい。
 坂井サンは檀サンに励まされ、檀サンの胸で泣くのですが、その檀サンこそ、自分の子をさらわれた板谷由夏サンを、坂井サンとおんなじ目に遭わせている、いわば張本人なんですからね。

 そしてその昔、育児ノイローゼで子供をマンションの窓から放り投げて殺した、という過去を持っていた、高畑淳子サン。
 施設に逃げ込んできた、おなかが大きくて今にも産まれそうな感じの水沢奈子チャンに向かって、「どうしてそんなに子供が産みたいの?」 と、あくまで仏頂面のまま(笑)問いかける。
 「どうしてって…かわいいから…」
 「まだ生まれてもないのにどうしてかわいいって分かるの?」
 「自分の子だったら、…かわいいに決まってる」
 その途端逆上する高畑サン(笑)。

 「決まってないのよそんなことはぁぁッ!」

 あー、びっくりした(笑)。 奈子チャンも、目がテン(笑)。

 この高畑サン、奈子チャンが子供を産んだその晩に、礼拝室のマリア様の前で、半狂乱になって泣き崩れる。

 今まさに生まれたばかりの赤子と、遠い昔に自ら殺してしまった赤子と、その両方に対する母性がごちゃまぜになって、自らの罪の大きさに、あらためて押しつぶされる、という心境だったと思います。 男の私ですら、あまりに重すぎるシーンでした。

 結局未成年の水沢奈子チャンをかくまったことで窮地に陥る、エンジェルの家。
 そこから抜け出した檀れいサンと薫チャンは、夜の遊園地へと向かう。
 はじめて外の世界を見た薫チャンは大はしゃぎなのですが、「夢の国みたい」 と話す薫チャンに、「夢の国なんて言わないで…ママは、薫と離れたくない…」 と、檀サンは薫チャンを抱きしめる。
 切ないですよね。 子供を堕ろして、子供が産めない体になった、がらんどうの自分を埋めようと、自分がおなかを痛めたわけではない子供に、救いを求めているのですから。

 それにしてもこのドラマ、今回出てきた薫チャンも亮太クンも、子役の演技が、なんかハチャメチャにいいんですけど(笑)。 赤ん坊もすごかったし、いやいや、すごい子役が、増えてきたもんです(笑)。

「八日目の蝉」 に関する当ブログほかの記事
第1回 来週も、…見よう、かなあ?http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/03/1-254c.html
第2回 ヘンなとこ、きちゃったな~http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/04/2-4f12.html
第4回 穏やかな、凪のような回でしたhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/04/4-a45c.html
第5回 逃亡の果てhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/04/5-267b.html
第6回(最終回)もう触れることのできぬ思いhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/05/6-cef7.html

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BOOKS

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ紹介記事より抜粋)。 本書下巻では、1962年のレコードデビューまでが書かれています。

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     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ記事より抜粋)。 この上巻ではビートルズの祖先から遡ってリバプールで人気に火が付き始めたところまでが書いてあります。

  • ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白

    ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白
    まず驚かされるのが、表紙のポールの写真です。 よくこんなのが採用されたな、というくらい、刻まれた年輪が顕著に分かる 「年老いたポール」。 飾り気のないその写真に、「素のポール」 をあぶり出そう、という心意気が見える。 そして実際、著者のその目論見は、成功しているように思えます。 何より大きいのは、「NME」「Q」「MOJO」 など音楽メディアで長年記者を務めてきた著者がポールと同じリバプールの出身者である、ということ。 さらにポールと同じファースト・ネームであること。 だからポールはまるで自分の分身に話しかけるかのように、時折同郷人にしか分からない言葉で気さくに著者に話しかける。 この本を読む者は、まずその 「不思議なリラックス感」 に包まれるはずです。  本の構成は大きく二つに分かれます。 前半ではビートルズからウィングス、ソロに至るポールのたどってきた長い長い歴史、後半ではポールの人格に迫る試みがなされていく。 そのインタビューは、一気に行なわれたものではありません。 著者がNMEの記者だった1979年のものから、明示はされていないがおそらく2013年、「NEW」 の発売前後が最新のものではないか、と思われます。 実際読んだ感覚では 「キス・オン・ザ・ボトム」 あたりが最新のような気もする。 その30年以上にわたる膨大なポールへのインタビューを、項目によって構成し直しているようです。 ですから、今年(2016年)亡くなったジョージ・マーティンについてのポールの見解であるとか、最新の情報が提示されているわけではない。 ポールの情報というのはこの歳になってもなお日々更新型ですから、その点については物足りなさが確実にあります。 さらに、30年以上というとポールのものの考え方にも変化変遷があってしかるべきだと思うのですが、30年以上をリミックスにかけているからその変化というものがつかめてこないもどかしさがある。 表紙を飾ったポールの 「老い」 という問題にも、この本はきちんと答えてくれているわけではない。 さらに言えば、ジョン・レノンの死について多くが割かれているのとは対照的に、2001年に亡くなったジョージ・ハリソンの死についての記述はない。 正直なところ、このような本を読み漁ってきた身としては、衝撃に値するような情報が書かれているわけではありません。 しかし前述したような、リラックスしたムードのなかでポールと語らっているような疑似体験を共有できる強みが、この本にはある。 この本全体に貫かれているのが、この心地よさなのだ、と思うのです。 その心地よさが乱れるパートがあります。 自身の失敗作、どうでもいい作品について語るときのポールは多分に感情的になりがちであり、イライラした様子を隠しません。 特に 「シークレット・フレンド」 を語るポールのくだりはポールファンなら一読に値する部分でしょう。 しかしそのイライラも、ポールの人間性が垣間見える瞬間としてこの本にとっては必要なパートなのです。 3000円以上と、この本は決して安くはない部類の本です。 ただその値段に見合うパフォーマンスは兼ね備えています。 この本と付き合った1か月足らずの間、心地よい体験をすることができました(アマゾンの自身のカスタマーレビューより)。

  • : レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]

    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

MUSIC

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(スーパー・デラックス・エディション)(4CD+DVD+BD)
    ロック界、いや、すべてのポップミュージックにおけるアルバムの中で史上最高と称され、すでに世界文化遺産の域にまで達しているこのアルバム。 そのアルバムの発売50周年を記念して、スペシャルエディションがリリースされます。 なかでもブッ飛ぶのがこのスーパースペシャルボックスセット。 CD4枚組であらたなリミックスのステレオ盤1枚、モノ盤1枚、初期テイク集が2枚、さらにブルーレイ1枚とDVD1枚で5.1サラウンド、ハイレゾ音源、ドキュメント映像 「メイキングオブサージェントペパーズ」 のデジタルリマスター等々、卒倒するようなラインナップです。 18、000円プラス税と値は張りますが、史上最高の名盤だからこそこれは買い。 5月26日の発売までに予約をしておけば、アマゾンならば値下がりした時に値段がそのあと高騰しても最安値で購入できます。 ビーファンならずとも、これは注目ですぞ!

  • 山口 百恵 -

    山口 百恵: ゴールデン☆アイドル 山口百恵(完全生産限定盤)
    全シングルA・B面プラスボーナストラック(「あなたへの子守歌」)を、山口百恵名義としては初のブルースペックCDとしてリリース。 音はいわゆるドンシャリ系ではなく、アナログ盤に準拠した原音に忠実な印象です。 パッケージングはアナログシングル盤サイズで中袋、CDを納めるケースが完全にドーナツ盤をイメージしています(よく言えば斬新…笑、悪く言えばチャッチイ…笑)。 しかしその発想は買える(笑)。 ほぼ原寸大のシングルジャケットと裏の歌詞カードの複製ブックレット。 ただスキャニングは欲を言えばもう一歩。 当時シングル盤を中心に聴いていたかたなら、この編集盤はかなりの 「買い」 です。 しかしこのジャケット表紙の写真、スッピン風で個人的にはすごく好き。

  • デイヴ・グルーシン&リー・リトナー -

    デイヴ・グルーシン&リー・リトナー: Two Worlds / Grusin & Ritenour
    NHK朝ドラ 「花子とアン」 で美人のスコット先生が夜な夜な歌い、チビはなチャンがすっかり覚えてしまったイギリス民謡、「ザ・ウォーター・イズ・ワイド(流れは広く)」。 このアルバムでルネ・フレミングが歌っていたのを思い出しました。 ルネのソプラノはけっして大袈裟でなく上品で、私のとてもお気に入りのソプラノ歌手ですね。 このアルバム自体は全体的にクラシックにギターのリー・リトナーが絡むフュージョンぽいものなのですが、故・黒田恭一サン評するところの、「大人が聴く音楽」。 胸を締め付けるような哀しみと、すべてを包み込むようないたわりに満ちていて、私の人生のなかでも最上位に位置する愛聴盤です。

  • 桜田淳子 -

    桜田淳子: ゴールデン☆ベスト 桜田淳子~シングル・コレクション
    彼女の活動期に発売されたシングルをすべて網羅したベスト盤。 確かに後年のものほど馴染みがありませんが、選曲漏れがないので、彼女の存在とは何だったのか自体に思いが至るベスト盤です。 音も楽器の音像がよくてなかなかいいマスタリングをしている気がします。 2600円程度で推移しています。

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: ザ・ビートルズBOX(限定生産品)(USBメモリ)
    パソコンにUSB端子があり(たいていついてると思います)、パソコンで音楽が聴ける環境をお持ちの人ならば、聴くことができます。 現在のテクノロジーで最もいい音質で聴ける、ビートルズの音楽です。 ただし国内版にもかかわらず、訳詞とか一切なし。 ジャケットもブックレットもパソコンデータ。 純粋に音楽だけ楽しみたい人向けです。 また、曲間にコンマ何秒かのブランクが入ります。 「アビイ・ロード」 のメドレーも同様です。 しかし、音はさすがに、すごい。 大きな音量であればある程、目の前にビートルズが迫ってくる勢いです。 ツヤが違います。

  • The Beatles -

    The Beatles: The Beatles [USB]
    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

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