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2011年1月 3日 (月)

「てっぱん」 第10週 「臆病」 とのたたかい

 ものすごく遅れたレビューになってしまって恐縮なのですが、去年の11月29日から12月4日までの 「てっぱん」 第10週の感想文を書かせていただきます。 正月休みで見て、あまりにも泣いたので、やはりなんか、書かずにはいられません。

 この週は、民男クン(前田航基クン)が東京に行かずに父親と暮らすことを決め、村上あかり(瀧本美織チャン)の生みの母千春(木南晴夏サン)が遺した手紙の中身が明かされる話がメインの週でした。

 どうしてこれほどまでに見るのが遅れてしまったか、と言えば、年末で忙しくて見られなかった、というのも確かにありますが、じっさいのところその前の週での、田中初音(富司純子サン)があかりに言った 「あんた、よう生まれてきてくれたなあ」 のセリフから、先の話を見るのが怖かった、ということになるでしょうか。
 つまり話の盛り上がりが、毎週のようにヤケにクライマックスを迎えている気がするのです。
 そしてそのクライマックスの幸せが、崩れる瞬間が怖い。

 けれども第10週の一連の話は、そんな私の気持ちをまるで見透かされたような、人がちょっとした瞬間に直面してしまう 「臆病」 と向き合うことが、テーマだった気がするのです。

 本題に入る前に指摘しておきたいのですが、このドラマの感動を後押ししているのは、葉加瀬太郎サンのスコアによるテーマ曲にある気がしてなりません。
 この曲は、限りなく見る側の優しい気持ちを掻き立てます。 つくづく名曲だなーと思います。

 そしてその曲をバックに繰り広げられる、「てっぱん踊り」。 紅白でもやってましたね、川中美幸サンのバックで(笑)。
 ドラマで最初見たときは、あまりに大勢の人たちがワサワサ出てくるその演出方法に、ちょっと気持ちがザワザワしたような覚えがあります。 「ゲゲゲの女房」 の、たった4人(最初は2人)とアニメだけ、の静けさとは対極にある感じに、ちょっこし反発したのかもしれません。
 でもいまでは、このドラマの特長に、とても合った演出方法のような気がするんですよ、このタイトルバック。
 つまり、このドラマは、このてっぱん踊りのように、人の心の中に、ずかずか入り込んでくるタイプのドラマなんじゃないか、と。
 あかりは、そっとしておいてもらいたいというほかの登場人物や視聴者たちの気持ちの中に、ずかずか入り込んでくる。

 第10週、そんな 「そっとしておいてもらいたい」、という登場人物たちの気持ちにずかずか入り込んできたのは、生臭坊主(笑)の隆円(尾美としのりサン)が持ってきた、千春が亡くなる直前に書いたと思われる、一通の手紙。
 どうやら隆円の父親が、千春から預かっていたらしい。

 この手紙の内容は、なかなかつまびらかにされません。 誰が見るべき筋合いのものなのか、果たして見ていい内容なのか。 その行方は二転三転し、見る側をじらし続けるのです。

 それを最初に隆円から見せつけられたあかりの父親錠(遠藤憲一サン)と母親真知子(安田成美サン)。
 一応いったん預かった錠はその手紙を、迷ったあげく火にくべて燃やそうとします。
 そんなことを勝手にやっていいものなのか。
 見る側の気持ちは、遠藤サン非難の方向に流れようとします。

 結局それは安田成美サンともみ合いの末に止められるわけですが、ここで明らかになるのは、遠藤サンの父親としての心情です。
 遠藤サンは中身の分からないこの手紙の中に、あかりの実の父親のことが書いてあるかもしれない、ということにいちばん危惧を抱いている。 結果的にあかりを捨てた、という形になっているその実の父親のことを、育ての親である遠藤サンは、けっして許すことが出来ないのです。 そしてそのことであかりの心が揺れ動き、要らぬ精神的負担をかけ、さらにもしかして自分たちの手を離れてその父親のほうに気持ちが向かってしまうかもしれない、ということまで気をまわしている。
 真知子はそんな錠の気持ちを、「千春さんの手紙を怖がっている、手紙から逃げている」 と鋭く言い当てるのです。 もしかして手紙には、初音に宛てた何かが書いてあるかもしれない、それを燃やしてしまうのは、もってのほかだ、というわけです。 実に正論。

 「あかりが知りたい思うことは全部教えてあげる。
 それが…うちらの役目じゃろ。
 立ちんさい!
 あかりんとこに電話するんよ!
 あの子の声聞いたらお父ちゃん一発で目さめるわ!」

 そんなときにあかりのほうから偶然、電話がかかってきます。 民男クンの問題で思いにふけっていたあかりが、両親の声を聴きたくなったのです。 わざと錠に電話を代わる真知子。 錠は思わず、「すまんかった」 といきなり口走ってしまうのです。

 自分が千春の手紙を燃やそうとしていたのは、やはり臆病からくるものだった。 あかりにとって本当に良かれと思うことを考えているつもりだったのに、実はそれは自分勝手な気持ちで、本当にあかりのためになっていなかった。 「すまんかった」、という気持ちはそんな錠の逡巡がそのまま出てしまった言葉だったのです。
 そんな父親の様子をいぶかしがるあかりを、真知子はとっさの機転でかわすのですが、電話から離れて座り込んでしまう錠の小さくなった背中を、カメラは追い続けます。 手前には少しばかりよれてしまった、千春の手紙。 錠の心情がその背中ひとつで、とても伝わってくるのです。

 「これ、田中さんとこ届けよう…」

 そう切り出す錠のところにやってきたのが、隆円。 渡りに船、という展開であります(笑)。

 隆円が持って来た千春の手紙。 それを初音は拒絶します。 そしてあかりも、その手紙によって何かが変わってしまうことに、恐れを抱く。

 「どうせ、うちへの恨み事しか書いてあらへん。
 (あかりの父親のことが書いてあるかもしれないなら)なおのこと要りません。
 あの子を、がっかりさせとうないさかい」

 隆円は千春に、あかりの父親になってもいいと話したが断られた、という昔話を初音に打ち明けます。 そんな千春の決意は、身近にお手本(初音)がいたからなのではないか、と。
 初音の気持ちは少しばかり揺れるのですが、村上夫婦のことを考えるとやはりその手紙を読むわけにはいかない、と考えるのです。
 それでもあかりの気持ちを考え、初音はその手紙をいったん預かることにする。

 初音はあかりにその手紙の処遇を託します。

 「あんた、この中身、見たいことないか?」

 「…おばあちゃんは?」

 「うちのことはええ。 あんたがどうしたいかや」

 「うちは…」

 迷うあかりを見て、初音はその手紙を破り捨てようとします。

 「ちょっと!?
 何するんよ大事なもんじゃのに!」

 「ほんなら、あんたが開けたらよろし。
 開けて、読んでみたらええ!」

 「おばあちゃんが読まんもん、うちが読めるわけ…」

 「うちは読まんし、あんたも読まん。
 そしたら、捨てるよかないやろ」

 「何で?
 千春さんが遺したもんじゃろ?」

 あかりは、いつか自分が読みたくなった時まで、初音にその手紙を預かっていてほしい、と頼みます。
 でもその話を聞いてしまった、鉄にい(森田直幸クン)。 その手紙を持ち出そうとします。 その思いは、父親の錠が初めに考えたのと、同じ論理です。
 そこに出くわした初音は、手紙を取り返します。

 「あんた、鉄平いう名前やろ!
 鉄みたいに強なれてつけてもろた名前や。
 こんな紙切れ一枚に負けてたら、親泣くわ!」

 そう叱りつける初音に、鉄にいはこう切り返します。

 「…ばあちゃんこそ、子が泣いとるわ」

 生きている者のことはいい。 その人たちのことを思い、義理を通すのもいい。
 けれども、どんな気持ちで千春が、隆円の父親にそれを託したのか。
 その気持ちを考えてやれ、という鉄にいの言葉が、初音の胸を貫くのです。

 そのころ真知子が錠に、千春の20回忌に仏壇にお線香をあげに大阪へ行き、あの手紙を一緒に読ませてもらおう、と提案しています。 鉄にいと真知子の考えていることは、やはり同じであり。

 「千春さんの気持ち、考えとったんよ。

 自分が死ぬかもしれん思うた時、産まれたばかりのあかりを見ながら、どんな気持ちじゃったんかなって。

 あんなかわいい赤ん坊のあかりを、たったひとり残していくんが…どれだけつらくて、悔しかったか…。

 その千春さんが、最後に言い残したかったこと…やっぱり、ちゃんと知っとかんとね。

 あかりを、うちの子にするとき、どんなことがあっても、絶対あの子を守るって決めたじゃろ?

 あん時、千春さんは、うちの家族になったんよ!

 あん時から、うちらと田中サンとは、他人じゃなくなったんよね」

 そのとき、初音から電話が入るのです。 初音は手紙を開けることを、決意したのです。

 ここでこの週の最初に展開していた、民男クンが大阪に残ろうとした話が、あかりを後押しさせることになります。
 民男クンは再婚しようとしている母親も、その新しいダンナも、そして下宿の人たちみんなも、新しい家族だと思っている。 だからそれが、メッチャうれしいんや、と。

 初音と錠、真知子が手紙を開けようとするのを、最初のうちやはり怖がっていたあかり。
 あかりは真知子に、こう話します。

 「千春さん、ここを飛び出してから、どうしとったん?
 なんで尾道に行ったん?
 トランペット、なんでやめてしもうたん?
 おばあちゃんのこと、どう思うとった?
 嫌いじゃった?
 ずっと、悪く思うとったんなら、おばあちゃん、かわいそうじゃわ。
 それに…。
 うちの…父親じゃった人のこと…。
 どう思うとった?
 もし、その人のこと恨んどったら、
 …うちどうしたらええん?
 千春さんのことも、その人のことも、…うち好きになれんよ!

 あの手紙読んでしもうたら、ほんまのこと分かってしもうたら、
 …
 うちは…
 うちはこのままじゃおれん!」

 真知子はそんなあかりにこう言うのです。

 「大丈夫。 なぁんも変わらんよ。
 どんなことが書いてあっても、千春さんが、あかりのお母さんで、うちが、お母ちゃんじゃわ。
 ほいで、どんなことが書いてあっても、村上錠が、あかりのお父ちゃんよ。
 田中サンがあかりのおばあちゃんいうのも、全然変わらん。
 あんたには、尾道と大阪の両方に家族がおるんよ。
 みんなあかりのこと、大切に思うとる。

 …

 千春さんね。
 あんたを産んだあと、ほんま幸せそうな顔しとった。
 『やっと会えたあ』 言うてね。
 じゃけど、急に具合が悪うなってね…。
 お母ちゃんも、ちゃんと千春さんにお別れも出来んかった。
 あの手紙は、亡くなる前の千春さんが伝えたかったことなんよ。
 じゃけえ…ちゃんと読んであげんとね」

 あかりはいったん躊躇するのですが、やっぱり思い直します。 内容によっては処分し、あかりにも内容を知らせない、と初音がハサミを入れかけた場に、あかりは飛び込んでくる。

 「…もう二度ともらえん、うちを産んだ人からの手紙じゃけえね」

 初音は封を切り、手紙を黙って読みます。
 そして黙ったまま、その手紙を錠に手渡します。
 錠はその手紙をまた黙ったまま読み、なんとも言えない表情で真知子に手渡す。
 真知子も黙ってその手紙を読み、初音に一瞥して、うれしそうな悲しそうな顔をして、「千春さん…」 と思わずつぶやいてしまう。
 後ろからそれを見た鉄平が一言。 「これだけ…?」
 笑ってしまう初音。
 真知子は、あかりに手紙を渡すのです。

 「あかりと、
 お母ちゃんのお好み焼きを食べたい」

 その手紙の中央部分に、小さな文字で書かれていたのは、たったそれだけの言葉。

 泣きました。
 書きながら、また泣いてます(はずかしっ!)。

 あかりは、自分を産んだ母親に、語りかけるのです。

 「千春さん…!…

 うち…食べたよ。

 おばあちゃんのお好み焼き。
 …
 うち食べたよ。

 …おいしかったよ…!…」

 大粒の涙を流しながら、仏壇の前に正座し、頭を下げる、あかり。

 「…ありがとう、
 …おかあさん…!…

 …ありがとう…。

 …ありがとう…」

 自分の母親のことを 「千春さん」 と言うことにかなりこだわっていたように思えるあかりが、初めて自分を産んだ母親のことを、「おかあさん」 と呼んだ瞬間。
 振り返り、思わず初音に抱きついてしまうあかり。
 初音も涙を流しながら、あかりを抱きしめるのです。

 そしてその晩、初音は自分の焼いたお好み焼きを、村上家の人々にふるまい、千春が食べたという真知子のお好み焼きも、初音は食べることになります。 下宿の人たちや伝サン(竜雷太サン)にもふるまわれたそのお好み焼き。 20年ぶりの初音のお好み焼きを、ようやく伝サンも食べることができました。 それも結構涙腺刺激しまくり、です。

 親が作ってくれる、その家だけの味。 それをまた食べたい、と願う、子の気持ち。
 このドラマには、そんな特有の味に愛着があり、思い入れがある人にだけしか分からない思いが満ち溢れています。 (第10週が終わった時点で言わせていただければ)とても優れているドラマであることは、間違いがない。

 ああ~なんか、またまた次週分を見るのが怖くなってきた。 まだまだ自分も、臆病ですネ(笑)。 それにしても毎週毎週、クライマックスすぎますって、このドラマ。 この文章を書くのも、すごく苦心しました。 正月休みだからここまで書けた気がします。

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