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2010年6月26日 (土)

「ゲゲゲの女房」 第13週 自分のいるべき場所

 結核で倒れ、茂(向井理クン)たちの前から姿を消していた深沢(村上弘明サン)が復活。
 これは、4週連続でビンボー生活を強いられてきた(笑)村井家にとっては、久々に見える一筋の光です。
 なにしろ、このドラマに出てきた数ある貸本マンガ出版社の社長のなかでも、この人はいちばん誠実で、理想があって、頼れる存在。 今回も、自分の入院療養によって会社が倒産したため茂に支払われなかった原稿料を、ちゃんと支払いに来ただけでなく、新たな仕事を依頼しに来たのです。
 その深沢、「貸本マンガはもういけない。 これからは、雑誌の時代だ」 と鋭く分析する。

 その深沢と対比させる形で今週またまた登場したのが、富田書房の富田元社長(うじきつよしサン)。
 やはり、茂に支払われなかった20万円の不渡手形の一部を払おうと、やって来たのです。
 その額は、9000円にも満たない金額なのですが。

 これって、なかなか出来ることじゃないですよ。
 金を借りた人間、こちらの請求金額を支払わない人間に共通しているのは、自分の苦境にかこつけて、なんとか知らんぷりをしようとすることです。 私もどれだけ、踏み倒されたことか。 ガンガン取り立てるのがいちばんの方法なんですけどね(笑)、あまり追い詰めると、夜逃げするヤツも出てくる。 まあ、金を借りに来るヤツは基本的に信用しないのが、「悲しい」 人生訓です(泣)。 何年かかっても支払うべき金は払う、という根性のある人であれば、簡単に金を借りゃしません。

 そんな誠意はある富田元社長なんですが、戦後の闇市で買い求めた一冊のマンガが自分の事業の原点だったことを布美枝(松下奈緒サン)と茂に話し、マンガについてはこれぽちも分からなかったけれど、マンガが大好きだったことを告白します。
 それがいつの間にか、マンガが単なる「金儲けの道具」 になってしまった。
 深沢のように、自分の仕事に対する 「理想」 というものがそこになかったため、富田は事業に失敗したのです。
 でも富田は、根っからマンガが好きだった。
 この仕事は、富田にとって、自分の居場所みたいなものだったと思うのです。
 その居場所から 「お前はここにいるべき人間ではない」 という烙印を押され、この業界から立ち去っていく。
 今週の 「ゲゲゲの女房」 は、布美枝の里帰りがメインの話でしたが、その根底には、「自分の居場所」 というテーマが流れていた気がします。

 話は前後しますが、支払われなかった原稿料が入ってきたため、かねてからの、イカル(竹下景子サン)からの矢のような帰省の催促にこたえることができるようになった、布美枝。
 「ゆっくりしてこい」 と言った矢先、また例によって 「へ」 を一発する茂(笑)。
 ところが、もう慣れっこなのか、嫌な顔ひとつ見せず、茂の 「へ」 談義に笑って追従する布美枝なのです。 藍子チャンも、何食わぬ顔で、それが当たり前みたい(笑)。

 今週の小道具は、この 「へ」 といったところでしょうか(笑)。
 布美枝と藍子チャンの帰省中、ひとりこいても誰もそばにおらず、ミョーなところで茂が寂しさを感じる小道具になってました(笑)。 そして布美枝が帰ってきてからまた一発。 合計3発、こいとりました(笑)。 まあ、見合いの時分からこいとりましたから(笑)当たり前なのでしょうが、女房の前でへをこきまくる亭主…というのも、考えてみればすごい話で(笑)、役者魂とはいえ、向井クンもサワヤカーにへをこきまくっておりますね(笑)。

 そして、布美枝の初めての帰省。

 そわそわしまくりの源兵衛(大杉漣サン)には笑いましたが、藍子チャンにはデレデレ(笑)。 近所の魚屋さんも、生きのいい境港のタイを持ってきてくれるなど、ふるさとのありがたさというものをひしひしと感じます。 なにしろ、現代ではあっという間かもしれませんが、半世紀近く前は、東京から島根、鳥取まで、というのは大変な距離だったに違いないのです。 このとき新幹線が開通していたかは知りませんが(開通が昭和39年、1964年でしたから微妙な時期ですね)、よしんば開通していたとしても、布美枝の手持ちの金では難しかったろうし、しかも当時は、東京大阪間だけでしたからね。
 そのうえ、このところずっと、村井家の厳しい生活を見せ続けられてきたせいか、このあたたかな実家の雰囲気には、なんだか知らず知らずに涙があふれて、仕方なかったです。

 嫁入り前に源兵衛から 「親を頼るな」 と言われたとおり、布美枝はどんなに苦しくても、けっして親を頼らなかった。
 嫁に行く、ということが当時、どれだけの覚悟であったか。
 あまりにつらければ、実家に戻ってきたと同時に、布美枝は泣いてしまったに違いないと感じます。
 けれども、そういうことはなかった。
 それは布美枝が、今の貧乏生活をつらいと感じるよりも、茂との生活が面白い、と感じいる証のようです。
 親友のチヨ子(平岩紙サン)も、「旦那の機嫌を取るより、貧乏のほうがましだわ」 と言っていましたが、さてどっちがいいのか(笑)。

 そして、里帰りしたことで、布美枝の方言も、今週は全開(笑)。
 私の母もそうなのですが、里帰りするとふくスま弁に戻ってしまう(笑)。
 なんか、いいなあと、思うのです。
 ふるさとというのは、なんか、いいなあ。

 ただそんなふるさとにも、いろんな家族の問題というのはあるわけでして。

 布美枝の弟の貴司(星野源サン)には縁談が持ち上がっているのですが、実は恋人が既にいる。 この恋人(長澤奈央サン)は一人娘で、貴司と一緒になるには貴司が婿養子にならなければいけない。 だから源兵衛サンには、なかなか言い出せないのです。
 妹のいずみ(朝倉えりかチャン)は東京に就職したくてうずうずしており、源兵衛サンとは衝突の連続。 かつてのユキエ姉さん(足立梨花チャン)みたいですね。 源兵衛サンを指差して、「ナンセンス!」(笑)とか、「アナクロ」 とか、使う言葉に全共闘世代の影響を感じます(笑)。

 貴司は結局愛をとるのですが、それでも、ずっとやり続けてきた実家の酒屋の仕事に、誇りを持っているように見えます。 婿養子になってどうするかまでは描写していませんでしたが、貴司はこの仕事を続けていくべきなのではないかと考えたりしました。
 なぜなら、そこが貴司にとっての、居場所だから。

 いずみチャンも自分の居場所を求め続けながら、人生を生きている。 その途中には、いろんな試行錯誤があるべきなのです。

 そんな貴司との衝突や、ビー玉をのみ込んでしまった藍子チャンに布美枝が必死の吐き出させをするところを見て、源兵衛がしみじみとミヤコ(古手川祐子サン)にしゃべるセリフ。

 「布美枝のヤツ、すっかり母親らしくなっちょうな。 この家が残れば、それでええことにするか。 店は…細々とでも続けておれば、おばばも許してくれるだろう。 子供やちいつの間にかみんな、自分でしっかり歩いちょうわ。 もう…道をつけてやらんでもええな」

 その時の源兵衛の、安堵したような、どこかさびしそうな笑顔。
 その親心に思いを致すと、自然と泣けてきます。

 「ほんなら、行ってまいります」

 再び東京に戻る朝、仏壇に手を合わせ、家族に深々と頭を下げる布美枝。
 このドラマでは、こうしたちょっとしたことを、きちんと表現していこう、という気持ちがある。
 当然のことかもしれませんが、こういうところを省略しないのは、いいですね。 先祖に対するつながりと、いまいる家族のつながり。 安来への帰省編では、源兵衛のおばば(野際陽子サン)への 「申し訳が立たん」 という姿勢をはじめとして、そんな血縁関係の絆、というものもさりげなく描かれていた気がします。

 けれども、東京に帰ってきた布美枝は、茂のおならの音を聞いて、こう言うのです。

 「はぁ…やっぱりうちはええなあ。 のんびりする」

 「実家でのんびりしてきたんじゃないのか?」 と訊き返す茂。

 「ええ。 けど…私のうちは、ここですけん」

 いくら今の貧乏生活よりいい実家でも、家族がみんな温かい実家でも、布美枝にとって一番居心地のいい 「自分の居場所」。
 そんなところに収まっていられることが、どれだけ自分にとって、幸せなことであるか。
 日々、問題というものは、確かにどこの家庭にでもあります。
 けれどもそれに対して、なんとかしていこうという気持ちが生じるのは、「ここが自分の居場所だからだ」 と、無自覚でも思っているからではないでしょうか。
 そんなことを考えた、今週の 「ゲゲゲ」 でした。

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