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2010年11月22日 (月)

「てっぱん」 第8週 18歳の店主、どう納得させてくれるか

 新潟にいったん帰ったジェシカちゃん(ともさかりえサン)でしたが、物語はすでに彼女が帰ってこないことが前提で動いている様子(笑)。

 下宿屋の続きのスペースでお好み焼き屋をやることになって、当の下宿の住人たちは 「酒を出すこと」「夜遅くまでやること」「タバコを吸われること」 などに難色を示し、あかり(瀧本美織チャン)に開店反対の意向を明らかにするのですが、普通は店長のジェシカちゃんに言うべきところ。 あかりも 「冬美サン(ジェシカちゃん)が帰ってから…」 と及び腰なのは、致し方ない気がします。

 そして初音(富司純子サン)に 「なんでみんなから反対された時、一言くらい言ってくれなかったのか」 と助け船を求めるのも、厳しい言い方をすれば、自分が主体となってやっていないからこその 「甘え」 なのであります。 当然初音は、その抗議にとりあおうともしない。
 そこをちゃんと描いているゆえに、「このコに任せて大丈夫なのか?」 という不安を、見る側は持つことになる。
 ても、そんな不安の喚起こそが、作り手の意図しているところであるとも言える。

 さらに気になるのが、あかりが働いているかつおぶし屋 「浜勝」 との兼ね合いの問題。
 あかりは開店前の店の前で通行人たちのリサーチをして客層を探るのですが、よくこんなことをやっている暇があるもんだ、という感じもする。
 けれどもこれも、「浜勝」 がこのお好み焼き屋に協力することではかれるイメージ戦略とか、もともとフルタイムで働いてもらうには、あかりの給料を出すのは難しいとか、企業としての思惑も絡んだ結果だと考えると、結構納得できるものがあると思うのです。
 だけどそこらへんを話に出してしまうと、ドラマとしてドロドロしてしまう、つーか(笑)。
 理屈っぽく見てしまうには、ちょっと脳内補完が必要な点はあるんじゃないでしょうか。

 そして最大のキーポイントと呼べるのは、18歳で社会に出たばかりのあかりを、どうやってこのお好み焼き屋の店主としてスタートさせるかです。

 案の定と申しましょうか、ジェシカちゃんは新潟の病弱な父親の手助けをするために、このお好み焼き屋をやめる、と言いに帰ってきます。 そのときあかりは、「うちはこのお店をやりたい!」 と言い出すのですが、その場にいた浜勝の社長(趙珉和サン)や経理の川中美幸サン、折から大阪に来ていたあかりの父親(遠藤憲一サン)、伝さん(竜雷太サン)、ジェシカちゃん、みんなが反対。

 「勤めはどうするの」 という伝さん、「昼間働いて夜だけ店を開ける」 と答えるあかりに社長は 「そりゃムチャや」 と一蹴。 「ひとりでは、無理だと思う」 というジェシカちゃんの話も当然です。

 私がいちばんネックだなあと思ったのは、「酒を出すような店を未成年の娘にやらせるわけにはいかん」 と言う遠藤憲一サンの反対に 「酒は出さんようにする」 と返したあかりの答え。
 夜だけやる店に酒が出ない、というのは、ちょっと商売として成立しなさすぎる。
 おやつ代わりに食べてもらうというのであれば、おやつタイムに開店していなければ。
 私の場合、やはりお好み焼きを食べるときはビールは必携、と言いますか(笑)。 開店第1号のお客さんも、まずビールを頼んでましたよね。 これって商売上ネックになりそうだけどなー。

 初音がもともと、この店をジェシカちゃんにだけ許可していた、ということは、あまりネックとはならん気がしてました。
 なぜならば、初音自身も、本当は店を開けたくてうずうずしていることは、手に取るように分かったので。

 私が初音を見ていてとても感じるのは、この人は経営学とか学んでなくても、経験上それに匹敵する、いやそれ以上の生きた経営学を身につけている、ということです。
 採算のとれるひとり当たりの客単価を熟知していることは当然のこと、ご近所への気配りや店の雰囲気、味に対するこだわりなど、いかにしたら店を継続していけるかが、割合はっきり見通せている気がする。

 そんな初音を開店の方向に動かしているのは、何より娘千春(木南晴夏サン)への思いと、あかりへの不器用な愛情が大きい。
 逆風の中、とりあえず焼くだけ焼いてみよう、と思いたったあかりが、鉄にいの磨いた鉄板でいちばん最初に焼いた広島(尾道)風お好み焼きをまず食べてもらおうと思ったのは、あかりの生みの母である千春。 てっきり初音に持っていったのかと思いきや、あかりは初音を素通りして、奥にある仏壇の前へ。 仏前の千春に、お好み焼きを供えるのです。
 泣けました。
 初音はそんなあかりを、心から応援しようと思ったに違いないのです。

 初音にとって開店のためのいちばんのネックは、父親の遠藤憲一サンが開店を許してくれるかどうか。
 でも当の遠藤サンも、初音が許してくれれば、という気持ちでいる。
 お互いの立場を尊重した、いい構図じゃないですか。

 そしていちばん大事だと思える、あかりの気持ち。

 大阪に来た名目であるプロペラの修理を父親がしているところにやってきたあかりは、遠藤サンにこう話すのです。

 「うち…正直言うて、不安だらけじゃわ。
 お金のことも…商売のことも…まだ、全然分かっとらんけえね。
 でも…あの店やりたい思うたんは、冬美サンの代わりってだけじゃ、ないんよ。

 あのお店は…うちに…尾道と大阪、どっちの家族も、忘れさせんためのもんなんよ。

 おばあちゃんのお店で、お母ちゃんの味のお好み焼きを焼く。

 欽にいの作ってくれた口座に、お店のお金を出し入れする。

 鉄にいが磨いた鉄板を、毎日大事に使う。
 出来はいまいちでも、お父ちゃんの見て覚えた仕事じゃけえね。

 うち…あのお店ちゃんと出来たら…大阪におっても、ええような気がするんよ」

 遠藤サンはそんなあかりに、鉄の溶接の話を引き合いに、あかりの役割はふたつの家族を結び付けるものなのかもしれない、と話します。

 このあかりのお店を開く動機というものは、ちょっと弱いような気もどこかでします。
 あかりは不安を持ちながらも、ちょっと無鉄砲すぎるのではないか、と。
 今すぐ始めんでも、もうちょっと入念な下準備をしてからでもええのではないか、と。 18歳って、店をやるのにはちょっと性急に過ぎるよ、と。

 でもそれ以上に感じるのは、あかりのそんな上昇志向です。
 リスクがあるのは、どんな仕事であれ当然のようについてきます。
 安定ばかりを求める自分にとっては、そんなあかりのベンチャー的な意識が、とても眩しく見える。

 ドラマではそんなあかりを、応援してくれる人たちがいる、という論理でこの無謀さを解消しにかかっている。

 開店のために最大の懸案となるかに思われた金銭的なことも、初音が200万円をジェシカちゃんに返すことで解消。
 ご都合主義というなかれ。
 それだけのことをあかりにしてあげたい、という熱意を、あかりは持っているのです。
 熱意だけでは世の中はまわっていかないのは当然ですが、一生懸命物事にぶち当たっていけば、どこかでちゃんと見てくれている人がいる、と前向きに考えたほうが、ずっと自分の人生の精神的健康にとってよろしいのではないでしょうか。
 ああだこうだと後ろ向きに考えてばかりでは、人生、前には決して進んでいかないものです。

 初音はジェシカちゃんに返したその200万円を、あかりが自分から借りたことにして、毎月いくらでもいいから私に返していきなさい、と言います。 返済途中で自分は死んでしまうかもしれないが、それでも全額返すんや、と。
 これ、すごく後腐れのない話で、感激するジェシカちゃんと一緒に、私も泣かせていただきました。
 こんな、ちゃんと見守って応援してくれる人がいるということは、お金のこと以上にあかりにとってとてつもない財産だと思うのです。
 それがまたもや、天国にいる千春の主導で進行しているところが、また泣ける。

 開店当日、第1号の客は、先ほど書いたようにまずビールを注文。 「お酒は出さない」 と言うあかりに、ちょっと不満そうな顔をします。
 下宿屋の住人の同意を得るために打ち出した 「店は夜9時まで」「酒は出さない・たばこも禁止」 という店の経営方針に、ちょっと一抹の不安も感じさせます。
 ただそこから、あかりがどのように、このお好み焼き屋を成長させていくか。
 経営者としての知識豊富な初音の出番も、きっとこれからだと思うのです。
 そのことを考えると、先行きが楽しみなドラマになってきました。

 ジェシカちゃんとあかりのテーマ曲でもある 「銀河鉄道999」。
 ジェシカちゃんはお好み焼き屋の開店を見守ったあと、別れのホームで、こう話します。

 「おのみっちゃん、これからどんなことがあっても、上だけ見ていこう。

 雨でも曇りでも、必ず星は見えるからね」

 その意味が分からずきょとんとするあかり。
 ジェシカちゃんとの別れのシーンも、泣けました~。

 その晩、いままで初音と続きの部屋で寝ていたあかりは、けじめのためにジェシカちゃんのいた部屋で今後は寝るようにと初音から言い渡されます。
 と同時に初音からの開店祝いが、やけどの塗り薬。
 苦労知らずのあかりの手がやけどの跡だらけになるのに心を痛めた初音の思いやりにも、ぐっと来るものがありました。

 ジェシカちゃんのその部屋に入ったあかりは、天井に星のオブジェクトが飾られていることに気付きます。
 このことだったのか…。

 上だけを見ていく。

 なんて、眩しいんでしょう、こんな生き方。
 下ばかりを見てお金が落ちていないか探しているような(笑)人生を送っていた自分も、ハッとさせられるような話であります。
 このことに気付かせてくれただけでも、このドラマを見ていた甲斐がありました。
 これから、どんな試練があかりを待っているんでしょう。

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