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2010年6月21日 (月)

「龍馬伝」 第25回 史上最大のツンデレ…?

 寺田屋の女将・お登勢が龍馬(福山雅治サン)の母親に瓜二つだった、という話は初めて聞いたのですが(笑)、もともとこの二役を演じている草刈民代サンは、お登勢役のほうが初めに決まっていたらしいですね。 それを 「お登勢は京都における龍馬の母親みたいなもの」 というコンセプトから、時系列的には逆なのですが、急きょ龍馬の母親、坂本幸をも演じることになったらしい。

 ですから、今回の 「龍馬伝」 で龍馬とお登勢が 「母子ごっこ」 をするところとか、すべてフィクションであるのは言うまでもありません。
 福山龍馬のあまりのチャラチャラぶり、成長しなさぶりに辟易しているかたにとっては、「また下らないことを始めおって」、という感想に、どうしてもなってしまいそうな、一種の 「危うさ」 をそこには感じます。

 けれども私たちドラマを見る側は、18年前、自分が12歳のころに亡くなった母親に、瓜二つな女性が現れたとしたら、「もし自分だったらどうなのだろう」 という、そんな思いをいたしてみる必要はあろうか、と考えるのです。 ちっくと国語のお勉強みたいですけどね。

 でも、感情移入できない龍馬を、「またバカなことを始めた」 と蔑んでドラマを見るより、幼くして母親を亡くした男が、母親そっくりな女性に 「母上」 といっぺんだけ呼んでもいいか、と懇願する気持ちに思いを致すほうが、ずっとドラマを楽しめるような気がいたします。

 まあ、感じ方は人それぞれなのですが、私はこの、龍馬が亡くなったはずの自分の母親に生き写しの人を見て、もう一度 「母上」 という、龍馬にとって 「失われた言葉」 を使いたがった気持ちは、よく分かるのです。 ちょっとほろっと、きました。

 けれども、ここでの龍馬はただいたずらに、過去を懐かしがり、執着をしているのとは違う。
 「母上…!」「龍馬!」 と互いに呼び合ったあと、「やっぱり(母上とは)全然違う!」 と、実にうれしそうにその場を去っていくのです。
 なんでここで、龍馬はしょげかえらないのか。
 龍馬にとって、心の中に生きている本当の母上こそがやはりいちばんなのだ、ということを確認できたからこそ、龍馬はうれしいのです。
 そして同時に、龍馬は京の町に、自分が本当に気を置ける場所を見つけたことになる。
 「自分は脱藩した身で、父や母の墓参りも出来ない」 と嘆く龍馬が、たとえ孤高を保っている母親とは違えども、自分のふるさと土佐を思い起こさせる人がいる場所を、見つけたのです。

 蛤御門の変で京の町は焼け野原になり、勤め先をなくしたお龍(真木よう子サン)に、龍馬はそんなお登勢のいる寺田屋を紹介する。
 ここらへんの龍馬の強引さも、龍馬の大きな魅力のひとつになっている気がします。
 赤の他人だからこそ、赤の他人に頼らないといけないこともある…なんじゃソリャ?(笑)という理屈ですよ、正直言って(笑)。
 でも、それをはたで聞いていたお登勢は、「他人他人てそんなに言われると、あてがえらいいけずみたいに聞こえるやおへんか」 と、お龍たち家族の住み家を約束し、お龍を寺田屋に勤めさせることにしてしまう。
 なんなんですかね、この実現力、みたいなの(笑)。

 つまり、そこには龍馬の、誠意と熱意がある。 そしてその龍馬の根底には、人間好きであることが流れている。

 一介の脱藩者にすぎない龍馬が、どうして薩長連合をはじめとして大きな仕事を成し遂げたのかという、「龍馬伝」 の作り手の解釈の方法が、ここに隠されている気がします。

 そんな龍馬、寺田屋で働き始めてからも仏頂面が治らないお龍(笑)に、「海、ち言うてみい」 といきなり言いだして、お龍を困惑させる(笑)。
 こんなこと、いきなり言われたら、誰だって困惑しますが(笑)。

 「海?」

 「違うき違うき、うーみー」

 「う…み?」

 「うーみー」

 「うーみー?」

 「違うき、こうじゃ!(と口を尖がらせ、大きく横に広げて)うーみー!」

 「うーみー!」

 「その顔じゃ! それだけで、笑顔に見えるき。 …ハハハハハ! そうやっていつもニコニコしちょったら、お登勢サンも、もっと喜んでくれるがぜよ、のう、お登勢サン!…おまんの笑顔は、誰よりもべっぴんじゃきに」

 龍馬は、焼け出された自分の妹弟たちに優しい笑顔を見せるお龍を、きちんと見ていたのです。
 からかわれて怒ったような顔をしてその場を出ていくお龍でしたが、「君の笑顔は最高だ」 と言われて、悪い気がする女性などいるでしょうか(笑)。 明らかに動揺しております(笑)。
 そして船着き場で別れを告げに来た龍馬に、「え、もう?」 と思わず言ってしまう、お龍。
 「海じゃぞ。 うーみー!」 と言いながら駆け足で去っていく龍馬を、お龍は呼びとめるのです。

 「…今度は、いつ…?」

 はにかみながら訊くお龍。

 「それは…分からんのう」

 それを聞いて、明らかにさびしそうな、お龍。

 「お龍どのは、強いおなごじゃ。 わしがおらんでも大丈夫やき。 ほんなら…達者での」

 風のように立ち去ってしまった龍馬をあとにして、お龍は 「うーみー」 とさっきのヤツをやってみて、笑い顔になった途端、まわりを気にして怖い顔つきになる。

 なんじゃこりゃあ!(笑)

 先週も書いた気がしますが、こりゃあ千葉佐那も真っ青な、史上最強のツンデレではないか!(笑)

 …失礼しました(笑)。

 ところでこのときの龍馬は、海軍操練所閉鎖の憂き目に遭って、自分の人生の目的を、根本から見失っている状態。
 そんな時にここまで人を励ますことができるなんて(しかも全くそれをおくびにも出さず)、ちょっと自分にはできないなあ。

 でもその龍馬の悲しみを敏感に察知した女性が、お登勢サンだったのです。
 龍馬は真実を語りませんでしたが、その気持ちも、ちゃんと分かっているようです。
 寺田屋が龍馬にとって特別な場所になる前兆のような気がいたします。

 それにしても、以蔵(佐藤健クン)と武市(大森南朋サン)の行方は、ちょっと表面的な事実はウィキで読んでしまったので分かるのですが、どうしてそんなことになってしまうのか、ドラマを見ていると今のところまったくつかめない。 毒まんじゅうが、何かのきっかけに、なってしまうのでしょうか。 どういう理由付けを作り手がするのか、興味津々であります。

 もうひとつ気になるのが、このところひどく情緒不安定気味の、山内容堂公(近藤正臣サン)。 極楽浄土を夢見ながら、自分がそこに至る人間ではないことを覚知している模様。 これも、ウィキを読んでしまったのですが、どうして武市の評価がそのあと逆転するのか、それを説明するための布石なのでしょうか。

当ブログ 「龍馬伝」 に関する記事
♯01論点が、はっきりしちゅうhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/01/1-e718.html
♯02えらい天気雨じゃったのう(笑)http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/01/2-a44b.html
♯03食われっぱなしぜよ、福山サンhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/01/3-8e96.html
♯04佐那チャン、ツンデレ、してません?http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/01/4-5776.html
♯05アイデンティティの崩壊http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/01/5-d115.html
♯06本分をわきまえる、ということhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/02/6-766e.html
♯07父のこころ、子のこころhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/02/7-e1b3.html
♯08汚さに磨きがかかる(なんだソレ?)弥太郎殿http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/02/8-8680.html
♯09思想か、命かhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/02/9-febd.html
♯10もっとなんとかできたはずhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/03/10-b847.html
♯11龍馬が担ぎ出される、その理由http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/03/11-ac67.html
♯12武市の心理、執拗にやってますねhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/03/12-2a95.html
♯13大友サン演出は、一味違うhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/03/13-e7ca.html
♯14進む龍馬の空洞化http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/04/14-ef4d.html
♯15龍馬の人物像が、ちっくと見えてきたhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/04/15-b072.html
♯16日本人じゃあぁーっ!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/04/16-5e1f.html
♯17試合という名のラブシーンhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/04/17-6ae8.html
♯18武市の転落ぶり、凍りつきましたhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/05/18-77bb.html
♯19 5月10日って…明日?http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/05/19-510-e7ac.html
♯20 ものの見方で軽くなる命http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/05/20-280b.html
♯21こう生きていくしかない人… http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/05/21-47f8.html
♯22龍馬の情けなさこそが、作り手の表現したいことだhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/05/22-f109.html
♯23後戻り?…それは誰が決めるのだろうhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/06/23-0fc8.html
♯24蛍の儚い光、死んだ者の魂http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/06/24-3fb3.html

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コメント

ツンデレ系?のお龍さんが、いかにして龍馬の妻になっていくのか愉しみですね。
それにしても、高杉はどんな俳優が演じるのやら。。。
高橋克実さんの西郷も愉しみです。

投稿: ジョナサン改めARIMOTO | 2010年6月23日 (水) 12時32分

ジョナサン改めARIMOTO様
コメント、ありがとうございます。
なぜお龍をこれほどまでにかたくなな女性にしたのか、その理由が今週ははっきり分かりました!(笑)

高杉晋作は、伊勢谷友介サンが演じることになったらしいですね。 焼打ち事件の時も出てこなかったし、もしかすると万を持したような、印象的な登場を狙っているかもしれませんね!

投稿: リウ | 2010年6月23日 (水) 14時51分

男の人って幾つになっても子供みたいな純粋な部分がありますよね。特に母親に対してはね。私は龍馬さんに母性愛が湧きましたよ。こういう演技は福山さんならではでしょうか。良かったです。お登勢さんが眩しいくらいに綺麗で、明るくて、包容力があって、女性として憧れます。
お龍さん、龍馬さん、顔立ちが似ていて、見ていて相性がいい様に思います。本当の恋人同士みたいです。

投稿: sorabakari | 2010年6月23日 (水) 22時04分

sorabakari様
コメント、ありがとうございます。

なんかねー、甘えちゃうんですよ、男って、母親に(笑)。
仕事の愚痴を言うのも、父親でなくて母親(笑)。
仏頂面していても、それは、甘えているからで(笑)。

このドラマの龍馬は、母性本能をくすぐりまくっているようにも見えますよね(笑)。
草刈民代サンは、私とほぼ同世代なのですが、そんなこともあってシンパシーを感じている女優サンのひとりです。 龍馬の母親役をやっていた時には、かなり儚げでありながら、上士の家に龍馬の無礼を許してくれるよう押し掛けたり、芯の強いところを見せていましたけど、今回は全く逆、というか。 この人の演技が下手だ、という声をネットでよく見かけるのですが、どこが下手なのか、逆に訊きたいくらいです。

投稿: リウ | 2010年6月24日 (木) 06時46分

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