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2010年7月17日 (土)

「ゲゲゲの女房」 第16週 性急に見える成功、ですが…

 「ゲゲゲの女房」 今週はついに茂(向井理クン)が成功するに至るのですが、これまでのあまりにも執拗なビンボー描写を見せつけられていた身としては、もうちょっとゆっくりゆっくり、成功に至るまでの段階を見てみたかった気もします。

 けれども考えてみれば、この物語も残すところあと2ヶ月半…げっ!げっ!2ヶ月半しかないのです。 ゲゲゲのゲー(笑)。 ウソーっ。 さびしいです(先回りしすぎ?…笑)。
 まあ、子供たちが夏休みに入る直前に茂を成功させておいたほうが、次世代に水木マンガの舞台裏を啓蒙させるいい機会にはなるのでしょう。 …どうも余計なことを考え過ぎですね(笑)。

 週刊少年ランド(言うまでもなく、少年マガジンのことですネ)の豊川(眞島秀和サン)、いったん茂に断られた雑誌掲載の依頼を再びするために、蒸し暑い日に村井家へとやってくるのですが、そのとき布美枝(松下奈緒サン)から水道の水を頂いて、「すいません駅から遠くて」 と言われ、「そうですね!」 と実に正直に話す(笑)。

 のっけから重箱の隅をつつくみたいでナンですが、このなにげないシーンが今週のこのドラマに、さまざまな枝葉をつけて引き継がれている。

 浦木(杉浦太陽クン)がやはり布美枝から水をもらって、「サイダーとかないのか」 みたいに憎々しげに話したり、依然として冷蔵庫も置いていない村井家のビンボー状態を再確認させる話に発展していましたし、「駅から遠い」 という話は、村井家に電話が引かれる話(ラーメン屋と間違えて次々電話がかかってくるエピソードは結構ベタでしたが、かなり笑えました)の実にさりげない伏線となっている。

 もうこんな細かいことはどうでもいいくらいに、このドラマにはちゃんとした前準備というものがそこらじゅうにちりばめられているので、今更褒める筋合いのものでもないのでしょうが、やはり作りが丁寧なことには変わりがありません。 脱帽したまんま(笑)、です。

 そして今回もうひとつ、どうでもいいことなのですが、個人的にツボだったのが、「カネコ」 のホームクレンザー(笑)。 布美枝が使う台所に、ひっそりと置いてありました。 「カネヨ」、ですよね(笑)。 そういえば私が子供の頃、ありましたよ。 今もありますけどね。 ドラマに出ていたものは黄色っぽいパックでしたけど、実際は確か青だったような…。 でも、奥さんが洗いものをしているパッケージの絵はだいぶ似ちょりました。 懐かしかったです。

 話は戻って、豊川サン、茂に 「題材はなんでもいいから、テレビより面白いものを描いてもらいたい」、というかなり大雑把に思える提案をするのです。
 この提案の意味は戌井(梶原善サン)が丁寧に解説。

 「向こうも、勝負を挑んできたわけだ。
 縛りがない、自由に考えていいっていうのは、楽なようでいて、実は、いちばん厳しい注文なんですよ。
 ホントの力が試される。
 言い訳は、一切通らない」

 この注文は、これまで貸本マンガや深沢(村上弘明サン)の出してきた注文とは、内容的にかなり趣を異にしています。
 貸本マンガの注文のカギは、とにかく読者受けするようなもの。 「ゼタ」 の注文は、ともかく深沢の理念に沿った志を重視するもの。 戌井の場合は、茂に惚れ込んでいるだけあって、茂のいちばんの傑作を出したい、という理想によって注文が決められていたような気がします。

 それに対して豊川の注文は、新しいマンガの潮流、原石を模索するかのごとき注文です。
 でも実は、そこには大手出版社の傲慢さも、同時に見え隠れしているような気がする。
 自分たち一流の会社の言うことを一介の貸本マンガ家に断られたために、「だったらこれでやってみろや!」 みたいな挑戦状です。 そんな側面も戌井は指摘している気がします。
 この傲慢さ(ちょっと厳しい言いかたですが)は、最初に 「宇宙ものを描いてくれ」 と茂に依頼してきた態度にも、ちょっと感じられる。

 茂は依頼に対して 「テレビより面白いものを描くには、テレビとはどんなものかを知っておく必要がある」 と、有り金はたいてテレビの質流れ品を買ってくるのです。 そしてそのテレビを一日中見ていることになる。 「敵を知らずして、敵に勝つことはできない」、なるほど、もっともらしい理屈なのですが(笑)、あと先のことをまるで考えていない(笑)。 ここらへん、浦木に的確に突っ込まれてましたよね。 さすが水木サンだ、と思われるエピソードなのですが。

 余談ですが、「アンテナどーすんだ?」 などと思いながら見ていたら、室内アンテナがついてたんですね、取り越し苦労(笑)。 しかしそれだと、画像はかなり汚かったでしょうね(笑)。

 なにしろそのテレビに初めて映ったのが 「ブーフーウー」。 見てましたよ、幼児のころ(笑)。 夜に茂が見ていたのが、「夢であいましょう」。
 さてこのふたつの番組の共通項。
 黒柳徹子サンですよ。 両方の番組に出てました。 改めてすごいかただと感嘆します。
 さすがにNHKの番組ばかり出てきましたが(笑)、これだと話が進まない(笑)。 民放のラーメンのCMを見ることで、茂は 「テレビくん」 の発想を得るのです。 暗がりでテレビをぼーっと見続ける茂、映画 「ポルターガイスト」 を思い出しました(飛躍しすぎ…)。

 藍子チャンがテレビに触ろうとして、「真空管が爆発するぞ!」 とたしなめていた茂には笑いましたが、実はこれも、「テレビくん」 発想のもとになっている。 テレビの中のものに触れたがる子供の気持ちですね。 布美枝の感想も、しっかり一助となっています。

 今週の 「ゲゲゲ」 を見ていて印象的だったのは、なんとか茂の力になってあげたい布美枝の戸惑い、そして一見無駄かもしれない努力の数々でした。
 夫が低迷しているときは、同じ地平に立って一緒に頑張ることだけは妻にはできる。
 けれどいったん夫が羽ばたきをはじめ、大手の会社の無理難題をクリアしようと離陸を始めた時、妻はただ陰で支えるしかできなくなってくる。 そこらへんの孤独感と、自分にできることだけをやっていこう、という布美枝の気持ちは、かなり丁寧に描かれていた気がします。
 その努力が実を結んだのが、布美枝が古本をかき集めて 「テレビ」 に関する資料を切り抜いて茂に見せた時でしたね。 でもやはり、それまでの二人三脚と同じ、というわけには、今後いかなくなってくるような気がするのです。

 そしてもうひとつ印象的だったのが、マンガに賭ける当時の人々の熱い思いでした。

 テレビくんのキャラが怖すぎる、と何枚も何枚も試行錯誤を続ける茂。

 「鬼太郎」 の読者投票最下位が続いても、「安パイだけ切ってたら、ここから先にはいけないぞ。 いいか、少年マンガはこうでなきゃならんというつまらん常識はもう捨てろ! 常識を破って進め! 俺たちは、常識はずれの数字を打ち立てるんだ!」 と檄を飛ばす、豊川。 「オレが鬼太郎を信じなくてどうする…」 と自分を信じて描き進める、茂。

 秘書の加納郁子(桜田聖子サン)から 「社長の育ててきたマンガ家が、大手に横取りされるみたいで」 と言われ、「たくさんの人に読んでもらえるなら、いいじゃないか。 優先すべきは、いいマンガを世に出すことだ」 と言い切る深沢。

 そして、茂の漫画賞受賞を、まるでわがことのように喜ぶ、戌井。

 そう、茂はついに、講談社…じゃなかった、雄玄社漫画賞を受賞することになったのです。

 その話と前後して、茂は質屋に預けていた質草をすべて回収するに至ります。
 大量に質札の束を、まるでトランプカードのように広げる茂。
 勉強しまっせ引っ越しのサカイサン…じゃなかった(笑)質屋の主人(徳井優サン)も、「んなにぃぃ~~~っ!?」(笑)。

 そして質草のなかから、布美枝の嫁入り道具だった着物が出て来た時は、知らずに涙が出てきました。 長い、長い、トンネルでしたね。 それにしても冒頭でもちょっこし触れましたが、展開が急すぎる…。

 それから茂の漫画賞が決まり、故郷の大杉漣サンや古手川祐子サン、竹下景子サンや風間杜夫サンが大喜びするシーンも、そんなに大げさなお涙頂戴シーンではなかったのに、やはり知らず知らずのうちに、泣けました。

 やはり、茂のマンガの良さを、まわりのみんなが信じていたからこそ、ここまで待つことができたのです。

 そしてほかの誰よりも、茂のマンガの良さを信じて疑わなかったのが、布美枝でした。
 「うちの人は、本物のマンガ家ですけん!」、と源兵衛に言い切ったシーン。
 「マンガ家、やめるか…」 と茂がつぶやいたシーン。
 そのプレイバックは、こちらを泣かせるにじゅうぶんな、的確なシーンでした。

 そのプレイバックに流された、「まっ暗い迷路の中を走っとるようだった…」 というシーン。

 夢を追いかけている人々は、みんながみんな、こんなまっ暗い迷路をさまよっている。

 自分もその中のひとりかな。

 現実に水木サンは成功したわけだけれども、自分はいったいいつなのかな…などという感慨も持ってしまった、今週の 「ゲゲゲ」 なのであります。

 蛇足になりますが、今週目を引いたもうひとつの側面。
 やたらと東映アニメーションが、仕事しておりましたね(笑)。 テレビくんが布美枝の目の前で、実際にテレビに入ってしまったり、いったんもめんの新バージョンもありました(笑)。
 と同時に、遂に退散を余儀なくされたビンボー神(片桐仁サン)が茂と布美枝の両方に見える、というところ。
 とてもリアリティに満ちたこのドラマが時折見せる、非現実的なスパイスのような気がするのです。

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