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2010年5月15日 (土)

「ゲゲゲの女房」 第7週 時代に流されていく人たち

 「ゲゲゲの女房」 第7週は、時代の流れに消え去っていくものたちに対する、作り手の大きなシンパシーを感じさせる話となりました。

 その前に、「墓場鬼太郎」 の好評を受けてのエピソードで一息つかせるのですが、この嵐の前の演出が、なかなかうまい。

 まず、自分の夫が貸本マンガ家であることを、こみち書房の面々に布美枝(松下奈緒サン)がようやく打ち明けるところ。

 どうして同じ貸本屋稼業なのに、さっさと言い出さないのか、という見方も出来るのですが、いったん言い出すきっかけを失ってしまうと、なかなか今さら話せるものではない。 言わなかったからこそ、ますます言い出しにくくなってくる。 そのこともよく描写されていた気がしますが、布美枝はそこで、茂(向井理クン)の頑張りをなんとか応援しようと、一念発起して 「夫のマンガです、よろしくお願いします!」 と頭を下げるのです。 その踏ん切りのつけ方が、心地よい。

 それと、自分が描いているマンガの登場人物と同じ顔をしながらそのマンガを茂が描いているのを、布美枝が思わず笑ってしまうというエピソード。

 よく分かるんだな~、コレ(笑)。

 確かちばてつやサンのマンガでも、ちばサンがマンガの中の人物と同じ表情をしながら描いてしまう、という話がありました。
 マンガというのは、普通の絵と違って、キャラクターにいろんな表情をさせなければならない。 マンガを描いた人なら 「分かる分かる」 という話なのです。

 夫婦の共同作業の中で、のんのんばあや登志(野際陽子サン)の昔話をふたりで語り合う、という場面も、なかなかよい。

 「目には見えんけど、ちゃんとおる」

 という茂のなにげない言葉に、布美枝は昔、茂と出会ったのではないか、と感じるのですが、その瞬間、布美枝の髪が、かすかに揺れるんですよ。 まるでその昔の風が、通り過ぎて行ったかのように。
 普通だったら、風もないのに髪が揺れるなんて、不自然に思えて仕方ないのですが、ふたりして妖怪やお化けの話をし続けたあとだから、それがちっとも不自然に思えない。 しかも結局、昔茂と布美枝が会ったのかどうかを、あいまいなままで済ませている。 なんとも粋だ。 どうにも参りますね、このドラマには。

 「鬼太郎」 の評判がよくなれば、何かと周囲の人の動きも、変化が起きてくるものです。
 さっそく浦木(杉浦太陽クン)が、大迷惑をかけたばかりというのに、しれっと登場(笑)。

 この浦木、普通に考えると、実に不愉快な人間なのですが、これが(ドラマ上では)「ねずみ男」 のモデルだった、と分かると、妙に憎めなくなる。 なんともその薄めさせ加減が、いいんですよ。 この浦木という人間を、こういうやつもいるんだよなあ、という目で見られるかどうかが、ドラマを見る側の人間性を試される尺度、という役割も果たしている。 いやいや、どこまで本気なんだ、このドラマ(笑)。

 実際のところ、大迷惑もかけるけれども、浦木は一方的に茂に迷惑ばかりかけているわけでもない。 持ってくる情報は、茂にとって悪い話ばかりなんですが(笑)。 知らなきゃならない悪い情報だったりするんですよ、それが。
 浦木の生き方は、たまたまうまくいかないだけで、「ええじゃないの。それが通れば、人生楽園よ!」 という思想に突き動かされている。
 ちゃんとうまくいくかという見極めは結構重要ですが、人生、たまたまうまくいくかうまくいかないか、という側面も、なんかあるような気がするんですよね。

 そして次に、茂の前に現れたのが、茂と昔組んでいた、紙芝居屋の杉浦音松(上條恒彦サン)。
 いきなりこみち書房の人たちや布美枝から、押し売りと間違えられるんですが、この押し売り…(笑)。
 私の子供時代にはあまり見かけませんでしたが、テレビやマンガの話には、よく登場していたもんです。 特に 「サザエさん」 とかドリフのコントとか。

 「鬼太郎」 を刊行している富田書房の景気も悪いらしく、村井家もすかんぴん状態なのですが、音松がやってきたのも、お金に困ったうえでの話。
 音松が村井宅を訪れた最初の夜、布美枝にちょっと披露する紙芝居の一節も、借金のカタにひどい目に遭う親子の話で、このドラマ、こうしたちょっとしたところにも神経が、相変わらず行き届いています。

 お互いにお金のないのを隠しながら、ちぐはぐなやりとりをする、茂と音松の喫茶店での会話は、笑いました。 音松が金を無心しようとして 「ケーキ」 とか 「カレー」 とか 「醤油」 と口にしてそのつどごまかしてしまう、というのも、可笑しいけれども、なぜか哀しい。 いい人なんですよ、要するに。 だからこそ、時代に取り残される、という側面も、確かにあるのですが。

 それにしても、茂と布美枝の妖怪談義から、音松と茂との昔話を通じて、「鬼太郎」 の作品的なバックグラウンドを、これでもかとばかり丁寧に描写する点は、やはりさすが。 なんであれもこれも、こんなに自然に話が運んでいけるのだろう。 ふー(タメ息)。

 「恐ろしいもんだぞ、ひとつの商売がダメになるというのは。 船と同じだ。 沈みだしたらあっという間で、逃げ遅れたらもろともに沈むしかない」

 茂が語る 「仕事の経済的な行き詰まり」 は、富田書房との縁を切ったことで、村井家にも襲いかかることになるのですが、ここでドラマを深刻に見せないための小道具として登場するのが、布美枝が庭先の掃除中に拾う、一枚の葉っぱ。
 この葉っぱ、ある時は赤字の家計簿の栞として使われ、「お金にならんかなあ」 と布美枝にぼやかれ(いったんもめんの、「ないない」 と言うリアクションには、笑いました)、茂の描いたキツネの絵に登場し、最後には、布美枝の(おそらく実家から持ってきたであろう)なけなしのお金を音松に捻出するための、ウチデの小槌みたいな役割を果たすのですが。

 布美枝の様子を見ていると、そんなトラの子を手放してしまって、いったい平気なのか、という気がしてくるほど、泰然自若としているように思えます。
 けれども、けっして深刻に陥ることのない物事のとらえ方、というのは、何にもまして、絶望に対する一番の特効薬のような気がする。 そこで亭主をなじったり、暗い気持ちになったりすることよりも、前向きに生きていこう、節約していこう、という態度のほうが、人生よほどいいように思えるのです。

 ただし、音松サンなんですが。

 最後に九州の炭鉱に行けばもうひと旗、などとおっしゃってましたが、炭鉱というのも、このあと急速に衰退の一途をたどる産業なのです。 つまりそこにも、幸せが待っているとは、決して言えない。

 そんなことを考えると、人間何か隆盛を極めているところのほうに流れていきたがりますが、実はそれって、とても危うい職業選択の方法なんだろうな、というのがしみじみと感じられるのです。

 そして今週、私が強く感じたのは、金がない人たちは、金があるほうへあるほうへと群がっていって、結局貧乏人同士って、足の引っ張り合いをしているにすぎないのかなー、なんてことでした。
 富田書房のうじきつよしサンだって、本当はあんな生き方を、望んでいないと思うのです。
 金がもうかれば、茂に原稿料を払う算段でいることは確かなのです。
 それができずに、茂の痛いところを突いて黙らせたりする。
 人を黙らせる、というのは、生きていくうえでとてもずるいことだけれども、それが世渡りのひとつの方法だったりします。
 例え屈服させても、金がなきゃ、どうしようもないんですけどね、この世の中。

 いやー、こんなふうに考えてると、ホントやんなってくるよなあ(笑)。
 だからこそ布美枝のおおらかさが、眩しかったりするのですが。
 布美枝のように大きく落ち込むことのない、大きなスケールで、生きていたいものです。

当ブログ 「ゲゲゲの女房」 に関するほかの記事
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http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/03/1-nhk-c7ac.html
第2週まで見てhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/04/2-5cbd.html
第4週まで見てhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/04/4-a685.html
第5週 ほんとうのスタートは、ここからhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/05/5-9d37.html
第6週 人事を尽くして天命を待つhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/05/6-3192.html
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BOOKS

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ紹介記事より抜粋)。 本書下巻では、1962年のレコードデビューまでが書かれています。

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     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ記事より抜粋)。 この上巻ではビートルズの祖先から遡ってリバプールで人気に火が付き始めたところまでが書いてあります。

  • ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白

    ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白
    まず驚かされるのが、表紙のポールの写真です。 よくこんなのが採用されたな、というくらい、刻まれた年輪が顕著に分かる 「年老いたポール」。 飾り気のないその写真に、「素のポール」 をあぶり出そう、という心意気が見える。 そして実際、著者のその目論見は、成功しているように思えます。 何より大きいのは、「NME」「Q」「MOJO」 など音楽メディアで長年記者を務めてきた著者がポールと同じリバプールの出身者である、ということ。 さらにポールと同じファースト・ネームであること。 だからポールはまるで自分の分身に話しかけるかのように、時折同郷人にしか分からない言葉で気さくに著者に話しかける。 この本を読む者は、まずその 「不思議なリラックス感」 に包まれるはずです。  本の構成は大きく二つに分かれます。 前半ではビートルズからウィングス、ソロに至るポールのたどってきた長い長い歴史、後半ではポールの人格に迫る試みがなされていく。 そのインタビューは、一気に行なわれたものではありません。 著者がNMEの記者だった1979年のものから、明示はされていないがおそらく2013年、「NEW」 の発売前後が最新のものではないか、と思われます。 実際読んだ感覚では 「キス・オン・ザ・ボトム」 あたりが最新のような気もする。 その30年以上にわたる膨大なポールへのインタビューを、項目によって構成し直しているようです。 ですから、今年(2016年)亡くなったジョージ・マーティンについてのポールの見解であるとか、最新の情報が提示されているわけではない。 ポールの情報というのはこの歳になってもなお日々更新型ですから、その点については物足りなさが確実にあります。 さらに、30年以上というとポールのものの考え方にも変化変遷があってしかるべきだと思うのですが、30年以上をリミックスにかけているからその変化というものがつかめてこないもどかしさがある。 表紙を飾ったポールの 「老い」 という問題にも、この本はきちんと答えてくれているわけではない。 さらに言えば、ジョン・レノンの死について多くが割かれているのとは対照的に、2001年に亡くなったジョージ・ハリソンの死についての記述はない。 正直なところ、このような本を読み漁ってきた身としては、衝撃に値するような情報が書かれているわけではありません。 しかし前述したような、リラックスしたムードのなかでポールと語らっているような疑似体験を共有できる強みが、この本にはある。 この本全体に貫かれているのが、この心地よさなのだ、と思うのです。 その心地よさが乱れるパートがあります。 自身の失敗作、どうでもいい作品について語るときのポールは多分に感情的になりがちであり、イライラした様子を隠しません。 特に 「シークレット・フレンド」 を語るポールのくだりはポールファンなら一読に値する部分でしょう。 しかしそのイライラも、ポールの人間性が垣間見える瞬間としてこの本にとっては必要なパートなのです。 3000円以上と、この本は決して安くはない部類の本です。 ただその値段に見合うパフォーマンスは兼ね備えています。 この本と付き合った1か月足らずの間、心地よい体験をすることができました(アマゾンの自身のカスタマーレビューより)。

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    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

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    ザ・ビートルズ: サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(スーパー・デラックス・エディション)(4CD+DVD+BD)
    ロック界、いや、すべてのポップミュージックにおけるアルバムの中で史上最高と称され、すでに世界文化遺産の域にまで達しているこのアルバム。 そのアルバムの発売50周年を記念して、スペシャルエディションがリリースされます。 なかでもブッ飛ぶのがこのスーパースペシャルボックスセット。 CD4枚組であらたなリミックスのステレオ盤1枚、モノ盤1枚、初期テイク集が2枚、さらにブルーレイ1枚とDVD1枚で5.1サラウンド、ハイレゾ音源、ドキュメント映像 「メイキングオブサージェントペパーズ」 のデジタルリマスター等々、卒倒するようなラインナップです。 18、000円プラス税と値は張りますが、史上最高の名盤だからこそこれは買い。 5月26日の発売までに予約をしておけば、アマゾンならば値下がりした時に値段がそのあと高騰しても最安値で購入できます。 ビーファンならずとも、これは注目ですぞ!

  • 山口 百恵 -

    山口 百恵: ゴールデン☆アイドル 山口百恵(完全生産限定盤)
    全シングルA・B面プラスボーナストラック(「あなたへの子守歌」)を、山口百恵名義としては初のブルースペックCDとしてリリース。 音はいわゆるドンシャリ系ではなく、アナログ盤に準拠した原音に忠実な印象です。 パッケージングはアナログシングル盤サイズで中袋、CDを納めるケースが完全にドーナツ盤をイメージしています(よく言えば斬新…笑、悪く言えばチャッチイ…笑)。 しかしその発想は買える(笑)。 ほぼ原寸大のシングルジャケットと裏の歌詞カードの複製ブックレット。 ただスキャニングは欲を言えばもう一歩。 当時シングル盤を中心に聴いていたかたなら、この編集盤はかなりの 「買い」 です。 しかしこのジャケット表紙の写真、スッピン風で個人的にはすごく好き。

  • デイヴ・グルーシン&リー・リトナー -

    デイヴ・グルーシン&リー・リトナー: Two Worlds / Grusin & Ritenour
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  • 桜田淳子 -

    桜田淳子: ゴールデン☆ベスト 桜田淳子~シングル・コレクション
    彼女の活動期に発売されたシングルをすべて網羅したベスト盤。 確かに後年のものほど馴染みがありませんが、選曲漏れがないので、彼女の存在とは何だったのか自体に思いが至るベスト盤です。 音も楽器の音像がよくてなかなかいいマスタリングをしている気がします。 2600円程度で推移しています。

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: ザ・ビートルズBOX(限定生産品)(USBメモリ)
    パソコンにUSB端子があり(たいていついてると思います)、パソコンで音楽が聴ける環境をお持ちの人ならば、聴くことができます。 現在のテクノロジーで最もいい音質で聴ける、ビートルズの音楽です。 ただし国内版にもかかわらず、訳詞とか一切なし。 ジャケットもブックレットもパソコンデータ。 純粋に音楽だけ楽しみたい人向けです。 また、曲間にコンマ何秒かのブランクが入ります。 「アビイ・ロード」 のメドレーも同様です。 しかし、音はさすがに、すごい。 大きな音量であればある程、目の前にビートルズが迫ってくる勢いです。 ツヤが違います。

  • The Beatles -

    The Beatles: The Beatles [USB]
    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

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