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2010年5月14日 (金)

「チェイス~国税査察官~」 第5回 黒い薔薇、赤い薔薇

 おことわり 当ブログ、基本的にほぼすべてネタバレなのですが(笑)、この記事に関しては、ドラマをご覧になってからお読みになったほうがよろしいかと思います。
 それと、ちょっと長くなってしまいました、この記事。 ドラマの内容、濃すぎなんですもん。

 三流新聞の情報屋から、村雲(ARATAサン)についての新たな情報を入手した春馬草輔(江口洋介サン)。 資料室で大昔の関西地方の新聞を、片っ端からすべてチェック。
 ウソォォ~っ(笑)。
 執念があるにも、ほどってものが…(笑)。
 しかもこれ、マイクロフィルムから見てる感じでした。
 マイクロフィルムって、昔のスパイ映画なんかには、よく出てきましたが…。 閲覧、大変そうです。 ゴクローサマです。

 だいたい、この時点で草輔には、村雲の本当の名前が、まだ分かっていない。
 澤村吉弥という少年が誘拐され、左腕を切断されたという記事にたどり着き、それと村雲との関係を結びつけるには、並大抵の嗅覚では、ピンと来るもんじゃないです。

 いっぽうの村雲。
 ボリビアでのリチウム電池工場の爆発事故によって一時的に株価を暴落させ、そのタイミングで檜山正道(中村嘉葎雄サン)の延命装置をストップさせ、外国籍の孫に遺産を相続させ、そして株価が戻った時に、また現金化する、というスキーム(税金逃れ)を着々と進行中。
 檜山の息子である基一(斎藤工サン)は、村雲を信用しきって、代表印も勝手に押しといて、みたいな感覚。

 イカンなあ~、基一クン。

 代表印というのは、会社の命みたいなものですよ。 いくら信用していても、他人にそれを渡すというのは、少なくとも自分の目の前で行なうべきだし、それがどう押されるかも、ちゃんと見守るべきなのです。 歌織(麻生久美子サン)にも 「代表印を人に任せっきりで、何が大丈夫なんだろう?」 と呆れられてます。
 女房を信用していたという事情も分かりますが、少なくとも6000億円にも上るスキームをしようってのに、他人に任せっきりというのは、あまりにもアホすぎました(笑)。

 でもこれは、見ようによっては、村雲の、檜山正道に対する復讐でありながら、同時に檜山基一に対する強烈な嘲り、という意味もある気がします。

 なぜなら、村雲は誘拐拉致された時、檜山基一が生まれたことによって、檜山正道から見放され、左腕を失っている。 前回檜山正道は、村雲のことを 「ボン」 と呼んでおりましたが、本当のボンボンは、基一だったわけですからね。
 そんな金持ちのボンボンがマヌケなのに付け込んで、大がかりな詐欺行為を働くのですから、そこには村雲の、基一に対しての悪意も、同時に強く感じるのです。

 けれども、歌織は村雲の、その大がかりな犯罪行為に、自分と村雲との子である光を巻き込むことに、罪の意識をもっと感じとってもらいたいと思っている。 でも村雲は、自分の子供をスキームのための道具としか、考えていない。 これって、結局自分の子供のために妾の子供を捨てた檜山正道と、同じ轍を踏んでいることに、ならないですかね?

 そしてスキーム決行直前。
 横たわる檜山正道の前で、ボリビアで事故が起こったら延命装置をはずせと村雲から言われ、基一クン、ポツリとつぶやく。

 「村雲サン…アンタ親父いる?」
 もし自分にオヤジがいたら、こんなこと出来るのか?という問いかけですね。
 それに対する村雲の返事は、あくまで冷たい。
 「いるよ」
 そ、目の前にね(笑)。
 なんとも皮肉、というか…いちいちシーンごとに、意味深。 視聴者の頭の回転を、強要してくる、というか。

 ついにスキーム実行当日。
 予定の時刻を過ぎても、ボリビアでの爆発事故が起こらない。
 結局7時間後、事故は起こるのですが、ここで村雲から、基一に連絡が入る。

 「(延命装置を)とめろ…!」
 それはつまり、「殺せ!」 と同義ですよね。 村雲は自分の檜山正道に対する復讐を、このとき完遂したのです。
 「お願いします…」 と医師に告げる基一。 自分の父親の命を、自分が終わらせるなんて、つらすぎです。 苦渋の色を浮かべる基一。 ボンクラでも、しっかり親子の情はあるんだというところを、斎藤工サンはよく演じていたと思います。

 復讐を成し遂げた村雲は、木彫りの黒いバラを、しっかりと握りしめる。
 自分の母親が内職で作っていたのも、バラだったのですが、誘拐された時に母親のために彫っていたのが、この木彫りのバラでした。 村雲にとっては、「餓死した」 と聞かされていた母親の、形見みたいなものだったのでしょう。
 このバラ、あとでとんでもない小道具に発展します(笑)。

 ところで、なぜ爆発事故が遅れたのか、というと、村雲の片腕ウォン(大浜直樹サン)が、現地でのマフィアとの取引に失敗したことが原因。 ウォンは追い詰められて、自ら死を選ぶのですが、ウォンと村雲のケータイでの最後のやり取りは、なんだか感動的でした。

 「ボク達、悪い友達…悪い、朋友(ポンユウ)…ポンユウ、分かる?」

 「ああ、…朋友だ…!」

 「ツァイチェン(さよなら)、ポンユウ…」

 口に銃口を突っ込むウォン。 銃声。
 ウォンの名前を叫び続ける村雲。 いったい村雲にとって、ウォンという男は、どれほどの大切な朋友だったのでしょうか。

 この株価の暴落で、一挙に大損をこいたのが、草輔の娘、鈴子(水野絵梨奈チャン)。
 情報屋との金銭授受が発覚して実質左遷となった草輔が家に戻って来た時、明かりもつけずに部屋にひとり、座っています。
 この鈴子、今まであまりにも憎たらしく振舞い続けていたので、ワタシ的には怒りが飽和状態(笑)。 いまさら反省したって感動なんか、してやるもんかと思っておったのですが(笑)。

 「お父さん…私もお母さん殺しちゃった…」

 ぽろぽろ涙を流す鈴子。
 つまり、鈴子にとって母親の保険金というのは、母親そのものだったんでしょうね。
 株価が上がって鈴子が喜んでいたのは、きっと母親と一緒になって喜んでいたつもりだったのではないでしょうか。 そう考えると、さすがにこっちも同情的になってくる。
 その後草輔と鈴子は、奈良にまで小旅行をするのですが、旅館で寝る前に交わした会話には、ちょっとグッときました。

 「お父さんと、お母さんの話がしたい…」

 「そうだな…お父さんも鈴子と、お母さんの話がしたい」

 「お母さん、飛行機落ちる時…何考えてたかな?…怖かったかなあ?…寂しかったかなあ?……家に帰りたったかなあ?…あれ以来、毎日ずっとそのことばっかり…そのことばっかり…」

 話しているうちに、大粒の涙があふれてくる鈴子。 草輔も、涙があふれてきます。
 そっと鈴子の手を握りしめる、草輔。 その手に顔を押しつけて泣く、鈴子。
 くそ~、あんなにナマイキな娘だったのに、こっちまで泣けてきたぞ。

 そして翌日、草輔は昨夜の鈴子のその疑問に、こう答えるのです。

 「たぶん…たぶんお母さん飛行機の中でこう思ってたんだと思う…『鈴子が一緒じゃなくてよかった』 って…」

 それを聞いて鈴子は、こう答えます。

 「お父さんが一緒でなくてよかった…」

 父娘の仲については、一件落着、と言いたいところですが、お母さんが鈴子の嫌いな野菜を食べさせようと、夜中にすりこぎで野菜をすりつぶしてカレーに混ぜていた、という草輔の話には、ちょっと引っかかる(笑)。
 フツー、おろし金とかじゃないですかね(笑)。 どーでもいいんですが(笑)。

 ところでこの奈良への小旅行、草輔にはもうひとつの目的があって。
 澤村吉弥(村雲)の誘拐事件のことをよく知る、現在は警察署長である谷山努(平田満サン)に、当時の詳しい話を聞くことです。
 この警察署長、農業もかたわらでやっているような、いかにものどかな感じだったのですが。

 吉弥クンが保護された時の平田サンの回想は、まさに戦慄の極みで。

 「私が、あの子の腕を拾いました…拾うてみたら、ぎゅうっと、こう、拳の形になっとるんです。 指を、開いてみたら、木彫りのバラの花を握っておりました…」

 澤村吉弥はその2年後、檜山正道の屋敷に泥棒に入り、そのまま施設に入れられたというのですが、それきり母親の澤村文子(りりィサン)の前から、姿を消した。 谷山署長は吉弥と檜山に、澤村文子が餓死をした、という手紙を出したそうなのですが。

 …これが、

 とんっでもないウソっぱちで!(笑)

 草輔と鈴子が泊まった旅館の女将によると、その谷山署長、誘拐事件の舞台となった産廃場の関係で袖の下をもらったらしいのですが、それが誰からのものなのかは今のところ分かりません。 檜山正道からだったとすれば、前回檜山が、村雲になにげなくしゃべった、「その妾は餓死をした」 という話が、実はウソだった、ということになる。 ことによると谷山署長が檜山を、ゆすったのかもしれない。

 それはいいとして、南紀白浜に、立派なお屋敷を、もっとったんですわ、その谷山署長。
 そこをたずねた草輔が見たものは、…赤いバラに水やりをする、澤村文子の姿!

 テレビドラマでこれほどまでに意外な展開は、なんか結構久しぶりに見た気がします。
 やられました、完全に。
 「えーっ、マジッ?」 とテレビを見ながら、大声出してしまいました(笑)。

 いっぽう、檜山基一をまんまとだまし、海外へ逃亡しようとする、村雲と歌織。

 空港ロビーに突然、「澤村吉弥さま、澤村文子さまがお呼びです」 という、村雲にとってはショッキングこの上ないアナウンスが入るのです。
 ううう、シビレまくります、この展開。
 村雲の前に現れたのは、草輔です。

 「もしよろしかったら、ちょっとお話しませんか?」

 立ち去ろうとする村雲、その義手のほうの手をぐっと掴む、草輔。

 「査察に拘束する権限はないはずだ」
 村雲のこの一言、完全に事情を察した模様です。

 草輔 「ようやく本音で話せるようになったな」

 「…ずいぶんと遅かったな」

 「ああ、俺はバカだ。 どうしてお前に気がつかなかった」

 「アンタに用はないよ」

 「お前になくても俺にあるんだ!」

 草輔は村雲に、お前の母親は生きていると告げるのですが、村雲は聞く耳を持たない。

 「オレの母親は死んだ。 オマエの妻も死んだ。 今は、ただの灰だ!」

 次回いよいよ最終回です。 はあ~、どうなるのかなあ。 語り手のあまりの見事さに、こちらはただただ嘆息するのみです。

当ブログ 「チェイス」 に関するほかの記事
第1回 江口サン、公僕の悲哀http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/04/1-a698.html
第2回 届かぬ父の思いhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/04/2-eecd.html
第3回 裏切りに揺れる心http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/04/3-77a7.html
第4回 ふたつの復讐http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/05/4-3809.html
第6回(最終回)別の人生への希望http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/05/6-785a.html

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コメント

チェイス 国税査察官 録画で見ていますが、
ここ更新がすごく早く、
しかも、私が見落としている演出のすごさや
人情の機微をいくつも指摘されているので、
ホント勉強させてもらっています。

ここを読んでから、もう一回確かめるように
視聴しています。
ありがとうございます。

『不毛地帯』に感動されたならば、田宮二郎の
『白い巨塔』をご覧になると、役者の演技や
内容の濃さに感動ひとしおだと思います。

投稿: 青三 | 2010年5月16日 (日) 00時03分

青三様
コメント、ありがとうございます。
拙い感想文をおほめくださり、気恥かしい限りです。 調子に乗って結構軽口を、叩いているもんですから…(笑)。

御存知かも知れませんが、「チェイス」 の更新が早いのは、一足先にBSのNHK衛星ハイビジョンの放送を見ていることによるものです。
土曜日の放送を楽しみにされているかたには、フライング気味の記事になってしまい、誠に申し訳なく思っております。

田宮二郎サンの 「白い巨塔」 は、全部ではありませんが、遠い昔に見たような記憶が…(笑)。

確か唐沢寿明サンのものより、回数が多かった気がします。 その後田宮サンが自殺するというショッキングなことがあったためそう思うのかも知れませんが、田宮サンの鬼気迫るような演技だけは、ぼんやりと覚えております。

投稿: リウ | 2010年5月16日 (日) 01時21分

こんばんはー。
チェイス…署長は檜山社長を脅したとしか思えませんでした。それから、檜山の若社長が村雲の子の手を…ってことになるかなぁなんて考えてしまってます。

ん…でも、「村雲修次」って姓名はどこで手に入れたんでしょう。私の見落としかしら。これもスキームでゲット?うーん…誘拐犯は銃殺されたヤツらが主犯格なのかなぁ…。

すみません、羅列して。
公式HP充実してますね。
今週のスキームとか(笑)

投稿: らいおん | 2010年5月16日 (日) 21時13分

らいおん様
コメント、ありがとうございます。

やはり、谷山署長が、檜山正道を、脅したんでしょうか? そう言えば、予告編、結構血が流れてましたよね。 物騒な展開になるのかなー。

まったくの私見ですが、登場人物の名前って、結構牧歌的な、田舎の風景みたいな名前が多い気がしてます。
春馬草輔(草を食べている馬?)、鈴子(鈴をつけている馬?)、村雲(村の上の雲?)、檜山(高級木材のヒノキがたくさん生えている山?)、谷山(谷があって山があって?)…みたいな(笑)。

番組HP、キャストと次回予告しか見たことがないので、ちょっとチェックしてみます。

投稿: リウ | 2010年5月16日 (日) 22時16分

リウさまの「おことわり」通りに、土曜の放送を見てから、こちらのblog拝読致しました。ヽ(´▽`)/

いつもながら、さすがのネタバレです。

放送を見て思ったのは、あまり感情を表に出さない村雲が、朋友ウォンが死ぬ時に感情をあらわにした場面で、今までの彼ら2人のつながりはどんなものだったのだろう?ということ。
この部分は、次回は既に最終回になってしまうので、描いてはもらえないのでしょうけれど、見てみたい気がしますね。

あと、春馬が膨大な量の情報の中から「左腕が切断された少年」を探しだすシーン。
とてもリアルな演出だったですね。ここまで表現したTVドラマはなかったのではないでしょうか。これは切り替えの早いカメラワークの力に依る部分も大きいと思いますが。

それから、春馬と鈴子が亡くなった妻(母)について旅をしながら語るシーンも良かったですね。「すりこぎ」の話や「血液型がO型」とか、とても自然な感じでしたね。

もう一つは、警察署長である谷山努さんですね。来週また新たな展開があるのでしょうか?
あと1回で終わりなのが、とっても残念です。まだまだ見ていたいですね。

「ハゲタカ」の大森さんにしても、今回のARATAさんにしても土曜ドラマの人材発掘力はすごいですね。
ARATAさんはモデル出身で映画「ピンポン」でスマイル役だったのですね。びっくりしました。

投稿: rabi | 2010年5月16日 (日) 22時43分

rabi様
コメント、ありがとうございます。

土曜ドラマだというのに、前日の金曜日に見てしまって(笑)、申し訳ございません…。

それにしても、このところのNHKドラマの豊作ぶりには、目を見張ります。
rabiサンご指摘のように、配役にしても、こんな逸材をどこから見つけてくるんだ?という感じですしね。

ウォンも、日本人の役者サンが、ヘンな中国人を演じている(笑)程度にしか思っていなかっただけに、最後のシーンには、やられました。
想像でしかないですが、たぶん悪いことをやっている同志の連帯感、みたいなものが、とりわけ村雲とウォンの間には強く存在していたんだろうな、というふうには、感じますよね。

ウォンに対する態度もそうですが、村雲には、夫に死なれた歌織にいくばくかの金を渡そうとか、やけに情に篤い部分がある気がします。
そのくせ、冷酷な部分も持ち合わせている、なんだか自己矛盾しているような、分裂気味な感じもします。

草輔と鈴子の軽口を交えた語らいは、母親がいた時よりも強くなった気がして、とてもいいシーンだった気がします。
草輔が、娘のムカつく態度に、あくまでまっすぐ向き合っていたのがよかったんでしょうね。
「さそり座でO型」、性格悪いのかなー?(笑)

ただ、すりこぎは、やっぱり、ヘンだと思うんですが…(笑)。

投稿: リウ | 2010年5月16日 (日) 23時54分

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