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2010年5月28日 (金)

「新・三銃士」 第40回(最終回) 語り継がれるべき番組

 教育テレビ50周年記念番組として制作された 「新・三銃士」 でしたが、40回の放送すべてが今日、終わりました。
 放送期間中にはNHK人形劇の大功労者のひとりである、井上ひさし氏の死去、というニュースもあり、一種の感慨も抱えたままの意義深い放送となりました。

 原作からはかなり逸脱した脚色を加えることによって、この 「三銃士」 はまさしく三谷幸喜サンによる、「新しい三銃士」 という性格を色濃く反映されたものとなった気がします。 特にロシュフォールをダルタニアンの宿敵とした設定は、「スター・ウォーズ」(エピソード4~6) へのオマージュさえも感じさせる。

 内容的には、三谷幸喜サン特有のギャグが、硬軟まとめてちりばめられた作りになっていながら、制御の効かない恋心や、戦争の真実を 「シャレにならないくらい」 えぐり出していました。 こんなのが子供番組で放送されてもいいのか?と思った時も、正直あったくらい。

 いちばんシャレにならないと思ったのは(笑)、ダルタニアンがミレディーを騙してコンスタンスの居場所をつきとめるくだりかな。 ダルも子供で、ミレディーの自分に対する恋心を分からなかった、という仕方のないところはあるんですが、ちょっとミレディーが、カワイソすぎたような…。 ダルは結構、策略に長けているところはそれまでにも描写されてはいたんですが、ミレディーに対しては、相当ねちっこい策略だった気がします(笑)。 よいこのみなさんは、まねしないでください(笑)、みたいな。

 それと、アラミスがコンスタンスに、禁断の恋をしてしまうところ。 自分が聖職者だろうがコンスタンスがダルの思い人だろうが、いったん恋をしてしまうといかに冷静沈着、知性の塊であるアラミスも、自分を制御することができない、というのは、見ていて胸が痛むくらいの展開でした。 これって完全に、大人向けの話だよなあ、という感じ。

 このシャレにならない話が、ギャグのコーティングをたっぷりまぶして繰り広げられる、というのが、いかにも三谷サンの罪作りなところなわけです。

 特に本人を模して人形がつくられた、オレイリー(三谷サン)、バッソンピエール(田中裕二クン)、ルミエール(太田光クン)。
 太田光クンのルミエールも、自分の墓を掘らせる傷ついた兵士を、見事なまでに演じていたのですが、三谷サンのオレイリーは、完全に常軌を逸した(言い過ぎ…笑)ブッ飛びキャラで、最終回も死んだはずのバッキンガム公をまるで仮面ライダーのごとく生き返らせてしまう離れ業まで演じる始末(笑)。
 ともあれ、爆笑問題のふたりにとっても、意外と後世のトリビアになりそうなキャリアが加わった気がします。

 ただこのシャレにならない展開も、最終回はいかにも子供向け人形劇特有の、罪のないフロシキのたたみ方をしたわけです(バッキンガム公のあり得ない蘇生もそのひとつ)。 したがって、最後まで見終わったあとの感覚は、あくまでさわやか。 ミレディーのサービスカットと、ロシュフォールのノゾキには、大爆笑しました。

 声優サンたちも、山寺宏一サンの芸達者なところを初めとして、江原正士サン、高木渉サン、戸田恵子サンなど大物ばかりの中、主人公ダルタニアンを演じた池松壮亮クンはよかったなあ。 若者の未熟さや、若者ゆえの悩みを、完璧に演じていた気がします。 個人的には、高木サンの演じた、ポルトスとボナシューはツボでした(笑)。

 最初は違和感のあった井上文太サンデザインによる、デフォルメのきつい人形たちの造形も、その違和感を早々に解消しながら、しかも回を重ねるごとに、この造形ではなくてはならない、という感を強くしていく一方でした。
 それくらい、もの言わぬ人形たちの、動かない表情が、逆にあまりにも語りすぎているんですよ。 人形劇の真骨頂を、私などはまざまざと感じたものです。

 人形操作の技術としては、うつむけば憂いの表情をし、顔を上げれば笑ったりできる、ただそれだけのことなのでしょうが、それ以上のことを、見ている側が脳内補完してしまうんですよ、人形劇って。

 NHKの人形劇は、これまでにも 「新八犬伝」「三国志」 など、かなりのクオリティを我々に見せつけてくれたわけですが、これは精神的な素養を育む強力な文化だと思います。 「新・三銃士」 もその例にもれなかった、というところでしょうか。
 そんなに頻繁でなくてもいいですから、たまにはこうした力のこもった人形劇を、もっと見てみたいものです。 前の本格人形劇 「平家物語」 から14年というのは、ちょっと待たせすぎ、ですよね。

 なお、現在のところ 「新・三銃士」 は、毎週日曜日午前7時45分から、NHK総合で再放送されています。 見逃したかたはそちらをご覧ください。 人形劇だからと侮れません! 私の甥も夢中になって見ていましたが、今後10年、20年たって、大人になった彼らによって語り継がれるべき作品である、そう私は思っています。

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コメント

リウ様
これ、私もHDDに入れてあります。
先々月に三谷幸喜が渋谷のパルコ劇場で文楽をやったとか。
曽根崎心中をモチーフにした「それなり心中(だったかな?)」って作品で、見に行った友人から話を聞いてその発想力に脱帽しました。
さすがは「小学校時代から脚本がかけた!」という三谷さんだけあるな〜と。

投稿: まぐのりあ | 2012年10月19日 (金) 05時27分

まぐのりあ様
コメント4連投目、ありがとうございます。

あれ、「新三銃士」 って、かなり傑作だと思うのに、まぐのりあ様が最初のゲストのかたですか。 ここには書いておりませんでしたが、第1回での西田敏行サンの8時だョ!全員集合ギャグもかなりつかみが強力でした(笑)。

三谷さん、小学校時代から脚本が書けたなんて、神すぎます…(私のマンガ家挫折のコメントの流れで書いてます…笑)。

投稿: リウ | 2012年10月19日 (金) 08時43分

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