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2010年10月 6日 (水)

「10年先も君に恋して」 第6回(最終回) 10年後の自分へ

 「10年先も君に恋して」 の最終回は、見る側に強烈なメッセージをまき散らしながら、結局10年後のリカ(上戸彩チャン)とヒロシ(内野聖陽サン)がどうなったのか、という結末を提示しない、心に深く残るような収束の仕方をしました。 傑作。 再放送もDVD化もされるようで(詳しくはNHKのHPをご覧ください)、少々のプライベートな出来事で放送を中止することなどあり得ない、というNHKの気概も垣間見たような気がします。 というより、ここまで傑作ならば放送中止になったらボードーが起こる、というか(笑)。

 最終回の作者からの強烈なメッセージを代弁していたのが、冒頭で10年前ヒロシに 「結婚の心得」 を説いた三田村教授(藤竜也サン)でした。

 「リカさんとヒロシくんは将来必ずケンカをします。 必ず! それも、何度も何度もです。
 ハハ…、これはね、どの夫婦もみんなおんなじなんだ。
 そのうちどちらか、心に余裕のないほうが、こう切り出すんです。
 『離婚しましょう…もうこんなふうなら別れたほうがいい』。
 フフ…だけどね、こういうのたいていの場合まだ本当に別れたいわけじゃないんですよ。
 ただ、本気でどこまで自分が必要とされているか、確かめたいの。
 ですから、心に余裕のあるほうが少し優しくすること。
 それと、ちょいとのユーモアですよ。
 これがあればまあたいていのことは、解決」

 現在のヒロシは 「自分は大丈夫」 などと明るく言い放つのですが、それを10年後のヒロシが隣の部屋で複雑な表情をしながら聞いている(頭痛や吐き気はどーしたのだ?という細かい詮索は、なしです…笑)。

 個人的にはこのシーンが、最終回を見終わった後の余韻にひとつのきっかけを与えてくれている気がします。
 その話はちょっと置いといて(置いとくのかよ!…笑)。

 最終回前半では、タイムトラベルの期限が迫った 「10年後ヒロシ」 と、現在のリカをはじめさまざまな人々はそれぞれの別れをしていくのですが、そこから派生するエピソードのひとつひとつがこれまたよくできていました。

 芥山賞を逃した日高(劇団ひとりクン)がその心境を題名に託した新作 「やさしい孤独」(この題名、なんかよくないですか?読みたくなります…笑)。 同時にリカへの恋が破れて、「ぼくは永遠にリカさんの味方です」 などと言いながら、新作が売られている書店でひとり号泣(笑)。
 そんな日高に、未来の恋敵であるはずなのに、10年後ヒロシは声をかけ励ますのです。
 「よく分からんが、元気出せ」(笑)。

 副編集長(高島礼子サン)にも、「こんなにいい女だとは思わなかった」 とバーで語る、10年後ヒロシ。 そんなヒロシに騙されて…じゃなかった(笑)、そんなヒロシの肩に頬を寄せる高島サン。 「ひとつだけ教えて…あたしの未来」…その問いに無言でかぶりを振る、10年後ヒロシ。 ちょっと笑みを浮かべる高島サンでしたが、やがてその意味を悟ったように真顔に戻っていく。 このシーンも、味わいがありましたぁ~。

 亜美チャン(木南晴夏サン…「てっぱん」 ヒロインの亡くなったお母さんですよね)のセリフもいい。
 「月日には勝てないんだしいつまでも若くなんていられないんだからね。 でも私、ハートだけは捨てたくないの。 ハートだけは、心だけはいつまでも変わらないでいられるかな、って思う」
 これがなかなか難しい(笑)。

 大作家先生(渡辺えりサン)とその夫(渡辺いっけいサン)の話もよかったです。 「人生、無駄なんてものはホントはひとつもないんです」(渡辺いっけいサン)「あたしはホントに大事な思い出は、小説には、書かない。 自分のいちばん大事な物語は、自分の胸だけに取っとくものよ」(渡辺えりサン)。

 ――とにかく、セリフのひとつひとつが、いちいち印象的なのです。

 そして10年後ヒロシと三田村教授との、最後の別れ。 照れ笑いを浮かべながら、最後にはしっかりと抱擁するふたり。 ドラマにもかかわらず万感の思いが迫る、秀逸な場面でした。 藤竜也サンの演技は、実に印象的でした。

 リカの弟役の染谷将太クンに、最後に現在への自分への手紙を渡そうとして、やっぱり思いとどまる、10年後ヒロシ。 将太君との最後の連絡も、「任務完了!」 のポーズで締めくくるのです。 それを目視で確認し、同じく 「任務完了!」 のポーズで見送る、将太クン。 この人も、いい役どころでしたよね。 この 「手紙」、ラストへの大きな布石となっているのですが。
 いずれにせよ、登場人物のすべてに、ちゃんと作り手の思いが見てとれる、というのも、このドラマを傑作にのし上げている大きな要因のような気がするのです。

 そして未来へ帰ろうとする10年後ヒロシが、その手紙を燃やしている現場に、リカが息せき切って現れる。
 リカに10年後ヒロシは、こう語るのです。

 「もし自分が10年前からやり直せたとしても、やっぱり君を好きになるだろう。
 何度出会っても、また君を好きになる。

 オレは、…結局もう一度、君に恋するために、10年後からやってきたんだ」

 なんか、もうこの時点で泣けます(早いって…笑)。 上戸彩チャンもこの時点で涙を抑えきれない様子だったのですが。

 リカはこう答えます。

 「もし、…もしあなたが未来に帰って、ドアを開けて、それでも、まだ私がいたとしたら、あなたの家にまだ私がいたら、その時は、もう少しだけ我慢してあげて。
 また罵倒するかもしれない。
 また、あなたにひどいことを言うかもしれない。
 それでも心の奥のどこかでは、あなたを絶対に愛してるから。
 10年先も、…絶対に愛してる…」

 リカはヒロシが未来へ帰ってしまえば消えてしまうこの記憶を、「忘れない…この気持ち、絶対に忘れない」 とヒロシに宣言するのです。
 これは最終回前半で10年後ヒロシから、「絶対なんてありえないんだ」 と言われたことへの、リカの精一杯の答えなのです。
 そのリカのダイヤモンドのような硬い気持ちが、10年後のヒロシには、眩しすぎる。
 内野サンもこのリカのセリフには泣けてしまっていたみたいでしたが、これってあまり演技しているように感じませんでした。
 歳を重ねると、いろんな要因が重なって、「絶対にこうしてやろう」 という気持ちが、くじけていってしまうものなのです。 そして若い時の思いを、「若いからなんにも知らないんだよなあ」 などと、知ったかぶりで否定するようになる。
 内野サンがこのリカのセリフに泣けてしまうのは、自分がそれだけ純粋さを失っている、という自覚があってこそなのでしょう。 私もそうです。 10年後ヒロシの姿を借りて、泣けてしまっている内野サンを、そこに見た気がしました。 私も同じです。 内野サンと同じです。 えーこれが、今回の記事冒頭で、私が言いたかったことであります(引っ張ってスミマセン)。

 そして、リカをちょっとだけ抱きしめ、未来へと帰っていくヒロシ。 リカは次の瞬間、10年後ヒロシのことを、すっかり忘れてしまっています。
 ここでブラックアウトした画面の中で、ヒロシが10年後に帰っていく模様が映し出されたのですが、私がこの時点で思わず連想してしまったのが、1970年代NHK少年ドラマシリーズの傑作、「タイムトラベラー」 でした(若い人は、全く知らないと思いますが…)。
 このドラマ、「時をかける少女」 のもっとも初期の映像化作品なのですが、そこで主人公の浅野まゆみサンだったかな?、芳山和子がタイムリープする瞬間の映像は、ピアノ線で吊るされた浅野サンがぐるぐる回ったりぐにゃぐにゃになったり(記憶があいまいでスミマセン)、ずいぶん凝った演出をしていました(演出は、NHKの巨匠、故石山透サン)。
 それに比べるとかなりシンプルな映像で(笑)。
 でも40年近い時を経て再びNHKで映像化されたその場面には、ちょっと感慨を抱かざるを得ませんでした(賛同者求む…笑)。

 10年後に戻ったヒロシですが、やはり10年後リカとの溝は埋められない様子。
 リカは日高の個人マネージャーになるから、離婚しても経済的には大丈夫などと言い、よりを戻せる可能性はほとんどない、と言い切るのです。
 ヒロシはその時点で、リカが日高と付き合っているのではないか、という疑惑が解消されたのですが。

 ここでリカが、「10年前の自分から手紙が届いた」 とヒロシに打ち明けます。
 その手紙が入った封筒をヒロシが見ると、「最後の最後の任務!」 という、いかにも将太クンらしい字が書いてある(笑)。
 ここでちょっと見ている側は混乱するのですが、おそらく10年前ヒロシが将太クンとコンタクトをとっていたことが判明して、リカはヒロシが消滅しない方法として、自分に対する手紙を書き、「未来警察からの依頼だよ」 とか何とか言って(笑)、将太クンにその手紙を託したのではないでしょうかね。 自分が持っていたら事態が悪化する前に読んでしまうかもしれないし、そうなると10年前ヒロシが過去に来る理由もなくなってしまう。 10年後ヒロシの記憶はなくなってしまうけれども、たとえなくなってしまう記憶でもそれを手紙を書いた時点で消すのはいやだ、というリカの思いも、深読みすると感じることができる。

 ヒロシに手紙の内容を訊かれ、「秘密…」 と呟いて笑う10年後リカなのですが、その表情にはかつてのようなわだかまりが消えている気がするのです。

 手紙の内容は、次の通り(ああ~~っ、またここで、クリスタル・ケイサンのあの歌がああ~~っ…毎度しつこくてスミマセン)。

 「10年後の私へ
 あなたはいま、どこで何をしていますか?
 どんな生活をしていますか?
 誰と一緒にいますか?
 10年前の、いまの私は、とても幸せです。
 なぜなら、知ってると思うけど、大好きな人が出来たから。
 優しいけど、ちょっと思い込みが激しくて、宇宙のことや物理の話をたくさん知っていて、靴下にいっつも穴があいていて、年上だけど、笑顔がかわいい素敵な人。
 いま、私には、10年先の未来も、彼のことが大好きだという自信があります。

 10年先、博さんがどんなふうに変わっていたとしても、私はやっぱり博さんのことが好きだと思う。
 彼の夢を応援しながら、私もあきらめずに夢を追っていきたい。
 いまのこの幸せな気持ちを、忘れたくない。

 あーあ、こんなはずじゃなかった。
 私にはもっと素敵な未来があったはず。
 なんて思う日も一度や二度や、もっともっと来るかもしれない。

 でも、どうか、前を見て。
 いまの、この気持ちを忘れないで。
 自分の選んだ人生を、もう少しだけ信じて。
 そうすれば、未来は――
 未来はきっと――」

 もし自分が、10年前の自分から手紙を受け取ったとして、それを読んだ時、どう考えるでしょうか。
 先に指摘したように、「若いとなんにも分かんなくていいよなあ」「そんなに甘いもんやおまへんにゃ」(byフォークル)などと、醒めた目で読んでしまうのではないでしょうか。
 10年前の自分から手紙を受け取ったリカも、たぶんこれと同じような感覚でいるのではないか、私にはそう思えてなりません。
 けれども、このリカの手紙には、10年後の自分をなんとかしたい、という強い思いが、凝縮されている。
 それを感じることのできない10年後リカであるはずが、ないのです。

 結論。

 リカとヒロシは、めでたくよりを戻しました~(拍手)。

 ここでリカが、ヒロシと別れてヒロシとのいい関係を保ちながら自分の夢に進んでいく、などと考えるのは、なーんかやっぱ、違う気がします(笑)。 眼前には、広大な人生の世界が、広がっておるのです(「攻殻機動隊」 か?)。 別れる理由なんぞ、ありゃしません。

 なぜならこんなにも10年前のリカは、ヒロシをずっと好きでいようという決意を、固めていたのですから。

 どんな道を歩もうと、それは自分が決めた道。
 他人にどう左右されようが、結局選んだのは、自分なのです。
 そんな自分の選択を、後悔していてもはじまらない。
 いや、後悔ばかりですよ、人生なんて。
 後悔の連続です。
 それでもリカが手紙に書いていたように、ただひたすら、前を向いて生きるしかない。

 奥の深い、ドラマでした。 もう一度書きますが、傑作です。

当ブログ 「10年先も君に恋して」 に関する他の記事
第1回 んー、どうでしょう
http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/09/10-1-276e.html
第2回 大切なのは、今の気持ちなんだhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/09/10-2-58e5.html
第3回 自分が変わってしまうことへの恐怖http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/09/10-3-3dc3.html
第4回 失いたくない、あの時の気持ちをhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/09/10-4-b283.html
第5回 いまだけが、未来を変えられるhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/09/10-5-3f42.html
第6回 10年後の自分へhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/10/10-6-10-0df7.html

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コメント

本当、傑作です!素晴らしいラストでしたね。
見終わった直後は、もっと詳しく色々と表して欲しい(他のキャラも含め)!と思ったのですが、見直すうちにやっぱりこの終わり方だからいいんだと思えてきました。

里花にミルクティーを入れてもらった40博、嬉しそうでしたね~もう、デレデレじゃないか!(里花はコーヒー派で博はミルクティー好きという裏設定があるそうです)

クリスタル・ケイさんの歌もピッタリで…あぁぁーって気持ち、わかります。

こんな素晴らしいドラマをリアルタイムで見られて、幸せでした!

投稿: ミツバチ | 2010年10月 6日 (水) 17時02分

ミツバチ様
コメント、ありがとうございます。

ミルクティー、やっぱりそういう設定があったんですね! ミルクティーを見つめる博の顔が、とても印象的だったので、これには深い意味があるんだろうな~と思いながら見ておりました。

最初はこのドラマ、内野サンのキャラが未来と現在とでは違いすぎる、30ヒロシは若づくりしすぎ、などと思って見ていたのですが、これにもそれなりの理由があったことが、見終わったいまとなっては分かります。 脚本の大森サン、この話を月9に持ってくればよかったのに、という意見も、ネットでは散見されます。

クリスタル・ケイサンの歌は、もう、チョ~反則技でした!(笑) あのイントロが流れてきただけでも、涙が出てきます(笑)。

ホント、いいドラマでしたね!

投稿: リウ | 2010年10月 7日 (木) 05時40分

 2004年に『エースをねらえ』がドラマ化されていました。岡ひろみと宗方仁コーチ、師弟を演じたふたりが里花と博として夫婦を演じているなんて。まさに、未来は予想できません。

 火曜の夜にそっと見るドラマとしては、頭がほぐれて最高でした。『龍馬伝』で頭をコチコチにして見ているので、一服の清涼剤として心地よく見ていました。実は未見だった第2話を見ました。欠かさず見てよかったです。ドラマは、欠番はよくないです。

 私には夢はあった

 自信がないんです。博さんを幸せにする

 前者はタイムスリップなしの10年後の、後者はタイムスリップしてからの、それぞれの里花の台詞です。ストーリー上なんてことない台詞ですが、里花は未来の博に出会って言葉が能動的になっています。里花は仕事を断念するべきではなかったし、博もそこを慮るべきだった。
 もし、40代の博と里花が現実として出会っていたら、会話が増えそうできっとうまくいったのでしょう。お互い、能動的な、そして文句も言える関係に最初からなれたのでは?そして生き方もわかる。未来から博がタイムスリップしてきたおかげで、10年後も危機がありながら結局夫婦としてやっていけそうで、めでたしめでたしです。

 人間は会話することでしかコミュニケーションできない、と私の好きなアルチザンがいっていました。それを味わえるいいドラマでした。私は、会話が成立する関係に以心伝心はあると思いますし、究極のコミュニケーションは沈黙は金なりが心地いいと感じることだと思いますが。

 最後に。第4話の歩道橋のシーンで、ふたりの博は午後の紅茶もどきを飲んでいましたね。最終話のラスト、未来でシーンでサイフォンがでて、そして里花が博にミルクティを用意するシーンの意味を明らかにしてくれました。過去に放映した回を見たくなるのは、わたしにとってすっぽりはまった証拠です。小道具を上手に使うドラマは、ビリー・ワイルダーみたいで私好みです。

投稿: リーン | 2010年10月11日 (月) 23時50分

リーン様
コメント、ありがとうございます。

「エースをねらえ!」 などというゲテモノチックなドラマに、内野サンがお出になっていたとは(大変失礼)、正直なところ驚きました。 上戸彩チャンが 「金八先生」 卒業後、なんかアニメの特撮ヒロインみたいなこの手のドラマに出演し続けたことに、なんかずいぶん失望して、全くチェックの管轄外でした(笑)。

ヒロシがリカの仕事を辞めさせた件。
若いころは余裕がなくて相手の気持ちを尊重することができないですもんね。
若いときの恋愛感情というのもそういうもので、独占欲がやたらと強い。 そしてその独占欲の強さが、愛の強さだと勘違いしてしまう。

相手のことをいちばんよく知っているのは自分だ、という強い自信があるのに、実はいちばん見えてない。

そんなときに10年後の自分がやってきて、「もっと相手の気持ちをしっかり理解せよ」 とでも言ってくれたら、もっと分かりあえるんですけど。

恋愛、またはそれ以外の現在進行中のさまざまな関係も、10年先のことを見据えながら考えていけば、もっといいのかもしれません。 このドラマは 「未来に悔いのないように生きろ」 というメッセージに富んだ、秀作でした。

リーン様は、静かな関係をお望みなんですネ(笑)。

私も実際のコミュニケーション能力は皆無に近いので(笑)、会話というものは苦手であります。
ただ、「伝えておかなければならない思い」、というものは、なかなか以心伝心では、伝わりにくいものですよねえ。 このドラマは、そんな 「伝えておかなければならない思い」 に満ちたドラマだった気がします。

投稿: リウ | 2010年10月12日 (火) 09時15分

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