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2010年5月31日 (月)

「龍馬伝」 第22回 龍馬の情けなさこそが、作り手の表現したいことだ

 土佐藩士全員?帰国せいという山内容堂(近藤正臣サン)の命令。
 土佐勤王党をターゲットにした命令とは言え、ずいぶんアバウトな命令だなー(笑)という感じがするのです。
 それにしても容堂公の下士に対する視点。
 初代土佐藩主山内一豊(上川隆也サン…おっと違った、「功名が辻」 でした…笑)が長宗我部の一領具足を弾圧したころからの遺恨だったとは…。 「功名が辻」 を見ていた者としては、この解釈はキツイものがあります。 歴史的にそうだったとしても。

 それはいいとして、勝塾にも土佐の役人がぞろぞろ現れ、帰んなきゃ脱藩扱いだぞとすごむのですが、そこは佐藤与之助(有薗芳記サン)らの心強い抵抗に遭ってすごすごと退散。
 結局これで、龍馬はまた脱藩扱いになってしまうのです。

 ビクビクし通しの土佐勤王党組はじめとする勝塾の土佐藩士を尻目に、龍馬(福山雅治サン)は、追い払ってくれた勝塾の男たちに感謝して回る。
 実に細やかな配慮でありますが、見る人によっては、「龍馬伝」 において顕著な、この龍馬の小さな描きかたに、どうも異議があるようです。

 いわく、すぐ泣いて去年の 「愛」 の人と同じだとか、まわりが龍馬を褒めるばかりでちっともそんな褒められるような人物に見えないだとか。

 今回の龍馬も、新選組や土佐の役人から逃げ回っている岡田以蔵(佐藤健クン)を探しだそう、という、ほぼムリムリに見える行動に精を出すし、乙女姉やんからもらった5両を、今回初登場のお龍(真木よう子サン)の妹を救うために惜しげもなく渡してしまうし、あげく以蔵をみすみす土佐の役人?に捕まらせちゃって、まためそめそ泣いてるし。

 けれども私は、この龍馬の情けなさこそが、作り手の表現したいことなんだと思うんですよ。

 今回の序盤、乙女姉やんからの手紙に同封されていた5両を見つめて、龍馬はなんともやりきれない表情をする。 ここを見逃してはいけない気が、するのです。

 この苦虫を潰したような龍馬の表情のタネ明かしは、のちに龍馬自身によって語られます。 やくざ者に借金の5両を返さなかったために、妹が引っ張られていった、そんならこの5両を使え、とお龍に龍馬が差し出した時のセリフです。 ちょうど5両、というのが、出来すぎた話に見えてしまうきらいはどうしてもあるのですが。

 「わしゃ、土佐の下士の生まれでの。 けんど本家が、大きい質屋をやりよって、子供の時分から、カネに不自由したことはないがぜよ。 脱藩した今も、こうして心配して、金を送ってくれゆう。
 けんどわしは、心苦しいがぜよ…。 『日本を変える、日本を守る』 言うて、大口叩いて土佐を飛び出したけんど…まだなんちゃあ成し遂げちょらん。 えい年をして、まだ親兄弟に助けてもろうちゅう。 まっこと、情けないがぜよ…。
 この金は、わしには使えん。 おまんが使うてくれ。 この金で妹を取り戻して、これを、生き金にしてくれや」

 「生き金」 というのは、龍馬が勝塾の運営資金を松平春嶽(夏八木勲サン)に調達しに行った時にも出た言葉でしたが、この5両を自分が使っても、それは死に金になるだけだ、と龍馬が思っていたというのは重要な気がします。

 つまり、自分がそのカネを使うだけの立派な人間に、まだ到達していない、という認識が龍馬にはある。

 龍馬は、自らの情けなさと、戦い続けているのです。

 だからこれほどまでに、龍馬の描写は、ぶざまなのです。 普通だったら、逃げ回っている以蔵なんか、絶対に見つからないと思うでしょう。 だけど、龍馬は、以蔵を探し続けるのです。 それは、道行く人にひとりひとり聞いて回る、という、実に効率の悪い、ぶざまな探しかたです。 でも、龍馬は、それでも以蔵を探し続けるのです。

 龍馬がどうして以蔵を探し続けるのか、というと、以蔵が京から出ていない、という噂を聞いたからです。 つまり、以蔵は、自分に助けを求めている、自分に会いたがっている、そう感じたからこそ、龍馬は以蔵を探し続けた。

 そしてついに龍馬は以蔵に出くわします。
 ここらへんは実にフィクション臭がプンプンしましたが、ひと目だけでもふたりが最後に出会うことができた、というのは、ドラマ的に、見ている側がちょっと救われたような気分もするのです。 龍馬と近藤勇(原田泰造サン)の一騎打ちは、フィクションみたいでしたけど、実にワクワクしました。 決着つけてほしかったなあ。 千葉道場の免許皆伝の威力を見せてくれ!という感じでしたが。

 で、結局以蔵を救出することができず、お龍の前で、また男泣きする龍馬。

 ここでの龍馬は、単純に友人を救えなかったという悔しさから泣いてはいるのですが、実家から貰った5両でお龍の(5両でお龍って、シャレか?…笑)妹を救えたのに、免許皆伝の自分が以蔵を救えなかった、その比較という観点からも、自分が情けなくて泣いているのだと思うのです。

 自分が情けなくて泣くことについて、少なくとも私は、そんな龍馬に共感します。 かく言う私も、自分が情けなくて落ち込むことが、ありますから。

 そんな人間臭い、等身大の龍馬の描写に、重ねて言いますが、私は賛同します。 転がりながら、情けなさをまき散らしながら、人生って生きていくものじゃないですか? だからこそ、大きくなれる気がします。 だからこそ、強くなれる気がするのです。

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コメント

かっこいいだけの人なんて深みがないですからね。情けない自分がいてこそ強くなれる人がわたしは好きです。
弱さと強さを持っている龍馬さん、すごく魅力的ですよね。
似た思いを持っている方に会えてうれしかったので、コメントしました。

投稿: りょう | 2010年5月31日 (月) 10時20分

りょう様
コメント、ありがとうございます。

坂本龍馬という人物は、近年になってとみに評価が高まった人物ですよね。 と言うことは、もしかすると歴史の波の中に消え去ってしまっていたかもしれない人物なわけです。 その人がオーラ出まくりの大人物然とした人物ではなく、ごく普通の弱さをもった人物だった、という解釈は、とても自然なような気がするんですよ。

そんな人物を演じる福山サン、よしあしよりも、まさしくその体当たりの演技ぶりを、毎週堪能しております。

投稿: リウ | 2010年5月31日 (月) 13時10分

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