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2010年5月 1日 (土)

「ゲゲゲの女房」 第5週 ほんとうのスタートは、ここから

 安来編が終わって、東京で茂(向井理サン)との新婚生活を始めた布美枝(松下奈緒サン)。 物語的にも、このふたりの夫婦生活が大部分なわけですから、本当のスタートが、この週から始まったと言えます。

 郊外とは言え、東京の商店街での買い物する奥サンたちのスピードになかなかついていけない布美枝ですが、いきなりひったくりにあってしまう。 それを捕まえた貸本屋の奥サン、田中美智子(松坂慶子サン)とは、のちのち何かと絡んでいくことになるのですが、ちょっとその話は置いといて。

 この、調布のボロ家を訪ねてきた、東京の赤羽にいる、布美枝の姉暁子(飯沼智恵子サン)の目を通して、このスピード結婚の非常識ぶりを、見ている側に改めて感じさせる作りが、またいいのです。
 先週まで、両家の親たちの愛情をひしひしと感じさせる内容だっただけに、この暁子の視点は、重要です。

 知り合ってから一週間足らずで結婚、というのは、やはりはた目から見ると 「さっさと片付けちまえ」 みたいな感じに見えるし、しかも実際の生活は、聞くと見るとは大違い。
 布美枝の父親源次郎(大杉漣サン)は、もっときちんと事実を確認してから、布美枝の結婚を決めてもよかったのではないか、とも思えてくるからです。

 ところがこのドラマ、現代の過保護社会の常識では計り知れない、当時の社会の暗黙の了解が、布美枝の覚悟から、見えてくる。 「所帯を持てば自らの責任で生きよ」 という、ある意味では、現代よりずっと大人としての自覚が確立した、覚悟です。

 「私、長いこと家にいて、ずっとみんなに心配かけとったんだけん。 これからは、自分で何とかやってみる。 もう、引き返すことは出来んのじゃけん」

 ここではまた、貧乏所帯でもなんとかなる、という、ある種のおおらかさが布美枝に備わっているようにも思えます。
 そのおおらかさ、源次郎にも、茂にも、茂の父親(風間杜夫サン)にも共通なところがある。
 土地柄ですかね。
 「なんとかなるじゃろ」 という楽観的なものの考え方は、あれやこれやと心配だらけの生き方をしていると、ハッとさせられる部分があります。

 そしてある日、姉からの話に聞いていた貸本屋を見つけ、夫のマンガを探して見ていた布美枝は、ひったくり犯原田(中本賢サン)を連れて店内に入ってきた、田中美智子とばったり出会う。

 ここは 「なんでひったくり犯とつるんどるのだ?」 みたいな展開なのですが、美智子から事情を聞くと、これがまた、昭和中期の時代を感じさせる、いーい人情話で(笑)。
 原田が腹を空かせて犯行に及んだこと、それをかわいそうに思って、自分の貸本屋で働いてもらうことにした、どうかこの人を許してやってほしい、と布美枝に頭を下げる美智子。
 人々が互いに貧乏であったからこそ、困った人は助けてやろうとする、世の中だったんですねー。 今じゃ考えられんですが、当時にしても、ちょっと美智子サンは、お人好しの側面が、あったかもしれない。

 でも、いいじゃないですか、それで。

 やがてこの貸本屋も、時代の流れとともに、消えていく運命なのです。
 この貸本屋以前にもいろいろ職業替えをしていた、という美智子サンですから、時代が変わればその流れに乗るのでしょうけどね。 それでも私には、この貸本屋、というスペースが、人情の通い合う、その時代にしかない、貴重な空間だった気がして、ならないのです。

 その貸本屋、店番のおばあちゃんが佐々木すみ江サン。
 これがまた、佐々木サンにしかできないような役で(笑)。
 「ふぞろいの林檎たち」 を、またまた思い出したりしますが、佐々木サンと松坂サンって、…よく考えてみると、「篤姫」 の教育係ではないですか(笑)。
 まあ 「篤姫」 で、おふたりが共演、という場面はなかったですが、狙ってんのかなー(笑)。 佐々木サン、ホントに、こういうとっつきにくそうなおばあちゃん役が、似合ってますよねー。

 松坂サンはまたひとまわり、一ノ瀬のおばさん化が進んだ感じ(「めぞん一刻」…分かる人には分かるでしょうが…笑)でしたが、人の良さそうな人を演じると、この人の右に出るものはいない感じになってきた(笑)。
 バニー姿で 「愛の水中花」 を歌っていたころの松坂サンにクラクラしていた身としては、松下奈緒サンとのあまりの身長差に、卒倒してしまいそうになりますが(笑)。 大好きでした~、あのころの松坂サン。

 そして、イタチ(杉浦太陽クン)が連れてきた、マンガ家の中森(中村靖日サン)。 顔が青白くて(笑)、いかにもマンガばっかり描いていそうな雰囲気なのですが、彼を家の二階部分に住まわせてしまうことを決めてしまう、茂。
 この出来事で、さまざまなことがうかがわれてくる。
 まず、家賃収入でもなければやっていけない茂の経済状況。
 そしてイタチが、こんな恩着せがましいことをしたまま終わらないであろう、ということ。
 そして、布美枝の新婚生活が、さらに居心地の悪いものになるであろうということ、です。

 茂は、仕事中全く部屋に閉じこもりっきりの上、見知らぬ他人を家に住まわせることで、布美枝の気持ちはたぶんいっぱいいっぱい。 そこに、仕事部屋を片付けたことで茂に激しく叱られたせいで、布美枝は自分の気持ちを、茂にぶつけてしまうのです。 初夫婦ゲンカ。

 「私、ほんに、分からんのです。 気の利かん人間ですけん、ちゃんと話してもらえんと、何が大事なことで何が余計なことなのか、なんも分からんのです。 村井サンのお仕事のことも分からんし、マンガのこともよく分かりません。 でも、いっしょに、暮らしていくですけん、村井サンの考えていること少しでも話してもらわんと、私、どげんしたらええのか…いっしょに、ここで、暮らしていくんですけん…」

 茂はまた、仕事部屋に引っ込んでしまうのですが、布美枝が買い物に出て行ったあと、一階の部屋の片付いた様子を見て、もうひとりの住人が、この家におることを実感する。 牛乳ビンにさりげなく飾られたナズナが、あまりにも地味で健気な花なのが、またいいんですよ。 まるで布美枝のようではないですか。

 そして茂は、もらった原稿料から、布美枝用の自転車を買う。
 それを見た布美枝が、うれしくて泣いてしまうところは、それまでずっと、布美枝の東京での不安な生活を見せられてきた私も、もらい泣きです。 我慢していたものがはちきれてしまう涙、というものが、あるんですよね。 すごくよく分かるのです。

 その自転車で、ふたりは深大寺までサイクリングに出かけるのですが、そこであらためて、お互いがどうしてこの結婚を決めたのかを、語り合う。
 お互いの気持ちを分かり合いたい、と話した布美枝の気持ちが、ここで結実しているんですよね。

 登場人物が言ったことに対して、ちゃんとその答えを提示してくれる、けじめをちゃんととってくれるのが、このドラマの凄いところです。
 決して言いっ放しに、なっていない。

 そしてそのけじめは、茂がそのあと原稿料を布美枝に渡し、「自転車を買ってしまってこれだけしか残らんかったけれど、これでなんとかやりくりしてください」 と話すことで、「自転車なんて買ってしまって、また生活がキツくなるのではないか?」 と考える視聴者たちに、ちゃんと説明をしてくれることにも表れています。
 何度も書いてますけど、実に丁寧だ。

 安来編があまりにもよかったので、東京編にはちょっと不安もあったのですが、なんか杞憂でした(笑)。 来週も、楽しみです。

当ブログ 「ゲゲゲの女房」 に関するほかの記事
第01回 NHKのやる気を感じさせますhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/03/1-nhk-c7ac.html
第02週まで見てhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/04/2-5cbd.html
第04週まで見てhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/04/4-a685.html
第06週 人事を尽くして天命を待つhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/05/6-3192.html
第07週 時代に流されていく人たちhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/05/7-6a9d.html
第08週 笑って生きよう、たとえ貧しくともhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/05/8-82ce.html
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第11週 まあ…なんとかなーわね!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/06/11-e5c0.html

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BOOKS

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ紹介記事より抜粋)。 本書下巻では、1962年のレコードデビューまでが書かれています。

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 上

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     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ記事より抜粋)。 この上巻ではビートルズの祖先から遡ってリバプールで人気に火が付き始めたところまでが書いてあります。

  • ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白

    ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白
    まず驚かされるのが、表紙のポールの写真です。 よくこんなのが採用されたな、というくらい、刻まれた年輪が顕著に分かる 「年老いたポール」。 飾り気のないその写真に、「素のポール」 をあぶり出そう、という心意気が見える。 そして実際、著者のその目論見は、成功しているように思えます。 何より大きいのは、「NME」「Q」「MOJO」 など音楽メディアで長年記者を務めてきた著者がポールと同じリバプールの出身者である、ということ。 さらにポールと同じファースト・ネームであること。 だからポールはまるで自分の分身に話しかけるかのように、時折同郷人にしか分からない言葉で気さくに著者に話しかける。 この本を読む者は、まずその 「不思議なリラックス感」 に包まれるはずです。  本の構成は大きく二つに分かれます。 前半ではビートルズからウィングス、ソロに至るポールのたどってきた長い長い歴史、後半ではポールの人格に迫る試みがなされていく。 そのインタビューは、一気に行なわれたものではありません。 著者がNMEの記者だった1979年のものから、明示はされていないがおそらく2013年、「NEW」 の発売前後が最新のものではないか、と思われます。 実際読んだ感覚では 「キス・オン・ザ・ボトム」 あたりが最新のような気もする。 その30年以上にわたる膨大なポールへのインタビューを、項目によって構成し直しているようです。 ですから、今年(2016年)亡くなったジョージ・マーティンについてのポールの見解であるとか、最新の情報が提示されているわけではない。 ポールの情報というのはこの歳になってもなお日々更新型ですから、その点については物足りなさが確実にあります。 さらに、30年以上というとポールのものの考え方にも変化変遷があってしかるべきだと思うのですが、30年以上をリミックスにかけているからその変化というものがつかめてこないもどかしさがある。 表紙を飾ったポールの 「老い」 という問題にも、この本はきちんと答えてくれているわけではない。 さらに言えば、ジョン・レノンの死について多くが割かれているのとは対照的に、2001年に亡くなったジョージ・ハリソンの死についての記述はない。 正直なところ、このような本を読み漁ってきた身としては、衝撃に値するような情報が書かれているわけではありません。 しかし前述したような、リラックスしたムードのなかでポールと語らっているような疑似体験を共有できる強みが、この本にはある。 この本全体に貫かれているのが、この心地よさなのだ、と思うのです。 その心地よさが乱れるパートがあります。 自身の失敗作、どうでもいい作品について語るときのポールは多分に感情的になりがちであり、イライラした様子を隠しません。 特に 「シークレット・フレンド」 を語るポールのくだりはポールファンなら一読に値する部分でしょう。 しかしそのイライラも、ポールの人間性が垣間見える瞬間としてこの本にとっては必要なパートなのです。 3000円以上と、この本は決して安くはない部類の本です。 ただその値段に見合うパフォーマンスは兼ね備えています。 この本と付き合った1か月足らずの間、心地よい体験をすることができました(アマゾンの自身のカスタマーレビューより)。

  • : レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]

    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

MUSIC

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(スーパー・デラックス・エディション)(4CD+DVD+BD)
    ロック界、いや、すべてのポップミュージックにおけるアルバムの中で史上最高と称され、すでに世界文化遺産の域にまで達しているこのアルバム。 そのアルバムの発売50周年を記念して、スペシャルエディションがリリースされます。 なかでもブッ飛ぶのがこのスーパースペシャルボックスセット。 CD4枚組であらたなリミックスのステレオ盤1枚、モノ盤1枚、初期テイク集が2枚、さらにブルーレイ1枚とDVD1枚で5.1サラウンド、ハイレゾ音源、ドキュメント映像 「メイキングオブサージェントペパーズ」 のデジタルリマスター等々、卒倒するようなラインナップです。 18、000円プラス税と値は張りますが、史上最高の名盤だからこそこれは買い。 5月26日の発売までに予約をしておけば、アマゾンならば値下がりした時に値段がそのあと高騰しても最安値で購入できます。 ビーファンならずとも、これは注目ですぞ!

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    山口 百恵: ゴールデン☆アイドル 山口百恵(完全生産限定盤)
    全シングルA・B面プラスボーナストラック(「あなたへの子守歌」)を、山口百恵名義としては初のブルースペックCDとしてリリース。 音はいわゆるドンシャリ系ではなく、アナログ盤に準拠した原音に忠実な印象です。 パッケージングはアナログシングル盤サイズで中袋、CDを納めるケースが完全にドーナツ盤をイメージしています(よく言えば斬新…笑、悪く言えばチャッチイ…笑)。 しかしその発想は買える(笑)。 ほぼ原寸大のシングルジャケットと裏の歌詞カードの複製ブックレット。 ただスキャニングは欲を言えばもう一歩。 当時シングル盤を中心に聴いていたかたなら、この編集盤はかなりの 「買い」 です。 しかしこのジャケット表紙の写真、スッピン風で個人的にはすごく好き。

  • デイヴ・グルーシン&リー・リトナー -

    デイヴ・グルーシン&リー・リトナー: Two Worlds / Grusin & Ritenour
    NHK朝ドラ 「花子とアン」 で美人のスコット先生が夜な夜な歌い、チビはなチャンがすっかり覚えてしまったイギリス民謡、「ザ・ウォーター・イズ・ワイド(流れは広く)」。 このアルバムでルネ・フレミングが歌っていたのを思い出しました。 ルネのソプラノはけっして大袈裟でなく上品で、私のとてもお気に入りのソプラノ歌手ですね。 このアルバム自体は全体的にクラシックにギターのリー・リトナーが絡むフュージョンぽいものなのですが、故・黒田恭一サン評するところの、「大人が聴く音楽」。 胸を締め付けるような哀しみと、すべてを包み込むようないたわりに満ちていて、私の人生のなかでも最上位に位置する愛聴盤です。

  • 桜田淳子 -

    桜田淳子: ゴールデン☆ベスト 桜田淳子~シングル・コレクション
    彼女の活動期に発売されたシングルをすべて網羅したベスト盤。 確かに後年のものほど馴染みがありませんが、選曲漏れがないので、彼女の存在とは何だったのか自体に思いが至るベスト盤です。 音も楽器の音像がよくてなかなかいいマスタリングをしている気がします。 2600円程度で推移しています。

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: ザ・ビートルズBOX(限定生産品)(USBメモリ)
    パソコンにUSB端子があり(たいていついてると思います)、パソコンで音楽が聴ける環境をお持ちの人ならば、聴くことができます。 現在のテクノロジーで最もいい音質で聴ける、ビートルズの音楽です。 ただし国内版にもかかわらず、訳詞とか一切なし。 ジャケットもブックレットもパソコンデータ。 純粋に音楽だけ楽しみたい人向けです。 また、曲間にコンマ何秒かのブランクが入ります。 「アビイ・ロード」 のメドレーも同様です。 しかし、音はさすがに、すごい。 大きな音量であればある程、目の前にビートルズが迫ってくる勢いです。 ツヤが違います。

  • The Beatles -

    The Beatles: The Beatles [USB]
    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

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