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2010年5月19日 (水)

「離婚同居」 第1回 意外と楽しめます、コレ

 NHKのドラマ10は、前回の 「八日目の蝉」 と打って変わって、阿部サダヲサン主演のコメディドラマ。 ドラマ10が、「八日目」 の路線で統一する、というものではないことが、これで分かるのですが、ちょっと 「八日目」 を見ていた身としては、もっとこの手の番組を見たかった、という気持ちも、しないではなかったです。

 そのために別に見ようとは思ってなくて、リアルタイムでも見なかったのですが、HDDレコーダーの自動録画が生きていて(笑)、勝手に録られていたんですよ(笑)。
 で、なんだ録ってあったのか、と思いつつ、試しに最初の5分くらい見てみるか、と思って見たのですが、これがなかなか面白い(笑)。 とうとう、最後まで見てしまいました。

 阿部サダヲサンと言えば、ブッ飛びキャラばかりが印象的な役者サン。
 今回のドラマもそのキャラ全開。 彼の一挙一動に、笑わされてばかりの展開が続きます。 だいたい阿部サンの役名からして、かなり笑える。 小中大(笑)。 しょうちゅうだい、ではなく、こなか・だい(笑)。

 ただ、NHKのコメディドラマというのは、いかにも頭がいい人が狙ったっぽい話が多い。
 私がこのドラマを最初敬遠したのも、その原因が大きかったのですが、今回はそれを感じさせませんでした。

 それはひとえに、阿部サダヲサンの頑張りが、スベらないように持っていく、演出の妙にあると思うのです。

 NHKのコメディドラマが滑る原因として私が常々考えているのは、出演者全員がそのドラマをコメディにしようと思って頑張ってしまうところ。 これはなんですかねー、「お笑いオンステージ」 以来のNHKの伝統、というか(古っ!)。
 ところが、今回のドラマは、東幹久サン演じる阿部サダヲサンの友人が、ちょっとワザトラシイ程度で、阿部サダヲサン以外の役者サンが、総じてマジメに演じている。 だから阿部サダヲサンだけが、突出して可笑しい。 その笑いがスラップスティックであるがゆえに、周囲のマジメな反応が、また笑えるものになってくる。

 要するに、阿部サダヲサンのブッ飛びぶりに、みんなシラケているんですよ、構造的に(笑)。

 これって阿部サンのキャラの面白さを最大限に引き出すワザなんじゃないでしょうかね。

 ドラマの内容なんですが、カメラマンの阿部サンが、一夜の過ちの浮気を奥サンの佐藤江梨子サンにとがめられ、離婚届を突きつけられるのですが、実家に帰った佐藤サンも居場所がなく、結局娘と共に阿部サンのもとに帰ってくる。
 ところが、佐藤サンには阿部サンとよりを戻すつもりが全くなく、ただの同居人として、同じ家に阿部サンと住むこととなるのです。

 このドラマがコメディ一辺倒ではなく、ちょっと侮れないな、と感じたのは、次の部分でした。

 阿部サンは妻から突き出された離婚届を保留扱いにして(いったん役所に出しに行って、結局やめるところは、笑えましたー)、ふたりが出会ったきっかけとなった写真のパネルの裏に、離婚同居後もそっと隠していたのですが、私は結局、これはそのままにしておいて、いろいろあった末にまた信頼関係が回復して、実はまだ、離婚届出してなかったんだよ…みたいなラストになるのか、と考えていたんですよ(それもベタな話ですが…笑)。
 そしたらですね。
 遺影写真のカスタマーだった加藤治子サンから、加藤サンの熟年離婚の原因を聞いた阿部サンが、思い立って、役所にその離婚届を、提出してしまうんですよ。
 えっ、出しちゃうんだ、と思った瞬間、このドラマは予定調和には終わらない、という予感がしました。 この場面を見たとき、最後までこのドラマを見てみたい、と本当に感じました。

 阿部サンはこのシーンの前に、キャバクラで働くようになった佐藤サンから、「大チャン、私のこと認めてない。 私の全部、認めてる?」 と詰問され、「認めるったって、どっからどこまでだか、分からないし…」 としどろもどろになってしまうのですが、コレって結構、当たり前の反応ですよね。 ただ佐藤サンとの最初の出会いは、彼女がモデルとして光り輝いているときだった。 そのこと思い出した阿部サンはパネルの裏に隠してあった離婚届に、手を伸ばすのです。

 それでもその時点で、阿部サンはまだ踏ん切りがついていない。
 そんなとき、加藤サンから、彼女の離婚の原因を聞くんですよ。

 「あの人ね、私のこと、空気みたいな存在だって言っていたの。 見えないけど、いなけりゃ死んじゃうって。 褒め言葉のつもりだったんでしょうけど、あたしは、空気なんてイヤなんです。 どうせなら、チリやホコリのほうがまだまし。 光を浴びれば、ちゃあーんと、目に見えますからね」

 これって、奥の深い言葉ですよね。

 一緒にいることが当たり前、というのは、男にとってみれば、パートナーに対する最大限の賛辞のつもりなんですよね。 おまえがいなけりゃ困る。 おまえなしで、どうやって生きていけばいいんだ、ということと同義ですから。
 でも本当は、そんな消極的な褒め言葉より、おまえがいるからこそおれの人生は幸せなのだ、という、妻のがんばりに対する目に見える賛辞というものが、妻は欲しいのだと感じます。 リアルが欲しいのだと。
 加藤サンの場合、それはチリやホコリであってもいい、ということですよね。 チリやホコリでもいいなんて、いかにも昔の女性らしい、つつましささえ感じるのですが。

 いずれにせよこの言葉で、阿部サンは離婚届を提出することを決意するのです。 それは阿部サンが佐藤サンを、ひとりの女性としてちゃんと見つめていこうとする、決意表明だった気がします。

 なかなか、奥が深いじゃないですかー、このドラマ。
 来週からは、ちゃんと見てみようと思います。

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