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2010年5月 8日 (土)

「チェイス~国税査察官~」 第4回 ふたつの復讐

 どうもストーリーを追っているだけの記事になってしまったきらいがありますが、余計なことを考えさせない、緻密な話だからこそなのかな、という気がします。 では。

 物語は、春馬草輔(江口洋介サン)が死んだ妻の復讐のために、自分の意識の中にあった、超えてはならない一線を越えてしまってから、8か月後。

 銀行員の打ち込んだパスワードを覚えておいて、データベースに不正にアクセス、草輔は檜山基一(斎藤工サン)の人材派遣会社、ライトキャストの末端会社が不正な税金操作をしていることを突き止めます。
 もうこの時点で、草輔がかなりの暴走気味だということがあらためて分かるのですが、上司の新谷(益岡徹サン)は、草輔から退職も辞さない覚悟を突きつけられ、草輔の強引な捜査に、協力することに。
 それがのちに悲劇的な展開になるのですが。

 檜山のマンションの近くで、草輔は村雲(草輔の前では廣川、ARATAサン)とばったり出くわす。
 この檜山のマンション前、やたらとホームレスが多くて(笑)。
 何か意図的なような気がしたんですが、それはのちほど。

 草輔はライトキャストの内偵ということをここでは伏せて、ケーキ屋に村雲を誘うのですが、村雲はそのとき、自分の靴底にはさまった、緑色の砂利石をほじくり出す。
 これもあとで、村雲と檜山の関係を草輔が嗅ぎ出すひとつの手掛かりとなるのですが、最初はガムかと思いました(笑)。

 草輔がこのケーキ屋で自分の近況を語りながら、核心まで触れることのなかったのは、実に賢明でした。 それは草輔に、いくら暴走気味でも、国税査察官としての秘密遵守の気概がまだ残されていたということでもあるし、本能的に、目の前の廣川という男を警戒していた、という見方も出来ます。
 しかし男ふたりしてケーキ屋でケーキをつつくというのは、かなり異様な光景なのですが(笑)、江口サン、サマになっとるなあ(笑)。 いい男は何をやっても、カッコイイということですね。

 ライトキャストに査察の手が迫ったとき、村雲は新谷の不祥事をリークして捜査を中止させる。 売春とか、麻薬取引とか、振り込め詐欺とか、いくら不正に得たカネであっても、利益になれば税金を取る必要性がある。 それを警察に通報すれば、税金は取れなくなる。 新谷はそこを突かれたわけですが、その結果新谷は統括を降ろされてしまいます。

 新谷は草輔に、自分の息子がカード地獄に陥り、その借金を返そうとして、件の風俗店から金を受け取って払った、と告白します。 子供のころ、100円を欲しがっていた息子が、100万円ちょうだい、と言ってきた、という新谷の話は、かなり切ないものがあります。

 しかもそれが、100万円では解決する話ではなかった。

 新谷は結局自殺をしてしまうのですが、新谷の家に駆けつけた草輔は、上司の品田(奥田瑛二サン)から、「和解なんかしてなかった。 …アホだ…アホだよ…」 という話を聞く。

 査察官になって子供の面倒を見てやれなかった、その代償だと話していた新谷。
 そしてそれが、結局何のためにもなっていなかった、というこの結末。
 「息子とキャッチボールをして突き指した」 と笑いながら話していた新谷でしたが、自宅の壁には、ひとりぼっちでキャッチボールをした跡が、無数についている。

 「税金取り」 の、かなり残酷な物語を見た気がします。 「マルサの女」 の益岡サンの、これが末路だったのかと思うと(違いますけど)、どうにもやりきれない。
 これは要するに、村雲の仕業。
 草輔にとっては、女房と合わせて上司まで死に追いやられたことで、村雲がますますカタキになったわけです。

 株取引で、「お父さんよりよっぽど稼いでる」 などとテングになっている鈴子(水野絵梨奈チャン)、もう私、頭に来すぎて、彼女のことなんか、どーでもいいんですがね(笑)、彼女のノートPCから、母親の死亡事故のニュースが流れつづけているのを見て、そこに 「廣川」 という名前がないことに気付く、草輔。 真相にまた一歩、近づきます。

 話は前後します。

 当の村雲は、死期の近づいている檜山正道(中村嘉葎雄サン)の奈良行きに、ただひとり同行するのですが、「その町に、惚れた女がいた」 という檜山の一言で、事情が結構分かってしまうんですよ(笑)。 つまり村雲は、檜山の妾の子どもだった、という。

 ただこのドラマ、檜山がそのことに気付いて、インシュリン?の注射器を、村雲からパッと払いのけた時からが、かなり見ごたえがありました。

 村雲は、檜山の巨額の資産目当てで子供の時分に誘拐され、その結果、手首を切断される、という過去を持っていたのです。 ここで切断される回想シーンはやりませんでしたが、挿入したほうがよかった気がします。 そのほうが村雲の復讐心に、さらなる説得力が生まれる気がする。 いや、子供の腕を切断、なんて、直接見せなくても、そんな場面を入れたら、かなりヤバいですね、今のご時世では。

 村雲はその事件の新聞記事?を一字一句克明に覚えていて、それを語り続けるのですが、檜山は完全に逆上。 持っていた杖で、村雲の背中を、激しく打ち据え続ける。

 「誰や…! オマエ、誰や! オマエ…、オマエ…!」

 そしてよろよろと倒れた檜山の、目の前に突き出された、村雲の左手の義手。
 中村サン、いや、やはり、さすがに、うまいです。 ああーもっと、この人の演技を見ていたいのですが。

 「…ボンか…ボンなのか…」

 「そや、…ぼくや…ボンや……オトーウチャン」

 見ている側が、事情の予想がだいたいついてしまっていても、ここまでたたみかけるような演出をされてしまうと、戦慄せざるを得ないです、はっきり言って。
 これで中村サンは、ほとんど人事不省に、陥ってしまう。 もっと中村サンの演技を、見せてくれぇーっ!
 ほとんど口もきけずにベッドで横たわる檜山に、村雲は、「あなたの資産を全部いただく」 と話し、嘲るように笑うのです。 今回の 「復讐」、というタイトル、草輔が妻を殺したフィクサーに復讐する、という意味も持ちながら、村雲が檜山に対して復讐する、という意味でも、あったんですね。

 そして、鈴子は麻布にマンションを借りて、家出するらしいんですが、アーどうぞどうぞ(笑)。 二度と帰ってくんな(笑)。 せいせいするわ(笑)。 とっとと行っちまえ(笑)。
 どうもこの鈴子、予告を見てみると、次回には更生するらしいのですが、どうなんですかね。 ここまで視聴者(少なくとも私)に反感を持たれてしまう、というのは。 どうも、ここまでムカつかされて、今更反省したって、こっちは感動のしようがない気がするんですよね。

 檜山基一のマンションの前でホームレスの格好をして、内偵を続ける草輔。 なるほど、ホームレスが目立っていた理由は、ここにあったのか。 これなら、怪しまれない(笑)。

 そこから現れる、檜山基一の偽りの妻、歌織(麻生久美子サン)。
 タクシーで追いかける草輔と久保田(田中圭サン)でしたが、いきなりホームレスを乗せたタクシーの運転手サン、どう思ったのか考えると、笑えます。
 しかも、いきなり笑い出すんですからね、そのホームレス。 かなり不気味(笑)。

 「ハ、ハハ…見えた…ハハ…見えてきたよ…! ハッハッハッハッハ…! 相続だよ相続…! 相続だったんだよハッハッハッハ!」

 そして歌織と村雲が接触するところを確認。 草輔はその時、自分の敵が、はっきりとわかったのです。

 新谷の死によって、税金取りの悲哀が極限にまで達した草輔の胸のうちなのですが、その警戒水域が、次回どこまで爆発してしまうのか。 予告を見た限りで言えば、話の進み方が、なんか、早いような…。 つまりさらにもうひと波乱、ありそうな感じなんですけど。 ますます目が離せなくなってきましたー。

当ブログ 「チェイス」 に関するほかの記事
第1回 江口サン、公僕の悲哀http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/04/1-a698.html
第2回 届かぬ父の思いhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/04/2-eecd.html
第3回 裏切りに揺れる心http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/04/3-77a7.html
第5回 黒い薔薇、赤い薔薇http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/05/5-05dc.html
第6回(最終回)別の人生への希望http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/05/6-785a.html

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コメント

チェイス面白いですね〜。引き込まれてしまって放送時間よりとても時間が長く感じられます。それだけ中身が濃いのかなあと思ってます。カメラワークも良いですし。役者さんも皆さん素敵です。

いつもながらリウさんのあらすじをまとめる能力と、表現力に感心してしまいます。
見逃しても大丈夫な気がしてま〜す。

rabi様
コメント、ありがとうございます。

ただあらすじを追っているだけなのにほめていただいて、恐縮しっぱなしです(笑)。

益岡徹サン、今回村雲がリークした暴露記事に、「マルサの男」 って書いてありましたよね。

「マルサの女」 に出ていた役とは確かに違うのですが、益岡サンのなかでは、自分が出演してきた伊丹作品 「マルサの女」、に気持ち的にケリをつけられたようなドラマに、今回はなったのではないか、って思うんですよね。

ARATAサンは初めて拝見したのですが、なかなか演技力がすごい。 NHKサンの発掘力には、感心します。

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  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ紹介記事より抜粋)。 本書下巻では、1962年のレコードデビューまでが書かれています。

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     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ記事より抜粋)。 この上巻ではビートルズの祖先から遡ってリバプールで人気に火が付き始めたところまでが書いてあります。

  • ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白

    ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白
    まず驚かされるのが、表紙のポールの写真です。 よくこんなのが採用されたな、というくらい、刻まれた年輪が顕著に分かる 「年老いたポール」。 飾り気のないその写真に、「素のポール」 をあぶり出そう、という心意気が見える。 そして実際、著者のその目論見は、成功しているように思えます。 何より大きいのは、「NME」「Q」「MOJO」 など音楽メディアで長年記者を務めてきた著者がポールと同じリバプールの出身者である、ということ。 さらにポールと同じファースト・ネームであること。 だからポールはまるで自分の分身に話しかけるかのように、時折同郷人にしか分からない言葉で気さくに著者に話しかける。 この本を読む者は、まずその 「不思議なリラックス感」 に包まれるはずです。  本の構成は大きく二つに分かれます。 前半ではビートルズからウィングス、ソロに至るポールのたどってきた長い長い歴史、後半ではポールの人格に迫る試みがなされていく。 そのインタビューは、一気に行なわれたものではありません。 著者がNMEの記者だった1979年のものから、明示はされていないがおそらく2013年、「NEW」 の発売前後が最新のものではないか、と思われます。 実際読んだ感覚では 「キス・オン・ザ・ボトム」 あたりが最新のような気もする。 その30年以上にわたる膨大なポールへのインタビューを、項目によって構成し直しているようです。 ですから、今年(2016年)亡くなったジョージ・マーティンについてのポールの見解であるとか、最新の情報が提示されているわけではない。 ポールの情報というのはこの歳になってもなお日々更新型ですから、その点については物足りなさが確実にあります。 さらに、30年以上というとポールのものの考え方にも変化変遷があってしかるべきだと思うのですが、30年以上をリミックスにかけているからその変化というものがつかめてこないもどかしさがある。 表紙を飾ったポールの 「老い」 という問題にも、この本はきちんと答えてくれているわけではない。 さらに言えば、ジョン・レノンの死について多くが割かれているのとは対照的に、2001年に亡くなったジョージ・ハリソンの死についての記述はない。 正直なところ、このような本を読み漁ってきた身としては、衝撃に値するような情報が書かれているわけではありません。 しかし前述したような、リラックスしたムードのなかでポールと語らっているような疑似体験を共有できる強みが、この本にはある。 この本全体に貫かれているのが、この心地よさなのだ、と思うのです。 その心地よさが乱れるパートがあります。 自身の失敗作、どうでもいい作品について語るときのポールは多分に感情的になりがちであり、イライラした様子を隠しません。 特に 「シークレット・フレンド」 を語るポールのくだりはポールファンなら一読に値する部分でしょう。 しかしそのイライラも、ポールの人間性が垣間見える瞬間としてこの本にとっては必要なパートなのです。 3000円以上と、この本は決して安くはない部類の本です。 ただその値段に見合うパフォーマンスは兼ね備えています。 この本と付き合った1か月足らずの間、心地よい体験をすることができました(アマゾンの自身のカスタマーレビューより)。

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  • デイヴ・グルーシン&リー・リトナー -

    デイヴ・グルーシン&リー・リトナー: Two Worlds / Grusin & Ritenour
    NHK朝ドラ 「花子とアン」 で美人のスコット先生が夜な夜な歌い、チビはなチャンがすっかり覚えてしまったイギリス民謡、「ザ・ウォーター・イズ・ワイド(流れは広く)」。 このアルバムでルネ・フレミングが歌っていたのを思い出しました。 ルネのソプラノはけっして大袈裟でなく上品で、私のとてもお気に入りのソプラノ歌手ですね。 このアルバム自体は全体的にクラシックにギターのリー・リトナーが絡むフュージョンぽいものなのですが、故・黒田恭一サン評するところの、「大人が聴く音楽」。 胸を締め付けるような哀しみと、すべてを包み込むようないたわりに満ちていて、私の人生のなかでも最上位に位置する愛聴盤です。

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    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

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