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2010年5月23日 (日)

「ゲゲゲの女房」 第8週 笑って生きよう、たとえ貧しくとも

 「ゲゲゲの女房」 第8週は、布美枝(松下奈緒サン)の父、源兵衛(大杉漣サン)の上京を中心とした話が展開しました。

 今週の話の広げ方はフィクション色が強く、作り手の腕の見せ所だったのですが、源兵衛の話を導入する前に、軽いプロローグをもぐりこませる手法は、また見事でした。

 というのも、このドラマにおいて、源兵衛というのは見方によっては結構な理不尽キャラであるからなのです。
 いつもわけも聞かないうちに頭ごなしに怒り、周りに誰がいようともどんな状況であろうとも、大声で怒鳴りつける。 KYの権化みたいな存在(笑)。
 こんなカミナリ親父は、その昔はちっとも珍しくなかったものですが、現代の若い人にしてみれば、その理不尽さが見ていてストレスになる場合もある。
 その源兵衛が、久々に登場するのです。
 調布編になってからこのかた、このような激昂するキャラクターがいなかったために、ここ数週穏やかな雰囲気で進行していたこのドラマに、「台風が再上陸」(笑)という感は、否めない。

 そこで作り手は、こみち書房に出入りしていた若い工員、太一(鈴木祐樹クン)をまず激昂させます。
 失恋したことを慰める美智子(松坂慶子サン)に、「簡単に言わないでくれよっ!」 と怒鳴る太一クンは、なんでこれほどまでに怒る必要があるのか?とその時はいぶかしく思えるばかりだったのですが、それは太一クンの抱える闇の深さを表していたと同時に、これからもっと怒鳴りキャラの源兵衛が登場する、助走となった気が、結果的にするのです。

 そしてもうひとつのプロローグが、幼なじみのチヨ子(平岩紙サン)の上京。
 チヨ子に対して見栄を張ってしまう布美枝が、今週のこのドラマを象徴するようですらある。
 布美枝はチヨ子に見栄を張ってしまうことで、東京に来てからすっかり自分的には普通になってしまっていた日常を、初めて客観的に振り返ることになるのです。 このもっていきかたも見事。

 「私、ハズレくじ引いたと思っとるんじゃろうか?…そげなつもりないんだけどなあ…」

 夫の仕事ぶりに誇りを持ち、貧乏ながらも生活を切りつめて頑張ってきたことへの自負もあるのに、心の底では自分は不幸だと考えているのではないか、とわが身を振り返っている。
 そんな布美枝を見ていたこみち書房のおばあちゃん(佐々木すみ江サン)が、一生懸命頑張って貧乏ならば、それは社会が悪いのだ!と考えな、と言うのには、笑いました。

 上京した源兵衛は、村井の家に来た早々、下宿人の中村靖日サンを空き巣だと思って格闘(笑)、いつも通り風呂を借りにきた大倉孝二サン一家に、あきれ果てる。 中村靖日サンは、その昔東京ぼん太サンがしていた(笑)唐草模様の風呂敷に家財道具をみんなまとめて後ろ手に背負って、質屋に行こうとしていたところ。 これがまた、笑いました。 その質草のひしゃくを手に布美枝たちをイカリまくる源兵衛サンも、可笑しかったなあ。

 美智子サンは太一クンをなんとか励まそうと、茂(向井理クン)に頼んで、こみち書房の店先でサイン会(読者の集い、とか言ってましたが)をやろうということなるのですが、その時 「こんな感じ?」 みたいに出てくる想像シーンで、マンガ家の人がサイン会をしていましたよね。
 あれ、イメージ的には手塚治虫サンのような感じなのですが、そこに出ていたマンガ家の名前、「えびおそうじ」 先生、個人的なのですが、ツボでした(笑)。
 というのも、昔 「うしおそうじ」 というお名前のマンガ家サンが、いらしたんですよ。 「怪傑ライオン丸」 とかのマンガを描いていて。 冒険王に、よく描いていらしたと記憶しています。 その人の名前は 「うしお・そうじ」 だったんだろうと思うのですが、私はいつも 「牛お掃除」 みたいに思っていて(笑)。 そんなことを懐かしく、思い出しました。

 そのサイン会を見せることで源兵衛にも茂の人気ぶりをアピールしようと、少年戦記の会の時のガリ版刷りを駆使して宣伝ビラを大量印刷。
 このガリ版印刷にも、個人的にはとても懐かしいものがあるのです。 古い人間ですからねー。
 確かロウを塗った紙に、ガリ版用のペンで、ガリガリ書き込むんですよ。
 その部分だけが、インクを通すのですが、そのインクも、ねっとりとした、版画用みたいなインクで。
 学級新聞とか、進級時の文集とかを、刷ったような記憶があります。 よくかすれたり、ダマが出たりして(笑)。
 印刷用紙はたいてい、わら半紙だったのですが、今回のドラマでは、結構上質紙を使っていたようですね。

 で、そのサイン会にはサービス券やサクラまで動員するのですが、それが却って裏目に出て、源兵衛は大激怒。

 「一生懸命働いてそれでも貧乏なら、堂々と貧乏しとったらええんだ!…(略)…茂さん、あんたはもっと堂々とした男だと思っとった。 娘が何を頼んだか知らんが、こげな小細工に手を貸すとは。 ええ男に嫁がせたと思っとったが、わしの間違いだったかのう!」

 この言葉に、布美枝はこのドラマ史上(笑)初めて、父親にたてつくのです。

 「…そげなこと言わんで。 お父さんは、なんも知らんけんそげなふうに思うんだわ。 この人は、小細工なんかせんですよ。 何言われても、いつも堂々と自分の好きなマンガに打ち込んでいる。 …私は、よう知っとります…! 夫婦ですけん! この人が、精魂込めて描いとるとこ、いちばん近くで見とるんですけん…
 この人は、本物のマンガ家ですけん!」

 ここで太一クンが現れ、またひとしきり、やさぐれたところを披露するのですが、これまでの太一クンの様子からすれば、なんでこんなに急にひねくれてしまったのだろう、という感じでは、ありました。 佐々木すみ江サンも、道を踏み外してしまわなければいいが…みたいに思ってしまうくらいですから。 でも、今はあんまり、みっともないところを人に見せるような風潮ではないのでこんな人はいないような気はしますが、昔は人づきあいが不器用な人って、結構いたような気が、するんですよね。
 ひねくれまくる太一クンに、美智子サンは我慢の糸が切れたように、「心配させてよ!心配したいのよ!」 と絞り出すように言うのです。

 「だって、太一クンは生きてるでしょ? つらいことがあっても、嫌なことあっても、生きてるから…生きててくれれば心配できるから…」

 美智子サンの子供サンが戦後間もなく腸チフスにかかって死んでいたことが、ここで明かされます。 生きていれば、太一クンと同じくらいの歳だったと。 太一クンは、なんとか心を入れ替えてくれるのです。

 ここで場の空気を、いっぺんに軽いものにしてくれたのが、茂でした。
 今週の 「ゲゲゲ」 で効果的だったのは、要所々々での、茂の 「物事を深刻に考えない」 という生き方でした。 :源兵衛サンがある意味メインなこの週に、出番が比較的少ないながらも、存在感をさりげなく残していくその見せかたには、相変わらず脱帽です。

 村上弘明サンの出版社社長から、前金で万札を(このドラマで、旧一万円札、初めて見ました…笑)3枚ももらい、その勢いでぜいたく品を買いこんでくる、という鷹揚さもそうです。 いくら大金が入ってもいまだに家計が苦しい布美枝はそれに文句を言うのですが、それに対する茂の答えが、またよかった。

 「だらい言うな。 金の入ったくらいは贅沢せんといけんのだ。 たまには気分を豊かにせんと人間が貧しくなる。 生活が貧乏なのは仕方ないが、人間まで貧乏臭くなってはいけん」

 至極名言(笑)。 笑いながらも、ホントそうだよなあ、と思わせるのがすごい。

 美智子サンと太一クンの一件を心配する布美枝に、「知らんふりしとればええ、あんたが気に病んでもどうにもならんよ」 とあっさり言い切ってしまうのも、冷たそうには思えるのですが、言われてみれば、ちゃんと心配してくれる美智子サンのような人がいれば、あとはなんとかなるものだ、という気にもなってくる。
 改心して感極まる太一クンに、適度なガス抜きをするセリフも、よかったです。

 「お互い苦戦が続きますな。 マンガも厳しいですけん。 なかなか売れんので。 けど、そうくよくよしとらんで、ほがらかーにやっとればええんです」

 そして。
 誤解が解け、布美枝の成長も見届けた源兵衛は、商店街での見送りの時、布美枝にこう言うのです。

 「がんばれよ。 親を、あてにしたらいけんぞ。 自分たちで何とかやっていけ。 40年50年と連れ添ううちには、ええ時も悪い時もある。 ええ時は誰でもうまくやれる。 悪い時こそ、人間の値打ちが出るだけんな」

 そしてそっと、紙に包まれたお金を、布美枝に手渡します。

 「化粧品でも買えやい。 お母さんには黙っとけよ。 手紙に書いたりするなよ」

 布美枝は、「だんだん」 とお礼を言い、源兵衛に 「お金はないけど、私毎日笑って暮らしとるよ」 と話すのです。 その時の源兵衛の、満足そうな顔。 じわじわ泣けますね、これは。 いくら理不尽な怒りかたをする人でも、そこにはちゃんと子供への思いが詰まっている。 それまで29年でしたか、ずっと毎日顔を合わせていた娘に、約1年ぶりにあったせいもあるのでしょうが、久々の源兵衛サンは、布美枝に対する愛情が、またあふれんばかりになっていたなあ、と感じました。

 安来に帰ってミヤコ(古手川祐子サン)にせっつかれ、布美枝の様子を報告する源兵衛サンも、余計な心配をかけさせまいとする話し方ながら、言葉の端々に布美枝の貧乏の様子がにじみ出ており、それでも大丈夫だ、という説得力に満ちていました。

 「あいつ、笑って暮らしとったぞ。 何もかも順調とはいかんだろうが、笑って暮らしてんのだけん、…だいじょぶだ」

 笑って暮らしていた、それだけで、ミヤコの心配は、氷解するのです。
 貧乏でも、笑って生きることができれば、その人の心はお金持ちと一緒なのだ。 笑えることって、ホントに大事だよなあ、そう思えて仕方がないです。

 今週は、印象に残るセリフの多い、言葉の力を感じさせる場面が、多かったように感じました。

 それにしても、週1ペースで書いてきましたが、ちょっと内容がありすぎて、書くのがしんどくなってきた(笑)。 どうするかなあ。

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