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2010年11月27日 (土)

「獣医ドリトル」 第5回 ドリトル流優しさ

 土門(國村準サン)と花菱(成宮寛貴サン)の関係の変質を描いていくことで、ドラマとしての緊張感を盛り上げることに成功している、「獣医ドリトル」。

 かたやペットを安楽死させることを積極的に選んでいく大動物病院の総医長、かたや外科手術が出来ないテレビで人気のカリスマ獣医。
 専門的な治療を推進する新しい総合動物医療センターの理念に自分の活路を見い出し、自らの弱点をカバーさせようとする花菱は、ビジネスライクな土門のやり方とは距離を置くようになるのですが、土門は自分の勧める動物の安楽死を、飼い主やペット自身の負担を軽減させる方法だ、と信じてやまない。

 そんな土門に花菱は、「犬一匹を救うために、我々獣医がいるんじゃないですか」 と反発を強める。
 「君には失望した」、で終われば話はここまでなんですが、土門が花菱を抱え込まざるを得ない理由が出来るんですよ。
 それはテレビで人気のカリスマ獣医が新センターから距離を置いたことによって、予算の捻出が困難になったこと。
 土門は花菱がひた隠しにしている 「手術できない」 という弱点をマスコミにリークすることで、花菱を無理やり新センターに引きとどめようとするのです。

 ここらへんの取引は、総合動物医療センターという話のオーゲサぶりは置いといて、実に面白い。 花菱は自分の弱点を克服しようと、ドリトル(小栗旬クン)が行なうオペを最後まで見届けようと努力し、あすか(井上真央チャン)からほめられて、自分もひとつ壁を乗り越えられたと、なんとか単純に納得しようとする――この構図が、浅いようで結構深い。 不安だから、大丈夫だと思い込みたがるんですよ。
 そして 「誰がオペするんですかぁ~?」 と花菱を揶揄しながら、自分の父親土門総院長を軽蔑したような目つきで見つめる、長男の土門勇蔵(笠原秀幸サン)。 この長男の動向も、ドラマ的なデフォルメが気になるとはいえ、緊張感を与えるひとつの役割を担っている気がします。

 そしてかねてから指摘していますが、橋本裕志脚本にありがちな 「話の詰め込み」 が、今回もまさしくてんこ盛りでして(笑)。

 花菱がドリトルに手術を依頼したラブラドールレトリバーのケンタ君のエピソードで、友情出演というよく分かんない役柄の藤沢恵麻チャンが絡みに絡んでくるのは序の口で(笑)、今回ドリトルが処理しなければならないのは、かつて好意を抱いていたという平野瞳(りょうサン)と彼女が連れてきた猫のベル、そしてハト屋敷の主加藤治子サンが連れてきた瀕死のハト。

 ところがこのふたつのエピソードとも、かなりの出来栄えで。

 加藤治子サンがハトに餌づけをしているのは、50年前に山で遭難した新聞記者の夫が通信鳩を死の間際に託したのではないか、という期待から。
 ところが息子の佐戸井けん太サンは、父親が山で遭難したのは、浮気相手と心中したからだ、という真相を知っていて、だからこそ母親の加藤治子サンに餌づけをするのをやめてもらいたがっている。

 かたやりょうサンは、夫(恋人だったかな?)が浮気相手と心中をしたことが原因で、生きる気力をなくしている。
 ベルがけがをしたのも、自分を捨てようとしたりょうサンについていこうとして車にはねられたから。

 そして佐戸井けん太サンから自宅のハトの駆除を頼まれたドリトルが持ち帰った巣の中のハトの骨に通信筒が巻きつけられていたのを、りょうサンが発見するんですよ。
 通信筒には、山での取材中自殺しようとしていた女性を助けようとして一緒に転落した、という加藤治子サンの夫の最期の通信が。
 「信じていた…でも、50年間信じ続けるのはつらかった」
 と号泣する加藤サン。
 こっちもウルウルでした…が、やはりイマイチ感情移入できない。
 すごくいい話なのに、詰め込み過ぎているために、のめりこむに至っていないうちにさっさと解決してしまうからなんですよ。
 やはり2話完結くらいがいちばん入り込みやすい気がするんですが。
 特に加藤サンの演技が秀逸だったので、ちょっと惜しい気がしました。

 そしてちょっと違和感が残ったのは、その通信筒を発見して加藤サンらからとても感謝されたりょうサンが、その直後に買い物中結婚式をたまたま見ただけで絶望してしまい、電車に身を投げようとしてしまうところ。
 他人の50年にわたる懸案事項を解決してあげたというのに、自分の夫(恋人?)が心中したのも何かの間違いだった、と信じることが出来なかったのでしょうか?

 でも、これはこれで、アリなような気もするのです。

 人間、いくら励まされて勇気が出ても、死にたいと思っている人は簡単なきっかけでまた元の木阿弥になってしまう。 感情というのは、その時その時で、千変万化に移ろいゆくのです。

 電車に飛び込もうとするりょうサンのポケットの、ケータイが鳴る。

 「ベルをよろしく…」 と遺言を託そうとするりょうサンに、ドリトルはあすかの受話器を横取りして、こう言い放つのです。

 「悪いが、うちでは捨て猫の保護はしていない。
 瞳さん、あんたがベルを捨てるって言うんなら、ベルは殺処分だ。

 飼い主の捨てたペットを全部、獣医が飼うとでも思っているのか。
 笑わせるな。
 捨て猫は保健所に引き取ってもらう。

 見殺しにしようとしているのはあんただろ。
 あんたは他人の善意に寄りかかって、あんたがいなきゃ生きていけないペットを捨てて、飼い主の責任から逃げようとしてるんだぞ。

 フンッ。

 勘違いしてないか?
 オレはボランティアじゃない。

 …獣医はビジネスだ」

 辛辣な言い方しかできない自分なりに言葉を選びながら、相手の反応を聴きながら、「生きろ!」 という感情をこめて、りょうサンを叱咤する、ドリトル。
 ベルを大事に思っているなら、なんとしてでも生きてベルの面倒を看つづけるんだ、という気持ちがあふれかえっていて、感動しました。
 このドリトル流の優しさを、小栗旬クンは完全に噛み砕いて演技しておりますね。

 そして、その言葉を涙を流しながら聞いていたりょうサンは、「…今から、迎えに行きます…」 と絞り出すのです。

 やられたなあ…。

 そこにたたみかけるように、土門と花菱の相克ですからね。
 詰め込まれた話のめまぐるしさが持つ魅力に、ちょっとクラクラしてしまいました。
 駆け足すぎて泣ける場面で思いっきり泣けなかったけれど、こういうシビレ方もあるんだなあと感じました。
 また、井上真央チャンの演技がひとつのオアシスみたいになっていて、これがいいんだなあ。 ドリトルに好意を寄せるにはずいぶんまだまだ先の話のような気がするのですが、みんなから指摘されて激しくかぶりを振っている、というのが、構図的にしっくりしている気がする。

 次回以降も、話がどんどんこじれそうで(笑)、期待させてくれます。
 「獣医ドリトル」 のマンガが、よくここまで昇華できたものだ、と感心をしております。

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コメント

小栗旬かっこよすぎる~
私は花男でメロメロになりました!

ケーキ様
コメント、ありがとうございます。
小栗旬クンの演技を無意識のうちに見ていたのは、NHK大河で石田光成の幼少時をやっていたとき(かなり古い…)。 私は 「スマイル」 でのキレまくり男に、ショックを受けたクチです。 かなりうまい役者になりつつある気がいたします。

この回のドリトルは、男から見てもカッコいい。

現実世界でこの対応をして、
その優しさに気付ける人はいないけど。

陸奥雷 様
コメント下さり、ありがとうございます。

まずぶっきらぼうだと、誰もついてこない気もいたしますが、分かる人はやはり、そんな 「ホンネ」 の人を慕っていくものかもしれませんよね。

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  • : レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]

    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
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MUSIC

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(スーパー・デラックス・エディション)(4CD+DVD+BD)
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    山口 百恵: ゴールデン☆アイドル 山口百恵(完全生産限定盤)
    全シングルA・B面プラスボーナストラック(「あなたへの子守歌」)を、山口百恵名義としては初のブルースペックCDとしてリリース。 音はいわゆるドンシャリ系ではなく、アナログ盤に準拠した原音に忠実な印象です。 パッケージングはアナログシングル盤サイズで中袋、CDを納めるケースが完全にドーナツ盤をイメージしています(よく言えば斬新…笑、悪く言えばチャッチイ…笑)。 しかしその発想は買える(笑)。 ほぼ原寸大のシングルジャケットと裏の歌詞カードの複製ブックレット。 ただスキャニングは欲を言えばもう一歩。 当時シングル盤を中心に聴いていたかたなら、この編集盤はかなりの 「買い」 です。 しかしこのジャケット表紙の写真、スッピン風で個人的にはすごく好き。

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    ザ・ビートルズ: ザ・ビートルズBOX(限定生産品)(USBメモリ)
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  • The Beatles -

    The Beatles: The Beatles [USB]
    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

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