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2010年8月16日 (月)

「龍馬伝」 第33回 ふたつの隠し事

 西郷(高橋克実サン)の、長州への協力に対する承諾をとりつけた龍馬(福山雅治サン)。
 その同盟の証としての軍艦と銃を仕入れるために長崎グラバー邸に赴き、グラバー(ティム・ウェラードサン)に話を持ちかけるのですが、資金の出どころが分からない話に、グラバーは乗ってこない。
 ここで龍馬は、この話に長州が絡んでいることをグラバーに説明していません。
 龍馬がグラバーに最初持ちかけたのは、「薩摩が軍艦と銃を買いたがっている」 という話。
 グラバーはその場に薩摩の人間がいないことを疑問視し、また以前のように何の後ろ盾もない突飛な話を龍馬がしている、と判断したのでしょう。 当然です。
 グラバーは龍馬に、こう言い放ちます。
 「侍は商人を甘く見ている」、と。

 西郷が龍馬たちに具体的な支援をしなかったのは、西郷が幕府に薩長同盟の計画が露見することを極度に恐れたゆえのことだった、とこのドラマでは説明しています。
 つまり、ことは慎重なうえにも慎重に、隠密のうちに運ばなければならない大事なのです。

 その隠し事に迫ろうとする要注意人物として、このドラマではお元(蒼井優サン)を配している。 けれどこのお元にも、彼女がかくれキリシタンである、という公儀への隠し事を抱えさせることで、ドラマとしての緊迫感を演出することに成功しています。

 そしてこの回のクライマックスに向けてのお膳立てとして、カネのために身受けされた芸者の悲哀を描写し、キリシタンであることがバレて奉行所につきだされていく女を龍馬が止めようとする、というところをお元が目撃するシーンを挿入している。 お元がこのあと、龍馬に交換条件を持ち出すのは、ここで龍馬がかくれキリシタンに対して、理解してくれる器量を有していることを、お元自身が敏感に察知したからこそなのです。

 龍馬はふたたび単身グラバーのもとへ乗り込み、グラバーの説得に成功するのですが、この二度目の依頼での龍馬の切り札は、長州の桂(谷原章介サン)からの書状。 つまり、最初の申し出の時に伏せておいた長州の名前を、ここで明らかにせねばならないのです。

 このことはひとつの賭けです。

 グラバーがもし、この申し出に乗ってこなければ、長州が薩摩と手を結ぼうとしていることは、公になってしまう可能性が高い。
 龍馬は次のような手段で、グラバーを説得にかかるのです。

 「グラバーさんは、日本はお好きですろうか?」

 自分は商売のために日本に来ただけだ、と言うグラバーに、「金が稼げればいいのか」 と過激なことを言いつつ、龍馬はそれも良し、と認め、「商売は風向きを読まんといかん。 日本の風向きを自分で決められたら、大もうけできるがぜよ」 と煽ってくるのです。
 龍馬は最初、グラバーに日本への愛着があるかどうかを試そうとしてグラバーの本心を探り、その後すかさずこの話をビジネスオンリーの話に切り替えている。

 ここで大浦慶(余貴美子サン)も一枚絡ませろ、という話にすることで、グラバーに焦りの要素を継ぎ足しているのも興味深いです。 長州から用意された金は15万両。 長州と薩摩が連合することで、徳川幕府との軍事力の差を逆転させ、薩長主体の日本の新しい経済システムを根本から牛耳ることができれば、グラバーにとっても長期的に、こんなにおいしい話はないだろう、という理屈も読み取ることができますね。

 「わしはの、もう何ちゃあ隠し事はしちゃあせん。 もう全部、全部!話してしもうたがじゃき!」

 グラバーは龍馬に、これでいくらあんたはもうかるんだ、と訊くのですが、一銭も要らんという話に、グラバーは驚愕する。

 「わしらは日本を守りたいだけながじゃき。 …私心があっては、志とは言わんきにのう」

 この話、龍馬たち亀山社中は最初は損をしておいて、ここからひろがっていく儲けのほうに目を向けている、ということも頭に入れておく必要があるように感じます。 いずれにせよ、カッコよすぎですがな!(笑)

 龍馬が長州とグラバーとの交渉の仲立ちを任せたのは、長次郎(大泉洋サン)と惣之丞(要潤サン)。 ここでふたりの海軍操練所時代の知識が、大いにものを言うことになる。 すなわちグラバーの相手への見くびりによる、安くてボロイ船を高値で売ろうとする魂胆の見破りです。 長次郎の手腕はここで最大限に生かされるのですが、英語に堪能だった惣之丞の存在も、さりげなくも大変重要なものとなっている。 ここらへんの話は、実に面白かったです。

 長次郎はこの交渉ごとに自分が大きな力を発揮できたことを大いに喜び、妻の徳(酒井若菜サン)に手紙で報告するのですが、これが次回へのちょっとした布石になっている。 次回に期待です。

 そして、この交渉の場を探ろうとするお元を龍馬は発見。
 お元は先ほど書いたように、交換条件を出して、自分がかくれキリシタンであることを内密にしてほしい、と、半ば脅してくる(笑)。 龍馬はグラバー邸への二度目の訪問の際、お元がグラバー邸内の装飾品に施されたキリスト像を拝んでいるところを、発見してしまっていたのです。

 「いかんのお…。
 侍を見くびっては、いかんぜよ。
 おまんがその戸から出る前に、わしの刀が、おまんに届いてしまうきにのう」

 商人も侍も、甘く見てはいかんですのう(笑)。
 しかし福山龍馬は、そんな女性を敵に回すようなことは、せんのです(笑)。

 「世の中には、いろんな人間がおるがじゃ。
 耶蘇を信じたいゆう者がおってもえいろう。
 けんど、見つかったらむごい仕打ちを受けるいうががわかっちょって、どういて異国の神様を拝むがぜよ。 耶蘇いうがは、そればあえいもんか?」

 この龍馬の問いに、お元はこう答えるのです。

 「うちの、すべてですけん。
 この世の苦しみは、神が与えてくれんしゃった試練やけん。
 その苦しみば乗り越えれば、天国に行けるとです」

 どういて公儀の隠密などして小銭をためたがるのか、と訊く龍馬に、お元は感情を爆発させます。

 「なんが悪かと?
 芸子はみんな、親に売られた女ばい!
 はようお金ばためて、一日でも早ようこっから抜け出したかってみんな思うとるとよ!

 …うちが逃げ出したかとは…こん国です。

 …ここにおったって、よかことなんか、なにもなか…」

 この日本という国に嫌気がさして、天国に行けば幸せが待っていると考えている女性を据えることで、このドラマは龍馬のやろうとしていることに、さらに意義を持たせようとしている。 「わしはこの国を変えようと思うちゅうがじゃ。 おまんが逃げ出したいと思うような世の中は、のうなるがぜよ」 と言う龍馬に、お元はこう尋ねるのです。

 「坂本さんが作りたかとは、みんなが笑うて暮らせる国?」

 「…そうじゃ…!」

 自信満々に言う龍馬に、お元はキツーイ一発(笑)。

 「お目出たかお方…」

 このはぐらかしかたも、粋ですなあ。

 グラバーとの交渉はついに成功。 喜びに沸く人々のなかで、なんとも重厚な、ゆったりとした音楽が流れ続けます。 この対比の妙、実にシビレました。 派手派手しいBGMでなく、静かにこの状況をかみしめる桂や龍馬の姿を映し出すことで、見る側に一層深い思いを提供してくれるのです。
 そしてそのゆったりとしたチェロの響きが、次回予告にまでかぶってくる。 ドラマを見ることの喜びが、じわじわと伝わってくる出来でした。 次回は長次郎が、なにか問題を起こしそうな雰囲気。 視聴率が低下し始めたころから格段にドラマが面白くなっていることに一種の皮肉を感じながら、このドラマを見ておるのです。

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コメント

>一銭も要らんという話に、グラバーは驚愕する。

ココ、良かったですねえ。
(グラバーさんはハゲタカのアランですね。買い叩け!)

そして、「耶蘇」って単語を100年ぶりに聞きました。

>視聴率が低下し始めたころから格段にドラマが面白くなっていることに一種の皮肉を感じながら

薩摩と長州を結びつけたのが功績なんですから、今が一番面白くないと!
あとは、おりょうさんとの新婚旅行と龍馬暗殺が見所だと思っております。(定番。)
三菱財閥がドドーン!と成り立つところも見たいですw

マイティ様
コメント、ありがとうございます。

ゲッ、グラバーって、鷲津の片腕だったガイジンサンでしたか! 全然違うんで、ちっとも気付きませんでした…。 日本のドラマに出てくるガイジンサンって、結構どーでもいいような役者サンが多いのですが(笑)、まあ演技力は置いといて(笑)、なかなかいい味を出してますよね、このグラバーさんは。 「ホワット?!」 とか(笑)。

視聴率の話、思えば第二部の話が、ちっくと冗長すぎたような気がします。 これで視聴者離れが起きたかな、と。

ただ、疾走し始めた龍馬を見ていると、暗殺されてしまうのが、分かってはいるのですが、とても惜しい気持ちになって参りました。 最終回はきっと、断腸の思いで見守ることでありましょう。

それにしても、あんなツンデレの権化のお龍サンが(笑)、どのように龍馬の愛を受け止めるのか、実に見ものであります(笑)。

 リーンです。ここに出没します。
 『ハゲタカ』ファンとしては、アランに気がつかなかったのはショックでした。ああ。
 視聴率は、第三部に入ってから思わしくないようですね。大友組が本領を発揮しているのはここに入ってなのですが……、いいドラマは多くの人に見てほしいのですが。お元の描き方は秀逸だと思うんですが。
 私は『篤姫』を見ていませんが、小松帯刀はそこに描かれるようにかなり面白い人物のようですね。最近、本を何冊か関連書籍を読み、かなりの重要人物と感じられるのですが。もっとだして欲しいです。大久保利通もまったく出てきませんし、西郷だけが薩摩を動かしている(ように見える)のは歴史が好きな人間には不満が残るかもしれません。私も、です。ドラマとして楽しむことと、歴史史実(と思われる)を描くことの狭間、行ったり来たりしながら複雑な気持ちで拝見しています。大河は、難しい。

 追伸

 『不毛地帯』の文章、先日すべて拝見いたしました。ドラマより、こちらのほうが面白いです。放映時にこれを読んでいたら、楽しんで見たと思います。

リーン様
コメント、ありがとうございます。

気づきませんでスミマセン(汗)。 そういえば 「ハゲタカ」 に出ていた人、大量に出てますもんね。 個人的には、志賀廣太郎サンとか、嶋田久作サンにも出てもらいたいですね。

視聴率、今まで批判的に見ていた人が見なくなった、というだけなら、それは正しい判断だと思います。 つまり、「文句があるなら見なけりゃいいのに」、「じゃあそうします」 という理屈なんですが(笑)。 でもまあ、もったいないですね。 幕末のドラマはこうでなくてはならない、という固定観念があれば、この脚色の仕方には我慢ならないだろうな、というのは、理解できるんですけど。

小松帯刀と大久保サンは、「篤姫」 でずいぶん詳しくやっちゃいましたからねー。 ドラマに重厚感を出すためには、薩摩の人脈も重層的に描く必要があると私も感じるのですが、こんなところに大河が幕末と戦国を交互にやっている弊害が出ている、と思います。

「不毛地帯」 の拙記事を、全部お読みくださったんですか! 自分で勧めておきながら、こんな分かりにくい文章を勧めてしまって申し訳なく感じておりました(汗)。 あのドラマは、別角度で見るととても面白いドラマだったのですが、難解さが視聴者には受けが悪かったようで、甚だ残念でした。 もし再放送でもあれば、別角度でご覧になることをお勧めします。

ご存知かもしれませんが
映画ハゲタカで玉鉄を刺して強盗する人、
その演技が認められ(?)龍馬の小松帯刀役です。

マイティ様
再コメント、ありがとうございます。
ややや、そうだったんですか! ご存じではありませんでした…。 いや、そこまで気づきながらご覧になっているとは、脱帽であります。 そんなところに気付きながらドラマを見るのも、楽しみが倍加する気がしますネ。

 リーンです。再出没します。
 “小松帯刀”さん、今公開中の『踊る』に中国人刑事で出演しています。最後に見せ場あり、です。笑えます。しかし、映画『ハゲタカ』はまったく気がつきませんでした。ドラマは、脇役を見ると本当に面白いですね。

 あと、リウ様にお詫びをいたします。私の文章力の欠如で、

気づきませんでスミマセン(汗)

と、お書きいただいてしまいました。グラバーがアランであると、筆者であるリーンが気がつかなかった、と書きたかったのです。下手な文章で、申し訳ございません。気をつけます。

リーン様
再コメント、ありがとうございます。
わざわざご丁寧にご訂正くださり、重ねてお礼申し上げます。

つくづく、文章を書くのは難しいものですネ。 私も自分ではいいつもりで書いていても、あとから読み返すとどうとでも取れる文章を書いてしまったりしますです。

同じ脇役でも、主役を食ってやろうという人の演技、主役を引き立てようとする人の演技、それぞれあって面白いですよね。 会社でも、こいつを蹴落としてやろうとする人、全体の和を大切にする人、それぞれがいてその会社の色が出てくる気がします。 撮影現場も、一緒なんですネ。

志賀廣太郎は獄中で弥太郎に商売の極意を教える囚人役で出たよ。1シーンだけ

板垣退助も出てこん 様
コメント、ありがとうございます。
げっ、そういえばなんか、ひげボーボーの老人がいましたね。 あの人でしたか! ご指摘、ありかとうございます。

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  • : レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]

    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

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