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2010年4月24日 (土)

「ゲゲゲの女房」 第4週まで見て

 飯田家と村井家のお見合いから結婚式、そして東京での生活のスタートまでを描いた、「ゲゲゲの女房」 第3-4週。
 相変わらずの語り口の丁寧さで、伏線の使い方がうまく、物語に全く破綻が見られないのが、見ていてつくづくすごいと感じます。

 この物語、特別奇をてらったところが全くなくて、ごくごく普通の、市井の人々を描いているのに、視聴者を夢中にさせて離さないような魅力があります。
 思えば、このようなドラマは、大昔にはたくさんあったような気がする。
 そんなドラマが絶滅状態だからこそ、かえって新鮮味が最大限にまで、増しているんだと感じます。 ここ数作の連続テレビ小説を、現代的な変化球だらけの作品にしたのは、このまさに 「本格派」 の 「昭和の物語」 の吸引力を増すための、助走だったとまで考えられる。

 この物語の主人公、布美枝(松下奈緒サン)は、ここ数作の連ドラのヒロインに見られたような 「上昇志向」 が、まずありません。
 ただ与えられた自分のポジションの中で、その日その日をただ普通に生きている。
 家族もとてもまともな人たちばかりで、父親の源兵衛(大杉漣サン)は、いかにも昔よくいた、わけもなくやたらと怖いカミナリオヤジだし、母親の古手川祐子サンは、その厳しい夫を陰で支える良妻賢母の典型みたいな役柄。 兄嫁もよく気配りができるし、とにかく飯田家の家族は、家族の役割を全員がきちんとこなしている印象がある。 そして同時に、そこにはとても愛情があふれています。 お兄さんが父親の命を受けて、ネクタイの結びかたを教えに来たり、古手川サンが 「あっという間に式が決まって何もしてやれない」 と涙したり…。

 そんな飯田家と対照的なのが、村井家。

 なんでも仕切る、男勝りの母親(竹下景子サン)と、おっとりしたインテリでユーモアたっぷりな父親(風間杜夫サン)は、村井家とは全くあべこべです。
 その息子である茂(向井理クン)は、「ひょうひょう」 を絵にかいたような性格で、変人みたいな一面もある。

 水木しげるサンのマンガに慣れ親しんできた身としては、この村井茂の描写は、とても納得できます。

 水木サンって、なんかとても楽天的で、神経がとてもおおらかなんですよ。
 兵隊に行った南国の楽園で、すっかり馴染んでしまってそこに永住しようと思ったとか、片腕を失うきっかけも、最前線に出るのを嫌がって見苦しく逃げ回ったために、結局は死ぬのを免れた結果だった、とか、神経の図太さをうかがわせるエピソードに事欠かない。
 水木サンの精神構造には、ちょっと常人には理解しがたい(笑)、あまりにも大きすぎるスケールがあります。

 それが結婚式での彼の振る舞いにも、とてもよく出ていて(笑)。

 神事を行なう宮司サン?といきなり打ち解けて(笑)、祝詞の文句を取材したり、靴下に穴が開きっ放しだったり(お兄さんが靴下を取り換えて、足袋を履いているのを有森也実サンが見てたまげる場面では、大笑いしました。 「背広に足袋!」 って…)、宴の席で大ーきなオナラをしたり(風間杜夫サンの 「オナラ講義」 も、笑わせていただきました)。

 あげく飲めないお酒を無理やり勧められて、ぶっ倒れてしまうのですが、ここでは茂が源次郎サンの安来節を我慢して最後まで聴いていたり、呆れられながらも、人のことを思いやれる人物であることを、さりげなくセリフで説明する。

 ここらへんのくだり、布美枝の幼いころの 「安来節」 の思い出を挿入させながら、視聴者を泣かせつつ笑わせ、そして感心させる。
 この複雑な構造が、ごくふつうのドラマの中で展開されるのが、このドラマの凄いところなのだと思うのです。

 そして結婚式から、東京に行くまで、布美枝は村井家の実家に泊まるのですが、そこではいつも怒ってばかりの竹下景子サンや、頼りないとばかり思っていた風間杜夫サンが、独特だけれども、しっかり家族に対する愛情を持っている人たちであることが分かるのです。 ここらへんの描きかたも、ほんとに丁寧。 感心するくらい。

 そのいっぽうで、結婚式の時にカツンと触れた茂の義手が、布美枝のこれからの結婚生活に対する不安の象徴としてドラマを見せていく。 新婚初夜には、茂の精神に大きな影響を与えた 「のんのんばあ」 の話まで出てくるのですが、こうして挙げていくと、ずいぶんといろんな話が盛り込まれていて、下手をするととっ散らかっちゃったり、見ているほうが話の目まぐるしさに疲れてしまったりするのですが、そんなことが一切ない。 話の流れが自然過ぎる。 これって、なんか相当高度な技術だと思いますよ。

 そして故郷との別れ。

 電車やプラットホームのセットや、東京駅でのセット。 CGには、見えませんでした。 「どこなんだ?」「どうやって撮ったんだ?」 と、うちの家族もケンケンガクガク(笑)。

 それはそうとして、ここでもミカンとか、赤飯のおにぎりとか、また家族の愛情を列車のなかでも感じさせるであろう小道具にまで、神経がいきわたっている。 つくづく降参であります。 布美枝に抱きついたまま離れなくなってしまう甥っこや、古手川サンの演技。 そしてふるさとでの日々のフラッシュバック。 泣けて泣けて仕方なかったです。 「当時は東京に行くのが、今生の別れのような感覚だった」 という野際陽子サンのナレーションが、また涙の誘い水になっているんですよ。

 その列車の中で遭遇した、浦木克夫(杉浦太陽クン)。 (ドラマ上では)「ねずみ男」 のモデルとなった、という人物ですが、その前知識がないと、とてもヤなヤツとしか見えない(笑)。 けれども、前知識がなくとも、「おるおるこんな礼儀知らずのヤツ」(笑)って、思えてしまうところがすごい(笑)。 ここで茂のあだ名、「ゲゲ」 の由来が明かされます。 ホント、さりげないなあ。

 そして姉の用意してくれた高級車に乗りながら、夢のような東京駅周辺の景色から(これもCGじゃなかったですね。 あっちこっちの古い建物を、ロケハンしたんだろうなあ)、牛が道路を横断するような、武蔵野の風情あふれる(笑)片田舎へとやってきた布美枝。

 茂の一軒家は、墓場が裏手にあるような(「墓場の鬼太郎」 のイメージも、これで作りやすかったんだろうな~と、妙に納得)超ボロ家。 しかも水道高熱の集金の督促が引きも切らない、ゼロではない、マイナスからのスタート。 食べるものもろくにないような状況に、野菜豊富な布美枝の実家の様子をインサートすることで、その対比を狙っています。

 そんななかで布美枝が見てしまった、茂のマンガの、あまりのおどろおどろしさ。

 それが、布美枝の戸惑いをさらに倍加させていく、という作り。 なんか、褒め言葉以外、見つからないですね。 見ている側は、後年の茂氏の成功が分かっているから、ここらへんの布美枝の不幸のスパイラルを、ある程度安心して見ていられるし、だからこそ、今後に対する期待が、膨らんでいく。

 とんでもなく凄い、「ふつうのドラマ」 が出てきた感じがします。

当ブログ 「ゲゲゲの女房」 に関するほかの記事
第01回 NHKのやる気を感じさせますhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/03/1-nhk-c7ac.html
第02週まで見てhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/04/2-5cbd.html
第05週 ほんとうのスタートは、ここからhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/05/5-9d37.html
第06週 人事を尽くして天命を待つhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/05/6-3192.html
第07週 時代に流されていく人たちhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/05/7-6a9d.html
第08週 笑って生きよう、たとえ貧しくともhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/05/8-82ce.html
第09週 「生きるため」 と 「プライド」 の狭間http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/05/9-476d.html
第10週 ビンボー神の出るタイミングhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/06/10-8426.html
第11週 まあ…なんとかなーわね!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/06/11-e5c0.html

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BOOKS

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ紹介記事より抜粋)。 本書下巻では、1962年のレコードデビューまでが書かれています。

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 上

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     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ記事より抜粋)。 この上巻ではビートルズの祖先から遡ってリバプールで人気に火が付き始めたところまでが書いてあります。

  • ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白

    ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白
    まず驚かされるのが、表紙のポールの写真です。 よくこんなのが採用されたな、というくらい、刻まれた年輪が顕著に分かる 「年老いたポール」。 飾り気のないその写真に、「素のポール」 をあぶり出そう、という心意気が見える。 そして実際、著者のその目論見は、成功しているように思えます。 何より大きいのは、「NME」「Q」「MOJO」 など音楽メディアで長年記者を務めてきた著者がポールと同じリバプールの出身者である、ということ。 さらにポールと同じファースト・ネームであること。 だからポールはまるで自分の分身に話しかけるかのように、時折同郷人にしか分からない言葉で気さくに著者に話しかける。 この本を読む者は、まずその 「不思議なリラックス感」 に包まれるはずです。  本の構成は大きく二つに分かれます。 前半ではビートルズからウィングス、ソロに至るポールのたどってきた長い長い歴史、後半ではポールの人格に迫る試みがなされていく。 そのインタビューは、一気に行なわれたものではありません。 著者がNMEの記者だった1979年のものから、明示はされていないがおそらく2013年、「NEW」 の発売前後が最新のものではないか、と思われます。 実際読んだ感覚では 「キス・オン・ザ・ボトム」 あたりが最新のような気もする。 その30年以上にわたる膨大なポールへのインタビューを、項目によって構成し直しているようです。 ですから、今年(2016年)亡くなったジョージ・マーティンについてのポールの見解であるとか、最新の情報が提示されているわけではない。 ポールの情報というのはこの歳になってもなお日々更新型ですから、その点については物足りなさが確実にあります。 さらに、30年以上というとポールのものの考え方にも変化変遷があってしかるべきだと思うのですが、30年以上をリミックスにかけているからその変化というものがつかめてこないもどかしさがある。 表紙を飾ったポールの 「老い」 という問題にも、この本はきちんと答えてくれているわけではない。 さらに言えば、ジョン・レノンの死について多くが割かれているのとは対照的に、2001年に亡くなったジョージ・ハリソンの死についての記述はない。 正直なところ、このような本を読み漁ってきた身としては、衝撃に値するような情報が書かれているわけではありません。 しかし前述したような、リラックスしたムードのなかでポールと語らっているような疑似体験を共有できる強みが、この本にはある。 この本全体に貫かれているのが、この心地よさなのだ、と思うのです。 その心地よさが乱れるパートがあります。 自身の失敗作、どうでもいい作品について語るときのポールは多分に感情的になりがちであり、イライラした様子を隠しません。 特に 「シークレット・フレンド」 を語るポールのくだりはポールファンなら一読に値する部分でしょう。 しかしそのイライラも、ポールの人間性が垣間見える瞬間としてこの本にとっては必要なパートなのです。 3000円以上と、この本は決して安くはない部類の本です。 ただその値段に見合うパフォーマンスは兼ね備えています。 この本と付き合った1か月足らずの間、心地よい体験をすることができました(アマゾンの自身のカスタマーレビューより)。

  • : レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]

    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

MUSIC

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(スーパー・デラックス・エディション)(4CD+DVD+BD)
    ロック界、いや、すべてのポップミュージックにおけるアルバムの中で史上最高と称され、すでに世界文化遺産の域にまで達しているこのアルバム。 そのアルバムの発売50周年を記念して、スペシャルエディションがリリースされます。 なかでもブッ飛ぶのがこのスーパースペシャルボックスセット。 CD4枚組であらたなリミックスのステレオ盤1枚、モノ盤1枚、初期テイク集が2枚、さらにブルーレイ1枚とDVD1枚で5.1サラウンド、ハイレゾ音源、ドキュメント映像 「メイキングオブサージェントペパーズ」 のデジタルリマスター等々、卒倒するようなラインナップです。 18、000円プラス税と値は張りますが、史上最高の名盤だからこそこれは買い。 5月26日の発売までに予約をしておけば、アマゾンならば値下がりした時に値段がそのあと高騰しても最安値で購入できます。 ビーファンならずとも、これは注目ですぞ!

  • 山口 百恵 -

    山口 百恵: ゴールデン☆アイドル 山口百恵(完全生産限定盤)
    全シングルA・B面プラスボーナストラック(「あなたへの子守歌」)を、山口百恵名義としては初のブルースペックCDとしてリリース。 音はいわゆるドンシャリ系ではなく、アナログ盤に準拠した原音に忠実な印象です。 パッケージングはアナログシングル盤サイズで中袋、CDを納めるケースが完全にドーナツ盤をイメージしています(よく言えば斬新…笑、悪く言えばチャッチイ…笑)。 しかしその発想は買える(笑)。 ほぼ原寸大のシングルジャケットと裏の歌詞カードの複製ブックレット。 ただスキャニングは欲を言えばもう一歩。 当時シングル盤を中心に聴いていたかたなら、この編集盤はかなりの 「買い」 です。 しかしこのジャケット表紙の写真、スッピン風で個人的にはすごく好き。

  • デイヴ・グルーシン&リー・リトナー -

    デイヴ・グルーシン&リー・リトナー: Two Worlds / Grusin & Ritenour
    NHK朝ドラ 「花子とアン」 で美人のスコット先生が夜な夜な歌い、チビはなチャンがすっかり覚えてしまったイギリス民謡、「ザ・ウォーター・イズ・ワイド(流れは広く)」。 このアルバムでルネ・フレミングが歌っていたのを思い出しました。 ルネのソプラノはけっして大袈裟でなく上品で、私のとてもお気に入りのソプラノ歌手ですね。 このアルバム自体は全体的にクラシックにギターのリー・リトナーが絡むフュージョンぽいものなのですが、故・黒田恭一サン評するところの、「大人が聴く音楽」。 胸を締め付けるような哀しみと、すべてを包み込むようないたわりに満ちていて、私の人生のなかでも最上位に位置する愛聴盤です。

  • 桜田淳子 -

    桜田淳子: ゴールデン☆ベスト 桜田淳子~シングル・コレクション
    彼女の活動期に発売されたシングルをすべて網羅したベスト盤。 確かに後年のものほど馴染みがありませんが、選曲漏れがないので、彼女の存在とは何だったのか自体に思いが至るベスト盤です。 音も楽器の音像がよくてなかなかいいマスタリングをしている気がします。 2600円程度で推移しています。

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: ザ・ビートルズBOX(限定生産品)(USBメモリ)
    パソコンにUSB端子があり(たいていついてると思います)、パソコンで音楽が聴ける環境をお持ちの人ならば、聴くことができます。 現在のテクノロジーで最もいい音質で聴ける、ビートルズの音楽です。 ただし国内版にもかかわらず、訳詞とか一切なし。 ジャケットもブックレットもパソコンデータ。 純粋に音楽だけ楽しみたい人向けです。 また、曲間にコンマ何秒かのブランクが入ります。 「アビイ・ロード」 のメドレーも同様です。 しかし、音はさすがに、すごい。 大きな音量であればある程、目の前にビートルズが迫ってくる勢いです。 ツヤが違います。

  • The Beatles -

    The Beatles: The Beatles [USB]
    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

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