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2010年7月11日 (日)

「蒼窮の昴」 最終回まで見て

 日中共同制作ドラマ、「蒼窮の昴」 の全25回放送が終わりました。

 全体的にかなりよくできたドラマではあったのですが、春児が西太后のお気に入りになるまでのストーリーが特に面白かったので、同様の面白さを求めてしまうとちょっとほかの話は見劣りしてしまうかな、という感じでした。
 なにしろ、2話ほど予約の不調とかで見ることのできなかった回があったのに、別にそれが気にならない。
 つまりまあ、ある程度の予測がついてしまう話だった気がするのです。

 大まかな流れで言うと、西太后と光緒帝の確執のなかで、義兄弟である春児と梁文秀がそれぞれの側近に付き、梁文秀が西太后を暗殺しようとするに至り、その後どうなるのか、というまでの話に絞っている。
 この流れを押さえておけば、ちょっと見逃しても平気なのです。 登場人物たちの心理状態に、あまりぶれが見られない。 「アレ?こうじゃなかったっけ?」 というのが、ないんですよ。

 そんな意外性のない話ながら、なにがこのドラマを支える魅力になっていたか、と言うと、これまで残虐な人物としか描かれてこなかった西太后に、人間的な解釈を与えている点が、まず挙げられると思います。

 この西太后を演じた田中裕子サンは、圧倒的な演技力でした。 中国人ばかりの演技陣の中にいても、その存在感がすごい。
 ただ吹き替えだったのだけは、ちょっと残念でしたけどね。 この吹き替えやってる人が、田中サンが結構抑えた演技をしているのに、感情が入り過ぎているんですよ。 どういう事情で吹き替えになったのかは知りませんが、やはり発音的にまずかったのかなあ。 田中サンだけは日本語で演技していた、などという話もネットのどこかで読んだんですが、口の動きを見ている限り、そんなふうには見えない。 ちゃんと中国語をしゃべっているように見えるんです。

 そして次に、春児と梁文秀のキャラの魅力。
 春児はあくまで澄み切った水のような、人の良心を疑わない心優しい人物で、しかも非常な努力家。 梁文秀は科挙でトップの成績を収めたほどの秀才で、自分の信念に対してまっすぐに突き進んでいく男。
 一昔前ならば、このような 「出来すぎた人間」 は魅力も何も感じなかったのですが、今はあまりにも屈折した役柄の人ばかりがドラマを占有している時代。 かえって新鮮に見えるのです。

 それにしてもなんですが。

 物語は最終回に向けて、梁文秀が西太后暗殺に失敗し、ミセス・チャンや春児がなんとか西太后に許しを乞うまでを熱すぎるほどのタッチで描いていたのですが、その過程で、なんだか現在の中国の政治的な指導部に対する批判みたいなものが、巧妙に織り込まれているような気がしたんですよ。

 つまり、国家は民衆によって成り立っている。

 だから清朝が滅亡しようが下の者には関係がない。

 これって、国家の威信そのものを否定している表現ですよね?
 このドラマにおいては西太后の専制政治に対する批判という意味でこういう表現が用いられたのだと思うのですが、これはすなわち現在の中国共産党に対する皮肉の部分も含まれている。 言論や思想をいくら統制しようと思っても、国の主役は、民衆そのものなのだ。 その機運だけは堰き止めることはできない。 そんなことまで感じてしまうのは、飛躍のしすぎでしょうかね?

 逆に言えば、こんな国家否定のドラマ制作を許可している現在の中国指導部の頭は、こちらが想像しているより柔らかいのではないか、という見方も出来るんですけどね。

 自分を裏切った人間を決して許さない西太后が、梁文秀のかくまわれている日本領事館に対する包囲の網を緩める。
 そして物語にとって最も重要なキーアイテムと思われた龍玉を持参した、降格された身である春児を赦し、褒美として春児を自由の身にすることを思いつく。

 ドラマにおけるこれらの西太後の行動は、よく考えてみれば西太后の現実に行った残虐性とは裏腹な行為であるように見えます。 いたずらに西太后を擁護している気もする。

 ただしその結果、西太后の周囲には、誰も彼女を心から愛し心配する人間がいなくなってしまう。

 ドラマのラストに配されたのは、その巨大な孤独と虚しさに打ちのめされた西太后が、富と幸福の象徴である昴を見上げるシーンでした。 このドラマの作り手が最も表現したかったのが、このラストシーンにおける専制君主の孤独だったのではないか、私はそう感じるのです。

当ブログ 「蒼窮の昴」 に関する記事
いつの間に始まってたの!見逃した!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/01/post-079d.html
アフレコ気にならなければ、結構面白いですhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/02/post-4cef.html
第4-5回 王道ストーリー、だけど面白い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/02/4-5-5869.html

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BOOKS

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ紹介記事より抜粋)。 本書下巻では、1962年のレコードデビューまでが書かれています。

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  • ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白

    ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白
    まず驚かされるのが、表紙のポールの写真です。 よくこんなのが採用されたな、というくらい、刻まれた年輪が顕著に分かる 「年老いたポール」。 飾り気のないその写真に、「素のポール」 をあぶり出そう、という心意気が見える。 そして実際、著者のその目論見は、成功しているように思えます。 何より大きいのは、「NME」「Q」「MOJO」 など音楽メディアで長年記者を務めてきた著者がポールと同じリバプールの出身者である、ということ。 さらにポールと同じファースト・ネームであること。 だからポールはまるで自分の分身に話しかけるかのように、時折同郷人にしか分からない言葉で気さくに著者に話しかける。 この本を読む者は、まずその 「不思議なリラックス感」 に包まれるはずです。  本の構成は大きく二つに分かれます。 前半ではビートルズからウィングス、ソロに至るポールのたどってきた長い長い歴史、後半ではポールの人格に迫る試みがなされていく。 そのインタビューは、一気に行なわれたものではありません。 著者がNMEの記者だった1979年のものから、明示はされていないがおそらく2013年、「NEW」 の発売前後が最新のものではないか、と思われます。 実際読んだ感覚では 「キス・オン・ザ・ボトム」 あたりが最新のような気もする。 その30年以上にわたる膨大なポールへのインタビューを、項目によって構成し直しているようです。 ですから、今年(2016年)亡くなったジョージ・マーティンについてのポールの見解であるとか、最新の情報が提示されているわけではない。 ポールの情報というのはこの歳になってもなお日々更新型ですから、その点については物足りなさが確実にあります。 さらに、30年以上というとポールのものの考え方にも変化変遷があってしかるべきだと思うのですが、30年以上をリミックスにかけているからその変化というものがつかめてこないもどかしさがある。 表紙を飾ったポールの 「老い」 という問題にも、この本はきちんと答えてくれているわけではない。 さらに言えば、ジョン・レノンの死について多くが割かれているのとは対照的に、2001年に亡くなったジョージ・ハリソンの死についての記述はない。 正直なところ、このような本を読み漁ってきた身としては、衝撃に値するような情報が書かれているわけではありません。 しかし前述したような、リラックスしたムードのなかでポールと語らっているような疑似体験を共有できる強みが、この本にはある。 この本全体に貫かれているのが、この心地よさなのだ、と思うのです。 その心地よさが乱れるパートがあります。 自身の失敗作、どうでもいい作品について語るときのポールは多分に感情的になりがちであり、イライラした様子を隠しません。 特に 「シークレット・フレンド」 を語るポールのくだりはポールファンなら一読に値する部分でしょう。 しかしそのイライラも、ポールの人間性が垣間見える瞬間としてこの本にとっては必要なパートなのです。 3000円以上と、この本は決して安くはない部類の本です。 ただその値段に見合うパフォーマンスは兼ね備えています。 この本と付き合った1か月足らずの間、心地よい体験をすることができました(アマゾンの自身のカスタマーレビューより)。

  • : レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]

    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

MUSIC

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(スーパー・デラックス・エディション)(4CD+DVD+BD)
    ロック界、いや、すべてのポップミュージックにおけるアルバムの中で史上最高と称され、すでに世界文化遺産の域にまで達しているこのアルバム。 そのアルバムの発売50周年を記念して、スペシャルエディションがリリースされます。 なかでもブッ飛ぶのがこのスーパースペシャルボックスセット。 CD4枚組であらたなリミックスのステレオ盤1枚、モノ盤1枚、初期テイク集が2枚、さらにブルーレイ1枚とDVD1枚で5.1サラウンド、ハイレゾ音源、ドキュメント映像 「メイキングオブサージェントペパーズ」 のデジタルリマスター等々、卒倒するようなラインナップです。 18、000円プラス税と値は張りますが、史上最高の名盤だからこそこれは買い。 5月26日の発売までに予約をしておけば、アマゾンならば値下がりした時に値段がそのあと高騰しても最安値で購入できます。 ビーファンならずとも、これは注目ですぞ!

  • 山口 百恵 -

    山口 百恵: ゴールデン☆アイドル 山口百恵(完全生産限定盤)
    全シングルA・B面プラスボーナストラック(「あなたへの子守歌」)を、山口百恵名義としては初のブルースペックCDとしてリリース。 音はいわゆるドンシャリ系ではなく、アナログ盤に準拠した原音に忠実な印象です。 パッケージングはアナログシングル盤サイズで中袋、CDを納めるケースが完全にドーナツ盤をイメージしています(よく言えば斬新…笑、悪く言えばチャッチイ…笑)。 しかしその発想は買える(笑)。 ほぼ原寸大のシングルジャケットと裏の歌詞カードの複製ブックレット。 ただスキャニングは欲を言えばもう一歩。 当時シングル盤を中心に聴いていたかたなら、この編集盤はかなりの 「買い」 です。 しかしこのジャケット表紙の写真、スッピン風で個人的にはすごく好き。

  • デイヴ・グルーシン&リー・リトナー -

    デイヴ・グルーシン&リー・リトナー: Two Worlds / Grusin & Ritenour
    NHK朝ドラ 「花子とアン」 で美人のスコット先生が夜な夜な歌い、チビはなチャンがすっかり覚えてしまったイギリス民謡、「ザ・ウォーター・イズ・ワイド(流れは広く)」。 このアルバムでルネ・フレミングが歌っていたのを思い出しました。 ルネのソプラノはけっして大袈裟でなく上品で、私のとてもお気に入りのソプラノ歌手ですね。 このアルバム自体は全体的にクラシックにギターのリー・リトナーが絡むフュージョンぽいものなのですが、故・黒田恭一サン評するところの、「大人が聴く音楽」。 胸を締め付けるような哀しみと、すべてを包み込むようないたわりに満ちていて、私の人生のなかでも最上位に位置する愛聴盤です。

  • 桜田淳子 -

    桜田淳子: ゴールデン☆ベスト 桜田淳子~シングル・コレクション
    彼女の活動期に発売されたシングルをすべて網羅したベスト盤。 確かに後年のものほど馴染みがありませんが、選曲漏れがないので、彼女の存在とは何だったのか自体に思いが至るベスト盤です。 音も楽器の音像がよくてなかなかいいマスタリングをしている気がします。 2600円程度で推移しています。

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: ザ・ビートルズBOX(限定生産品)(USBメモリ)
    パソコンにUSB端子があり(たいていついてると思います)、パソコンで音楽が聴ける環境をお持ちの人ならば、聴くことができます。 現在のテクノロジーで最もいい音質で聴ける、ビートルズの音楽です。 ただし国内版にもかかわらず、訳詞とか一切なし。 ジャケットもブックレットもパソコンデータ。 純粋に音楽だけ楽しみたい人向けです。 また、曲間にコンマ何秒かのブランクが入ります。 「アビイ・ロード」 のメドレーも同様です。 しかし、音はさすがに、すごい。 大きな音量であればある程、目の前にビートルズが迫ってくる勢いです。 ツヤが違います。

  • The Beatles -

    The Beatles: The Beatles [USB]
    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

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