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2010年6月 6日 (日)

「ゲゲゲの女房」 第10週 ビンボー神の出るタイミング

 これまでも豊かとはけっして言えない生活をしてきた村井家でしたが、そんななかで布美枝(松下奈緒サン)が妊娠。
 今週の 「ゲゲゲの女房」 は、極貧のさなかに布美枝と茂(向井理サン)がどのように赤ちゃんを迎えるにいたったのかを描写していました。
 私の興味は、こんな究極の貧乏のなかで、茂がよく子供を持つ気になったものだ、ということ。

 産科院で 「子供が生まれると物入りだ」 という会話が脳裏をよぎるなか、布美枝が家に帰ってくると、2階を借りていた中森(中村靖日サン)が茂としんみりしています。
 聞けば中森サン、とうとうマンガ家をやめることを決意し、くにに帰ることにしたと言う。
 荷物をたたんだ部屋に戻った中森サン、商売道具のGペン(マンガ家がよく使うペンの一種です)を、いとおしそうに眺め、絵を描くしぐさをする。
 なんだか、じわっと泣けました。 なんてことないシーンなのですが、40を超えて、結局それまでやってきたことをやめ、下請けの下請け、などとという新たな仕事に就かなければならない悲哀に、同じ40代のオッサンは、ミョーに共感するのです(笑)。
 中村靖日サン、ホントにいるかいないか分からないような影の薄い下宿人(笑)でしたが、源兵衛サンにドロボーと間違えられたり、水道橋から調布まで息も絶え絶えに歩いてきたり、要所要所で笑わせていただきました。

 ところが中森サンからたまった家賃の半分をもらっても、村井家の財政には焼け石に水。 家賃収入のあてもなくなり、そのうえセールスレディの仕事も断られ、どんどん手詰まりの様相に。
 話ははしょりますが、最後の頼みの富田書房の社長(うじきつよしサン)から受け取った約束手形も、やはりどうも、ダメらしくて。

 どうしようかと暗い顔で思案にくれる茂の後姿を、じっと見つめているものがいる。

 ビンボー神(片桐仁サン)です(笑)。

 家の月賦の支払先である不動産屋も、この手形を換金しに行ったが出来なかったとカンカンで、つまり不渡りを起こしてしまっていることが判明します。
 この不動産屋、田中要次サン(笑)。 いかにもって感じで笑えます。

 不渡り手形を手に、茂が富田を一発ぶん殴ってやろうと乗り込むと、すでに数人の債権者にボコボコにされている富田社長。 登場の仕方が、倒れ込んだところをずるずる引き戻されるような感じで、ホラー映画っぽいのが笑えるのですが、それはともかく不渡りが数件もある、ということは、即会社の倒産を意味しています。
 債権者会議が開かれた時にも、しかめっ面をした人たち(このしかめっ面ぶりも、いかにも水木サンが描くマンガに出てきそうな顔ばかりで笑えるのですが)のあいだに、ビンボー神がにやついている。 それを見て、茂はぎょっとするのです。

 それまでの 「ゲゲゲ」 におけるビンボーの描写は、貧しくても笑っていればなんとかなる、という程度のものでした。
 それが、笑いが消えた途端に、金がないということがかなり深刻なダメージとなって、人を襲うのです。
 ビンボー神の描写は滑稽でしたが、登場のタイミングはなんだか真理をついているような気がして、とても不気味に思えました。

 そしてついに、布美枝は花嫁道具の着物を質に入れることを決意します。
 提案された茂は、さすがにプライドもあってかそれを拒絶するのですが、布美枝は笑って、こう話すのです。

 「あなた、前に 『質屋さんに預けたものは、必ず受け出す。いっぺんも流したことない』 って言ってましたよね。 そんなら、これも切り抜けができるまで、預けといてください。 しばらくの間だけ」

 茂が確認すると、中に 「立ち別れ 因幡の山の峰に生ふる 待つとし聞かば 今帰り来む」 と書いた紙片が挟まっている。 質草が帰ってくるおまじないだ、と布美枝は言うのですが、「それは迷い猫の戻ってくるおまじないではないか」 と茂に返されて、お互いに笑いあう。
 笑うところには、ビンボー神は寄ってきません。

 それを質屋に預ける茂は、そのおまじないの紙を挟んでおくよう主人(徳井優サン)に頼み、「決して流してはいかんという、自分にかけるまじないです」 と、その決意をにじませる。 布美枝にはおばば(野際陽子サン)からもらったかんざしもあったのですが、「これはおなかの中の赤ちゃんが女の子だったら、お嫁に行く時に持たせよう」 とまたしまっておく。 このエピソードの連続は、見ていてさすがだと感じます。 このおなかの中の赤ちゃん、時々布美枝を励ますかのように、布美枝のおなかを蹴っぽる。

 その矢先、税務署が来て 「こんな低所得なのはおかしい」 と指摘された、という、実際にあった出来事を描いていましたが、確かに一軒家を持っていて極度な低所得であれば、疑われるのもむべなるかな、という感じ(笑)。 「我々の生活が貴様らに分かるか!」 と怒鳴りつけ、大量の質札を税務署員に叩きつける茂。 女房の大事な品を質草にやったばかりのタイミングでのこの展開は、やはりさすがというしかない。

 そして妊娠中毒症で心細くなっている布美枝のもとに、「ロザンヌ化粧品でございまーす」 と、まるでサザエさんみたいな口調で現れる(笑)、靖代(東てる美サン)。 布美枝の不安が瞬く間に伝わって、美智子(松坂慶子サン)らが布美枝を励ましにやってくる図は、とても見ているほうの心もじんわり温かくなるシーンでした。 やはり、笑いのある場所には、ビンボー神も寄ってこないのです。

 そしてクリスマスイヴの日、実にあっけなく、布美枝に女の子が誕生。
 出産シーンもなく、とてもさらっとした描写なのが、かえって新鮮に見えました。 「息んでー!」「フーッ!」 とか(笑)、一切なし。

 「お父さん似ですよ」 といわれて、ほっぺたを膨らませる茂。 実際の水木サンもそうやったのではないかというような仕草に見えました。
 ナレーションで祝福をする、今は亡きおばば。

 「おめでとう、布美枝。 ようがんばったなあ」

 週の最後に、ちょっこし、泣きました。

 来週予告を見ると、子供ができたことで、なんか力強さが出てきたような布美枝の姿。 またじっくりと、見守っていきたいと思います。

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テレビ」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。
ゲゲゲ、面白いですね。
私は(ここまでなら言っても構わないと思うので言いますが)調布に住んでます。なので、より一層楽しいです。市では鬼太郎のナンバープレートも出たようですね。

ドラマの方はいよいよ、子どもも生まれて、経済的に大変ですね。どうなることやら…。

これまでで一番印象深かったのが「神がついた」という発言でした。あれは本当に心に残りますね。

ゲゲゲの鬼太郎のテレビアニメしか知らない世代で、他の作品は全く知らず、このドラマの影響を受けて水木さんの本をいくつか借りて読んでます。ではでは~

ごめんなさい。神がさした…でした。

らいおん様
コメント、ありがとうございます。
や、そうでしたか、調布のほうにお住まいで。
鬼太郎のナンバープレート、見てみたいものです。

私の場合、やはり水木体験はファースト・シーズン(笑)、野沢雅子サンの白黒の鬼太郎でした(古…)。 それと、「悪魔くん」。 実写版でしたが、ホントに怖かったなあ。 白黒というのがまた、恐怖をあおるんですよ。

あとは、私生活や交友関係を描いたマンガは、もう笑えて笑えて。 単行本になっているのかなあ? このところマンガ自体から遠ざかっているので、この私生活マンガを88歳?になられた現在でも水木サンが描いているのかは分かりませんが、そこにはやはり、おかあちゃん(布枝サン)がたびたび登場していました。 松下奈緒サンとは、似ても似つかない…のは仕方ないか(笑)。

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BOOKS

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ紹介記事より抜粋)。 本書下巻では、1962年のレコードデビューまでが書かれています。

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  • ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白

    ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白
    まず驚かされるのが、表紙のポールの写真です。 よくこんなのが採用されたな、というくらい、刻まれた年輪が顕著に分かる 「年老いたポール」。 飾り気のないその写真に、「素のポール」 をあぶり出そう、という心意気が見える。 そして実際、著者のその目論見は、成功しているように思えます。 何より大きいのは、「NME」「Q」「MOJO」 など音楽メディアで長年記者を務めてきた著者がポールと同じリバプールの出身者である、ということ。 さらにポールと同じファースト・ネームであること。 だからポールはまるで自分の分身に話しかけるかのように、時折同郷人にしか分からない言葉で気さくに著者に話しかける。 この本を読む者は、まずその 「不思議なリラックス感」 に包まれるはずです。  本の構成は大きく二つに分かれます。 前半ではビートルズからウィングス、ソロに至るポールのたどってきた長い長い歴史、後半ではポールの人格に迫る試みがなされていく。 そのインタビューは、一気に行なわれたものではありません。 著者がNMEの記者だった1979年のものから、明示はされていないがおそらく2013年、「NEW」 の発売前後が最新のものではないか、と思われます。 実際読んだ感覚では 「キス・オン・ザ・ボトム」 あたりが最新のような気もする。 その30年以上にわたる膨大なポールへのインタビューを、項目によって構成し直しているようです。 ですから、今年(2016年)亡くなったジョージ・マーティンについてのポールの見解であるとか、最新の情報が提示されているわけではない。 ポールの情報というのはこの歳になってもなお日々更新型ですから、その点については物足りなさが確実にあります。 さらに、30年以上というとポールのものの考え方にも変化変遷があってしかるべきだと思うのですが、30年以上をリミックスにかけているからその変化というものがつかめてこないもどかしさがある。 表紙を飾ったポールの 「老い」 という問題にも、この本はきちんと答えてくれているわけではない。 さらに言えば、ジョン・レノンの死について多くが割かれているのとは対照的に、2001年に亡くなったジョージ・ハリソンの死についての記述はない。 正直なところ、このような本を読み漁ってきた身としては、衝撃に値するような情報が書かれているわけではありません。 しかし前述したような、リラックスしたムードのなかでポールと語らっているような疑似体験を共有できる強みが、この本にはある。 この本全体に貫かれているのが、この心地よさなのだ、と思うのです。 その心地よさが乱れるパートがあります。 自身の失敗作、どうでもいい作品について語るときのポールは多分に感情的になりがちであり、イライラした様子を隠しません。 特に 「シークレット・フレンド」 を語るポールのくだりはポールファンなら一読に値する部分でしょう。 しかしそのイライラも、ポールの人間性が垣間見える瞬間としてこの本にとっては必要なパートなのです。 3000円以上と、この本は決して安くはない部類の本です。 ただその値段に見合うパフォーマンスは兼ね備えています。 この本と付き合った1か月足らずの間、心地よい体験をすることができました(アマゾンの自身のカスタマーレビューより)。

  • : レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]

    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

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  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(スーパー・デラックス・エディション)(4CD+DVD+BD)
    ロック界、いや、すべてのポップミュージックにおけるアルバムの中で史上最高と称され、すでに世界文化遺産の域にまで達しているこのアルバム。 そのアルバムの発売50周年を記念して、スペシャルエディションがリリースされます。 なかでもブッ飛ぶのがこのスーパースペシャルボックスセット。 CD4枚組であらたなリミックスのステレオ盤1枚、モノ盤1枚、初期テイク集が2枚、さらにブルーレイ1枚とDVD1枚で5.1サラウンド、ハイレゾ音源、ドキュメント映像 「メイキングオブサージェントペパーズ」 のデジタルリマスター等々、卒倒するようなラインナップです。 18、000円プラス税と値は張りますが、史上最高の名盤だからこそこれは買い。 5月26日の発売までに予約をしておけば、アマゾンならば値下がりした時に値段がそのあと高騰しても最安値で購入できます。 ビーファンならずとも、これは注目ですぞ!

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  • デイヴ・グルーシン&リー・リトナー -

    デイヴ・グルーシン&リー・リトナー: Two Worlds / Grusin & Ritenour
    NHK朝ドラ 「花子とアン」 で美人のスコット先生が夜な夜な歌い、チビはなチャンがすっかり覚えてしまったイギリス民謡、「ザ・ウォーター・イズ・ワイド(流れは広く)」。 このアルバムでルネ・フレミングが歌っていたのを思い出しました。 ルネのソプラノはけっして大袈裟でなく上品で、私のとてもお気に入りのソプラノ歌手ですね。 このアルバム自体は全体的にクラシックにギターのリー・リトナーが絡むフュージョンぽいものなのですが、故・黒田恭一サン評するところの、「大人が聴く音楽」。 胸を締め付けるような哀しみと、すべてを包み込むようないたわりに満ちていて、私の人生のなかでも最上位に位置する愛聴盤です。

  • 桜田淳子 -

    桜田淳子: ゴールデン☆ベスト 桜田淳子~シングル・コレクション
    彼女の活動期に発売されたシングルをすべて網羅したベスト盤。 確かに後年のものほど馴染みがありませんが、選曲漏れがないので、彼女の存在とは何だったのか自体に思いが至るベスト盤です。 音も楽器の音像がよくてなかなかいいマスタリングをしている気がします。 2600円程度で推移しています。

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: ザ・ビートルズBOX(限定生産品)(USBメモリ)
    パソコンにUSB端子があり(たいていついてると思います)、パソコンで音楽が聴ける環境をお持ちの人ならば、聴くことができます。 現在のテクノロジーで最もいい音質で聴ける、ビートルズの音楽です。 ただし国内版にもかかわらず、訳詞とか一切なし。 ジャケットもブックレットもパソコンデータ。 純粋に音楽だけ楽しみたい人向けです。 また、曲間にコンマ何秒かのブランクが入ります。 「アビイ・ロード」 のメドレーも同様です。 しかし、音はさすがに、すごい。 大きな音量であればある程、目の前にビートルズが迫ってくる勢いです。 ツヤが違います。

  • The Beatles -

    The Beatles: The Beatles [USB]
    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

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