« 「いきものがかり吉岡聖恵のオールナイトニッポン」 ブッ飛んでます | トップページ | 「色つきの悪夢」 薄れゆく戦争への認識、その移り変わり »

2010年8月12日 (木)

「ジブリ 創作のヒミツ 宮崎駿と新人監督 葛藤の400日」 見ました

 ここ数年、ジブリ映画が公開されると決まって放送される気のする、NHKのドキュメント。 なんだか四六時中、NHKのカメラはスタジオジブリに常駐している気さえするのですが(笑)、NHKのカメラにさらされながら、そこから見えてくるのは、宮崎駿氏の心象風景そのもののような気がするのです。

 私も 「ルパン三世ファーストシーズン」 からの宮崎駿フォロワー(もちろん無意識レベルですが)としては、今回 「借りぐらしのアリエッティ」 という映画の監督に抜擢した米林宏昌サンに託す宮崎サンの思いというものは、なんとなく伝わってきます。
 NHKの見立てとしては(つまり番組での解説では)それは今年69歳という老境に差し掛かり、後継者の不在に悩む宮崎監督、という構図なのですが、私の見立てはちょっと違う。
 宮崎サンにとっては、ジブリの後継者などどうでもいいように、私には思われるのです。
 宮崎サンが見据えているのは、自らが大事に守ってきた日本のアニメーションの将来なのではないでしょうか。

 近年CGによるアニメーションがますます進化していき、もはや表現できないものはない、というレベルにまで達しています。
 宮崎サンのアニメは、それとは対極の位置にある。
 宮崎サンのアニメは、エンピツ一本で作り出すことのできる、ペラペラマンガの延長線上にいつも存在している、と私は考えています。
 そしてジブリのアニメの良さは、まずはなんと言っても話の面白さ。
 ストーリーもさることながら、キャラクターに人を惹きつけてやまない魅力がある。
 そしてそれを最も効果的に見せることのできる、細かい心情を表す動きの演出。 そしてアニメでしか表現できない、大胆でダイナミックな大きい動きの演出。
 ジブリのアニメをジブリのアニメたらしめているのは、実にこれらの点に集約されている。

 そして今回、宮崎監督に抜擢された米林監督、通称 「麻呂」 サンの演出は、「キャラの細かい心情を表現する」 という点においては、番組を見る限り及第点レベルに達しており、ジブリイズムを継承する監督の誕生、という感を強くしました。

 麻呂サンに対する宮崎サンの介入は一切なし。
 これはかつて 「耳をすませば」 で監督に抜擢した近藤喜文サンが、この映画の心労がたたったこともあってか、公開2年後に47歳の若さで亡くなってしまう、という苦い経験が、宮崎サンの胸に棘のように残っていることが原因です。 近藤喜文サンについて宮崎サンが語るのを直接見たのは、個人的には初めてでした。

 「彼はあれが終わってから、急に老けこんじゃいましたよ。
 急に老けこんで、急に死んじゃったんですね、47で。
 だから登ってったんじゃなくて、終わりを渡しちゃったような気がして…。
 …残念ですね…」

 真面目なことを話しながらテレ笑いのように笑うのが宮崎サンの癖なのですが、笑った直後に感慨が襲ったかのように押し黙り、絞り出すように 「残念ですね」 と語っておいででした。 私もちょっと、もらい泣き。

 それからというものの、宮崎サンが監督に推す人間は米林サンまで出てこなかったわけですが、ジブリのほかのスタッフの様子を見ていると、それがなんとなく納得できるような気がするのです。

 ジブリのスタッフたちは、米林サンが監督に推され、最初の絵コンテを宮崎サンにチェックしてもらわなかったことで、ことさら驚きの声をあげる。
 これはいかに彼らが、宮崎サンのゴーサインが出なければ先に進めないかを、如実に語っているシーンのような気がしました。
 そしてあるシーンのラッシュで、そのシーンがよくないことがなんとなく分かっていながら、試写のあとスタッフの誰もが押し黙ってしまう場面。 指示待ちの人間ばかりだから、ここからサジェッションに発展しない。
 テレビカメラはこんなジブリのスタッフの様子を、残酷なまでに忠実にさらけ出してしまう。

 そんななかで麻呂サンは、もぞもぞと口ごもりながらも、自分の仕事を身も心もボロボロになりながら、完遂していく。
 肝心の映画をまだ見ていないもんですから、先に挙げた 「キャラの細かい心情を演出する」 という点では及第なような気がするのですが、キャラの魅力とかはどうなのかなー。 ネットで散見する 「アリエッティ」 の感想を見ると、麻呂サンの見せていた性格的な弱々しさがそのまま作品に反映しちゃっているような、そんな危惧もおぼえますが。
 でも試写を見た宮崎監督の目には、涙が。
 そして試写が終わったや否や、麻呂サンの手を高く持ち上げ、彼はやり抜きました、という評価をした、宮崎サン。
 宮崎サンの不安やいら立ち、葛藤を見てきたこともあってか、この場面には私もジーンときて涙が出てきました。

 「アリエッティ」、見に行こうかな。

|

« 「いきものがかり吉岡聖恵のオールナイトニッポン」 ブッ飛んでます | トップページ | 「色つきの悪夢」 薄れゆく戦争への認識、その移り変わり »

アニメ・コミック」カテゴリの記事

テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/521783/49130961

この記事へのトラックバック一覧です: 「ジブリ 創作のヒミツ 宮崎駿と新人監督 葛藤の400日」 見ました:

« 「いきものがかり吉岡聖恵のオールナイトニッポン」 ブッ飛んでます | トップページ | 「色つきの悪夢」 薄れゆく戦争への認識、その移り変わり »